恋人は副会長

福山ともゑ

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(93)決別 公園編

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いつまで笑ってるつもりなんだろう。
 「いい加減に笑うの止めて下さいっ」
 「はははっ…。悪い、悪い」

ったく、この人は。
あ…、丁度いいかもと思い、俺は切り出した。
 「入院した時も言いましたが、別れましょう。」
 「はははっ…、は?」
くすっと、思わず笑って言ってしまった。
 「笑い、止まりましたね」
 「お前、趣味悪いぞ。そういう事言って、笑いを止めようとするなんて…」
副会長が持ってるペンダントを指差して、俺は言った。
 「そのペンダントは、誕生日プレゼントです。」
 「え…。ってか、お前、俺の話」
 「俺の本音を言わせてもらいますと。恋人にはならなくても良いから、一緒に居たい。
でも、一緒に居ると、あの連中に目を付けられ迷惑を掛けてしまう。
だから、別れるのがベストなんだ。そういう結果に、なったんです。」
 「弘毅。俺は」
 「最後まで、言わせて下さい。俺は、副会長が、…文雄さんが好きです。
あの時も言ったけど、今はもっと知りたい、もっと近くに居たい。
そして、あの頃よりも…、もっと好きになっているんです。
だけど…。
あの連中に犯されて…。俺は変わった。強くなりたい。本当に、そう思ってる。
だから、バイトを始めたのです。面接を受けてバイト採用になったけど、メールはしなかった。
別れたのに、メールするなんて変でしょ。
それに…、バイト初日に来てくれた。あの時、顔を見て俺は気が付いた。
俺は、こんなにも好きになっている、ってね。
だから、嬉しかった。あの時、女子高生がミーハーしていたけど、俺は自慢したかった。
でも…、副会長とは、生徒会繋がりで今年一杯で終わりです。
ごめんなさい。それと、ありがとうございます。
こんな俺と、少しでも恋人になってくれて嬉しかったです。
それを言いたかったんです。」

でも、そのペンダントは返してくださいね。

副会長は、聞いてきた。
 「どうして、これを買ったんだ?」
 「渡せたらいいな、って。でも、そういう人が一時でも居たんだという証拠に…、その証拠を自分にプレゼントするのも良いな、と思って。」

溜息ついて、副会長は言ってきた。
 「俺が嫌いなら、嫌いとはっきりと言ってくれ。そうでないなら、俺は諦めない。」
 「さっきも言ったでしょ。あなたの事が、もっと好きになってるって。でも」
 「それなら、俺は諦めない」
 「副会長…」
 「弘毅、さっき言ってたよな。『副会長とは、生徒会繋がりで今年一杯で終わりだ』と。」
 「はい。」
 「それは、俺も同感だよ。」
 「ふく」
 「来年からは、副会長呼びは無くなる。そう思っていいんだな?」
 「え・・・」
 「今迄、何回言ってきた?副会長呼びを止めろと。それが、今年一杯で終わる。ということは、来年からは名前呼びになる。という事だよな。うーん…。まだ、後2ヶ月もあるが、我慢しよう。」
 「え・・い、いや、そういう意味では」
 「違うのか?」
 「違いますっ」
 「出来るなら、今すぐにでも止めてほしいのだけどな。泣き虫君、俺は別れるつもりは無い。」

きっぱりと言われてしまった。

 「それに、俺も言わせてもらうが。
誰が、自分の恋人を何度も何度も真っ裸にされレイプされるのを黙って見てられる?
誰が、好きでもない奴を抱こうとする?
誰が、好きでもない奴と一緒に居たがる?
入院というのは、人を気弱にするものだ。その時の感情で口走ってしまう。
でも、今は違うだろう。人間には、気持ちがグラつくのは付き物だ。
俺は、そう思ってるよ。
だけど、さっき言ってたように、俺が好きなんだろ?
本当は、もっと側に居たいんだろ?
もっと近くに居たいんだろ?
俺としては手離したくない。
告った時も言ったが…。
俺はね、今でも、弘毅が好きなんだよ。
だから、勇気を出して告ったんだ。
そんな迷惑云々で別れようとは思わない。
一緒に、戦う。そういう手もある。
俺としては、そういうのを選びたい。」

 「な、なん…、なんで、俺の気持ちを覆す様な事を…」
 「弘毅。手短に言って欲しい。お前は、俺の事が好きか嫌いか。どっちだ?」
 「好きです…」
 「うん。俺も、お前が好きだ。だから、このペンダントは俺が貰う。」

そう言って、副会長は俺を抱いてきた。
その腕に抱かれて、俺は泣きじゃくっていた。
暫らくすると、副会長はネクタイを解き、カッターシャツのボタンを3つ外して言ってきた。
 「弘毅。このペンダントを付けてくれ。」

ペンダントのフックを外し、自分の首に掛けた。
 「違うだろ。俺の首に掛けるんだよ」
 「付けてくれって言うから、自分の首にしただけなのに」
 「この屁理屈野郎。分かったよ、言い直すよ。俺の首に掛けてくれ。」
 「言葉って、言い方によって意味合いが違いますよね。」
 「まったくだ」
 「…誕生日、おめでとうございます。」
 「ありがとう。」

ペンダントのフックを外し、副会長の首に掛けた。
弘毅の目の前には、セクシーな喉元。
やっぱり、この人が好き。
そう思うと、吸い寄せられる様に、そのカッターシャツから見え隠れする肌に唇を押し付けた。

ビクッ…。



副会長の身体が揺れた?
呟きが聞こえてくる。
まったく、…本当に、煽ってくれる奴だよな…。



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