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(135)大学祭
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あれから1年経った今でも、俺は5人に犯された事をしっかりと覚えてる。簡単に忘れられる事ではない。
大学生になった文雄さんは、酒や女に溺れることは無く、合コンに誘われても断ってるらしい。
俺の頭では、到底叶わないトップレベルの大学、東大。
それでも、東京大学ではなく、同じ国立の東響大学だ。
今日は、その東大の大学祭。
文雄さんは1時間ほど早くに大学に行った。
待ち合わせの時間まで、まだある。
賢い人が山ほど居るんだなあ…と、人の群れを見ていた。
小中学生の姿も見える。
「お父さん。僕は、ここを目指して勉強頑張るからねっ」
「楽しみにしてるよ。もう一つの東大でも良いよ」
父子の会話が、耳に飛び込んできた。
俺の小学生の頃は、アメリカに居た。ピアノで生計を、と思ってた時もあったっけ。
今の自分には、この父子の会話は耳の痛い言葉だ。
いきなり風が強くなり、髪がボサボサになってしまった。セットし直そうと、手櫛で撫で付けた。
すると、ピタッ!と、人の群れは止まり、人々の目は、ある一点に注がれていた。
俺は気付いてなかった。
誰かが呼んでる。
「松井君。松井君、久しぶりだね」
「卒業以来だね」
「今日は、引き抜きの為の打診かい?」
その人達は、俺に言ってくる。
「人間、年を取ると背は縮む、と言うけれど、君も例外ではなさそうだな」
「ほんと、安心したよ」
え、この人達、誰の事を言ってるんだ?
「松井君、何とか言って欲しいな」
「それとも、久しぶりに会えて、感動のあまり声が出ないって事かな?」
「こんな所に1人で居るだなんて、不用心だな」
視界に、文雄さんの姿が入って来た。
思わず叫んでいた。
「副会長、助けてっ!」
声が届いたのだろう、走ってくる。
「この声って…」
俺は文雄さんに腕を引っ張られて、抱きとめられた。
「こいつに、何か用ですか?」
怪訝そうな声が聞こえてくる。
「松井君?」
「松井君の声って、もっと低かったような…」
「失礼。人違いしたみたいだ」
文雄さんが、俺を上向かせる。
「弘毅、お前…って、なに、こっちの髪型になってんだっ」
その言葉に、4人は反応してきた。
「弘毅?もしかして、松井君の息子さん?」
「ああ、なるほどね。だから似てるのか」
「人違いだったけれど、松井君の息子さんだとは思いもしなかったよ」
「先程は失礼したね」
文雄さんは、俺の髪型をくしゃくしゃにしてくれる。
その様子を見ていた先程の4人は、さっきの髪型にして、とリクエストをしてくれる。
理由が分からず、撫で付けると…。
その4人は納得したのか、声が重なる。
「昔の松井君だ。」
その人たちは、こう言ってきた。
「その髪型で学内を歩いてごらん。皆が道を空けてくれるよ」
「振り返ってもくれる」
「今、この場に居る人達がそうである様に、凝視されるよ」
「学長や理事も飛んで来るだろうな」
何のことか分からず俺は黙っていたかったが、思わず口から出ていた。
「あ、あの…?」
「松井弘毅君。松井グループの総帥である松井孝之の一人息子でしょ?」
文雄さんが、驚いてる。
「えっ…?弘毅、お前の父親って…」
「ごめんなさいっ。言うと引かれる、と思って言わなかったの」
違う声が聞こえた。
「おや、松井君だ…と、思ったが、松井君のそっくりさんか」
先程の4人の内の一人が応じた。
「あ…、メガネ理事、ご無沙汰しております。新田です。」
「おおっ。松井君にくっ付いていた、あの金魚の糞の新田君か」
「よく覚えていらっしゃる…。理事、彼は松井君の息子さんですよ」
「ああ、君が松井君の息子さんね。同じ髪型で驚いたよ。」
俺はパニクッていた。
なにしろ、目の前に居るのは大学の理事長だから。
その理事長は、俺の隣に立っている文雄さんに目を向けた。
「これは、宮田の…。どちらかな?兄かな、それとも弟の方かな…」
「弟の文雄です。今年度、こちらの教育学部に入学しました。」
「文雄君と、松井君の息子さんね。今日は学祭だ、楽しんでくれ。それでは。」
