上 下
18 / 31

ついに自覚したのか? 

しおりを挟む
ふいに、お母ちゃんの歌詞が頭の中に出てきた。
 『これから始まる物語  今までの事忘れよう
 辛い事も 苦しい事も  嬉しい事も、全部
 忘れられない事もある
 それは 時間(とき)と いうものしか 無いんだ

 ゴロゴロしろよ
 泣いても良いんだ
 布団に潜って ふて寝すればいい
 それは 生きている証拠さ  
 喜びと不安を 胸に秘めて 私達は旅立ちます
 色んな事をしていき
 そして 強くなっていきたい
 いつの日か 自分を好きになれるように
 今日から また 踏み出します 』

そうだね。
忘れられない事には、時間しかないよね。


その時、友明は分かった。

 『いつの日か 自分を好きになれるように
 今日から また 踏み出します 』
この部分は、そのままを考える事では無い。
好きになるという事は、自分の事を心ごと受け止めるという事だ。
過去も含めて……。
だから9年間苦しんできた分、あと9年間は受け止めるのに必要な期間だという事か。


何故、オーストラリアだったのか。
それも分かった。
居心地が良い、と言ってた。
だからオーストラリアだったんだ。
お母ちゃんは克服なんて出来てない。
一緒に付いて来た時は睨みはしたけれど、文句は言ってこなかった。
お母ちゃんは1ヶ月半という期間だったけれど、パースに居る間は1人での時間だった。
本来の自分で居られる為の時間だったんだ。

東京に住んでいた時はどうだったのだろう。
福岡に移ってからは、お父ちゃんは1年のほとんどを東京で過ごしていた。
だけど福岡では子ども3人が居て、うっとおしかったのだろうか。
自分の血を引いてない子どもが3人だからな。
お母ちゃんのことだ。
完全に一人になりたかったんだな。
誰も気軽に来たがることのない所に行きたかったか。
だからこその、オーストラリアだったんだ。

お母ちゃんのバカ。
時間が掛かれば掛かるほど、独りぼっちだという思いがあったのだろう。
だから誰も知らない所に行って、1人になっていたんだな。

少しだけど、涙が出た。
お母ちゃん。
私や優人は知ってたんだよ。
香織は知らないと思うけれど、言う気もないから安心して。
生みの母親なんて知らないし必要ない。
私の母親は、昔も現在も、これからも、お母ちゃんだけだよ。

康介。
来世で会う時があれば、その時も、私の親友になって欲しい。
私は、もう大丈夫だよ。


博人さんを、力いっぱいに押しのけてやる。
 「重いっ!」

だけど動かないので、なんとか位置を変えようとした。
苦心の末、やっと動いた。

ゴロンッ。

今度は、私が博人さんの腹の上に乗っかる番だ。
布団を首元まで引き上げると、博人さんの身体と布団に挟まれて眠りについた。


 「お母ちゃん、大好きだよ。私は、昔も現在も、これからもマザコンではないからな!」
と、強く強く念じていた友明でした。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

タタラン王国の悲劇 〜お国全員淫乱プロジェクトby魔国〜

BL / 連載中 24h.ポイント:880pt お気に入り:47

BLすけべ短編まとめ

BL / 完結 24h.ポイント:731pt お気に入り:83

最推しの義兄を愛でるため、長生きします!

BL / 連載中 24h.ポイント:29,962pt お気に入り:13,396

冷淡騎士に溺愛されてる悪役令嬢の兄の話

BL / 完結 24h.ポイント:2,520pt お気に入り:7,661

悪役に好かれていますがどうやって逃げれますか!?

BL / 連載中 24h.ポイント:944pt お気に入り:2,550

【完結】縁起終夜の華麗なる異世界支配

BL / 完結 24h.ポイント:390pt お気に入り:511

1軍陽キャ幼なじみの猛攻♡

BL / 連載中 24h.ポイント:546pt お気に入り:490

檻に囚われ、堕とされて

BL / 完結 24h.ポイント:397pt お気に入り:33

処理中です...