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怒り爆発
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ふいに、大きな音が響いてきた。
ガチャガチャーンッ…!
え、何の音だろう。
もしかして誰かが割った?
そう思うと、音がした方に駆け寄った。
「あ、ごめんなさ…、お皿が落ちて…」
(落ちて?落としたのではないのか?)
「ねえ、グラス足りないんだけど」
「申し訳ございません。すぐ出します」
そう言って自動乾燥機からグラス立てを出す。
横からグラスを一つ取られ、思わず言っていた。
「ちょっとっ、飲み口に指紋を付けないで」
グラス立てをお冷の下にセットして、お客様にこちらからどうぞ、と指し示す。
注文を受けて、それを皿に盛りつけていく。
支払いを済ませて、お客が座り立ち席に座るのだけど、支払う前にテーブルに持って行こうとするのを見て、他の皿に盛り付けて支払いを済ませて貰う。
「どうぞ、こちらの方をお召し上がりください」
「はい」
「ちょっと、勝手な事をしないでっ」
「でも」
「でも、じゃないっ!」と言って、その皿を奪い取り破棄する。
その数分間で、俺の怒りはマックスになった。
「いい加減にしてよねっ!帰って、二度と来るなっ!」
「でも…」
「自分が何をしたか分かってるのか?お皿8枚とお椀を1セット割ったから、弁償してもらう。
合計1万円を持って来て」
「あ、買ってきます」
「買うのは俺。お前は金を持ってくるだけ」
「お兄…」
「俺は一人っ子だ。弟なんて居ない。とっとと1万円を持ってくるんだ」
「でも」
「これ以上、俺を怒らせる気かっ」
「ご、ごめんなさっ…」
そいつは財布から万札を1枚渡してくれるので、領収を切ってやる。
「良いか、二度と来るなっ!」
その後、店先で塩を撒いたのは言うまでもない。
高瀬と利根川は、そんな政行を見て話している。
「ふ…、今のあいつなら継がせても誰も文句は言わんと思うぞ」
「止めてやれよ。あいつは継ぐ気は無いと言ってたぞ」
「何時の話だ?」
「2週間ほど前だ」
「まあ、頑固な所は親子そっくりだな」
「そこは否定しないけどな…」
その苦笑気味に言った高瀬に、利根川は痛い事を突いてきた。
「何シケてんだよ。まさか告って振られたとか?」
「何の事だ?」
「お前はあいつにベタ惚れだったからな。誰が見ても、お前の片思いだと分かるぞ」
ぶっ…。
思わず噴いてしまった。
「そんなに分かるか…?」
「俺は、お前をずっと見てきてるからな。それに、こんな所まで食べに来るなんて、未練を引きずってる証拠だな」
「煩いっ」
それでも、俺は政行を抱いたんだ。
政行は覚えてないみたいだけど。
政行、お前は俺に強請ってきたんだよ、「欲しい」って。
まあ、何年も放ったからしにしてたからな…。
高瀬は思い返していた。
頬を紅潮させて乱れていた政行は、俺に言ってきた。
「よ…、し…、欲しい」と…。
政行、俺の政行。
チリリンッ♪
「いらっしゃいませ。あ、あれ?」
「花見弁当3個」
「3個ですか?」
「うん」
「ごめんなさい、1個しか残ってません」
「じゃあ、カレーライスを持ち帰りで」
「メニューに無い事を言わないで下さい」
っとに、無理な事を言ってくるんだから。
そう思ってたら、嘉男さんは言ってくる。
「俺は食べて行けば良いけど、アサミとサガミが腹空かしてるからな」
「お握りなら出来るけど…」
「それなら、二人に聞いとく。俺は食べるから」
「賄いでも良いですか?」
良いよ、と嘉男さんは言いながら店から隣室へと移動している。
堂々と、表から隣室へ移動しないで欲しいな。
賄いを作り、隣室の方へ持って行く。
「昼食ですよ」
「サンキュ。あの二人は食べに出るって言ってた」
「そう。あのね…」
キスされた。
「っ……」
今朝は早出で仕事に行ったので昨夜も求めてこなかった。
それを思い出すと、身体の中が疼く。
「ふ…」
暫らくすると、唇は離れていく。
「政行、顔が真っ赤だ」
「もう…、意地悪っ」
俺は嘉男さんに抱きしめられ、先程まで感じていたイライラ感が薄れていくのが分かる。
「あのね」
「何?」
「博人先生とクリニック・ボスが食べに来てくれたの」
「二人とも食いっぷりが良いからなあ」
「で、明後日あっちに戻るって」
「そうか…、会いたかったな」
「恋人によろしく、って言われたので伝えとく」
「ありがと。あの先生は飲み助だからな。また来てくれるかな」
「クリニック・ボスは日本酒と濁酒しか呑まないみたいだしね」
「ウィスキーも飲みそうな感じだけどな」
「洋酒は苦手だって言われてた」
「へえ、意外な…」
高瀬はシンクの中で聞き耳を立てていた。
政行、そいつの名前は何て言うんだ。
新田…、新田…。
新田、なんだろう…。
ガチャガチャーンッ…!
