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夜。わたしがアルマスと存分に会うことができる時間帯。
わたしはアルマスが来ることを心待ちにしながら、でもアルマスはジョセフィーヌのところへ行ってほしいという、相反する思いを抱いていた。いくらなんでもそろそろジョセフィーヌのところへ行かないとまずいのではないか。いつも行く行くと言いながら、アルマスはわたしのところに来る。明日こそは行く、という言葉を何度聞いたことだろう。
今日はどうするのだろうか。またわたしのところに来てくれるだろうか。わたしは物思いに耽りながら、窓の外に目をやる。月が綺麗な夜だった。
「おい」
ベルズに呼ばれて、振り返る。ベルズはベッドの下から出てきて、軽快な動作でベッドに上がった。何か用事があるのだろう。わたしはその隣に座った。
「どうしたの、ベルズ」
「お前、忘れてねえだろうな」
ベルズにそう言われても、何も思い出せない。わたしはベルズと何か約束をしただろうか。
わたしがきょとんとしていたからだろう、ベルズは溜息のような音を出した。いや、わたしの頭にそう響いてきただけか。
「俺がお前に力を貸す条件があっただろうが」
「ああ、宝玉の話?」
そこまで言われて、わたしはようやく思い出した。
ベルズは無償で協力してくれているわけではないのだった。この国の至宝である宝玉を見たい、と言っていたのだ。わたしはその話をすっかり忘れてしまっていた。今まで一度もアルマスに宝玉の話をしたことはなかった。
「いつまでもアルマスに話し出さねえから、忘れてんじゃねえかと思ったんだよ」
「ごめん。今日、訊いてみるね」
「忘れるなよ。時間制限があるわけじゃねえが、俺も早いところ宝玉の中身を知りてえんだ」
「うん。大丈夫、今日は忘れない」
そう言っていても、アルマスが今日来るとは限らない。今日こそはジョセフィーヌのところへ行っているかもしれないし、政務で遅くなるからひとりで眠るかもしれない。わたしからアルマスを呼ぶこともできなくはないけれど、アルマスの行動を縛ってしまうようで、わたしからアルマスを誘うことはなかった。誘ったら喜んで来てくれそうだ。
「宝玉から宝を手に入れたら、お前にも分けてやるよ」
「うぅん、別に、いらないよ。わたしが持っていても価値がないでしょ?」
この世界で金銀財宝を手にしたとしても、何の意味もない。生活は今のままで充分すぎるくらい裕福だし、宝を手にしようとは思わなかった。もし欲しいものがあるなら、アルマスに頼めばいいと思っていた。あの人なら何でも入手してきそうだ。
けれどベルズは鼻で笑った。わたしの答えが愚かだと言われている気分だった。
「隠されている宝が普通の宝物だったら、俺は要らねえよ。そうじゃねえと思ってるから欲しいんだ」
「そうじゃない、って?」
そこで、わたしの部屋のドアがノックされた。これは、アルマスだ。今日もわたしのところに来てくれたのだ。わたしは喜びで胸が一杯になる。
わたしはベルズとの会話を中断して、ドアを開けに行く。そこには疲れた顔のアルマスが立っていた。アルマスはわたしの姿を見るなり、抱きついてくる。
「ああ、ルミア。疲れたよ、今日は本当に疲れた」
政務室にいる時とわたしの部屋にいる時で、アルマスの性格と雰囲気は全然違う。政務室にいる時は気を張っているらしい。わたしの前で素に戻ってくれるというのは、わたしがアルマスの癒しになれているような気がして、とても嬉しいことだった。
「アルマス様、お疲れ様でした。今日は少し遅かったですね」
「忙しかったんだ。でもどうしてもきみに会いたかったから、頑張ったんだよ」
「ありがとうございます。お部屋でゆっくりしましょう」
わたしはいったんアルマスから離れて、部屋のドアを閉める。アルマスはふらふらと歩いていき、ベッドに身体を投げ出した。柔らかいベッドにアルマスの身体が沈む。
