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白の魔女、黒の魔女
しおりを挟むその国では、人々が急に石になってしまう奇病が蔓延していました。
前兆もなく、一夜にして村中の人々が石になり、もう戻ることはありませんでした。感染症、神の裁き、風土病、様々な仮説が流れましたが、誰にもその原因はわかりませんでした。
或る村の人々は怯えました。
隣の村も奇病の被害に遭った。近くの大きな街の住民も全て石と化した。次は、次こそは、奇病がこの村にも訪れるのではないか。
人々の不安は膨れ上がり、古びた教会で神に助けを請いました。
どうか、どうか、お助けください。
壊れかけた教会を新しくします。これからは毎日祈りを捧げます。
だから、どうか、この村だけはお救いください。
神は人々の声を聴いたのでしょう。
或る日、村を二人の魔女が訪れました。
白の魔女は語ります。お金など要りません。救いましょう。
黒の魔女は語ります。対価を払えば皆を救いましょう。
白の魔女は語ります。奇なる病にも生き残るもの全てに豊かさを。
黒の魔女は語ります。死者にも永遠の安寧を。
村の人々は白の魔女を迎え入れました。嗚呼、救いの魔女よ。
村の人々は黒の魔女を追い払いました。嗚呼、災いの魔女よ。
村の人々は白の魔女を崇めました。美しき魔女、どうか、奇病から我々をお救いください。
村の人々は黒の魔女を拒みました。怪しき魔女、どうか、この村には立ち入らないでください。
白の魔女は笑います。良いでしょう、救いましょう。
黒の魔女は笑います。良いでしょう、離れましょう。
次の日、白の魔女は人々が石になる奇病を招きました。村の人々は石になり、滅びました。奇病にも生き残ったのは物言わぬ草花だけでした。草花は人々に生育を阻まれることもなく、のびのびと、生き生きと、豊かに育ちました。
白の魔女は笑います。嗚呼、誰も彼も、黒の魔女を信じない。
黒の魔女は笑います。嗚呼、誰も彼も、白の魔女を疑わない。
白の魔女こそ、人々を滅ぼす絶望の化身でした。白の魔女が救うのは、黒の魔女も受け入れる優しい心を持った者だけでした。
黒の魔女こそ、人々を救う希望の化身でした。黒の魔女が救うのは、生者も死者も区別しない、全ての民でした。
そうして、またひとつ、村が滅びました。
魔女は探します。甘言を疑い、対価を厭わない、そんな人々を。
*
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