人間ドリンクサーバー ~エマ喫茶へようこそ~【完結】

まむら

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閑話3 世話係たちの一日

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エマ喫茶のオープン当初から彼らはいた。
 
とても働き者で、エマの指示に従い、人間ドリンクサーバーたちの世話をしている。
 
彼らは毎日エマ喫茶で働いており、エマと同様、容姿は変わらず昔の儘、謎多き人物たちである。
 
世話係たちは休日、一体何をして過ごしているのだろうか。
 
彼らもまた寮の中で生活をしているらしいが、部屋の場所や起床時間、食事など、人間ドリンクサーバーの皆は誰も彼らの行動を知らない。
 
静かなエマ喫茶の店内の一角に彼らはいた。何やらゴソゴソとしており、ガタンガタンと物音がしたり、金属音がしたりして騒がしい。
 
世話係の誰かが声を出した。
 
「あ、そこもう少し狭くした方がいいッス。昨日ルカが腰が痛いって言ってたッスよ。多分しっかり腰が固定されてないのかもしれないッス」
「それは大変です!!腰は命ですからね!!すぐに直しましょう!!」
 
ゴリゴリゴリゴリッ、ギュイイイイインッ!!
 
カンカンカンッ、トントントンッ、ギチギチギチッ
 
現在、彼らは皆で人間ドリンクサーバーの入るボックスを修理しており、体の固定部分や位置などを修理しているようだ。
 
人間ドリンクサーバーはそれぞれ専用のボックスを所有しており、担当するドリンクやスープなどの種類によってボックス内の装置も違う。
 
そのため、体を傷めないための定期的な修理が必要なのだ。
 
「レストさんの練習用のイスの補修終わった~?」
「まだッス、先にあっちのボックスの修理が待ってるッス~っ」
「は~い」
 
皆、大工のような恰好をしてノコギリやトンカチを持って作業している。あまりにも忙しいため、休日になれば世話係の皆はこうして修理に追われているようだ。
 
ボックスの中では人間ドリンクサーバーたちが必死に仕事をしているため、世話係は怪我をしないように念入りに修理をしている。
 
少しのズレやミスが命に関わることもあるため、忙しかろうが決して手は抜かない。
 
「皆さん、休憩しましょう。おやつを持ってきましたよ」
「あ、エマさ~ん」
「嬉しいッス!!」
「クッキーですね!!」
 
店主のエマがやってきて彼らに休憩するように言う。エマは美味しそうな菓子を手に、ニコリと笑いながら立っている。
 
世話係たちはワイワイと普段は客が使っている椅子に腰かけ、テーブルに並べられた菓子を見て、目をキラキラと光らせている。
 
エマは彼らにコーヒーを入れてゆく。
 
「いつも修理をしていただいてすみません。ボックスは彼らの仕事道具なのでメンテナンスしておかなければ大変なことになりますから」
「いえいえ~、これも僕たちの仕事で~す」
「そうッス」
「気にしないでください!!」
 
世話係はエマの差し入れのお菓子を頬張りながら、ギンッと頼もしい顔をしてエマに言った。
 
エマはニイッと笑い、世話係たちを見る。
 
「それにしても最近はお客様も増えて、あなたたちも楽しく過ごせているようで何よりです」
 
そう言われ、世話係たちの顔がエマのように怪しげにニイッと笑った。その笑みはほんの一瞬で、彼らは普段の可愛らしい笑顔に戻り、エマを見て嬉しそうに言う。
 
「人間ドリンクサーバーの皆さんの活躍はとても素晴らしいです!!」
「そうで~す」
「苦しそうに悶えながらドリンクを振り絞る姿は、鬼気迫るモノを感じるッス」
「そうですか。それは良いコトです」
 
エマは世話係と一緒に菓子を食べながら、話をしている。世話係たちは興奮したように身を乗り出し、最近の出来事を伝えていく。
 
「レストさんのリハビリは順調に進んでます!!昨日は膀胱タンクに刺激を与えて我慢をするリハビリをしましたが、漏らす回数が減りました!!もう少し長い時間我慢出来れば問題ないと思います!!」
「それはそれは。彼は後遺症に悩んでいましたから、いずれは復帰できるようになるでしょうね」
 
レストは客へのドリンクの提供中に、連続アクメをしてしまう後遺症に悩み、現在は休職してリハビリに励んでいる。
 
週に一回だったリハビリでは追いつかなかったため、毎日のようにリハビリをしていたこともあり、かなり回復したようだ。
 
エマはうんうんと頷きながらコーヒーを飲んだ。
 
「カエンさんはちょっと最近、潮吹きのし過ぎで失禁癖が付いてしまってるみたいッス」
「おや、それは困りました。彼は塩分担当の大切な従業員ですからね」
「漏らしそうになると内股になって震えてるッス」
「そうでしたか。お漏らしが癖になる前に訓練させる必要がありそうですね」
「僕もそう思うッス」
 
腕を組みながらエマは少し考えるように目を閉じた。今後のレストの仕事をどうするか決めているようだ。
 
今度は別の世話係がエマに話をする。
 
「そうでした!!そう言えば昨日、パウロさんが連続スパンキングされ過ぎて、消毒液が止まらなくなって大変でした!!」
「おや、それは大変でしたね。それで、どうなりましたか?」
「どうしても止まらないので一度尿道口に栓をしました!!パウロさんが苦しそうにガニ股で腰を振っていたので、訓練ルームに連れて行って寝かせておきました!!」
 
パウロは時々消毒液が止まらなくなることがあるらしく、そうなってしまうとパウロ自身、どうすることもできなくなってしまう。
 
仕方なく、世話係はパウロを訓練ルームに連れて行き、症状が治まるまで放置するしかない。その間、誰かが消毒液の代わりをする。
 
エマは誰が変わりをしたのか尋ねてみた。
 
「パウロの代わりは誰が勤めましたか?」
「アヤセさんです!!」
「ああ、彼ならしっかり消毒液をお客様に提供できますね」
「完璧でした!!」
「それは良かったです」
 
人間ドリンクサーバーたちは皆、お互い助け合って仕事をしている。それも全てはエマという素晴らしい店主がいるからこそ、皆は力を合わせて働くことができるのだ。
 
世話係もまた、人間ドリンクサーバーには欠かせない従業員だ。彼らがいなければ人間ドリンクサーバーとなっても客にドリンクを提供することができない。
 
皆が心を一つにすることで、エマ喫茶は営業することが可能となるのだ。
 
これからもきっと人間ドリンクサーバーは増えることだろう。世間から受け入れられず、彷徨う彼らに手を差し伸ばし、エマは怪しげに笑うのだ。
 
そして世話係たちも同じく、エマに従い、人間ドリンクサーバーの世話をする。
 
エマと世話係たちはニコッと同じ顔をして笑い、怪しげに目を細めた。
 
明日もまた、エマ喫茶はいつものように営業していることだろう。
 
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