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第3話
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「ねぇ……ねぇ……大丈夫……?」
「う、うぅん……――」
私は優しく揺り動かされ、目を覚ましました。
横を見ると端正な顔立ちの男性が心配そうにこちらを見ています。
明るい色の髪に、同色の美しい瞳――
まるで理想の王子様のような――
あれ……? 夢でも見てるのかな……? そう思った時、全て思い出しました。
「あっ! 私、貴方に助けられて……お風呂で寝ちゃって……」
「良かった、気がついたんだね」
直後、私は自分の体に目をやりました。
どろどろの汚い肉塊を彼に見せてしまった……!
泣き出しそうな思いで、自分を責めます。
しかし――
「あれ? 体が……すっきりしてる……」
そこには真っ白な女性の肉体がありました。
出るところは出て、締まるところは締まっている美しい肉体です。
「ごめん……何時間も戻ってこないから、つい心配になって……」
「い、いえ……そんなことはいいのです……! それより鏡をくれませんか……!?」
そして彼は手鏡を持ってきてくれました。
震える手で、それを受け取り、鏡を覗くと――
「え!? 顔が違う……! 誰……!?」
そこには美しい女の人が映っていました。
痣や傷跡が痛々しく刻まれていますが、まぎれもなく美人です。
「ねえ、もしかして君って……隣国の聖女なのかな?」
「わ、私を知っているんですか!?」
「やっぱり……昨日から聖女が消えたって話題になってるよ」
「そうなんですか……やっぱり私は捨てられたんですね……」
その言葉に彼は悲しげな表情をし、そして言いました。
「もし居場所がないのなら、ここにいてくれていいんだよ?」
「ほ、本当ですか!? いいんですか!?」
「うん、僕の研究は君のためになるかもしれないしね」
「研究……?」
すると彼はお風呂に浮かんだハーブを持ち上げ、言いました。
「僕は王宮お抱えの薬師なんだ。悪しきものを払う研究をしている」
「そうなんですね……! だから私の汚れや悪いものが落ちたんだ……!」
「うん、きっと君の役に立ってみせる。さあ、そろそろ服を着てくれるかな?」
「あっ……――」
それから私は彼の家に厄介になることになりました。
彼の家はとても清潔で、塵ひとつ落ちていません。
しかも彼自身も精霊に守られ、穢れが何もないのです。
お陰で、私に汚いものも悪いものもつくことはありません。
「ありがとう……お陰で私は汚物じゃなくなりました……」
今や私は国一番の美女と呼ばれています。
彼が調合した香油やハーブは常に悪しきものを払い、寄せ付けないのです。
はっきり言って聖女の力よりも、薬師としての彼の力の方が断然上です。
「良かったね、ルシアナ。もう聖女の役目は果たさなくてもいいんだよ」
「それがちょっとだけ悔しいんです……。私はあなたの前じゃ、ただの人なんです……」
「いいんだよ、それで。今まで得られなかった普通の幸せを全部あげるよ」
そう言って彼は私に口づけてくれました。
来月には結婚し、私は薬師の仕事を手伝います。
あ、そうそう――
私が以前いた国の王子ですが、狂ってしまい処刑されたそうです。
どうやら悪霊に体を乗っ取られたようですね。
王家の血を引くものを全て殺し、暴れ回ったそうでした。
でも私にはもう関係のないこと――
私は彼との幸せな生活を大切に送るのでした。
「う、うぅん……――」
私は優しく揺り動かされ、目を覚ましました。
横を見ると端正な顔立ちの男性が心配そうにこちらを見ています。
明るい色の髪に、同色の美しい瞳――
まるで理想の王子様のような――
あれ……? 夢でも見てるのかな……? そう思った時、全て思い出しました。
「あっ! 私、貴方に助けられて……お風呂で寝ちゃって……」
「良かった、気がついたんだね」
直後、私は自分の体に目をやりました。
どろどろの汚い肉塊を彼に見せてしまった……!
泣き出しそうな思いで、自分を責めます。
しかし――
「あれ? 体が……すっきりしてる……」
そこには真っ白な女性の肉体がありました。
出るところは出て、締まるところは締まっている美しい肉体です。
「ごめん……何時間も戻ってこないから、つい心配になって……」
「い、いえ……そんなことはいいのです……! それより鏡をくれませんか……!?」
そして彼は手鏡を持ってきてくれました。
震える手で、それを受け取り、鏡を覗くと――
「え!? 顔が違う……! 誰……!?」
そこには美しい女の人が映っていました。
痣や傷跡が痛々しく刻まれていますが、まぎれもなく美人です。
「ねえ、もしかして君って……隣国の聖女なのかな?」
「わ、私を知っているんですか!?」
「やっぱり……昨日から聖女が消えたって話題になってるよ」
「そうなんですか……やっぱり私は捨てられたんですね……」
その言葉に彼は悲しげな表情をし、そして言いました。
「もし居場所がないのなら、ここにいてくれていいんだよ?」
「ほ、本当ですか!? いいんですか!?」
「うん、僕の研究は君のためになるかもしれないしね」
「研究……?」
すると彼はお風呂に浮かんだハーブを持ち上げ、言いました。
「僕は王宮お抱えの薬師なんだ。悪しきものを払う研究をしている」
「そうなんですね……! だから私の汚れや悪いものが落ちたんだ……!」
「うん、きっと君の役に立ってみせる。さあ、そろそろ服を着てくれるかな?」
「あっ……――」
それから私は彼の家に厄介になることになりました。
彼の家はとても清潔で、塵ひとつ落ちていません。
しかも彼自身も精霊に守られ、穢れが何もないのです。
お陰で、私に汚いものも悪いものもつくことはありません。
「ありがとう……お陰で私は汚物じゃなくなりました……」
今や私は国一番の美女と呼ばれています。
彼が調合した香油やハーブは常に悪しきものを払い、寄せ付けないのです。
はっきり言って聖女の力よりも、薬師としての彼の力の方が断然上です。
「良かったね、ルシアナ。もう聖女の役目は果たさなくてもいいんだよ」
「それがちょっとだけ悔しいんです……。私はあなたの前じゃ、ただの人なんです……」
「いいんだよ、それで。今まで得られなかった普通の幸せを全部あげるよ」
そう言って彼は私に口づけてくれました。
来月には結婚し、私は薬師の仕事を手伝います。
あ、そうそう――
私が以前いた国の王子ですが、狂ってしまい処刑されたそうです。
どうやら悪霊に体を乗っ取られたようですね。
王家の血を引くものを全て殺し、暴れ回ったそうでした。
でも私にはもう関係のないこと――
私は彼との幸せな生活を大切に送るのでした。
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