アルマスは疲れているようだけれど、わたしも忘れないうちにベルズとの約束を果たしてしまいたい。アルマスとの逢瀬の時間が本格的に始まる前に訊いておかなきゃ。
わたしがアルマスの横に座ると、アルマスはわたしの手を引いてベッドに倒した。わたしの身体はアルマスの腕の中に収まってしまう。
「ルミア。やっときみを抱くことができる」
「大変だったんですね。どうぞ、心ゆくまで抱きしめてください」
「そうするよ。ルミア、愛している」
「……わたしも。愛しています、アルマス様」
互いに愛を囁く。アルマスに愛していると言われるだけで、胸の奥が熱くなってしまう。未だに慣れなくて、わたしはきっと耳まで赤くなっていることだろう。
でも、今日のわたしにはやるべきことがある。わたしはアルマスに抱かれたまま、ベルズとの約束を口に出した。
「あの、アルマス様。この国には至宝と呼ばれる宝玉があるんですか?」
「どうして、そんなことを?」
話題にするのが急すぎたせいか、アルマスは訝しむように言った。わたしは気にするようなそぶりを見せずに、アルマスに返す。
「ベルズがその宝玉を見たいと言っているんです。何か、力になるそうで」
わたしは嘘と本当を混ぜこぜにして伝える。アルマスは「うーん」と言って、わたしの顔を覗き込んでくる。
「確かに、宝玉はあるよ。何らかの力を秘めているというのも、宝玉にまつわる伝承の中で残されている」
アルマスは何かを悩んでいるようだった。わたしは強く押すことはせず、この先はアルマスに任せることにした。アルマスがだめだと言うのなら、別の方法を考えなければならない。
たっぷり悩んで、アルマスはわたしに答えた。
「すぐには見せられない。あれを持ち出すにはイジーンにも話を通さないといけないんだ。ぼくの一存で持ち出すことができるのなら、すぐルミアに見せられるんだけど」
国にとっても重要な宝なのだろう。予想はしていたが、厳重に守られているようだ。わたしは落胆することもなく、ただ頷くだけにした。別にわたしが見たいわけではないから、どれだけ時間がかかっても構わなかった。
「ちっ、やっぱりすぐには無理か。仕方ねえ、時々つつくようにしてくれよ」
ベッドの下で聞いていたのだろう、ベルズがわたしに言った。わたしは応えず、アルマスの腕の中で心地よく横になっていた。
まあ、これでしばらくは油断できるだろう。でもまた忘れないようにしないと、ベルズに怒られてしまう。
「イジーンをどう説得するかな。神の使いであるベルズが見たがっている、というだけで持ち出させてくれたらいいんだけど」
「あの、今すぐでなくても構いません。アルマス様のご都合のよい時で」
「そうか。できるだけ早く見せられるようにするよ。きみの頼みだからね」
アルマスはそう言って笑った。わたしの大好きな笑顔だった。
「しかし、ベルズが見たいと言うってことは、あの宝玉は本物の宝なんだな」
「本物の宝、とは?」
「ぼくにはただのガラス玉にしか見えなかったからね。小さい頃に一度見ただけだけれど、あれに何か特別な力があるとは思えなかったな」
「そうなんですね。神様にしかわからない力が秘められているのかもしれませんね」
わたしは話を合わせた。きっとわたしが見てもただのガラス玉にしか見えないだろう。ベルズだからこそ価値を見出せるものなのかもしれない。もしかしたら、世界の至宝というのも、悪魔だからこそ欲するものだという可能性はある。ああ、それならわたしに分けるなんて言わないか。
アルマスはわたしの身体を抱き、上を向かせてキスしてくる。わたしはそれを受け入れて、アルマスとのキスを楽しむ。わたしの心音が大きく速くなることには、気づかれないとよいと思った。
アルマスはわたしから顔を離して、その青色の双眸にわたしを映す。
「ルミア、困っていることはない? ぼくが何かしてあげられることがあれば言って」
