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その日の夜、いつものようにアルマスが部屋に来た。いつもと違うのは、来る時間がいつもより一時間以上早いということだった。こんなに早く来たことはない。
ノックを受けてドアを開けると、アルマスが部屋の中に飛び込んできた。その勢いのまま、アルマスはわたしの身体を抱き寄せる。
「ああ、ルミア、昼間はごめんね。怒っているだろう?」
「怒っていると言ったら、カリスへの処分は軽くなりますか?」
アルマスを困らせると知っていながら、わたしはアルマスに尋ねた。アルマスはわたしの顔を覗き込んで、しょんぼりとしながら答えた。
「それは、できない。処分なしということにはできないんだ。お願いだからわかってくれ」
「大丈夫です。もう怒っていませんよ。アルマス様こそ、わたしが我儘を言って困らせてしまったから、わたしのことが嫌いになったんじゃないですか?」
「そんなことあるわけないだろう。ぼくはきみを愛している。だから、カリスへの処分を軽くしたんだよ」
「ありがとうございます。本当は処分なしにしてほしかったですけれど、そういうわけにもいかないというのは理解しています」
わたしが理解を示したからか、アルマスは安堵していた。わたしの身体を強く抱きしめて、その愛をわたしにぶつけてくる。わたしはそれを真正面から受け止めて、アルマスの背に手を回す。わたしが安心する温もりに包まれる。
「ぼくがもっと早くにきみへ政務を流せばよかったんだ。そうしたらきみは日中にやるべきことが生まれるし、ぼくの政務の負担も軽くなる」
「お気遣いくださりありがとうございます。日中にやることがあると、街に行きたいという思いも少しは減るかなと思います」
「うん。王妃が政務に参加するのは前例がある。イジーンだってすぐ了承してくれるよ」
アルマスはふんわりとした笑みを浮かべて言った。
その前例は、正室なのではないだろうか。側室が政務に参加するのはよいのだろうか。わたしはそう思ったけれど、あえてアルマスには問わなかった。日中にやるべきことができるのは願ってもないことだ。これから一週間はカリスもいないし、ずっと部屋で過ごすのだから、何か暇潰しになるものが欲しかった。
「明日から早速お願いするよ。そのほうがいいだろう?」
「はい。ありがとうございます、アルマス様」
「政務が早く片付けば、もっと長くきみと一緒にいられる。今日みたいに、早い時間からきみに会うことができる。嬉しいなあ」
アルマスは心底嬉しそうに言う。この人は本当にわたしのことが好きなのだと実感する。
「わたしも嬉しいです。アルマス様とゆっくりする時間が好きですから」
「ぼくにとっても癒しの時間だよ、ルミア」
アルマスがわたしの腰に手を当ててベッドへと誘導する。二人でベッドに横になり、顔を見合わせて笑いあう。この幸せな時間がいつまでも続けばいいのに、と思う。
「それにしても、きみが離縁すると言った時は焦ったよ。あれは本気だったの?」
「ええ。脅しではありませんよ。それくらい、わたしはカリスに非がないと思っています」
「そうか。カリスは主君に愛されていて羨ましいな」
「ふふ、アルマス様のことも愛していますよ。わたしの愛するアルマス様なら、あの場でカリスを助けてくださると信じていました」
「ぼくを試していたのか? まったく、きみも人が悪いな」
アルマスは困ったような笑みを浮かべている。わたしは自分からアルマスに抱きついて、その顔をじっと見つめた。
「でもアルマス様はちゃんとわたしの願いを聞き届けてくださったでしょう? さすがは、わたしの愛するアルマス様です」
「今日はルミアの新しい一面を見たよ。あんなに戦ってくるとは思わなかった。それだけ、ルミアにとってはカリスが大切なんだな」
「そうですね。カリスはわたしの大切な騎士です」
「そんなに即答されると妬いてしまうよ。カリスが羨ましい」
アルマスがぶすっとした口調で言うから、それが面白くて、わたしは笑った。この人はこんなに子どもっぽいところもあるものか。
「妬まないでください。わたしはアルマス様のことも愛していますよ」
「そう? どれくらい?」
「うぅん、そうですねえ」
わたしは悩んで、アルマスの唇を奪った。わたしから始めたキスなのに、アルマスがわたしの唇を離してくれなくて、随分と長いキスになってしまう。一度息継ぎをしたら、再び唇を塞がれる。頭がぼうっとしてきて、アルマスしか見えなくなる。
「こういうキスを受け入れるくらいには、アルマス様を愛していますよ」
