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6.DISOBEDIENCE

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桐原はなかば挑戦的な気持ちで犬飼の反応をうかがった。
反抗的な態度に、このDOMはどうするのか。 
怒り出すかもしれないが、それでもかまわない。予定通り、犬飼とはパートナーになりたくないと言うだけだ。

だが犬飼は微笑んだ。

「…ほんと桐原さんってたまらない感じですね。素直に俺の足元に座るのは嫌なんだ。でもそんなとことてもまあ、あなたらしいですよね…GOODそれでいいです

犬飼が示した理解と肯定。
それに張り詰めた心が、ゆるりと溶け出す。それとともに何度も強いグレアを注がれたのを感じ、桐原はその心地よさに身を委ねた。

グレアが強すぎて、免疫のない桐原の身体は苦しい。
だが、それがよくてたまらなくなってしまう。
許容用いっぱいになり、桐原は喘ぎ、呟いた。

「…イヤだ…」

「嫌なんですか?ずいぶん気持ちよさそうなのに。どうしたらイイのか、ちゃんと言ってください。SAY言って

「気持ち、いい…でも」

SAY言って

グレアで溶かされ、コマンドに口を開かされ、桐原はうかされたように本音を吐露してしまった。

「やめてくれ。…俺は、誰にも…何にも、従いたくなんてない」

グレアが止まり、桐原の意識は急に現実に引戻される。
長い沈黙がおりた。
ふわふわした頭のつむじを眺めながら、桐原は犬飼の興がそがれてプレイはこれで終了となるのだろうかと思い始めた頃、犬飼のくせに似合わぬ真面目な声がふってきた。

「そんな固く考えることないじゃないですか。だって、ダイナミクスを持ってる人は皆こうやって発散してるんですから、恥ずかしくもないし、必要なことです。セックスと一緒ですよ。皆してることです」

理屈ではわかっているし、どうせ最後には受け入れざるを得ないことはわかっている。
それと快く受けいられるのはまた別の話だ。

「わかってる…」

「嫌そうですね…でも、桐原さんがSUBなのは変えられなくて、これからもプレイする必要あるんですよ」

「受けいれなきゃいけないのは、言われないでもわかってる!」

犬飼はじっと桐原を見た。
ため息をつくが、先程よりまなざしは、優しく柔らかかった。

「まあ受け入れたくない気持ちもわかりますよ。DOMだって葛藤ないわけじゃないですから」

「お前に俺の気持ちなんてわかるわけない」

ほんとうは。
一番嫌なのは従うことではなくて、一人で生きれるよう努力してきたつもりなのに、SUBだからというだけで価値観を覆され、いきなり生き方を変えさせられることが、悔しくて許せない。

「まあいいです。じゃあ、せめて安心してプレイできるようにしてあげます…『DISOBEDIENCE』」

「……なんだって?」

聞き慣れない言葉を、犬飼はコマンドとして桐原に向けた。 

DISOBEDIENCE不服従

一瞬、認識できなかったコマンドに、桐原は戸惑ったが、犬飼は再度ゆっくりと繰り返した。
 
DISOBEDIENCE不服従。プレイ中に嫌なことは、コマンドに従わないでもいいっていう意味です」

「…嫌なことは従わなくていい?」

桐原は半信半疑でその言葉を反芻した。

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