「特に、ありません。こうして会いに来てくださるだけで充分です」
「きみは多くを望まないね。長く眠る前もそうだったけれど、欲がない」
長い眠りに就く前のルミアも、わたしと同じような人柄だったのだろう。そこは心配していたが、わたしはうまくルミアになれているようだった。アルマスはわたしがルミアになったことには気づいていないみたいだ。アルマスが気づかないのなら、他の誰も気づくことはないだろう。
強いて望みを挙げるとするのなら、ジョセフィーヌのところに行かずに、毎晩わたしのもとに来てほしい。わたしのそんなどうしようもない独占欲は、心の中に秘めておいた。言ってもアルマスを困らせるだけだ。アルマスだって本心からジョセフィーヌのところに行きたいわけではないのだから。
「何かしてほしいことがあったら遠慮せずに言ってくれ。できるだけ叶えたい」
「はい、アルマス様。何かあれば申し上げますね」
「そう言って、きみは我慢しそうだからなあ。本当に、ちゃんと言ってくれよ」
「ちゃんと申し上げますから。信用してください」
アルマスはわたしの声に笑いながら、またわたしに口づけた。今度は触れ合うだけの軽いキスではなくて、唇を貪るような熱いキス。わたしはそれも受け入れて、唇が解放された後も、とろんとした瞳でアルマスを見つめた。
アルマスは興奮を抑えきれないような顔でわたしを見ていた。ああ、いつもの顔だ。わたしを抱きたい時にする、見慣れてきた表情。わたしはその顔に手を伸ばして、アルマスの頬に触れる。アルマスの温もりが伝わってくる。
「ルミア」
熱のこもった声で名前を呼ばれる。わたしはふっと笑った。
「ふふ、お顔に書いてますよ。どうぞ、お好きなように触ってください」
「顔に出ていたかな。なんだか恥ずかしいな」
そう言いながらも、アルマスはわたしの首筋にキスを落とした。
こうして、わたしとアルマスの何度目かの夜が始まった。
わたしはアルマスが来ることを心待ちにしながら、でもアルマスはジョセフィーヌのところへ行ってほしいという、相反する思いを抱いていた。いくらなんでもそろそろジョセフィーヌのところへ行かないとまずいのではないか。いつも行く行くと言いながら、アルマスはわたしのところに来る。明日こそは行く、という言葉を何度聞いたことだろう。
今日はどうするのだろうか。またわたしのところに来てくれるだろうか。わたしは物思いに耽りながら、窓の外に目をやる。月が綺麗な夜だった。
「おい」
ベルズに呼ばれて、振り返る。ベルズはベッドの下から出てきて、軽快な動作でベッドに上がった。何か用事があるのだろう。わたしはその隣に座った。
「どうしたの、ベルズ」
「お前、忘れてねえだろうな」
ベルズにそう言われても、何も思い出せない。わたしはベルズと何か約束をしただろうか。
わたしがきょとんとしていたからだろう、ベルズは溜息のような音を出した。いや、わたしの頭にそう響いてきただけか。
「俺がお前に力を貸す条件があっただろうが」
「ああ、宝玉の話?」
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ベルズは無償で協力してくれているわけではないのだった。この国の至宝である宝玉を見たい、と言っていたのだ。わたしはその話をすっかり忘れてしまっていた。今まで一度もアルマスに宝玉の話をしたことはなかった。
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「ごめん。今日、訊いてみるね」
「忘れるなよ。時間制限があるわけじゃねえが、俺も早いところ宝玉の中身を知りてえんだ」
「うん。大丈夫、今日は忘れない」
そう言っていても、アルマスが今日来るとは限らない。今日こそはジョセフィーヌのところへ行っているかもしれないし、政務で遅くなるからひとりで眠るかもしれない。わたしからアルマスを呼ぶこともできなくはないけれど、アルマスの行動を縛ってしまうようで、わたしからアルマスを誘うことはなかった。誘ったら喜んで来てくれそうだ。
