恋人は副会長

福山ともゑ

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(99)飛び降りはパフォーマンス

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もう少しで弘毅の立っている所に着く。
そういう時に、弘毅は突き飛ばされ蹴り落とされた。

文雄は叫んでいた。
 「シュータ、いくぞっ!」
 「K 」
 「テル、ヤリチンッ」
 「OK」
 「関、頼んだっ」
 「K」

文雄とシュータは弘毅を目指し飛び降りた。
5階の放送室のベランダではなく、新館の屋上、7階からだ。
文雄の視線の先には、弘毅が落ちていってる。
その下には、あの連中が5人…。
少ない、せめて10人は欲しい。

 「弘毅、手を伸ばせっ」
すると、顔が上を向いた。
 「あ…」
 「手を」
弘毅の両腕が伸びてきた。
その腕を掴み腰を支える様に抱いた文雄は、シュータが足場を作ってる所を目指して下りた。

ボンッ!


………。


 「弘毅。生徒会室で、たっぷりと絞ってやる」

弘毅は頭の痛さを我慢して、無理にとぼけていた。
 「副会長、その顔怖いです」

シュータも口を挟んでくる。
 「コウキは肝が据わってるんだねぇ…」
 「向井先輩って、カッコいいですね」
 「ありがとう」


宮田が言ってくる。
 「松井・・、お前ね、飛び降りるのなら、飛び降りるって言えよな…」
ったく、人間トランポリンにもならん人数で足場を作る羽目になったし…。

文雄が言ってくる。
 「何言ってるんだマサ?あれだけデカい声で『ここから下りようよ』って言ってたのに」
 「そうなのか?」
皆、聞こえたか…?というマサの問いに、その場に居た5人は応えてる。
いや、全然。全く…。と。

聞こえてきたのは、喘ぎ声とコウキという名前と、二人の男の声だけだ。

それを聞いてビックリしたのは弘毅だ。
 「はあ?なにそれっ…」
 「知らなかったのか?いきなりデカい声が校内放送で流れてきたんだぞ」
 
その場に居る5人が5人とも、次々と口にしてくれる。
 「『手こずりさせやがって。コウキ、お前は俺に抱かれて、俺のモノになるんだ』」
 「『誰がなるか』、と言ってたな」
 「んでもって、『先ずは、その煩い口を静かにさせてやる』」
 「それで叫び声だな。『俺は静かにならんぞっ』、てな」
 「『キスすると、誰でも静かになるもんだ。』まあ、誰でもならぁな」
 「『嘘だと思うのなら、自分の身で確かめるんだな。』確かめられたんだろ?」
 「喘ぎ声聞こえたよな」
 「その前に、一声あったな…」
 「…ああ、思い出した。『今度は、その口の中を味わわせて貰う』、だな」
 「そうそう。そんで『いやぁー!』だな」

 「時々、デカくなったり小さくなったりしてたけどな」
 「しかも、コウキ、コウキって何度も名前出てたし」
 「それに、あの一言だよな」
 「なんだっけ…」
 「んーと…、『俺は好きな人がいる。それは、あんたではない!』っていう言葉」


それを聞いては、弘毅は顔を両手で隠した。
それって、それって……。

 「でも、そこで校内放送はストップしたぞ」

その言葉に、文雄は応えた。
 「でも、しっかりと聞こえたぞ」
 「なんて?」

今度は、2人の副会長が口にした。
今度こそ逃がさん、とか…。
一度抱いたら二度目はない、とか…。
ヤリチン、とか…。
プレイボーイ、とか…。
しかも、フェンスの向こうに立って一緒に下りよう、とか…。
人間は簡単には死なない、とか…。
で、そのヤリチンに弘毅は突き飛ばされ蹴られて落とされたんだ。



高田先輩が声を掛けてきた。
 「終わったぜ。あのヤリチン野郎は、コウキを突き飛ばしたくせに、やってないの一点張りだ。
今は理事長室に居る。」

生徒会長も、声を掛けてきた。
 「あの場に居た皆には、簡単に説明をした。
『生徒会の余興はどうでしたか?飛び降りた3人は迫真の演技でしたね。
人間マットになってくれた人達もありがとう。』って。
最終のコラボ宣伝もしといた。」


生徒会長だけでなく、高田先輩の目も怖かった。

 
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