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××男の一日
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「おにいさーん」
呼んでる。
「おにいさーん」
すぐそこから声がする。
「おにいさーん」
……うるさい。
「おにいさーん」
…………。
「おにい――」
「うるさい」
閉じていた目を開くと、目の前に小学生くらいでショートヘアの子供、ユウノが俺のことを見ていた。
「やっと起きた」
「……」
「ん?……ふぎゃ!」
俺は無言で寝ていた身体を起こし、おもむろに目の前の鼻をつまみいじる。
「うるさいんだよ、いつもいつも。起こさなくてもいいって言ってんだろ」
「いいじゃんべつに~」
俺が鼻をつまんでいるせいで、文字通り鼻がつまった声を出すユウノ。
するとユウノの鼻が俺の指から離れていく。
俺はユウノの鼻を放してもいなければ、力を弱めてもいない。
まるでそこにあったものが、触れていたものが、途端に空気にでもなったかのような感覚。
「おにいさんの為にしたことなのに、感謝されるはずが何で怒られる?」
「ありがた迷惑って言葉を学べ」
「なにそれおいしいの?」
とぼけた顔をしているユウノにイラっとした俺は、ユウノの顔めがけて枕を投げつける。
しかし、投げた枕がユウノの顔に当たるはずが、そのまま彼女の顔をすき抜けて後ろの壁に衝突した。
なにも知らない奴が見たら、仰天ものだろうという光景に、俺は動じない。
そうなることを分かっていたし、そうなる理由も分かっている。
だってこいつは、幽霊なのだから。
ユウノは俺が住むアパートの二〇一号室の元住人であり、何年か前にこの部屋で殺された女の子だ。
誰に殺されたか分からない、何故殺されたのか分からない、何故幽霊になっているのか分からない。
分からないことだらけの『幽霊女』。
そんな本人は何が面白かったのか、「はずれー」と言ってキャッキャっと笑っている。
意味がわからない。
俺はユウノを無視して、学校に行くための身支度を始めた。
呼んでる。
「おにいさーん」
すぐそこから声がする。
「おにいさーん」
……うるさい。
「おにいさーん」
…………。
「おにい――」
「うるさい」
閉じていた目を開くと、目の前に小学生くらいでショートヘアの子供、ユウノが俺のことを見ていた。
「やっと起きた」
「……」
「ん?……ふぎゃ!」
俺は無言で寝ていた身体を起こし、おもむろに目の前の鼻をつまみいじる。
「うるさいんだよ、いつもいつも。起こさなくてもいいって言ってんだろ」
「いいじゃんべつに~」
俺が鼻をつまんでいるせいで、文字通り鼻がつまった声を出すユウノ。
するとユウノの鼻が俺の指から離れていく。
俺はユウノの鼻を放してもいなければ、力を弱めてもいない。
まるでそこにあったものが、触れていたものが、途端に空気にでもなったかのような感覚。
「おにいさんの為にしたことなのに、感謝されるはずが何で怒られる?」
「ありがた迷惑って言葉を学べ」
「なにそれおいしいの?」
とぼけた顔をしているユウノにイラっとした俺は、ユウノの顔めがけて枕を投げつける。
しかし、投げた枕がユウノの顔に当たるはずが、そのまま彼女の顔をすき抜けて後ろの壁に衝突した。
なにも知らない奴が見たら、仰天ものだろうという光景に、俺は動じない。
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だってこいつは、幽霊なのだから。
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意味がわからない。
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