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ゴミ女の深夜バイト
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「ありますよ。この町の何処かで写真を撮ると本当にたまーにですけど、小学生ぐらいの女の子の幽霊が写そうなんですよ。場所も時間も関係なしに本当にたまーに。私の友達もスマホで友達と写真撮ったら写ってたって言ってました」
と女子高校生の一人が。
「あるわよ。川を挟んだ向こうにある裏山の奥にね、昔から黒い洋館があってそこで暮らしている女の人がいるんだけど、見惚れるほど美人さんらしいのよ。でもね、聞いた話だとその女の人って何十年経っても顔が変わらなみたいなの。まるで歳をとらないみたいに」
と買い物途中の奥様が。
「あるある。深夜にコンビニに行った時のことなんですけど、途中で変わった人を見かけましたよ。なんかデッカいゴミ箱みたいなのをショッピングカートを押すみたいに運んでて、しかもそれを運んでるのが中学生ぐらいの女の子だったんですよね。なんでこんな時間に女の子があんなものを運んでるんだろうって疑問に思ったんですけど、結局話しかけたりはしませんでしたね。深夜ってこともあって僕もちょっとビクビクしてましたし」
と大学生の男性が。
「あるぞ。駅前近くでやっとる赤目の占い師に未来を占ってもらうと助言を貰えるんじゃ。儂はその助言のお陰で事故を回避することができた。今日まで生きることができておるのはその助言のおかげじゃ。お主も一度占ってもらうといいかもしれんぞ」
と公園で休むお爺さんが。
「そうっすね。前に先輩に変なこと聞いたんですけど、何か知りたいことがあったら情報屋の『MANA』に聞けって言われましたね。なんでも交渉次第で知りたい情報をまるまる教えてくれるらしいです。例えば嫌いなクラスメイトの秘密とか好きな女の子のバストサイズとか。それこそ、記者さんの個人情報でも教えてくれるんじゃないですか?」
と部活帰りの男子高校生が。
他にも色々あったが、話を聞いて私が特に興味を持ったものがこれらだった。
「……アンビリーバボー」
私はあまりの驚異なことに、口に出した言葉がそれである。
まさか、この町にこんなにもの不思議や噂があったなんて思いもしなかった。もしも『神残し』という事件が起こっていなければ、私はこの町を知ることはなかっただろう、来ようとも思わなかっただろう、記憶にも残ってもいなかっただろう。
それだけ、普通で特に代わり映えのないどこにでもあるような町だと、私は思っていた。
しかし、実際は違った。私の考えが浅はかだった。
この町は、普通ではあり得ないような数の不思議を持っていた。一つの町にこれだけの不思議が存在するなんて、有り得るのだろうか。
これまで私が調査、聞き込み、足を運んだところにも、これだけの不思議と噂を持った場所は他にない。
約二〇年間、私はオカルトや超常現象などを調べに調べてきた。未だに全てを知ることができない、尽きることのない、飽きることのない、この世の不思議に触れてきた。だが、ここまで強く心を惹かれ、そそられ、掻き立てられるのは、私がオカルトに向かって走る第一歩目を踏み出した時以来だろう。
私の心はたった一日で、すでに『神残し』という事件よりもこの町の不思議や噂について調査、検証をしてみたいという願望に傾いてしまっていた。
私がこの町に『神残し』についての調査に来て、五日が過ぎた。この五日間で、私は自分の欲を抑えつつ、本来の目的から脱線しないように、『神残し』についての聞き込みや考察などを続けていた。
まるで進展がなかった聞き込みでは、『神残し』の犠牲者である親族や友人、知り合いなどに話を聞けたおかげで、犠牲者の性格や人柄、行方不明になるまでの行動についていくつか知ることができた。そして、五日間で集めた情報から私は考察を始めた。
まず私が調べたことは、犠牲者達に何か共通点のようなものがないかである。何か共通点があれば、犠牲者達が『神残し』に遭った原因がなんなのか分かるのではないかと考えたのだ。しかし、その考えは見事な空振りだった。犠牲者達はそれぞれ、年齢も性別も性格も人柄も見た目も過去の経歴も、全くと言っていいほど共通点がなかった。
次に調べたのは、犠牲者が『神残し』に遭った場所であろう『血の現場』のそれぞれに何か関連性がないかである。何か関連性があるのならば、それから次に『神残し』が起こるだろう場所を特定できるかもしれないから。だが、『血の現場』が起こった場所は様々で、特に関連性というものは見つけられず、あえて言うならば、何処もあまり人が寄り付かない場所で人通りが少ないということぐらいだった。
人が寄り付かず、人通りが少ない場所なんて、探せばいくらである。つまり、次に起こるであろう『神残し』の現場を特定することは難しいということだ。
それから集めた情報から色々考えを出していったが、唯一めぼしい共通点、関連性が見つけられたのは『神残し』が起こったであろう時間帯だけだった。
私は聞き込みで『血の現場』を発見したという二人の人物から、その時のことについて詳しく話を聞いたのである。そして、二人の話から『神残し』が起こるのは草木も眠るという真夜中の時間帯であると、私は予想ができた。
『血の現場』を発見した二人は、発見した『血の現場』は別々の場所だったが、二人とも『血の現場』となる前のその場を前日からその目で確認しており、その次の日にそこが血で染まっていたことに驚いたと話していた。たった二つだけの証言だが、犠牲者が『神残し』に遭った時間帯が真夜中であるというこの予想は、間違っていなだろうと私は思っている。
それから、考察をとりあえず切り上げた私は、考察したことを記事として書き上げた。これで、私はこの街に来た目的を一応で終えた。だが、ホテルの宿泊日にちはまだ少しだけ残っている。余った時間をどう過ごすかは、仕事を終えた私の自由である。
外はもう暗く、夕食の時間帯。私はホテルの一階にあるレストランで食事を済ませていた。
レストランの雰囲気は落ち着いた感じだが、重苦しいことはなく、リラックスするには十分な場所だ。もしも私が誰かと一緒にいたならば気軽におしゃべりにでも興じていただろう。
もしもここに、『神残し』について一緒に調べたいと言った若葉君がいたら、そのことについて色々話し合ったに違いない。私は食後のデザートに頼んだいちごショートケーキを眺めながら、そう思う。
『神残し』について調べるのは楽しかった。それも正直な気持ちである。私は一口大にに取ったケーキを口に運んで、今日までの五日間を思い出し感慨にふける。
――しかし、私の心の中では他に「やっと終わった」という気持ちもあった。
やっと、やっと、この町の不思議や噂について調査をすることができる。この五日間、我慢するのが大変だった。チラリと出てくる願望を抑えるのが大変だった。だけど、もう我慢しなくていい。
明日からはさっそく、この町にある不思議や噂について調査しに行こう、この身でそれを味わっていこう。
私はお皿に残る最後の苺を見ながら、胸を踏ませる。
苺のショートに乗っている苺を初めに食べるか、最後に食べるか。いつもなら、そんなどうでもいいことは考えないで食べてしまう苺だが、私は今、その苺を最後に食べる人の気持ちが分かったような気がした。
と女子高校生の一人が。
「あるわよ。川を挟んだ向こうにある裏山の奥にね、昔から黒い洋館があってそこで暮らしている女の人がいるんだけど、見惚れるほど美人さんらしいのよ。でもね、聞いた話だとその女の人って何十年経っても顔が変わらなみたいなの。まるで歳をとらないみたいに」
と買い物途中の奥様が。
「あるある。深夜にコンビニに行った時のことなんですけど、途中で変わった人を見かけましたよ。なんかデッカいゴミ箱みたいなのをショッピングカートを押すみたいに運んでて、しかもそれを運んでるのが中学生ぐらいの女の子だったんですよね。なんでこんな時間に女の子があんなものを運んでるんだろうって疑問に思ったんですけど、結局話しかけたりはしませんでしたね。深夜ってこともあって僕もちょっとビクビクしてましたし」
と大学生の男性が。
「あるぞ。駅前近くでやっとる赤目の占い師に未来を占ってもらうと助言を貰えるんじゃ。儂はその助言のお陰で事故を回避することができた。今日まで生きることができておるのはその助言のおかげじゃ。お主も一度占ってもらうといいかもしれんぞ」
と公園で休むお爺さんが。
「そうっすね。前に先輩に変なこと聞いたんですけど、何か知りたいことがあったら情報屋の『MANA』に聞けって言われましたね。なんでも交渉次第で知りたい情報をまるまる教えてくれるらしいです。例えば嫌いなクラスメイトの秘密とか好きな女の子のバストサイズとか。それこそ、記者さんの個人情報でも教えてくれるんじゃないですか?」
と部活帰りの男子高校生が。
他にも色々あったが、話を聞いて私が特に興味を持ったものがこれらだった。
「……アンビリーバボー」
私はあまりの驚異なことに、口に出した言葉がそれである。
まさか、この町にこんなにもの不思議や噂があったなんて思いもしなかった。もしも『神残し』という事件が起こっていなければ、私はこの町を知ることはなかっただろう、来ようとも思わなかっただろう、記憶にも残ってもいなかっただろう。
それだけ、普通で特に代わり映えのないどこにでもあるような町だと、私は思っていた。
しかし、実際は違った。私の考えが浅はかだった。
この町は、普通ではあり得ないような数の不思議を持っていた。一つの町にこれだけの不思議が存在するなんて、有り得るのだろうか。
これまで私が調査、聞き込み、足を運んだところにも、これだけの不思議と噂を持った場所は他にない。
約二〇年間、私はオカルトや超常現象などを調べに調べてきた。未だに全てを知ることができない、尽きることのない、飽きることのない、この世の不思議に触れてきた。だが、ここまで強く心を惹かれ、そそられ、掻き立てられるのは、私がオカルトに向かって走る第一歩目を踏み出した時以来だろう。
私の心はたった一日で、すでに『神残し』という事件よりもこの町の不思議や噂について調査、検証をしてみたいという願望に傾いてしまっていた。
私がこの町に『神残し』についての調査に来て、五日が過ぎた。この五日間で、私は自分の欲を抑えつつ、本来の目的から脱線しないように、『神残し』についての聞き込みや考察などを続けていた。
まるで進展がなかった聞き込みでは、『神残し』の犠牲者である親族や友人、知り合いなどに話を聞けたおかげで、犠牲者の性格や人柄、行方不明になるまでの行動についていくつか知ることができた。そして、五日間で集めた情報から私は考察を始めた。
まず私が調べたことは、犠牲者達に何か共通点のようなものがないかである。何か共通点があれば、犠牲者達が『神残し』に遭った原因がなんなのか分かるのではないかと考えたのだ。しかし、その考えは見事な空振りだった。犠牲者達はそれぞれ、年齢も性別も性格も人柄も見た目も過去の経歴も、全くと言っていいほど共通点がなかった。
次に調べたのは、犠牲者が『神残し』に遭った場所であろう『血の現場』のそれぞれに何か関連性がないかである。何か関連性があるのならば、それから次に『神残し』が起こるだろう場所を特定できるかもしれないから。だが、『血の現場』が起こった場所は様々で、特に関連性というものは見つけられず、あえて言うならば、何処もあまり人が寄り付かない場所で人通りが少ないということぐらいだった。
人が寄り付かず、人通りが少ない場所なんて、探せばいくらである。つまり、次に起こるであろう『神残し』の現場を特定することは難しいということだ。
それから集めた情報から色々考えを出していったが、唯一めぼしい共通点、関連性が見つけられたのは『神残し』が起こったであろう時間帯だけだった。
私は聞き込みで『血の現場』を発見したという二人の人物から、その時のことについて詳しく話を聞いたのである。そして、二人の話から『神残し』が起こるのは草木も眠るという真夜中の時間帯であると、私は予想ができた。
『血の現場』を発見した二人は、発見した『血の現場』は別々の場所だったが、二人とも『血の現場』となる前のその場を前日からその目で確認しており、その次の日にそこが血で染まっていたことに驚いたと話していた。たった二つだけの証言だが、犠牲者が『神残し』に遭った時間帯が真夜中であるというこの予想は、間違っていなだろうと私は思っている。
それから、考察をとりあえず切り上げた私は、考察したことを記事として書き上げた。これで、私はこの街に来た目的を一応で終えた。だが、ホテルの宿泊日にちはまだ少しだけ残っている。余った時間をどう過ごすかは、仕事を終えた私の自由である。
外はもう暗く、夕食の時間帯。私はホテルの一階にあるレストランで食事を済ませていた。
レストランの雰囲気は落ち着いた感じだが、重苦しいことはなく、リラックスするには十分な場所だ。もしも私が誰かと一緒にいたならば気軽におしゃべりにでも興じていただろう。
もしもここに、『神残し』について一緒に調べたいと言った若葉君がいたら、そのことについて色々話し合ったに違いない。私は食後のデザートに頼んだいちごショートケーキを眺めながら、そう思う。
『神残し』について調べるのは楽しかった。それも正直な気持ちである。私は一口大にに取ったケーキを口に運んで、今日までの五日間を思い出し感慨にふける。
――しかし、私の心の中では他に「やっと終わった」という気持ちもあった。
やっと、やっと、この町の不思議や噂について調査をすることができる。この五日間、我慢するのが大変だった。チラリと出てくる願望を抑えるのが大変だった。だけど、もう我慢しなくていい。
明日からはさっそく、この町にある不思議や噂について調査しに行こう、この身でそれを味わっていこう。
私はお皿に残る最後の苺を見ながら、胸を踏ませる。
苺のショートに乗っている苺を初めに食べるか、最後に食べるか。いつもなら、そんなどうでもいいことは考えないで食べてしまう苺だが、私は今、その苺を最後に食べる人の気持ちが分かったような気がした。
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