「嬉しいよ、ルミア。もっときみに触れたい」
「はい。どうぞ、アルマス様」
そうして、アルマスはわたしに触れる。壊れ物に触れるように、けれど淫らに。
*
他国からの使者がやってくるらしい。それも、あまり仲が良くない国から。
昔のわたしなら、ふうん、大変だね、くらいしか思わなかっただろう。今は違う。わたしも謁見の間に参席しなければならなくなったからだ。この前参席したという実績を作ってしまったから、アルマスはいい気になって、当然わたしが参席するものとして話を進めたのだ。そこにイジーンの異論を挟む余地はなく、またわたしは使者に会わなければならなくなった。
せめてカリスの謹慎が解ける前だったら、わたしにも拒む理由があっただろう。カリス以外の騎士は認めないと言えば、わたしは参席せずに済んだだろう。しかし、使者が来るのはカリスの謹慎が解けた後だった。わたしは参席を断る理由もなく、出るしかなくなってしまった。
今日はその他国からの使者が来る日だ。昼近くになり、謹慎が解けたカリスがわたしを迎えに来る。
「ルミア様、ご準備はよろしいですかー?」
「うん。カリス、行こっか」
「はぁい。いやぁ、今日もルミア様は可愛いですねっ」
謹慎が解けても、カリスはいつもと同じだった。元気な姿を見ることができて一安心した。わたしに甘いのも健在で、謹慎が解ける前と何も変わらなかった。あの謹慎にいったい何の意味があったのかと思ってしまう。やはり、形だけの罰だったのだろう。
わたしとカリスは謁見の間に向かう。使者に会うのは二回目だ。今回は前回とは違って、かなり警戒された状態になるという。既に城内がぴりぴりした雰囲気に包まれていて、前回の和やかなムードとは違っていることを肌で感じる。
謁見の間に着くと、前回と同じように椅子が配置されていた。わたしは玉座の左側に座る。まだジョセフィーヌは来ていなかったことにほっとする。また嫌味を言われるだろうから、覚悟しておかないとね。
カリスはわたしの横に控えて、ぼそっと呟いた。
「厳戒態勢じゃん。うわぁ、やだなぁ」
謁見の間に並んでいる騎士と兵士の数は前回と同じように見える。わたしはカリスに訊いた。
「そうなの? 前と同じじゃないの?」
「かなり力のある騎士ばかりです。まるで何か起こるって思ってるみたいな感じですね」
「やっぱり、いい話じゃないのかな?」
「使者を派遣する意味がわからないってイジーン様が仰ってました。国王を狙ったテロ行為に気を付けろって、騎士と兵士全体に指令が飛んでます」
そういう意図で訪問する使者だという想定なのだろう。それなら使者を断ればいいのに、と思ってしまうけれど、国家間のやり取りの中でそういうことはきっと許されないのだろう。
わたしに遅れて、ジョセフィーヌが謁見の間に姿を現した。心なしか、その顔は強張っているように見えた。前回と同じく、ジョセフィーヌの侍従は謁見の間から姿を消して、ジョセフィーヌを守ってくれる存在がいなくなる。ジョセフィーヌがこちらを睨んだから、わたしは慌てて目線を逸らした。
「うわ、アルマス様、護衛付けないんだ」
「ん? なに、カリス」
カリスが小声でほやいた言葉を拾って、わたしはカリスに尋ねた。カリスはわたしの耳元に顔を近づけて答える。
「そーゆー使者なのに、ジョセフィーヌ様を守る騎士がいないんですよ。正室だし、狙われる可能性は充分にあると思うんですけどねぇ」
「ああ、うん、そうだね。いないのかな?」
「いないと思います。いるならもう定位置に着いているはずですから。アルマス様、本当にジョセフィーヌ様と喧嘩してるのかなぁ」
「えっ、そうなの?」
聞き捨てならない言葉だった。わたしの記憶の限りでは、アルマスがジョセフィーヌに会いに行ったという話は聞かない。夜は毎日わたしのところに来ていたから、結局アルマスはまだ一度もジョセフィーヌの部屋に行っていないはずなのだ。
カリスはちらりとジョセフィーヌを窺って、また小声で話した。
「なんか、政務室まで行って不満を訴えたらしいんですよ。どうして会いに来てくれないのかって。それにアルマス様が怒っちゃったらしくて。政務の邪魔だ、帰れ、って仰ったとか。それ以来、ますます仲が冷え切っちゃったらしいんです」
「そうなんだ。それは、なんか、可哀想だね」
ジョセフィーヌはアルマスに会いたいだけだっただろうに、冷たくあしらわれてしまったのだろう。しかも機嫌を損ねてしまった。一度くらい、ジョセフィーヌの部屋に行ってあげてもいいのになあ。アルマスはわたしが怒るとでも思っているのだろうか。
