ユルサレタイ紫〈死〉

 人は許されたい生き物だ。
 自分のしてきたこと、自分の存在、世に人に許されること、
 それがたぶん、明日を実感させている。

 遭遇する不思議話に首をつっこんだり巻きこまれたりするうちに、
 なにもかもから赦されたいと願っていることに気づく。
 ――古代中華奇話



《あらすじ》

「あたしね……もうずっと、何年も、明日になった感じがしなかった」
 息苦しい今日を繰り返すだけの人生だった。

 人を殺した罪ゆえに、
 いつどこで野垂れ死んでもいいと投げやりだったそれなりの歳の女が、
 行き場がなく途方に暮れている子供と暮らし、
 地獄からの追っ手にしつこく絡まれているうちに、
 自虐的な言動は周りの者を傷つけるのだと学んでいく。

 迷える大人達がちょっとずつ成(助)長していく――かもしれないコンパクトな連作。



《登場人物》

莫扶霊(ばく・ふれい)
鬼憑き。その影響で双眸が年々、紫色に変色していく。紫眼のせいで両親に忌み嫌われて育った。現在は国都で凶宅と噂されている事故物件を購入し、庶人に読み書きを教えながらひっそりとスローライフ中。

虞宇月(ぐ・うげつ)
隙間時間の副業として地獄に仕えている。本業は別。頭が良すぎるために先が見えすぎてなにもしないタイプ。生きることをムダに感じている安っぽい虚無思想のもち主だったが、扶霊を追いかけているうちに、とんでもないコトを思いつく。

迅琳(じん・りん)
国都の邸で扶霊と暮らしている少女。おっとりした雰囲気で、見た目はとてもかわいらしい。

裴無恭(はい・むきょう)
迅琳の友人・豈華の、三番目の兄。禁軍付き軍吏。結婚していたが何事にも欲のないところを嫌われて夫人に捨てられた。まさに独身貴族。迅琳好きーのロリコン(なのか?)

魏斯義(ぎ・しぎ)
邸店の店主。えらい童顔で二十歳くらいにしか見えない。扶霊を許婚だと(勝手に)想ってがんばっている。打たれ強く心は折れない、逆境にあってこそ本領を発揮する男。

24h.ポイント 0pt
0
小説 195,583 位 / 195,583件 ファンタジー 45,174 位 / 45,174件

あなたにおすすめの小説

天地狭間の虚ろ

碧井永
ファンタジー
「なんというか、虚しい」それでも――  天と地の狭間を突き進む、硬派中華ファンタジー。 《あらすじ》  鼎国(ていこく)は伝説の上に成り立っている。  また、鼎国内には鬼(き)が棲んでいる。  黎王朝大統二年十月、それは起こった。  鬼を統べる冥界の王が突如、朝議の場に出現し、時の皇帝にひとつの要求を突きつける。 「我が欲するは花嫁」  冥王が、人の花嫁を欲したのだ。  しかし皇帝には、求められた花嫁を譲れない事情があった。  冥王にも譲れない事情がある。  攻防の末、冥王が提案する。 「我の歳を当ててみよ」  言い当てられたら彼女を諦める、と。  冥王は鬼であり、鬼は己のことは語らない。鬼の年齢など、謎そのもの。  なんの前触れもなく謎解きに挑戦することになった皇帝は、答えを導きださねばならず――。  朝廷がぶちあたった前代未聞の不思議話。  停滞する黎王朝(れいおうちょう)に、新たな風が吹き抜ける。 《国と中央機関》 ① 国名は、鼎(てい)。鼎国の皇都は、天延(てんえん)。 ② 現在、鼎国を統治しているのは黎家(れいけ)であり、黎王朝では二省六部を、史館(しかん)と貴族院の一館一院が支える政治体制をとっている。 ③ 皇帝直属の近衛軍を神策軍(しんさくぐん)という。 ④ これらの組織とは別に、黎家を護る三つの家・護三家(ごさんけ)がある。琉(りゅう)、環(かん)、瑶(よう)の護三家はそれぞれ異能を駆使できる。 《人物紹介》 凛丹緋(りん・たんひ) 美人だが、家族から疎まれて育ったために性格の暗さが顔に異様な翳をつくっている。人を寄せつけないところがある。後宮で夫人三妃の選別のため、采女として入宮したばかり。 黎緋逸(れい・ひいつ) 見たものが真実であるという、現実主義の皇帝。 凶相といえるほどの三白眼(さんぱくがん)をもつ。 黎蒼呉(れい・そうご) 緋逸の実弟。流罪となり、南の地で暮らしている。恋魔(れんま)とあだ名されるほど女癖が悪い。多くの文官武官から見下されている。 黎紫苑(れい・しおん) 緋逸の異母弟。これといった特徴のない人。皇帝の異母弟ということもあり、半ば忘れ去られた存在。詩が好き。 崔美信(さい・びしん) 殿中監。殿中省は皇帝の身辺の世話だけでなく、後宮の一切合財を取り仕切る。まだまだ男社会の中でとくに貴族の男を見下している。皇帝相手でも容赦ナイ。 環豈華(かん・がいか) 美信によって選ばれ、丹緋付きの侍女となる。見鬼の能力を有する環家の出だが、無能。いらない存在だった身の上が、丹緋との距離を近づける。

