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その夜、私はくたくたになって寝所へ向かっていた。
王子の来訪を受けて、聖女候補達は突然のパーティを催した。
料理人やメイド達が呼ばれたため私の負担は軽くなったが、それでも目が回るほど忙しかった。
ようやくベッドへ入れる、そう思って寝所の廊下を歩いていると、ジェラの部屋から声がした。
「王子様……王子様ぁ……」
甘ったるい声がドアの隙間から漏れている。
差し込む薄明かり。私はそっと中を覗いた。
見えたのは、王子とジェラの交わり――そして全裸で横たわる三人の聖女候補だった。
「見て! 誰か覗いているわ!」
「何ッ!? 早く捕まえろッ! 逃がすんじゃないぞッ!」
「分かりましたわ、王子様! スロウ!」
その声と同時に、私は魔法にかけられた。
聖女候補の一人が時間魔法をかけ、私の動きを封じたのだ。
全身が固まって動けない、そんな不快感に苛まれているとドアが開いた。
「なんだ……ノアじゃない」
「他の聖女候補じゃなくて良かったわ。簡単に黙らせられるもの」
その言葉に私は恐怖を感じた。
早く逃げなきゃいけないのに、呼吸さえできない。
このままじゃ窒息死すると狼狽えていると、時間魔法をかけた聖女候補が言った。
「頭だけ魔法を解きますわ。ほら、呼吸をなさい」
「……うぅっ!」
その瞬間、私は思い切り息を吸い込んだ。
深呼吸して少しだけ落ち着きを取り戻すと、私は辺りを見渡した。
全裸のジェラと聖女候補達、そして王子が見下ろしている。
「おい、こいつをどうする? 見られたからには、ただじゃ済まさないぞ」
「大丈夫ですわ、王子様。ノアが絶対に喋れないようにしましょう」
「本当か? 一体どうするつもりだ?」
するとジェラはベッドからおぞましい道具を持ってきた。
ぬらぬらと液体に濡れたそれは――
「これでノアの純潔を奪いましょう。そして見知らぬ男と関係を持ったと言いふらすのです。そうなればノアは最悪死罪、軽くても聖女候補から外れます。貴族の娘なら難しいですが、どうせ平民ですから、いいでしょう?」
その言葉に私の目の前は真っ白になった。
私の純潔を奪う? まさか本気で?
聖女である私が汚れたら国が亡ぶというのに――
すると王子は醜く笑った。
「くく、それは面白いな。俺は全て見て見ぬ振りをしよう。お前達が好きにやれ」
「かしこまりましたわ、王子様。さあ、ノアの足を開かせなさい」
「や……やめてッ……!」
王子の来訪を受けて、聖女候補達は突然のパーティを催した。
料理人やメイド達が呼ばれたため私の負担は軽くなったが、それでも目が回るほど忙しかった。
ようやくベッドへ入れる、そう思って寝所の廊下を歩いていると、ジェラの部屋から声がした。
「王子様……王子様ぁ……」
甘ったるい声がドアの隙間から漏れている。
差し込む薄明かり。私はそっと中を覗いた。
見えたのは、王子とジェラの交わり――そして全裸で横たわる三人の聖女候補だった。
「見て! 誰か覗いているわ!」
「何ッ!? 早く捕まえろッ! 逃がすんじゃないぞッ!」
「分かりましたわ、王子様! スロウ!」
その声と同時に、私は魔法にかけられた。
聖女候補の一人が時間魔法をかけ、私の動きを封じたのだ。
全身が固まって動けない、そんな不快感に苛まれているとドアが開いた。
「なんだ……ノアじゃない」
「他の聖女候補じゃなくて良かったわ。簡単に黙らせられるもの」
その言葉に私は恐怖を感じた。
早く逃げなきゃいけないのに、呼吸さえできない。
このままじゃ窒息死すると狼狽えていると、時間魔法をかけた聖女候補が言った。
「頭だけ魔法を解きますわ。ほら、呼吸をなさい」
「……うぅっ!」
その瞬間、私は思い切り息を吸い込んだ。
深呼吸して少しだけ落ち着きを取り戻すと、私は辺りを見渡した。
全裸のジェラと聖女候補達、そして王子が見下ろしている。
「おい、こいつをどうする? 見られたからには、ただじゃ済まさないぞ」
「大丈夫ですわ、王子様。ノアが絶対に喋れないようにしましょう」
「本当か? 一体どうするつもりだ?」
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「くく、それは面白いな。俺は全て見て見ぬ振りをしよう。お前達が好きにやれ」
「かしこまりましたわ、王子様。さあ、ノアの足を開かせなさい」
「や……やめてッ……!」
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