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(76)刑事&左腕
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気が付くと、檻の中に居た。
遠くから、何か聞こえてくる。暫らく経つと、複数の足音が近付いてくる。
「コウキ。お前には別の仕事をやるっ。」
そう言われ、俺は檻の中から出され銃を右側頭部に押し付けられた。
「それ以上、近寄るなっ!」
見ると、警察官らしき服を着た人が大勢居た。
「コウキ。貴様は、こいつらを足止めさせろっ」
そいつは俺の尻を蹴り、前に突き出すと同時に、反対方向に走って行った。
「させるかっ!」
黒の服を着た人が、そいつにタックルを掛けて手刀を決めて倒した。
(もしかして二刀流の人?いや、でもアイマスクを付けてない。)
そう思ってると、声が聞こえた。
「さすが悟!さすが文武両道の奴!さすが左腕!」
「お前の左腕ではない。」
悟と呼ばれた人は、俺に近付いてきた。
「この背中は…」
その人は俺の背中を触って何か匂いを嗅いてる。
「タバコか。亘、病院へ。」
亘と呼ばれた人は、俺に手帳を見せてきた。
(え・・・、刑事?)
「タバコを押し付けられたのか。タチの悪い悪戯をしやがって…。さ、連絡先を教えて。君の家に電話しよう。」
「亘。そいつの保護者気取りが側に来てる。」
「へ…、そうなの?」
「さっき連絡したから。」
亘は、呟いていた。
相変わらず手際の良い奴だな。さすが左腕。
10分前に連絡を貰った。
どうして俺の番号を知ってるんだ?と、言いたかったが、相手は場所を言っただけで切った。
でも、相手が誰なのかは分かった。
テルは、丁度帰宅してきたマサの父親を駐車場の入口で捕まえて、そのまま運転してもらって迎えに行った。
マサの父親であるコウキの担任は、車中で事の経緯をテルとマサから聞いた。
その場所に着くと、コウキは毛布に包まれていた。
「その子の担任の宮田学園の宮田です。ご迷惑をお掛けしました。」
「ああ、担任の先生ですか。犯人は逮捕して、既に留置所へ送り付けました。」
手招きを受け、数歩近寄ると小声で言われた。
背中にタバコを押し付けられてます。早めに病院に行かせる様にして下さい。
悟とか、左腕とか言われた人が、何かの包みを広げて見せてくる。
「君の服かな?」
「あ…、はい。そうです。」
「出来るのなら処分した方が良い。警察に証拠品として献上するのを、お勧めするね。」
「はい、そうします。お願いします。」
「亘、これ。」
「おう。それでは、こちらは証拠品として頂戴致します。」
亘と呼ばれた刑事は、俺の頭を優しく叩いてくる。
「よく頑張ったな。でも、友人だけでなく、自分も逃げようとする気持ちを忘れるなよ。」
その言葉に、涙が出た。
「亘、警察が一般人を泣かせてどうする…」
亘は、そっちの方を振り向いて言い返してる。
「悟こそ。それは、何だ?」
「人間、腹が減ると涙脆くなる。ほら、これは売れ筋No.1のウサギとカメだ。口開けて。」
そう言われ、思わず口を開けてしまった。
ウサギが、口の中に入った。
「美味しいっ。クリームだ…」
「うん、笑ったな。次は、カメだ。」
カメも、入れて貰った。
「餡子だ…」
朝、食べたっきりだったから、嬉しい。
その人は言ってきた。
「世の中には、色々な人間が居る。自分とは違う生活を送っている人が殆どだ。苦しんでる人も居れば、楽をして生きてる人も居る。今回は危ない目に遭ったが、これを教訓にするんだな。
それと、もう一つ。
自分にとって一番大切な人や物は、どんなに遠く離れても、どんなに年月が経とうとも、変わらないし、色褪せることもない。
君が、君らしくなりたい。そういう思いで生きていけば、自ずと人は寄って来るものだ。
付き合う人間を選ぶんだな。因みに、私の見解では…、最初に逃がした友人は、君とは合わないのではないか、と見て取れたね。」
「悟。それは、あの男の事か?」
「当たり前だ。私にとっては一番大切な人だ。お前には一生掛かっても分からんだろうよ。」
「分かりたいとは思わないね。でも、あいつの頑張り様にはマジで敬服してるよ。」
それを聞いていた担任は、声に出していた。
「まさか、悟って…、『御』の・・・」
その声に対し、悟は人差し指を唇に当てた。
コウキは、何のことか分からなかった。
「先生?」
担任は、悟と呼ばれてる人に向かって声を掛けた。
「私は、宮田学園の宮田一成(みやた かずなり)と申します。
あの方に、宜しくお伝えください。今回は、助けて頂き、ありがとうございました。」
宮田学園の、宮田一成。
その名前を聞いた悟は驚いた。
それは、宮田家の本宅の、唯一の跡取りである人物の名前だからだ。
それ以外の男は、皆が皆、婿養子だ。
そして、アレが選ぶだろう主の名前でもある。
遠くから、何か聞こえてくる。暫らく経つと、複数の足音が近付いてくる。
「コウキ。お前には別の仕事をやるっ。」
そう言われ、俺は檻の中から出され銃を右側頭部に押し付けられた。
「それ以上、近寄るなっ!」
見ると、警察官らしき服を着た人が大勢居た。
「コウキ。貴様は、こいつらを足止めさせろっ」
そいつは俺の尻を蹴り、前に突き出すと同時に、反対方向に走って行った。
「させるかっ!」
黒の服を着た人が、そいつにタックルを掛けて手刀を決めて倒した。
(もしかして二刀流の人?いや、でもアイマスクを付けてない。)
そう思ってると、声が聞こえた。
「さすが悟!さすが文武両道の奴!さすが左腕!」
「お前の左腕ではない。」
悟と呼ばれた人は、俺に近付いてきた。
「この背中は…」
その人は俺の背中を触って何か匂いを嗅いてる。
「タバコか。亘、病院へ。」
亘と呼ばれた人は、俺に手帳を見せてきた。
(え・・・、刑事?)
