上 下
23 / 31

亡き親友の忘れ形見と再会

しおりを挟む
ドンとなった友明は、その2時間ほどの間に、色々な人と会話を交わした。
日本から『御』に付いて来た男性は、どことなく康介に似ている。
思わず、その名を口にしていた。
 「こう、す……け」
それを聞いた男性は複雑そうな表情をしていた。
 「トモ兄は、いつまでもお父ちゃんの事を思ってるんだね。嬉しいな。でも、なんか複雑な気分だ……」
トモ兄に、お父ちゃんって……。
って、まさか……。
思い当たった友明は優しく言ってきた。
 「優介か。康介かと思ってしまったよ。よく似てる」
自分の名前を呼んでくれて嬉しくなった優介は、友明に抱きついた。
 「トモ兄っ!」
よしよし……、と友明は優介を優しく背中をポンポンと叩いていた。
 「元気そうだな。どうだ、サトルとの生活は?」
 「うん。サトルさんも優しいし、楽しいよ」
 「それは良かったな」
 「御は、大学に行かせてくれたんだ。せめてもの恩返しを、これからしていこうと思ってるんだ」
 「良かったな。御は厳しいが、頑張ってる人間が好きな人だ。贔屓する時もあるが、目を掛けた人間には、とことん目を掛けてくれるからな。これからも頑張れよ」
 「うん。トモ兄も、元気で頑張ってね」

友明は溜息を吐いて、優介の頭をグリグリとしていた。
 「優介! お前は、何度言えば分かるんだっ。『うん』ではなく、『はい』だろっ!」
 「はいっ!ごめんなさいっ!」

あはははっ……と笑いながら、サトルは口を挟んでくる。
 「まるで、あの時と一緒だね」
 「サトルさん。あの時って?」

サトルは、ボスから優介を剥がしながら言ってきた。
 「優介が、うちに初めて来た時。君は『うん』のオンパレードで、ボスに頭をグリグリされて、今と同じことを言われ、君も、あの時と同じ言葉を返した」

御も、口を挟んできた。
 「ああ……。たしかに、そうだったな。皆で笑ったもんだ」

友明は、とんでもない事を言ってきた。
 「お前は、あれから20年近く経っても、変わってないってことか」
 「いやいや、変わったよ。好きな人も出来て、マナーとかも習って……。あ、そうだ。背も伸びたよ」

それを聞いた友明とサトルは、同時に溜息を吐いた。
友明が、
 「そういや、天然なところは、しっかりと天然なままだな」
サトルは、こう応じた。
 「大らかになった、と言って欲しかったな」

トモが小声でサトルに言う。
 「で、優介の身体を開発して、自分のモノにしたって事か?」
それを聞き、サトルは真っ赤になった。
 「なっ! なんて事をっ……。ボスッ!」


ハハハッ……と笑いながら、その場を後にした友明は、食い物ブースに移って行った。
 「腹が減ったぁ。何があるかな、何が残ってるかな」
と、歌う様に呟きながら。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。 このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。 そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。 一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて… 那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。 ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩 《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

【完結】嘘はBLの始まり

紫紺(紗子)
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。 突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった! 衝撃のBLドラマと現実が同時進行! 俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡ ※番外編を追加しました!(1/3)  4話追加しますのでよろしくお願いします。

「優秀で美青年な友人の精液を飲むと頭が良くなってイケメンになれるらしい」ので、友人にお願いしてみた。

和泉奏
BL
頭も良くて美青年な完璧男な友人から液を搾取する話。

sugar sugar honey! 甘くとろける恋をしよう

乃木のき
BL
母親の再婚によってあまーい名前になってしまった「佐藤蜜」は入学式の日、担任に「おいしそうだね」と言われてしまった。 周防獅子という負けず劣らずの名前を持つ担任は、ガタイに似合わず甘党でおっとりしていて、そばにいると心地がいい。 初恋もまだな蜜だけど周防と初めての経験を通して恋を知っていく。 (これが恋っていうものなのか?) 人を好きになる苦しさを知った時、蜜は大人の階段を上り始める。 ピュアな男子高生と先生の甘々ラブストーリー。 ※エブリスタにて『sugar sugar honey』のタイトルで掲載されていた作品です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

処理中です...