謁見の間にアルマスがやってくる。騎士たちは寸分違わぬ動作で頭を下げた。カリスもやや遅れて頭を下げる。アルマスは珍しく鞘に納まった長剣を持っていた。
アルマスは玉座に座って剣を立てかけると、カリスのほうを見て、命じた。
「カリス、使者が怪しい動きをしたら速やかに処理しろ。今回はルミアの護衛だけではなく、我の護衛でもあると思え」
「はぁい。承知しましたっ」
「ルミア、使者が何をしてくるかわからぬ。何が起こっても我とカリスたちがいる。うろたえるな」
「は、はい、わかりました」
それはもう、何かあると言っているじゃないか。わたしはにわかに緊張感を抱いた。
謁見の間にイジーンが入ってきて、玉座から数段下の定位置に着く。その横にも騎士が控える。イジーンを守るための護衛だろう。それならジョセフィーヌにも護衛を付けたらいいのに。まるでジョセフィーヌは狙われないか、あるいは狙ってもよいかのように思えてしまう。あえて穴を空けているのかと疑いたくなる。
やがて、謁見の間に兵士が入ってくる。片膝をつき、アルマスに告げる。
「国王陛下、使者殿が到着されました」
「うむ。皆の者、警戒を怠るな。使者殿を通せ」
謁見の間が緊張に包まれる。兵士が下がり、しばらくしてから、黒い装束に身を包んだ男性が連れられてくる。いかにも何か隠し持っていそうな人だと思った。忍者とか、暗殺者とか、そういうことを言われてもおかしくなさそうな見た目だった。
使者の男性は深く頭を下げて、アルマスに挨拶する。
「この度は謁見の機会を賜りありがとうございます、国王陛下」
「うむ。先に届いた親書には、見せたいものがある、と書かれていたが?」
「はい。我が国で採れた貴重な鉱石をお見せしたく、参上いたしました。この鉱石を買い取っていただけないか、というご相談にございます」
いわゆる商談というやつだろうか。使者は布に包まれた塊を騎士に渡して、アルマスのところへ持っていくように告げる。
そこで、ベルズがわたしに言った。
「あれ、やばいぞ。爆弾みてえなもんだ。アルマスに近づけるな」
「だ、だめです、それ、危険ですっ!」
わたしが急に立ち上がって制したからか、全員の視線がわたしに向いた。わたしは突き刺さるような視線に耐えながら、使者に言った。
「それは爆発するものでしょう? アルマス様、それは危険です」
「なに? そうなのか、使者殿」
「まさか。そのような危険なものをお渡しするはずがないでしょう」
使者はわたしの疑いを否定する。その瞳は笑っていなかった。
「包みを解いて空気に触れたら爆発する。そういう危ねえ鉱石だ」
「包みを解いたら爆発します。その布を解かないでください」
わたしはベルズが言ったことを全員に伝える。使者がわたしを強く睨んでいる。
間違いない。この使者は、普通じゃない。
アルマスがわたしのほうを見る。わたしは自分を信じてほしいという思いを込めて、アルマスの瞳を見つめる。アルマスは小さく頷いた。
「ルミアがそう言うのだ、少なくとも普通の鉱石ではないのだろう。使者殿、悪いが受け取ることはできぬ」
「そうですか。ならば、仕方ありませんね」
使者はそう言って、装束の中から献上品と同じような塊を取り出した。爆弾のような鉱石を投げるつもりなのだろうか。その狙いはわたしのように見えた。
その瞬間、カリスとアルマスが動いた。わたしの目では追えなかったけれど、投擲しようとした使者の肩にナイフが突き刺さっていて、わたしの前にアルマスが立っていた。鉱石は投擲されず、布に包まれたまま床に落ちた。かつん、と硬質な音がして、鉱石は床に転がる。
「ルミア、無事か?」
アルマスがわたしに声をかける。わたしは震える声でアルマスに答えた。
「は、はい、なんともありません」
「カリスが制圧してくれるはずだ。ルミアはここにいろ」
見れば、使者が剣を抜き、周囲を取り囲む騎士を威嚇しているところだった。カリスはその威嚇をものともせず、踏み込んで斬りかかった。剣と剣がぶつかる音が謁見の間に響く。剣の腕はカリスのほうが圧倒的に上で、カリスが剣を払うと、使者は剣を取り落としてしまった。
「くっ……!」
使者は再び装束の中に手を入れて、鉱石を取り出す。鉱石を包んでいた布を引き剝がすと、ベルズの言った通り、鉱石が眩い光を発した。
ああ、爆発する。これだと至近距離にいるカリスが巻き込まれてしまうのではないだろうか。
「おいおい、俺の出番かよ。カリスに怪我されたら迷惑だしなあ」
ベルズのぼやきが頭に届く。それと同時に、鉱石が爆発した。
「カリスっ!」
もうもうと煙が上がり、謁見の間に動揺が広がる。わたしは側室の席から立ち上がり、カリスの無事を確認しようとする。
