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花のprologue.
桜の森
しおりを挟む「いやぁ、久しぶりに来たけど良い景色だねぇ」
「……これは……すごい、な…」
暗くなる前にと急いで戻ってきた学園のエントランスで桜赤が校舎から出ようとする背の高い男子生徒とぶつかる以外はなんの問題もなくオレ達は無事に屋上にたどり着いていた。
赤い夕日が空や学園の校舎だけじゃなく、街全体を赤色に染め上げているそれはオレからしてもまさに目に焼き付けて、ずっと記憶しておきたい程美しい風景で、はっと息を飲みこむ。
「凄いよねぇ、一面見渡す限り桜の木だらけだよねぇ」
「あんまり身を乗り出すなよ、落ちるぞ」
転落防止の為のフェンスによじ登って景色を眺める直季の服の裾を掴んでおきながら無言で街を見下ろす桜赤に、軽くこの街のことを説明する。
「見ての通り一面桜の木だらけで、この街の外に出るにはあそこの駅から電車に乗るかその駅沿いの道路を車で出入りするしかねぇんだよ。ま、あんまりこの街に近寄る人間なんて居ねぇけど」
「そうなんだよねぇ。なんだっけ、この街の都市伝説が原因だっけねぇ?」
「都市伝説?」
曰く、この街を囲んでいる無数の桜の木…通称桜の森は異世界に繋がっており、桜の森の中に入った人間が行方不明になる、というどこにでもあるような都市伝説を桜赤に話してやる。
すると桜赤は少し考える素振りをして、「それって実際に行方不明者とか出てるのか?」と聞いてきた。
「んや?実際は好奇心で森に入った人間がその森の中で迷ってるだけだったりするぜ。そもそも本当に異世界に繋がってるだなんて眉唾物だぜ。実際オレは産まれた時からこの街に住んでるし、何度もあの森に入ったこともあるけどこの通りだ」
「ボクもだねぇ。都市伝説は都市伝説、夢物語だよねぇ」
2人でそう言って笑うと桜赤は「そうか…」と相変わらずの無表情で屋上からの景色の方へ向き直った。
「あの森は異世界に繋がっている、ですか。そうですね、所詮はその話も夢物語でしかありません。ならもう一つこんな夢物語はどうです?」
背後から突如聞こえたその声に反射的にオレたちは振り向いた。
振り向いた先に目に入ったのはくせ毛が特徴的な赤い髪で、その次にその胡散臭い様な笑顔だった。
隣で無表情でいる桜赤同様に何を考えているのか読めないそいつは、続けて口を開いた。
「知ってますか?あの森に入ると行けるという異世界には、所謂不老不死の種族が住んでいるらしいですよ?」
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