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第2話
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今まで精神を削り、体力を削り、魂を削り……この国に使えてきたのに。
貴族の玩具? 処刑? どうして?
私が何をしたというの?
「くく……どんな処刑にするかは貴族達に任せよう。まあ、一週間玩具になって生きていたらの話だがな?」
その言葉に虫唾が走り、冷や汗が流れる。
聖女として上流社会に入って知ったことがあった。
それは貴族が奴隷を飼い、残虐にいたぶっているという事実だ。
眼を抉られ、舌を切られ、四肢を切断された奴隷達を何人も見てきた……そしてその治癒を任された。
明日は我が身――そんな不気味な予感が過ったが、必死に否定してきた。
しかしここに来て、その予感に追いつかれることになった。
「ふふふ、聖女様をいたぶれるとは光栄ですな」
「おや、もう聖女ではありませんよ。ただの平民女です」
「そうでしたな。そうと決まれば、思う存分やりましょう」
そう言って、用心棒を従えた貴族達が私に近づいてくる。
辺りを見渡しても嫌な笑みを浮かべた貴族ばかり――味方はいない。
私は咄嗟に駆けだしたが、服を、髪を掴まれて引き摺り倒された。
「はははっ! 無様だな、元聖女ライカ! どうだ、聖力を使って抵抗してみろ!」
「くっ……」
常時結界を張っているため、聖力は全体の五十分の一くらいしか使えない。
しかし今は非常事態だ。結界を消し、全ての力を脱出に使うしか――
その時、私の腕に奇妙な腕輪が嵌められた。
「こ、これは――」
「聖力を封じ、吸収する魔道具だ。これでお前は常人と変わらない」
「そ、そんなっ」
確かに結界を消したのに、聖力がほとんど使えない。
できるのは目の前の憎き王子の指を一本切断することくらいだろう。
私は腕輪を外そうとしたが、用心棒に腕を捻られた。
「うぅっ……!」
「どうやら詰みのようだな」
王子が、貴族が、にやにやと下品な笑みを浮かべて近づいてくる。
このまま何もしなければ、私は貴族の慰みものになるだろう。
駄目だ。終わった。もう――ここで死ぬしかない。
私はそっと目を閉じると、聖力を使って自らの頸動脈を切断した。
貴族の玩具? 処刑? どうして?
私が何をしたというの?
「くく……どんな処刑にするかは貴族達に任せよう。まあ、一週間玩具になって生きていたらの話だがな?」
その言葉に虫唾が走り、冷や汗が流れる。
聖女として上流社会に入って知ったことがあった。
それは貴族が奴隷を飼い、残虐にいたぶっているという事実だ。
眼を抉られ、舌を切られ、四肢を切断された奴隷達を何人も見てきた……そしてその治癒を任された。
明日は我が身――そんな不気味な予感が過ったが、必死に否定してきた。
しかしここに来て、その予感に追いつかれることになった。
「ふふふ、聖女様をいたぶれるとは光栄ですな」
「おや、もう聖女ではありませんよ。ただの平民女です」
「そうでしたな。そうと決まれば、思う存分やりましょう」
そう言って、用心棒を従えた貴族達が私に近づいてくる。
辺りを見渡しても嫌な笑みを浮かべた貴族ばかり――味方はいない。
私は咄嗟に駆けだしたが、服を、髪を掴まれて引き摺り倒された。
「はははっ! 無様だな、元聖女ライカ! どうだ、聖力を使って抵抗してみろ!」
「くっ……」
常時結界を張っているため、聖力は全体の五十分の一くらいしか使えない。
しかし今は非常事態だ。結界を消し、全ての力を脱出に使うしか――
その時、私の腕に奇妙な腕輪が嵌められた。
「こ、これは――」
「聖力を封じ、吸収する魔道具だ。これでお前は常人と変わらない」
「そ、そんなっ」
確かに結界を消したのに、聖力がほとんど使えない。
できるのは目の前の憎き王子の指を一本切断することくらいだろう。
私は腕輪を外そうとしたが、用心棒に腕を捻られた。
「うぅっ……!」
「どうやら詰みのようだな」
王子が、貴族が、にやにやと下品な笑みを浮かべて近づいてくる。
このまま何もしなければ、私は貴族の慰みものになるだろう。
駄目だ。終わった。もう――ここで死ぬしかない。
私はそっと目を閉じると、聖力を使って自らの頸動脈を切断した。
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