恋人は副会長

福山ともゑ

文字の大きさ
上 下
53 / 136

(53)ユウ&弘毅の母

しおりを挟む

その男の子は、ハルカに良く似ている。
まるで、初めて会った頃のハルカにそっくりでビックリした。
その男の子が声を掛けてきた。
 「あ、あの…、コウキのお母さんですよね?」
 「え…」
お父ちゃんが、口を挟んできた。
 「ユウ。お前知ってるのか?」
 「中学の頃、週2の割合で、家に遊びに行ってたから。」
すると、その女性は驚きの表情から、納得顔になった。
 「ああ…、あの可愛くて利発そうな子ね。」
 「か、可愛くは無いです。」
その人は微笑んでる。
 「高校生ともなると、大人びてくるのね。弘毅とは大違い…」
なんて返せばいいのか分からず、一言だけにした。
 「あ、ありがとうございます。」

ハッと気が付き、俺は言った。
 「あの、お茶を淹れてきます。クッキーを焼いたので、それも持ってきますね。」
そう言ってキッチンに向かった俺に、お父ちゃんの声が聞こえてくる。
 「ユウ。俺は要らないから、2人分な。」
 「はーい」と返事をして、2人分のお茶とクッキーを用意してリビングに持って来た。

 「どうぞ。」
 「ありがとう。」と言って、遠慮なくクッキーを口にするコウキの母親。
ん、美味しい、と呟きが聞こえてくる。
そう言ってくれると、俺も嬉しかった。

 「では、そろそろ連れてきますね。」
と、お父ちゃんが声を掛けてきた。
コウキの母親は、どの様にしてるのか見たいと言って、地下にある文兄のスタジオに降りて行った。父親も一緒に。



地下には、ピアノだけでなくドラムもあり、ザウターも置かれていた。
 「こちらにどうぞ」と、担任の声が誘ってくる。
入り口から入ると、音の洪水が耳に入ってくる。

ああ、気持ちよさそうな歌声。この声の持ち主は、歌うのが凄く好きなんだ、という感じを受ける。
このギターも。とても低音がしっかりと響いて、重厚感を醸し出してる。
『ロック魂』というのを感じる。
ドラムも、リズム感が安定しており、時々アドリブっぽい音を入れてるのが分かる。
どっしりと地に足を付けて、他の楽器の音を殺すことはしない。
電子ピアノは、他の楽器とは違い、音が飛んだりミスったりしている。不安定なのは弘毅が弾いてるのね。

そして、弘毅が副会長と呼んでた男の声が、弘毅に的確なアドバイスをしてる。
 「ピアニスト交代」という言葉が聞こえてきた。
誰と交代したのだろうと思い、小窓から見てると、副会長と呼ばれてる男だ。
その人が出す音は、安定感がある。ロックやパンク系の音なのに、心地よい音だ。

そして、もう1曲。
 「〆の、いくぜー!」という元気のいい声。
すかさず、別の声も聞こえてきた。
 「コウキ。指は止めるなっ。ソロの所、リズムに乗ってればシンプルでも良いんだからなっ。」
 「はいっ!」

 「テル。本番のつもりで歌え。遠慮するなっ!」
 「OK!」

 「マサ。お前も遠慮するなっ!」
 「OK!」

 「シュータ。ラストまで気を抜くなっ。例の16拍、決めろっ!」
 「うしっ!」


先ほどとは違い、ボーカルの声が凄く響いてくる。
なに、この子。高校生とは思えない、この声量に迫力。
この歌声だけでも、ゾクゾクしてくる。

ギターの音も、先ほどとは違う。ギターを変えたみたいだ。
ドラムは、本当に安定している。
バンドを組んで一番大事なのは、ドラムとベースの低音だ。
ベースの音は無いが、まるでベースの音も聞こえてきそうだ。
そして、ピアノ。
まだまだ不安定だけど、他の楽器がフォローしてくれてる感がある。
今までは、ずっとソロだったから精神的な面が出てるのだろう。

そして、各自のアドリブによるソロ演奏に、ソロのアドリブ歌。
そして、ラストのドラムだけの音。
決まったわね。
カッコいい。


ふと見ると、弘毅の母親の隣りで聴いてた男性二人は「オー!」と、小さくガッツしている。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...