「宝玉から宝を手に入れたら、お前にも分けてやるよ」
「うぅん、別に、いらないよ。わたしが持っていても価値がないでしょ?」
この世界で金銀財宝を手にしたとしても、何の意味もない。生活は今のままで充分すぎるくらい裕福だし、宝を手にしようとは思わなかった。もし欲しいものがあるなら、アルマスに頼めばいいと思っていた。あの人なら何でも入手してきそうだ。
けれどベルズは鼻で笑った。わたしの答えが愚かだと言われている気分だった。
「隠されている宝が普通の宝物だったら、俺は要らねえよ。そうじゃねえと思ってるから欲しいんだ」
「そうじゃない、って?」
そこで、わたしの部屋のドアがノックされた。これは、アルマスだ。今日もわたしのところに来てくれたのだ。わたしは喜びで胸が一杯になる。
わたしはベルズとの会話を中断して、ドアを開けに行く。そこには疲れた顔のアルマスが立っていた。アルマスはわたしの姿を見るなり、抱きついてくる。
「ああ、ルミア。疲れたよ、今日は本当に疲れた」
政務室にいる時とわたしの部屋にいる時で、アルマスの性格と雰囲気は全然違う。政務室にいる時は気を張っているらしい。わたしの前で素に戻ってくれるというのは、わたしがアルマスの癒しになれているような気がして、とても嬉しいことだった。
「アルマス様、お疲れ様でした。今日は少し遅かったですね」
「忙しかったんだ。でもどうしてもきみに会いたかったから、頑張ったんだよ」
「ありがとうございます。お部屋でゆっくりしましょう」
わたしはいったんアルマスから離れて、部屋のドアを閉める。アルマスはふらふらと歩いていき、ベッドに身体を投げ出した。柔らかいベッドにアルマスの身体が沈む。
アルマスは疲れているようだけれど、わたしも忘れないうちにベルズとの約束を果たしてしまいたい。アルマスとの逢瀬の時間が本格的に始まる前に訊いておかなきゃ。
わたしがアルマスの横に座ると、アルマスはわたしの手を引いてベッドに倒した。わたしの身体はアルマスの腕の中に収まってしまう。
「ルミア。やっときみを抱くことができる」
「大変だったんですね。どうぞ、心ゆくまで抱きしめてください」
「そうするよ。ルミア、愛している」
「……わたしも。愛しています、アルマス様」
互いに愛を囁く。アルマスに愛していると言われるだけで、胸の奥が熱くなってしまう。未だに慣れなくて、わたしはきっと耳まで赤くなっていることだろう。
でも、今日のわたしにはやるべきことがある。わたしはアルマスに抱かれたまま、ベルズとの約束を口に出した。
「あの、アルマス様。この国には至宝と呼ばれる宝玉があるんですか?」
「どうして、そんなことを?」
話題にするのが急すぎたせいか、アルマスは訝しむように言った。わたしは気にするようなそぶりを見せずに、アルマスに返す。
「ベルズがその宝玉を見たいと言っているんです。何か、力になるそうで」
わたしは嘘と本当を混ぜこぜにして伝える。アルマスは「うーん」と言って、わたしの顔を覗き込んでくる。
「確かに、宝玉はあるよ。何らかの力を秘めているというのも、宝玉にまつわる伝承の中で残されている」
アルマスは何かを悩んでいるようだった。わたしは強く押すことはせず、この先はアルマスに任せることにした。アルマスがだめだと言うのなら、別の方法を考えなければならない。
たっぷり悩んで、アルマスはわたしに答えた。
「すぐには見せられない。あれを持ち出すにはイジーンにも話を通さないといけないんだ。ぼくの一存で持ち出すことができるのなら、すぐルミアに見せられるんだけど」
国にとっても重要な宝なのだろう。予想はしていたが、厳重に守られているようだ。わたしは落胆することもなく、ただ頷くだけにした。別にわたしが見たいわけではないから、どれだけ時間がかかっても構わなかった。