カリスは少し吹き飛ばされただけで、怪我は負っていないようだった。カリス自身も驚いているようだったから、ベルズが何かしてくれたのだろう。わたしはほっと胸を撫で下ろした。
使者は爆発の衝撃を受けて命を落としたようだった。騎士たちが取り囲んでも、ぴくりとも動かない。装束は焼け焦げて、腕は変な方向に曲がっていた。
「カリス、大丈夫か」
「はい、あたしは平気です。なんか、よくわかんないですけど、大丈夫です」
「そうか。よくやった、カリス。使者を殺してしまったのは残念だが、よく守ってくれた」
騎士たちが使者の死骸を片付けていく。まだ他にも爆発する鉱石を所持していないか、慎重に調べている。アルマスも布に包まれたままの鉱石を物珍しそうに見ていた。
わたしはこそこそとベルズに話しかけた。カリスを救ってくれたのは、きっとベルズだ。
「ベルズ、ありがと。カリスを助けてくれたんだよね?」
「ああ、まあな。カリスがいねえといろいろ不便だろ。静かになっちまってつまんねえし」
「ベルズがいなかったらカリスも大怪我していたよね。ほんとに、ありがと」
「気にすんな。俺がやりたくてやっただけだ」
なんとも悪魔らしくないことを言って、ベルズは黙った。アルマスが近づいてきたのだ。
「ルミア、あの鉱石のことを知っていたのか?」
「いえ、ベルズが教えてくれました」
「そうか。すまない、ベルズ。助けられてしまったな」
「さっさと宝玉を見せろよ。忘れちまってんじゃねえだろうな?」
声が届かないことをいいことに、ベルズは荒い口調で言う。わたしはそれを無視した。わたし自身も、ベルズが宝玉を見たがっているということを忘れていたからだ。
「ルミアも、よく声を上げてくれた。危うく我が受け取るところだった」
「わたしはベルズの声をお伝えしただけです。お褒めいただくようなことは、何も」
「いいや、今回の被害を少なくできたのは間違いなくルミアのおかげだ。礼を言う」
アルマスから褒められるのが嬉しくて、わたしはつい頬が緩んでしまう。アルマスもそんなわたしを見て、雰囲気を和らげる。まるでわたしたちしかいないかのような気分になる。
そこにジョセフィーヌが割り込んでこなかったら、わたしはいつまでもその余韻に浸っていたことだろう。
「アルマス様! 今のはどういうことですの?」
「なんだ、ジョセフィーヌ。何に不満がある」
アルマスは静かな声で応じた。ジョセフィーヌは頭に血が上っているのか、アルマスが嫌そうにしているのも気にかけていない。
「どうして正室である私ではなく、側室であるその女を守られたのですか? 私には騎士も付いていないというのに、どうして私を守ってくださらなかったのですか!」
使者が鉱石を投げようとした時に、アルマスがわたしを庇ったのが気に食わないのだろう。わたしではなく自分を庇うべきだった、ということだろうか。
アルマスは感情を削ぎ落としたような口調で答えた。
「あの使者の狙いはルミアだった。ただそれだけのことだ」
「でもその女にはカリスがいるでしょう! 私は誰にも守られておりません!」
「カリスは使者を制圧しに行っただろう。ならば、ルミアを守る者がいなくなる。我が代わりにルミアを守ることに何の問題がある」
「ですから、私は誰にも守られておりませんわ! アルマス様、これはどういうことですの?」
ジョセフィーヌが喚くと、アルマスは鬱陶しそうに溜息を吐いた。
「そんなに言うのなら、謁見の間に参席しなくてもよいのだぞ」
「なっ……!」
アルマスはジョセフィーヌが衝撃を受けたことを無視して、さらに続けた。
「ルミアが参席すれば、王妃が参席したことにはなる。必ずしも正室が出なければならないという決まりはあるまい。我はそれでもよいのだが」
「それほどまでに、それほどまでに、その女が大切ですか!」
「ああ。我にとってルミアは愛する王妃である」
騎士たちはその喧嘩を見守ることなく、淡々と自分たちの作業を続けていた。わたしはそこにいるのが苦しくなってきて、傍に寄ってきたカリスに小声で話しかけた。
「ねえ、止めたほうがいいかな?」
「いいんじゃないですか、ほっといて」
「でも、ジョセフィーヌ様がますます怒るのも時間の問題じゃない?」
「あたしたちが行くほうが面倒になりますよ。ルミア様、お部屋に帰りましょう」
カリスはわたしの手を引いて、謁見の間からわたしを連れ出した。まるでアルマスとジョセフィーヌの喧嘩を見せたくないかのようだった。
「もう、もう、我慢できませんわっ!」
謁見の間から聞こえてきたジョセフィーヌの絶叫に、わたしは肩を竦めた。ジョセフィーヌが可哀想に思えてしまうけれど、わたしにはどうすることもできないのだ。
わたしはカリスに連れられて、その場を後にした。
ノックを受けてドアを開けると、アルマスが部屋の中に飛び込んできた。その勢いのまま、アルマスはわたしの身体を抱き寄せる。
「ああ、ルミア、昼間はごめんね。怒っているだろう?」
「怒っていると言ったら、カリスへの処分は軽くなりますか?」
アルマスを困らせると知っていながら、わたしはアルマスに尋ねた。アルマスはわたしの顔を覗き込んで、しょんぼりとしながら答えた。
「それは、できない。処分なしということにはできないんだ。お願いだからわかってくれ」
「大丈夫です。もう怒っていませんよ。アルマス様こそ、わたしが我儘を言って困らせてしまったから、わたしのことが嫌いになったんじゃないですか?」
「そんなことあるわけないだろう。ぼくはきみを愛している。だから、カリスへの処分を軽くしたんだよ」
「ありがとうございます。本当は処分なしにしてほしかったですけれど、そういうわけにもいかないというのは理解しています」
わたしが理解を示したからか、アルマスは安堵していた。わたしの身体を強く抱きしめて、その愛をわたしにぶつけてくる。わたしはそれを真正面から受け止めて、アルマスの背に手を回す。わたしが安心する温もりに包まれる。
「ぼくがもっと早くにきみへ政務を流せばよかったんだ。そうしたらきみは日中にやるべきことが生まれるし、ぼくの政務の負担も軽くなる」
「お気遣いくださりありがとうございます。日中にやることがあると、街に行きたいという思いも少しは減るかなと思います」
「うん。王妃が政務に参加するのは前例がある。イジーンだってすぐ了承してくれるよ」
アルマスはふんわりとした笑みを浮かべて言った。
その前例は、正室なのではないだろうか。側室が政務に参加するのはよいのだろうか。わたしはそう思ったけれど、あえてアルマスには問わなかった。日中にやるべきことができるのは願ってもないことだ。これから一週間はカリスもいないし、ずっと部屋で過ごすのだから、何か暇潰しになるものが欲しかった。
「明日から早速お願いするよ。そのほうがいいだろう?」
「はい。ありがとうございます、アルマス様」
「政務が早く片付けば、もっと長くきみと一緒にいられる。今日みたいに、早い時間からきみに会うことができる。嬉しいなあ」
アルマスは心底嬉しそうに言う。この人は本当にわたしのことが好きなのだと実感する。
「わたしも嬉しいです。アルマス様とゆっくりする時間が好きですから」
「ぼくにとっても癒しの時間だよ、ルミア」
アルマスがわたしの腰に手を当ててベッドへと誘導する。二人でベッドに横になり、顔を見合わせて笑いあう。この幸せな時間がいつまでも続けばいいのに、と思う。
「それにしても、きみが離縁すると言った時は焦ったよ。あれは本気だったの?」
「ええ。脅しではありませんよ。それくらい、わたしはカリスに非がないと思っています」
「そうか。カリスは主君に愛されていて羨ましいな」
「ふふ、アルマス様のことも愛していますよ。わたしの愛するアルマス様なら、あの場でカリスを助けてくださると信じていました」
「ぼくを試していたのか? まったく、きみも人が悪いな」
アルマスは困ったような笑みを浮かべている。わたしは自分からアルマスに抱きついて、その顔をじっと見つめた。
「でもアルマス様はちゃんとわたしの願いを聞き届けてくださったでしょう? さすがは、わたしの愛するアルマス様です」
「今日はルミアの新しい一面を見たよ。あんなに戦ってくるとは思わなかった。それだけ、ルミアにとってはカリスが大切なんだな」
「そうですね。カリスはわたしの大切な騎士です」
「そんなに即答されると妬いてしまうよ。カリスが羨ましい」
アルマスがぶすっとした口調で言うから、それが面白くて、わたしは笑った。この人はこんなに子どもっぽいところもあるものか。
「妬まないでください。わたしはアルマス様のことも愛していますよ」
「そう? どれくらい?」
「うぅん、そうですねえ」
わたしは悩んで、アルマスの唇を奪った。わたしから始めたキスなのに、アルマスがわたしの唇を離してくれなくて、随分と長いキスになってしまう。一度息継ぎをしたら、再び唇を塞がれる。頭がぼうっとしてきて、アルマスしか見えなくなる。
「こういうキスを受け入れるくらいには、アルマス様を愛していますよ」
「嬉しいよ、ルミア。もっときみに触れたい」
「はい。どうぞ、アルマス様」
そうして、アルマスはわたしに触れる。壊れ物に触れるように、けれど淫らに。
*
他国からの使者がやってくるらしい。それも、あまり仲が良くない国から。
