恋人は副会長

福山ともゑ

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(19)エッチされる…

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 「初めて、人前で泣いちゃった…。ごめんなさい、迷惑」
 「迷惑ではないよ。だけど、違う意味で泣かせたいな…」
は…、違う意味で泣かせたい?
 「それって、どういう…」

副会長は、にっこりと笑って言ってきた。
(うっ…。だから、その笑顔は反則…)と、思ってたのも、つかの間。
 「ねえ、コウキ。ユウにキスされたんだってね?」
 「え…、キス?キスって…、あれがキス?」
 「この唇を許したんだ?」
副会長は、そう言いながら俺の唇を触ってる。
 「いや、唇ではなくて、ほっぺた…」
俺はユウの唇が押し付けられた左頬を、自分の指で示した。

じゃ、消毒…と言って、左頬に副会長は唇を付けてきた。
 (う、うわっ…。嫌じゃない。こういうのって気持ち良い。)
思わず目を閉じてしまった。
少し経つと、左頬に触れていた副会長の唇は、俺の首に移った。
 「ん…」


ネクタイを外されそうになって、思わず目を開けた。
 「あ、あの…」
副会長は真剣な表情をしている。
 「嫌か…」
 「あの、俺、中1の時に…ある人に、その…付けられて…」

副会長の声は、心なしか固くなってる気がした。
 「誰に?」
 「ヤス兄…軽音に入ってきた2年のボーカル…。松岡先輩です。」
 「…そいつの事が好きだった?」
 「俺は一人っ子だから、お兄ちゃんが出来て嬉しかった。そういう気持ちだったから…。
好きとか、そういう気持ちはまるっきり無かった。」
 「なら、俺とは?」

思わず、副会長の顔を見上げた。
こんな近くで見ると、吸い込まれそうな意志の強い、黒い瞳が俺をじっと見ている。
その瞳に映ってるのは、少し不安げな俺の顔だった。
この人はヤスオ兄とは違う。
嫌だと言えば、止めてくれるだろう。
でも、この人になら抱かれても良い。
この人は、真剣に思ってくれてる。
俺は、この人の事を知りたい。

なかなか言葉を発しない俺に、副会長は再度聞いてきた。
 「コウキ?」
 「今、分かった…」
 「なにが?」
 「俺、副会長の事が気になっていたのではなくて、好きになってるんだって…」
 「コウキッ…」

 「んっ…」

少し経つと、副会長の唇が、俺の唇から離れていく。
(温かかった…。でも、嫌じゃなかった。もっと触れたい。)
でも、俺は副会長に文句を言っていた。
 「きゅ、急にしないでっ。俺…、俺、初めて…」
 「ごめん、ごめん。嬉しい事を言ってくれるから、つい…」

俺は副会長に言ってた。
 「優しくしてね」
 「ああ、そうさせてもらう」

そう言って、副会長は俺が着てる夏用のベストを脱がすと、ベッドに押し倒し…。
ネクタイも外すと、シャツの前ボタンを全て外し…。
インナーの黒シャツを裾から捲ってきた。

俺は、自分の胸元に息が掛かるのを感じ、声が出てしまった。
 「あ…」


副会長の手が、唇が…、俺の肌に優しく触れてくる。



 
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