恋人は副会長

福山ともゑ

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(4)コウキSide

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本来は2週間ある仮入部期間。
それをたったの1日間で終え、正式に軽音部となっての活動になった。
その翌日から、5月に行われる総会に向けての練習が始まった。

ギター希望者が多かったせいか、俺は鍵盤になった。
鍵盤担当の生徒会副会長の宮田先輩。
彼は、凄い腕前だ。
鍵盤弾きが2人いるから、という理由で2グループに分かれた。
1年だけのグループと、ミックスグループだ。
俺は1年だけのグループの鍵盤だ。
その日は、部室に行くとまだ誰も来てなかった。
一番乗りみたいだ。
するとピアノの上に楽譜が置いてあるのが目に留まり、それを手にして見ていた。
少し頭の中で譜を追っていたが、その曲は昨年の文化祭で演っていた曲だと気付いた。
部室には、まだ誰も来てないのを確認し、俺は弾いてみた。
まさか先客がいるなんて、思いもしなかった。




いきなり声が聞こえた。
 「へー。初見でそんなにも弾けるんだ?」
ビクッと指が揺れてミスった。
ビックリしたのだ。
だって、誰も居ないと思ってたからだ。
 「い…、いつから?」
 「最初っから。ちなみに、俺はそこで横になってた。」
と指差された所は、死角に当たる位置だった。
しかも、そこにはソファが置いてある。

 「副会長って大変ですね」
 「まあねー。今は総会を目前に控えてるからな」

ガラッ。
部室のドアが開いた。
 「ピアノの音が聞こえてたから、弾いてるんだな…。と、思ったのだが…。違ったのか」

え…、誰?
 「副会長、PTA会長と関会長が呼んでますよ」
溜息を吐いた宮田副会長は、一言だけだった。
 「そのPTA会長から逃げてたのに…」
 「ははっ…、分かるよ。あの人は話が長いからね」

いきなり声を掛けられた。
 「松井」
間近で名前を呼ばれ、俺はビクッとして姿勢を正してしまった。
 「はいっ。」
 「こいつが、生徒会書記の高田で、軽音部所属のボーカル担当だ」
 「あ…、あの伝説の…」
思わず、口から洩れてしまった。
書記の高田先輩と宮田副会長が同時に聞いてきた。
 「伝説?」

その言葉に、何も考えずに答えていた。
 「昨年と一昨年の文化祭を聴きに来たんです。その時、横断幕に書かれてありました。
『伝説のイケメンボーカル・テル』って」

それを聞いた二人は目を瞠っている。
 「え・・・」

でも、俺は嬉しくって興奮していた。
 「その『伝説のイケメンボーカル』さんと、こんなに間近でお会いできるなんて…。
話も出来るなんて嬉しいっ!」
俺は舞い上がっていた。

それまで俺をマジマジと見てた高田書記は、困った表情になって言ってきた。
 「そういう時は化粧してるからね…。でも素顔はこれだから。イケメンではないよ」
すかさず副会長が口を挟んできた。
 「なにニヤついてんだよ。イケメンって言われて嬉しいだろ」
 「あはは…。ま、ね。こんなカワイイ子に言ってもらえると嬉しいね。
あ、そうだ。名前を聞いても良いかな?」
 「はい。俺は…、自分は1年3組の松井弘毅です。」

 「松井弘毅君ね。・・・松井君。」
 「はい。」
高田書記は、にっこりと微笑みながら言ってくれた。
 「入学おめでとう。高校生活をエンジョイしてね」

そんな良い表情を向けられ、俺は舞い上がっていた。
 「はい。ありがとうございます。頑張りますっ。」


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