昔のわたしなら、ふうん、大変だね、くらいしか思わなかっただろう。今は違う。わたしも謁見の間に参席しなければならなくなったからだ。この前参席したという実績を作ってしまったから、アルマスはいい気になって、当然わたしが参席するものとして話を進めたのだ。そこにイジーンの異論を挟む余地はなく、またわたしは使者に会わなければならなくなった。
せめてカリスの謹慎が解ける前だったら、わたしにも拒む理由があっただろう。カリス以外の騎士は認めないと言えば、わたしは参席せずに済んだだろう。しかし、使者が来るのはカリスの謹慎が解けた後だった。わたしは参席を断る理由もなく、出るしかなくなってしまった。
今日はその他国からの使者が来る日だ。昼近くになり、謹慎が解けたカリスがわたしを迎えに来る。
「ルミア様、ご準備はよろしいですかー?」
「うん。カリス、行こっか」
「はぁい。いやぁ、今日もルミア様は可愛いですねっ」
謹慎が解けても、カリスはいつもと同じだった。元気な姿を見ることができて一安心した。わたしに甘いのも健在で、謹慎が解ける前と何も変わらなかった。あの謹慎にいったい何の意味があったのかと思ってしまう。やはり、形だけの罰だったのだろう。
わたしとカリスは謁見の間に向かう。使者に会うのは二回目だ。今回は前回とは違って、かなり警戒された状態になるという。既に城内がぴりぴりした雰囲気に包まれていて、前回の和やかなムードとは違っていることを肌で感じる。
謁見の間に着くと、前回と同じように椅子が配置されていた。わたしは玉座の左側に座る。まだジョセフィーヌは来ていなかったことにほっとする。また嫌味を言われるだろうから、覚悟しておかないとね。
カリスはわたしの横に控えて、ぼそっと呟いた。
「厳戒態勢じゃん。うわぁ、やだなぁ」
謁見の間に並んでいる騎士と兵士の数は前回と同じように見える。わたしはカリスに訊いた。
「そうなの? 前と同じじゃないの?」
「かなり力のある騎士ばかりです。まるで何か起こるって思ってるみたいな感じですね」
「やっぱり、いい話じゃないのかな?」
「使者を派遣する意味がわからないってイジーン様が仰ってました。国王を狙ったテロ行為に気を付けろって、騎士と兵士全体に指令が飛んでます」
そういう意図で訪問する使者だという想定なのだろう。それなら使者を断ればいいのに、と思ってしまうけれど、国家間のやり取りの中でそういうことはきっと許されないのだろう。
わたしに遅れて、ジョセフィーヌが謁見の間に姿を現した。心なしか、その顔は強張っているように見えた。前回と同じく、ジョセフィーヌの侍従は謁見の間から姿を消して、ジョセフィーヌを守ってくれる存在がいなくなる。ジョセフィーヌがこちらを睨んだから、わたしは慌てて目線を逸らした。
「うわ、アルマス様、護衛付けないんだ」
「ん? なに、カリス」
カリスが小声でほやいた言葉を拾って、わたしはカリスに尋ねた。カリスはわたしの耳元に顔を近づけて答える。
「そーゆー使者なのに、ジョセフィーヌ様を守る騎士がいないんですよ。正室だし、狙われる可能性は充分にあると思うんですけどねぇ」
「ああ、うん、そうだね。いないのかな?」
「いないと思います。いるならもう定位置に着いているはずですから。アルマス様、本当にジョセフィーヌ様と喧嘩してるのかなぁ」
「えっ、そうなの?」
聞き捨てならない言葉だった。わたしの記憶の限りでは、アルマスがジョセフィーヌに会いに行ったという話は聞かない。夜は毎日わたしのところに来ていたから、結局アルマスはまだ一度もジョセフィーヌの部屋に行っていないはずなのだ。
カリスはちらりとジョセフィーヌを窺って、また小声で話した。
「なんか、政務室まで行って不満を訴えたらしいんですよ。どうして会いに来てくれないのかって。それにアルマス様が怒っちゃったらしくて。政務の邪魔だ、帰れ、って仰ったとか。それ以来、ますます仲が冷え切っちゃったらしいんです」
「そうなんだ。それは、なんか、可哀想だね」
ジョセフィーヌはアルマスに会いたいだけだっただろうに、冷たくあしらわれてしまったのだろう。しかも機嫌を損ねてしまった。一度くらい、ジョセフィーヌの部屋に行ってあげてもいいのになあ。アルマスはわたしが怒るとでも思っているのだろうか。
謁見の間にアルマスがやってくる。騎士たちは寸分違わぬ動作で頭を下げた。カリスもやや遅れて頭を下げる。アルマスは珍しく鞘に納まった長剣を持っていた。
アルマスは玉座に座って剣を立てかけると、カリスのほうを見て、命じた。
「カリス、使者が怪しい動きをしたら速やかに処理しろ。今回はルミアの護衛だけではなく、我の護衛でもあると思え」
「はぁい。承知しましたっ」
「ルミア、使者が何をしてくるかわからぬ。何が起こっても我とカリスたちがいる。うろたえるな」
「は、はい、わかりました」
それはもう、何かあると言っているじゃないか。わたしはにわかに緊張感を抱いた。
謁見の間にイジーンが入ってきて、玉座から数段下の定位置に着く。その横にも騎士が控える。イジーンを守るための護衛だろう。それならジョセフィーヌにも護衛を付けたらいいのに。まるでジョセフィーヌは狙われないか、あるいは狙ってもよいかのように思えてしまう。あえて穴を空けているのかと疑いたくなる。
やがて、謁見の間に兵士が入ってくる。片膝をつき、アルマスに告げる。
「国王陛下、使者殿が到着されました」
「うむ。皆の者、警戒を怠るな。使者殿を通せ」
謁見の間が緊張に包まれる。兵士が下がり、しばらくしてから、黒い装束に身を包んだ男性が連れられてくる。いかにも何か隠し持っていそうな人だと思った。忍者とか、暗殺者とか、そういうことを言われてもおかしくなさそうな見た目だった。
使者の男性は深く頭を下げて、アルマスに挨拶する。
「この度は謁見の機会を賜りありがとうございます、国王陛下」
「うむ。先に届いた親書には、見せたいものがある、と書かれていたが?」
「はい。我が国で採れた貴重な鉱石をお見せしたく、参上いたしました。この鉱石を買い取っていただけないか、というご相談にございます」
いわゆる商談というやつだろうか。使者は布に包まれた塊を騎士に渡して、アルマスのところへ持っていくように告げる。
そこで、ベルズがわたしに言った。
「あれ、やばいぞ。爆弾みてえなもんだ。アルマスに近づけるな」
「だ、だめです、それ、危険ですっ!」
わたしが急に立ち上がって制したからか、全員の視線がわたしに向いた。わたしは突き刺さるような視線に耐えながら、使者に言った。
「それは爆発するものでしょう? アルマス様、それは危険です」
「なに? そうなのか、使者殿」
「まさか。そのような危険なものをお渡しするはずがないでしょう」
使者はわたしの疑いを否定する。その瞳は笑っていなかった。
「包みを解いて空気に触れたら爆発する。そういう危ねえ鉱石だ」
「包みを解いたら爆発します。その布を解かないでください」
わたしはベルズが言ったことを全員に伝える。使者がわたしを強く睨んでいる。
間違いない。この使者は、普通じゃない。
アルマスがわたしのほうを見る。わたしは自分を信じてほしいという思いを込めて、アルマスの瞳を見つめる。アルマスは小さく頷いた。
「ルミアがそう言うのだ、少なくとも普通の鉱石ではないのだろう。使者殿、悪いが受け取ることはできぬ」
「そうですか。ならば、仕方ありませんね」
使者はそう言って、装束の中から献上品と同じような塊を取り出した。爆弾のような鉱石を投げるつもりなのだろうか。その狙いはわたしのように見えた。
その瞬間、カリスとアルマスが動いた。わたしの目では追えなかったけれど、投擲しようとした使者の肩にナイフが突き刺さっていて、わたしの前にアルマスが立っていた。鉱石は投擲されず、布に包まれたまま床に落ちた。かつん、と硬質な音がして、鉱石は床に転がる。
「ルミア、無事か?」
アルマスがわたしに声をかける。わたしは震える声でアルマスに答えた。
「は、はい、なんともありません」
「カリスが制圧してくれるはずだ。ルミアはここにいろ」
見れば、使者が剣を抜き、周囲を取り囲む騎士を威嚇しているところだった。カリスはその威嚇をものともせず、踏み込んで斬りかかった。剣と剣がぶつかる音が謁見の間に響く。剣の腕はカリスのほうが圧倒的に上で、カリスが剣を払うと、使者は剣を取り落としてしまった。
「くっ……!」
使者は再び装束の中に手を入れて、鉱石を取り出す。鉱石を包んでいた布を引き剝がすと、ベルズの言った通り、鉱石が眩い光を発した。
ああ、爆発する。これだと至近距離にいるカリスが巻き込まれてしまうのではないだろうか。
「おいおい、俺の出番かよ。カリスに怪我されたら迷惑だしなあ」
ベルズのぼやきが頭に届く。それと同時に、鉱石が爆発した。
「カリスっ!」
もうもうと煙が上がり、謁見の間に動揺が広がる。わたしは側室の席から立ち上がり、カリスの無事を確認しようとする。
カリスは少し吹き飛ばされただけで、怪我は負っていないようだった。カリス自身も驚いているようだったから、ベルズが何かしてくれたのだろう。わたしはほっと胸を撫で下ろした。
使者は爆発の衝撃を受けて命を落としたようだった。騎士たちが取り囲んでも、ぴくりとも動かない。装束は焼け焦げて、腕は変な方向に曲がっていた。
「カリス、大丈夫か」
「はい、あたしは平気です。なんか、よくわかんないですけど、大丈夫です」
「そうか。よくやった、カリス。使者を殺してしまったのは残念だが、よく守ってくれた」
騎士たちが使者の死骸を片付けていく。まだ他にも爆発する鉱石を所持していないか、慎重に調べている。アルマスも布に包まれたままの鉱石を物珍しそうに見ていた。
わたしはこそこそとベルズに話しかけた。カリスを救ってくれたのは、きっとベルズだ。
「ベルズ、ありがと。カリスを助けてくれたんだよね?」
「ああ、まあな。カリスがいねえといろいろ不便だろ。静かになっちまってつまんねえし」
「ベルズがいなかったらカリスも大怪我していたよね。ほんとに、ありがと」
「気にすんな。俺がやりたくてやっただけだ」
なんとも悪魔らしくないことを言って、ベルズは黙った。アルマスが近づいてきたのだ。
「ルミア、あの鉱石のことを知っていたのか?」
「いえ、ベルズが教えてくれました」
「そうか。すまない、ベルズ。助けられてしまったな」
「さっさと宝玉を見せろよ。忘れちまってんじゃねえだろうな?」
声が届かないことをいいことに、ベルズは荒い口調で言う。わたしはそれを無視した。わたし自身も、ベルズが宝玉を見たがっているということを忘れていたからだ。
「ルミアも、よく声を上げてくれた。危うく我が受け取るところだった」
「わたしはベルズの声をお伝えしただけです。お褒めいただくようなことは、何も」
「いいや、今回の被害を少なくできたのは間違いなくルミアのおかげだ。礼を言う」
アルマスから褒められるのが嬉しくて、わたしはつい頬が緩んでしまう。アルマスもそんなわたしを見て、雰囲気を和らげる。まるでわたしたちしかいないかのような気分になる。
そこにジョセフィーヌが割り込んでこなかったら、わたしはいつまでもその余韻に浸っていたことだろう。
「アルマス様! 今のはどういうことですの?」
「なんだ、ジョセフィーヌ。何に不満がある」
アルマスは静かな声で応じた。ジョセフィーヌは頭に血が上っているのか、アルマスが嫌そうにしているのも気にかけていない。
「どうして正室である私ではなく、側室であるその女を守られたのですか? 私には騎士も付いていないというのに、どうして私を守ってくださらなかったのですか!」
使者が鉱石を投げようとした時に、アルマスがわたしを庇ったのが気に食わないのだろう。わたしではなく自分を庇うべきだった、ということだろうか。
アルマスは感情を削ぎ落としたような口調で答えた。
「あの使者の狙いはルミアだった。ただそれだけのことだ」
「でもその女にはカリスがいるでしょう! 私は誰にも守られておりません!」
「カリスは使者を制圧しに行っただろう。ならば、ルミアを守る者がいなくなる。我が代わりにルミアを守ることに何の問題がある」
「ですから、私は誰にも守られておりませんわ! アルマス様、これはどういうことですの?」
ジョセフィーヌが喚くと、アルマスは鬱陶しそうに溜息を吐いた。
「そんなに言うのなら、謁見の間に参席しなくてもよいのだぞ」
「なっ……!」
アルマスはジョセフィーヌが衝撃を受けたことを無視して、さらに続けた。
「ルミアが参席すれば、王妃が参席したことにはなる。必ずしも正室が出なければならないという決まりはあるまい。我はそれでもよいのだが」
「それほどまでに、それほどまでに、その女が大切ですか!」
「ああ。我にとってルミアは愛する王妃である」
騎士たちはその喧嘩を見守ることなく、淡々と自分たちの作業を続けていた。わたしはそこにいるのが苦しくなってきて、傍に寄ってきたカリスに小声で話しかけた。
「ねえ、止めたほうがいいかな?」
「いいんじゃないですか、ほっといて」
「でも、ジョセフィーヌ様がますます怒るのも時間の問題じゃない?」
「あたしたちが行くほうが面倒になりますよ。ルミア様、お部屋に帰りましょう」
カリスはわたしの手を引いて、謁見の間からわたしを連れ出した。まるでアルマスとジョセフィーヌの喧嘩を見せたくないかのようだった。
「もう、もう、我慢できませんわっ!」
謁見の間から聞こえてきたジョセフィーヌの絶叫に、わたしは肩を竦めた。ジョセフィーヌが可哀想に思えてしまうけれど、わたしにはどうすることもできないのだ。
わたしはカリスに連れられて、その場を後にした。
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