大好きな第一王子様、私の正体を知りたいですか? 本当に知りたいんですか?

サイコちゃん

文字の大きさ
上 下
3 / 6

第3話

しおりを挟む
 そんな時、ある少女が二人目の聖女に選ばれたという知らせが入った。聖女の世話役をしている第一王子クライドはすぐにその少女レイラと会った。彼女は真っ青な髪と瞳をした冷たい印象の女性だ。ああ、彼女のように男を頼らなさそうな女はいいな……こんな女と恋愛がしたい……と疲れ切ったクライドは思った。

「おいたわしや、クライド様」

 レイラは治癒魔法を使い、クライドの精神疲労を癒す。
 そして彼女の妖艶な唇が美しい弧を描いた。

「私があなたを癒して差し上げます。だって私はあなた様が気になりますわ」
「ほ、本当か……? レイラ……?」
「ええ、本当です」

 そのまま二人は抱き合って甘く情熱的なキスをした。
 疲れが吹っ飛んだクライドは決意した――カサンドラと別れようと。






「どうして!? どうして私と別れるの!? 婚約者でしょう!?」
「我が儘なお前とはもうやっていけない! そもそも婚約もまだしていないし、俺達は別れさえすれば、もう他人同然だ!」
「嘘よ、嘘! 絶対に別れたりしない……だって私は……」
「何だ!? 何が言いたい!?」

 するとカサンドラはスカートを捲り、お腹を見せた。

「服の上からは分からないけど、ほら! お腹が膨らんでいる! 私はあなたの子供を身籠ったのよぉ!」
「な、何だって……!?」

 たしかにカサンドラのお腹は膨らんでいる気がする。
 しかし太っただけだと言われればそんな気もする程度の膨らみだ。
 クライドは悩んだ挙句、また妊娠を否定した。

「お前も卑怯だな……! アレクサンドラみたいなことを言いやがって……!」
「お姉様なんかと一緒にしないで! 私達は寝ていたでしょう!?」
「でも避妊はしていた……! お前の言葉は嘘っぱちだ……!」
「酷い! 酷いわ!」

 そして泣き出したカサンドラを置いて、クライドは部屋を出ようとした。
 その時、背中に彼女が寄り添い、こんなことを言い出したのだ。

「私……あなたに隠していたことがあるの……! 実は私の正体は……――」

 クライドはカサンドラを突き飛ばすと、部屋から出た。
 扉の奥から呪詛のような啜り泣きが聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【R15】婚約破棄イベントを無事終えたのに「婚約破棄はなかったことにしてくれ」と言われました

あんころもちです
恋愛
やり直しした人生で無事破滅フラグを回避し婚約破棄を終えた元悪役令嬢 しかし婚約破棄後、元婚約者が部屋を尋ねに来た。

「 この国を出て行け!」と婚約者に怒鳴られました。さっさと出て行きますわ喜んで。

十条沙良
恋愛
この国の幸せの為に頑張ってきた私ですが、もう我慢しません。

義妹に誑かされた王太子に婚約破棄され聖女の地位も剥奪されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 苦しい聖女の務めから解放されました。

「次点の聖女」

手嶋ゆき
恋愛
 何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。  私は「次点の聖女」と呼ばれていた。  約一万文字強で完結します。  小説家になろう様にも掲載しています。

追放された令嬢は英雄となって帰還する

影茸
恋愛
代々聖女を輩出して来た家系、リースブルク家。 だがその1人娘であるラストは聖女と認められるだけの才能が無く、彼女は冤罪を被せられ、婚約者である王子にも婚約破棄されて国を追放されることになる。 ーーー そしてその時彼女はその国で唯一自分を助けようとしてくれた青年に恋をした。 そしてそれから数年後、最強と呼ばれる魔女に弟子入りして英雄と呼ばれるようになったラストは、恋心を胸に国へと帰還する…… ※この作品は最初のプロローグだけを現段階だけで短編として投稿する予定です!

何でも欲しがる妹を持つ姉が3人寄れば文殊の知恵~姉を辞めます。侯爵令嬢3大美女が国を捨て聖女になり、幸せを掴む

青の雀
恋愛
婚約破棄から玉の輿39話、40話、71話スピンオフ  王宮でのパーティがあった時のこと、今宵もあちらこちらで婚約破棄宣言が行われているが、同じ日に同じような状況で、何でも欲しがる妹が原因で婚約破棄にあった令嬢が3人いたのである。その3人は国内三大美女と呼ばわれる令嬢だったことから、物語は始まる。

聖水を作り続ける聖女 〜 婚約破棄しておきながら、今さら欲しいと言われても困ります!〜

手嶋ゆき
恋愛
 「ユリエ!! お前との婚約は破棄だ! 今すぐこの国から出て行け!」  バッド王太子殿下に突然婚約破棄されたユリエ。  さらにユリエの妹が、追い打ちをかける。  窮地に立たされるユリエだったが、彼女を救おうと抱きかかえる者がいた——。 ※一万文字以内の短編です。 ※小説家になろう様など他サイトにも投稿しています。

処理中です...