え、何の音だろう。
もしかして誰かが割った?
そう思うと、音がした方に駆け寄った。
「あ、ごめんなさ…、お皿が落ちて…」
(落ちて?落としたのではないのか?)
「ねえ、グラス足りないんだけど」
「申し訳ございません。すぐ出します」
そう言って自動乾燥機からグラス立てを出す。
横からグラスを一つ取られ、思わず言っていた。
「ちょっとっ、飲み口に指紋を付けないで」
グラス立てをお冷の下にセットして、お客様にこちらからどうぞ、と指し示す。
注文を受けて、それを皿に盛りつけていく。
支払いを済ませて、お客が座り立ち席に座るのだけど、支払う前にテーブルに持って行こうとするのを見て、他の皿に盛り付けて支払いを済ませて貰う。
「どうぞ、こちらの方をお召し上がりください」
「はい」
「ちょっと、勝手な事をしないでっ」
「でも」
「でも、じゃないっ!」と言って、その皿を奪い取り破棄する。
その数分間で、俺の怒りはマックスになった。
「いい加減にしてよねっ!帰って、二度と来るなっ!」
「でも…」
「自分が何をしたか分かってるのか?お皿8枚とお椀を1セット割ったから、弁償してもらう。
合計1万円を持って来て」
「あ、買ってきます」
「買うのは俺。お前は金を持ってくるだけ」
「お兄…」
「俺は一人っ子だ。弟なんて居ない。とっとと1万円を持ってくるんだ」
「でも」
「これ以上、俺を怒らせる気かっ」
「ご、ごめんなさっ…」
そいつは財布から万札を1枚渡してくれるので、領収を切ってやる。
「良いか、二度と来るなっ!」
その後、店先で塩を撒いたのは言うまでもない。
高瀬と利根川は、そんな政行を見て話している。
「ふ…、今のあいつなら継がせても誰も文句は言わんと思うぞ」
「止めてやれよ。あいつは継ぐ気は無いと言ってたぞ」
「何時の話だ?」
「2週間ほど前だ」
「まあ、頑固な所は親子そっくりだな」
「そこは否定しないけどな…」
その苦笑気味に言った高瀬に、利根川は痛い事を突いてきた。
「何シケてんだよ。まさか告って振られたとか?」
「何の事だ?」
「お前はあいつにベタ惚れだったからな。誰が見ても、お前の片思いだと分かるぞ」
ぶっ…。
思わず噴いてしまった。
「そんなに分かるか…?」
「俺は、お前をずっと見てきてるからな。それに、こんな所まで食べに来るなんて、未練を引きずってる証拠だな」
「煩いっ」
それでも、俺は政行を抱いたんだ。
政行は覚えてないみたいだけど。
政行、お前は俺に強請ってきたんだよ、「欲しい」って。
まあ、何年も放ったからしにしてたからな…。
高瀬は思い返していた。
頬を紅潮させて乱れていた政行は、俺に言ってきた。
「よ…、し…、欲しい」と…。
政行、俺の政行。
チリリンッ♪
「いらっしゃいませ。あ、あれ?」
「花見弁当3個」
「3個ですか?」
「うん」
「ごめんなさい、1個しか残ってません」
「じゃあ、カレーライスを持ち帰りで」
「メニューに無い事を言わないで下さい」
っとに、無理な事を言ってくるんだから。
そう思ってたら、嘉男さんは言ってくる。
「俺は食べて行けば良いけど、アサミとサガミが腹空かしてるからな」
「お握りなら出来るけど…」
「それなら、二人に聞いとく。俺は食べるから」
「賄いでも良いですか?」
良いよ、と嘉男さんは言いながら店から隣室へと移動している。
堂々と、表から隣室へ移動しないで欲しいな。
賄いを作り、隣室の方へ持って行く。
「昼食ですよ」
「サンキュ。あの二人は食べに出るって言ってた」
「そう。あのね…」
キスされた。
「っ……」
今朝は早出で仕事に行ったので昨夜も求めてこなかった。
それを思い出すと、身体の中が疼く。
「ふ…」
暫らくすると、唇は離れていく。
「政行、顔が真っ赤だ」
「もう…、意地悪っ」
俺は嘉男さんに抱きしめられ、先程まで感じていたイライラ感が薄れていくのが分かる。
「あのね」
「何?」
「博人先生とクリニック・ボスが食べに来てくれたの」
「二人とも食いっぷりが良いからなあ」
「で、明後日あっちに戻るって」
「そうか…、会いたかったな」
「恋人によろしく、って言われたので伝えとく」
「ありがと。あの先生は飲み助だからな。また来てくれるかな」
「クリニック・ボスは日本酒と濁酒しか呑まないみたいだしね」
「ウィスキーも飲みそうな感じだけどな」
「洋酒は苦手だって言われてた」
「へえ、意外な…」
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新田、なんだろう…。
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