「タバコを押し付けられたのか。タチの悪い悪戯をしやがって…。さ、連絡先を教えて。君の家に電話しよう。」
「亘。そいつの保護者気取りが側に来てる。」
「へ…、そうなの?」
「さっき連絡したから。」
亘は、呟いていた。
相変わらず手際の良い奴だな。さすが左腕。
10分前に連絡を貰った。
どうして俺の番号を知ってるんだ?と、言いたかったが、相手は場所を言っただけで切った。
でも、相手が誰なのかは分かった。
テルは、丁度帰宅してきたマサの父親を駐車場の入口で捕まえて、そのまま運転してもらって迎えに行った。
マサの父親であるコウキの担任は、車中で事の経緯をテルとマサから聞いた。
その場所に着くと、コウキは毛布に包まれていた。
「その子の担任の宮田学園の宮田です。ご迷惑をお掛けしました。」
「ああ、担任の先生ですか。犯人は逮捕して、既に留置所へ送り付けました。」
手招きを受け、数歩近寄ると小声で言われた。
背中にタバコを押し付けられてます。早めに病院に行かせる様にして下さい。
悟とか、左腕とか言われた人が、何かの包みを広げて見せてくる。
「君の服かな?」
「あ…、はい。そうです。」
「出来るのなら処分した方が良い。警察に証拠品として献上するのを、お勧めするね。」
「はい、そうします。お願いします。」
「亘、これ。」
「おう。それでは、こちらは証拠品として頂戴致します。」
亘と呼ばれた刑事は、俺の頭を優しく叩いてくる。
「よく頑張ったな。でも、友人だけでなく、自分も逃げようとする気持ちを忘れるなよ。」
その言葉に、涙が出た。
「亘、警察が一般人を泣かせてどうする…」
亘は、そっちの方を振り向いて言い返してる。
「悟こそ。それは、何だ?」
「人間、腹が減ると涙脆くなる。ほら、これは売れ筋No.1のウサギとカメだ。口開けて。」
そう言われ、思わず口を開けてしまった。
ウサギが、口の中に入った。
「美味しいっ。クリームだ…」
「うん、笑ったな。次は、カメだ。」
カメも、入れて貰った。
「餡子だ…」
朝、食べたっきりだったから、嬉しい。
その人は言ってきた。
「世の中には、色々な人間が居る。自分とは違う生活を送っている人が殆どだ。苦しんでる人も居れば、楽をして生きてる人も居る。今回は危ない目に遭ったが、これを教訓にするんだな。
それと、もう一つ。
自分にとって一番大切な人や物は、どんなに遠く離れても、どんなに年月が経とうとも、変わらないし、色褪せることもない。
君が、君らしくなりたい。そういう思いで生きていけば、自ずと人は寄って来るものだ。
付き合う人間を選ぶんだな。因みに、私の見解では…、最初に逃がした友人は、君とは合わないのではないか、と見て取れたね。」
「悟。それは、あの男の事か?」
「当たり前だ。私にとっては一番大切な人だ。お前には一生掛かっても分からんだろうよ。」
「分かりたいとは思わないね。でも、あいつの頑張り様にはマジで敬服してるよ。」
それを聞いていた担任は、声に出していた。
「まさか、悟って…、『御』の・・・」
その声に対し、悟は人差し指を唇に当てた。
コウキは、何のことか分からなかった。
「先生?」
担任は、悟と呼ばれてる人に向かって声を掛けた。
「私は、宮田学園の宮田一成(みやた かずなり)と申します。
あの方に、宜しくお伝えください。今回は、助けて頂き、ありがとうございました。」
宮田学園の、宮田一成。
その名前を聞いた悟は驚いた。
それは、宮田家の本宅の、唯一の跡取りである人物の名前だからだ。
それ以外の男は、皆が皆、婿養子だ。
そして、アレが選ぶだろう主の名前でもある。
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