13 / 24
深悔marine blue.
魔法大会 開催
しおりを挟むあれから数日が経って魔法大会当日。
主催しているという学園の研究員達、招待されたという政府の偉い人たちに存命している生徒の親や参加しない生徒達が観覧席に座って擂乃神学園は最高の盛り上がりを見せているそんな様子を何故か魔法大会に出場する事になった俺は、闘技場の様な建物の控え室にあるモニターで眺めていた。
数日間前に出場する事を決めた勇樹と直季以外にも、同じく出場するらしい尋希と奏もモニター越しに会場の盛り上がりを眺めていて、その様子を見ながら尋希と勇樹が口を開き始める。
「去年も思いましたけど、わざわざこの魔法大会の為だけにこの闘技場を作るなんてこの学園の理事長ってとんでもなく金持ちですよねー」
「まぁな。金持ちの考えることはよく分かんねぇよ」
そんな会話を横目に眺めていると、モニター越しに開会式が始まったらしく、会場は更に盛り上がっていた。
擂乃神学園の学園長による開会宣言の後に学園の女性教師の一人が魔法大会のルールの説明を始める。
その一。魔法大会は予め決まっているチームに別れ、それぞれのチームは五名を二年生から三年生を希望者を優先的に選抜し、試合は一対一で戦う。
その二。対戦相手は試合が始まる直前にくじ引きにてランダムにて決まる。
その三。試合に出る生徒は会場に出る前に待機している教師からリボンを受け取り、そのリボンを腕に結ぶこと。
その四。試合開始後、相手がつけているリボンを先に手に取った者の勝ちとなる。
その五。魔法大会と銘打っているが、リボンさえ相手から奪うことが出来るなら魔法を使用しなくてもいい。
その六。骨折などの大きな怪我を相手にさせた場合はその場で怪我をさせた方が失格となる。
その七。試合開始後、選手達は棄権する権利を持っている。しかしその場合は相手の勝利となる。
その八。試合形式はトーナメント式であること。
以上が改めて説明された魔法大会のルールで、肝心のチームは全部で四チーム。分け方は単純にクラス順の様で、俺達は赤チームとなっており、最初の対戦チームは青チームとなるだろう、と勇樹が口を開く。
続けて「どんな奴が相手でもオレが必ず一勝は取ってみせっから、んなに緊張とかすんなよ」と俺達に激励を送った。
「凄い自信があるんだな」
「ん。まぁこればっかりはな。オレの数多い長所の一つだぜ」
「勇樹先輩ってそういや去年も出てたって言ってましたね。残念ながら僕は去年は体調を崩してたので見れてないんですけど」
「そうなのかい?なら、楽しみにしてると良いよねぇ。勇樹くんの魔法はかっこいいからねぇ」
「本当ですかぁ?言っときますけど僕ぁ、そういう審美眼は肥えてるんですよねぇ。ね、奏」
尋希が茶化しながらずっと無言でモニターを睨みつけている奏に話しかけるも、奏は心ここにあらずで。
「まぁた無視ですか。無視っていうか聞こえてないか。聞いてくださいよ兄さん、海で溺れて退院してから奏ずっとこんな様子なんですよー。僕嫌われてるんですかねー。脇腹つついたら流石に気づきますかね。どう思います?」
そう言いながら両手の指ををわきわきと動かしながら奏の脇腹に手を伸ばす尋希に、直季が苦笑いしながら「きっと怒られるから辞めておきなよねぇ」と静止をかけた。
「お前ら、じゃれてねぇでモニターの方に集中しろよ。そろそろくじ引きが始まるぜ」
勇樹に言われて尋希と直季は同時に返事をすると椅子に座り治してモニターに集中する。
俺もモニターを見てみると、司会の教師が赤い箱と青い箱の中にそれぞれ手を入れて一枚ずつ折りたたまれた紙を手に取った。
教師はそれを開けてモニターに映るようにカメラの前に広げた。
そして肝心の紙に書かれている名前は。
「あらら、だねぇ。一番手なんてツイてないよねぇ」
「逆にツイてんだろ。一番手がお前なんてよ。オレはともかく、尋希と奏は二年で初出場だし、間乃尋に至っては魔法大会初めてだぜ」
「それもそうかねぇ。まぁ勝ちは期待しないでよねぇ」
選ばれた直季はそう言いながら笑顔で控え室から去っていく。
しばらくすればモニターに見慣れた緑髪の小さい少年が映される。左腕には赤いリボンが結ばれている。
同時に直季の対戦相手らしき男子生徒も現れる。
『あれ?おれの対戦相手って三年生って聞いてたんだけど。小学生は魔法大会出ちゃいけないんじゃ?』
魔法大会を映し出しているカメラはどうやら音声を完璧に拾えるらしく、対戦相手の少年が若干小馬鹿にしたように言う。
それに対して直季はいつものにこにことした笑顔で『よろしく、だよねぇ。こんな見た目だけど一応三年生なんだよねぇ』と挨拶をするも、相手は鼻で笑いながら続けた。
『このおれの対戦相手がこんなチビなんて正直がっかりだよ。これなら他の奴もセンパイみたいに大したことなさそうだよね。あーあ、こんなことなら大会に出るなんて言わなきゃ良かった。赤チームの皆さんお疲れ様ー!』
直季はその言葉をにこにこと笑いながら聞いている。しかし何も言わない。
隣で勇樹が小さく「あぁ……」と何やら憐れんだような視線を直季ではなく対戦相手に向けている。
それと同時に試合開始の合図であるエアガンが司会の教師によって発砲されて…………数秒もしないうちに試合終了の合図であるブザーが鳴り響いた。
何があったのかと言うと、開始した直後に相手の身体は何やら植物の蔓の様なもので身動きが取れないように縛り付けられ、そのまま蔓が相手のリボンを解いて、直季の手に渡って、終わり。
『な…っ、!?』
驚いて声も出ない相手に直季は歩いて近づいていって相手の前に立つと、一言笑顔でこう言い放った。
『弱い犬ほどよく吠えるって言うよねぇ』
「いや大人気なさすぎません?つーかあれ本当に直季先輩ですか?心なしか笑顔の後ろに黒いオーラ的なのが見えるんですけど」
「あいつ……まじでやりやがったな……」
心底呆れたようにため息を吐く勇樹に尋希がわなわなと震えながら「相手二年生ですよ!?こういうのって加減とかしないんですか!?」と叫んだ。
「あぁ……あいつ、自分の友人とか親しい奴が悪く言われんの嫌いなんだよ……」
普段と態度からはそうは見えないけど案外短気なんだぜ、あいつ。と勇樹が言うと同時に控え室の扉が勢いよく開く。
「たっだいまー!だよねぇ!」
「おー、おかえり。お前なぁ……」
「えへっ。やっちゃった、だよねぇ」
「やっちゃった、じゃねぇんですよ!どうするんですか!あの人もしかしたらプライドばっきばきに折れて立ち直れないかもですよ!?」
「別にいいんじゃないんかねぇ。本当なら縛り付けるんじゃなくて持ち上げて思いっきり地面に叩きつけたかったよねぇ。……でもルールだからさ」
確かにルールでは相手に大きな怪我をさせない事が決められている。もしこのルールが無ければ相手は先程直季が言ったように地面に体を叩きつけられていたのだろうか。
その様子を鮮明に想像したらしい尋希が顔を青くしながら「直季先輩だけは絶対怒らせないようにしよ……」と小さく呟いた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる