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23.一服もられる

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産声が聞こえた瞬間、俺は思わず涙ぐんだ。
奥さん・・・だった人の目にも涙が浮かんでいたと思う。

世界で一番幸せだと思った瞬間だった。
新しい命の誕生と、それから生きながら余生を送っていた俺の人生に、改めて意味が生れた瞬間。

「名前、決めてるんだ。蓮って、どうかな」

生まれたての赤ちゃんを抱いて、妻は小首をかしげた。
疲れている様子だったが、彼女はとても美しく見えた。
美しい光景だった。

「蓮?」

「蓮の花はさ、泥の中から綺麗な花を咲かせるんだ。これから人生できっと色々大変なことが起こるかもしれないけれど、それを糧にしっかり生きて欲しいなあって・・・思って・・・」

「ーーいいと思う!かっこいいし、綺麗な名前」

じっと見られて、思わず言葉尻が小さくなってしまう。
妻は笑顔になり、賛同してくれた。

ーー元気に、幸せに育ちますように。

前の人生の分も。

そう俺は心の中で語りかけた。





そんな蓮の産まれた時のことを思い出しながら、俺は勇気をふりしぼって口を開いた。

ちゃんと話せばわかってくれるはず。

二人で日本に帰ってこちらと関わりをもたないと約束してかえしてもらえるように協力してもらおう!
もう結婚とか、元勇者とか、アイドルとかこりごりだ。

「・・・魔王の城に行ったときーー」

話しはじめた時、急に呂律がまわらなくなった。

「えっ・・・と・・・?」

どっと汗が出てきた。

「クロエ?」

「……魔王の城についた時、俺-----」

…と続けたつもりだったが、完全に言葉が怪しかったらしい。

「おい、大丈夫か?」

「大、丈、夫……。……じゃないかも。なんか…」

発熱。
発汗。
動悸が。
 
つまり、これは恋。

…のわけはない!!
 
その証拠に下腹がじくしくと熱を持っている。
微かに反応しかけている下半身を隠すために俺は少し前傾した。

(おかしい)

今、烈情を引き起こすようなことはなかったはずなのに、藪から棒に興奮している。
性的に。

記憶を反芻して、俺は一つの結論に至った。

おかしくなったのは用意された菓子を食べてからだ。
多分、ユーシスに媚薬かなんか一服もられたに違いない。
食べものも安心して食えないのか、この世界はっ!

「多分、食べもの物になにかに…」

「---毒!?」

「じゃなくて」

言うのは恥ずかしいから察して欲しい。
ハアハア荒い息をついて見ているとハリーははっとしたように赤面した。
そういえばステータスが見れるんでした。

何もしていないのに下肢からぞわぞわと快感があがってくる。
発作的な快感の山がくると、頭が焼き切れるようになり何も考えられなくて、俺はテーブルに突っ伏した。

「クロエ!?」

「俺、やばいかも。はりー…たすけて……」

欲情にうかされるように、俺は呟いていた。


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