恋人は副会長

福山ともゑ

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(25)兄弟電話

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マサとコウキが拉致られた?
どういうことだ、これは…。

これだけだと分からない。
そう思っていたら、通話の方が鳴った。
ユウからだ。
 『文兄っ!お兄ちゃんとコウキがっ…』

 「泣くなっ!なんで、そうなったのか分かる範囲で良いから教えろ。」


ユウの話はこうだった。
中学校近くの公園でコウキと遊んでいたら、お兄ちゃんが顔を出してきた。
コウキは、お兄ちゃんと同じクラスだから名前と顔は知ってる。
だから、俺は双子の内の兄だよ、とコウキに紹介したんだ。
コウキは驚いていたけど、入院していたから、今は高1なんだと話したら、納得してくれて。で、3人で遊んでいた。
そしたら、いきなりコウキの叫び声が聞こえてきて、そっちを振り向いたら誰かに腹を殴られて気絶したみたいだった。
お兄ちゃんが、その後を追い掛けて行ったんだ。何十人もの男に囲まれやっつけていたけど、結局、お兄ちゃんも、どこかに連れて行かれた。


 『ふ、文兄ぃー…』

ユウは泣いてるが、だいぶ気持ちが落ち着いてきたのだろう。
 「ユウ…。コウキを拉致っていった奴の顔を見たか?」
 『顔は見てない。でも、背の高い男だった…。後ろしか見てない…』

 「マサを拉致った連中は、どんな奴等だった?」
俺の言葉を聞いて、テルは驚いて俺の方を見てきた。
 『分かるのは…、場慣れしてるように見えた』
 「それは、喧嘩をしなれてる感じか?」

 『うん。あ、でもお兄ちゃんの事を「伝説の奴も、やっぱり人間だな」って…。
伝説の奴って、なに?』
 「伝説の奴も、やっぱり人間…?」

 『うん。あ、あと…「本当に、こいつが伝説の奴か?片割れではなく?」って…。
双子だと知ってるような口ぶりだった。』

もしかして、あの女か・・・!

 「分かった。マサの方は心当たりある。問題はコウキだな。」
何か思い出したら連絡しろよ、と付け加えて電話を切った。


 「フミオ…、マサは…」

テルの堅い声が聞こえてきた。
 「ユウが聞いた言葉はこれだ。
『伝説の奴も、やっぱり人間だな』
それと、もう一つ。
『本当に、こいつが伝説か?片割れではなく?』
そういう言葉が出るのは、マサが双子だと知ってる奴だ。」


 「…なるほど、あの女かっ!」
テルは、マサがリーダーをしていた時のサブだった不良仲間だ。
だから、マサが高1として高校生活を無事に卒業することを応援している。
そして、俺達の宮田の家の事も含め、詳細を知ってる唯一の1人だ。

 「テル。マサの方を頼んでいいか?」
 「もちろん。」
 「俺は、コウキを拉致った奴を突き止める。」
 「使うか?」
 「いや、マサの方に使え。」



ふざけやがって、あの女狐が!
一度ならず二度までも…。

マサ、直ぐにテルが連中を引き連れて迎えに行くから、待ってろよ。

コウキ。
どこに居る?

背の高い男。
中学近くの公園。
一か八か賭けてみるか…。

いや、もう少し考えてみるか。


 
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