術師たちの沈黙

碧井永
ファンタジー
《全27話の短編連作》  術師たちが沈黙することで市井の小事件が謎になる――古代中華奇話

花魔女とリグレット~あなたの未練、解消します~

雨ノ川からもも
ファンタジー
 消えたい――  満月の夜、そう願ったわたしの前に現れたのは、不思議なクラスメイトだった。  自らを魔女と称する彼女は、願いを叶える代わりに、花魔女見習いとして、この世にとどまる亡者の魂の未練を解消する仕事を手伝ってほしいという。  半信半疑で引き受けたわたしを待っていたのは、個性豊かな亡者たちで……  生きることに疲れたあなたへ贈る、ファンタジーヒューマンドラマ。  ※他サイトにも掲載中。

後宮の代筆女官は恋を騙る

春乃ヨイ
恋愛
後宮に勤める女官の紫燕は、その文章の才と筆跡模写の能力で妃や宮女たちの恋文の代筆を請け負っていた。しかし、彼女が代筆した手紙がきっかけとなり、妃同士の諍いを引き起こしてしまう。その渦中、紫燕は皇帝の秘書官である文瑜に突如呼び出され、政敵の情報を集めるために偽の恋文を書くよう命じられる。飄々として掴みどころのない文瑜の態度に苛立ちを覚える紫燕だったが、彼の過去に隠された真実と不器用な想いに触れる中で、徐々に心を動かされていく。「嘘」が織りなす中華後宮ファンタジー。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

何か勝手に逆ハーレム(2/25更新)

狂言巡
恋愛
逆ハーレム展開が来たりそれを蚊帳の外から眺めたりする短編集です。

蛍地獄奇譚

玉楼二千佳
ライト文芸
地獄の門番が何者かに襲われ、妖怪達が人間界に解き放たれた。閻魔大王は、我が次男蛍を人間界に下界させ、蛍は三吉をお供に調査を開始する。蛍は絢詩野学園の生徒として、潜伏する。そこで、人間の少女なずなと出逢う。 蛍となずな。決して出逢うことのなかった二人が出逢った時、運命の歯車は動き始める…。 *表紙のイラストは鯛飯好様から頂きました。 著作権は鯛飯好様にあります。無断転載厳禁

神様!僕の邪魔をしないで下さい

縁 遊
ファンタジー
可愛い嫁をもらいラブラブな新婚生活を予想していたのに…実際は王位を巡る争いやら神様とのケンカやらいろいろあり嫁との時間が取れない毎日。 誰か僕に嫁と2人で過ごせる時間をください! そう思いながら毎日を過ごしている王子のお話です。 ※この物語は『神様!モフモフに囲まれる生活を希望しましたが自分がモフモフになるなんて聞いていません』のスピンオフです。

処理中です...