「ちっ、やっぱりすぐには無理か。仕方ねえ、時々つつくようにしてくれよ」
ベッドの下で聞いていたのだろう、ベルズがわたしに言った。わたしは応えず、アルマスの腕の中で心地よく横になっていた。
まあ、これでしばらくは油断できるだろう。でもまた忘れないようにしないと、ベルズに怒られてしまう。
「イジーンをどう説得するかな。神の使いであるベルズが見たがっている、というだけで持ち出させてくれたらいいんだけど」
「あの、今すぐでなくても構いません。アルマス様のご都合のよい時で」
「そうか。できるだけ早く見せられるようにするよ。きみの頼みだからね」
アルマスはそう言って笑った。わたしの大好きな笑顔だった。
「しかし、ベルズが見たいと言うってことは、あの宝玉は本物の宝なんだな」
「本物の宝、とは?」
「ぼくにはただのガラス玉にしか見えなかったからね。小さい頃に一度見ただけだけれど、あれに何か特別な力があるとは思えなかったな」
「そうなんですね。神様にしかわからない力が秘められているのかもしれませんね」
わたしは話を合わせた。きっとわたしが見てもただのガラス玉にしか見えないだろう。ベルズだからこそ価値を見出せるものなのかもしれない。もしかしたら、世界の至宝というのも、悪魔だからこそ欲するものだという可能性はある。ああ、それならわたしに分けるなんて言わないか。
アルマスはわたしの身体を抱き、上を向かせてキスしてくる。わたしはそれを受け入れて、アルマスとのキスを楽しむ。わたしの心音が大きく速くなることには、気づかれないとよいと思った。
アルマスはわたしから顔を離して、その青色の双眸にわたしを映す。
「ルミア、困っていることはない? ぼくが何かしてあげられることがあれば言って」
「特に、ありません。こうして会いに来てくださるだけで充分です」
「きみは多くを望まないね。長く眠る前もそうだったけれど、欲がない」
長い眠りに就く前のルミアも、わたしと同じような人柄だったのだろう。そこは心配していたが、わたしはうまくルミアになれているようだった。アルマスはわたしがルミアになったことには気づいていないみたいだ。アルマスが気づかないのなら、他の誰も気づくことはないだろう。
強いて望みを挙げるとするのなら、ジョセフィーヌのところに行かずに、毎晩わたしのもとに来てほしい。わたしのそんなどうしようもない独占欲は、心の中に秘めておいた。言ってもアルマスを困らせるだけだ。アルマスだって本心からジョセフィーヌのところに行きたいわけではないのだから。
「何かしてほしいことがあったら遠慮せずに言ってくれ。できるだけ叶えたい」
「はい、アルマス様。何かあれば申し上げますね」
「そう言って、きみは我慢しそうだからなあ。本当に、ちゃんと言ってくれよ」
「ちゃんと申し上げますから。信用してください」
アルマスはわたしの声に笑いながら、またわたしに口づけた。今度は触れ合うだけの軽いキスではなくて、唇を貪るような熱いキス。わたしはそれも受け入れて、唇が解放された後も、とろんとした瞳でアルマスを見つめた。
アルマスは興奮を抑えきれないような顔でわたしを見ていた。ああ、いつもの顔だ。わたしを抱きたい時にする、見慣れてきた表情。わたしはその顔に手を伸ばして、アルマスの頬に触れる。アルマスの温もりが伝わってくる。
「ルミア」
熱のこもった声で名前を呼ばれる。わたしはふっと笑った。
「ふふ、お顔に書いてますよ。どうぞ、お好きなように触ってください」
「顔に出ていたかな。なんだか恥ずかしいな」
そう言いながらも、アルマスはわたしの首筋にキスを落とした。
こうして、わたしとアルマスの何度目かの夜が始まった。
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