恋人は副会長

福山ともゑ

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(42)フミオSide

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うーむ…。
さすがサワダ、手強いな。
さっき俺が蹴った場所は、まだジンジンしてる筈なのに、アソコも屈強なのか…。

すると、いきなり悲鳴が聞こえてきた。
 「キャー!!」

その声に、サワダは反応した。
微かに隙が見える。誰が、このチャンス逃すものか。
乱れ振りして、怪我させてやる。
こいつは、あの女が弱点なのか。惚れた弱みとは、よく言うよな。

あの女も、キャーキャーと煩いっ!
俺は蹴りも入れてやった。
だが、さすがはサワダ。すぐに態勢を整え、やり返してこようとする。

 「だっ、誰が来てー!!泥棒よ、泥棒ー!
私の、私の……。」

サワダは行きたそうにしてるが、誰が行かすか。
突いてやるとサワダは避けたが、その拍子に腰から床に落ちた。
良いチャンスだ。
そのサワダに、ダブルでお見舞いしてやる。
そう思い、二振りを共に上に構えてると、いきなりピー音が聞こえてきた。


ピーーッ!!

まるで笛みたいな音だ。
すると、ドドドドッ……と、地割れの様な音が床に響いてきた。
泥棒が、この屋敷を壊して逃げてるのか?
そう思ってたら、サワダが悲鳴をあげた。
 「ギャー!!い・い・い・い…」

ん?
い・い・い・い…、って何だ?

ドドドドッ…という音と共に、違う音も聞こえてくる。
フッフッフッフッ…。
これは呼吸音だ。
サワダは、俺の後ろを見て腰を抜かしている。
すると、俺の横を、その音が通り抜けて行った。
そして、俺の視界に映った、その音の正体は…、
犬。

そういえば、ここに来る前に、犬を連れて来たことを思い出した。
なんか増えてないか。俺が連れて来たのは20匹位なんだけど。
それに口笛吹いてないし…。
ああ、さっきのピー音か。


すると、向こうからも悲鳴が聞こえてきた。
あの女だ。
 「ギャー!!い、いやぁー!!」

ハゲの声も聞こえる。
 「あ、あっちへ行けっ!近寄るなー!!」


ハゲも、犬嫌いか。

昨日のサンダーもそうだったが、今夜も犬が登場して終わりか?
まあ、今夜は暴れたので、良しとするか。



あの男が連れて来た犬は20匹。
だけど、使用人が勝手に増やしたのだ。
各自の家や友人知人、近所等に声を掛けて。
総計、101匹。

宮田の本宅は広く敷地内には噴水や砂場もあるので、犬にとっては嬉しい遊び場。
勝手に遊び走り回って、水分補給とか色々と勝手にして…。
満足した犬は、これまた勝手に自分達の家に帰って行った。
後片付けは使用人の役目だが、いつもは踏ん反りがえってる主一家の怯えてる姿を見ると、溜飲を下げていた。

誰しもが思っていた。
(なぜ、あの御方ではないのか。
なぜ、婿養子が踏ん反りがえってるのか。
そして…。
なぜ、あの男は殺そうとしないのか。)


ふと、視線に気づいた門番は、錠を開けて中に招き入れた。
次なる世代の主人と、その従者を。
屋敷内に弟君が来られてる事を伝えたかったが、その主人と従者は、2人とも目をパチクリとさせているので、無理そうだと見て取った。

その次なる世代の主人と従者は…。
敷地の中に足を踏み入れた途端、マサとテルは…。
大量の犬が敷地内を走り回ってるのを見て、唖然呆然としていた。


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