文雄さんは俺の頭を押さえ込み、お辞儀をさせて、理事長に言っていた。
「ありがとうございます。」
大学生になった文雄さんは、酒や女に溺れることは無く、合コンに誘われても断ってるらしい。
俺の頭では、到底叶わないトップレベルの大学、東大。
それでも、東京大学ではなく、同じ国立の東響大学だ。
今日は、その東大の大学祭。
文雄さんは1時間ほど早くに大学に行った。
待ち合わせの時間まで、まだある。
賢い人が山ほど居るんだなあ…と、人の群れを見ていた。
小中学生の姿も見える。
「お父さん。僕は、ここを目指して勉強頑張るからねっ」
「楽しみにしてるよ。もう一つの東大でも良いよ」
父子の会話が、耳に飛び込んできた。
俺の小学生の頃は、アメリカに居た。ピアノで生計を、と思ってた時もあったっけ。
今の自分には、この父子の会話は耳の痛い言葉だ。
いきなり風が強くなり、髪がボサボサになってしまった。セットし直そうと、手櫛で撫で付けた。
すると、ピタッ!と、人の群れは止まり、人々の目は、ある一点に注がれていた。
俺は気付いてなかった。
誰かが呼んでる。
「松井君。松井君、久しぶりだね」
「卒業以来だね」
「今日は、引き抜きの為の打診かい?」
その人達は、俺に言ってくる。
「人間、年を取ると背は縮む、と言うけれど、君も例外ではなさそうだな」
「ほんと、安心したよ」
え、この人達、誰の事を言ってるんだ?
「松井君、何とか言って欲しいな」
「それとも、久しぶりに会えて、感動のあまり声が出ないって事かな?」
「こんな所に1人で居るだなんて、不用心だな」
視界に、文雄さんの姿が入って来た。
思わず叫んでいた。
「副会長、助けてっ!」
声が届いたのだろう、走ってくる。
「この声って…」
俺は文雄さんに腕を引っ張られて、抱きとめられた。
「こいつに、何か用ですか?」
怪訝そうな声が聞こえてくる。
「松井君?」
「松井君の声って、もっと低かったような…」
「失礼。人違いしたみたいだ」
文雄さんが、俺を上向かせる。
「弘毅、お前…って、なに、こっちの髪型になってんだっ」
その言葉に、4人は反応してきた。
「弘毅?もしかして、松井君の息子さん?」
「ああ、なるほどね。だから似てるのか」
「人違いだったけれど、松井君の息子さんだとは思いもしなかったよ」
「先程は失礼したね」
文雄さんは、俺の髪型をくしゃくしゃにしてくれる。
その様子を見ていた先程の4人は、さっきの髪型にして、とリクエストをしてくれる。
理由が分からず、撫で付けると…。
その4人は納得したのか、声が重なる。
「昔の松井君だ。」
その人たちは、こう言ってきた。
「その髪型で学内を歩いてごらん。皆が道を空けてくれるよ」
「振り返ってもくれる」
「今、この場に居る人達がそうである様に、凝視されるよ」
「学長や理事も飛んで来るだろうな」
何のことか分からず俺は黙っていたかったが、思わず口から出ていた。
「あ、あの…?」
「松井弘毅君。松井グループの総帥である松井孝之の一人息子でしょ?」
文雄さんが、驚いてる。
「えっ…?弘毅、お前の父親って…」
「ごめんなさいっ。言うと引かれる、と思って言わなかったの」
違う声が聞こえた。
「おや、松井君だ…と、思ったが、松井君のそっくりさんか」
先程の4人の内の一人が応じた。
「あ…、メガネ理事、ご無沙汰しております。新田です。」
「おおっ。松井君にくっ付いていた、あの金魚の糞の新田君か」
「よく覚えていらっしゃる…。理事、彼は松井君の息子さんですよ」
「ああ、君が松井君の息子さんね。同じ髪型で驚いたよ。」
俺はパニクッていた。
なにしろ、目の前に居るのは大学の理事長だから。
その理事長は、俺の隣に立っている文雄さんに目を向けた。
「これは、宮田の…。どちらかな?兄かな、それとも弟の方かな…」
「弟の文雄です。今年度、こちらの教育学部に入学しました。」
「文雄君と、松井君の息子さんね。今日は学祭だ、楽しんでくれ。それでは。」
文雄さんは俺の頭を押さえ込み、お辞儀をさせて、理事長に言っていた。
「ありがとうございます。」
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