「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん

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第6話

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「アラン様、今日はお腹も張っていなくて、とても具合がいいんですの」
「イヴェット様、それは良かった。一応、赤ちゃんの様子を診ましょう」

 そしてイヴェットがお腹を出すと、アランはそっと手を乗せた。
 それは魔力照射によって胎児の姿を把握する術である。
 跳ね返ってきた魔力は間違いなく健康な胎児の姿を描いている。
 アランは頷き、お腹から手を離した。

「赤ちゃんも元気なようです。このままなら、一週間後無事に産まれるでしょう」
「あぁ……良かった……! 全部アラン様のお陰ですわ……!」
「そんなことはありません。あなたの頑張りの賜物ですよ」

 アランは恥ずかしそうに頬を掻く。
 そんな態度にイヴェットは微笑ましくなった。
 彼は年下だったが、噂に違わず頼りになる治療人である。
 きっと多くの患者が彼を慕っているに違いない。

「それで……出産後のことなのですが……」

 アランが声を潜めて言った。
 イヴェットは現実に引き戻され、急に不安になった。

「このまま治療院に残り、しばらくは僕の研究対象を務めていただけますか?」
「そんな……! これ以上、世話になる訳にはいきません……!」
「しかしお話を聞く限り、あなたの状況は出産後こそ危険になりそうですよ」
「確かに、おっしゃる通りです……」

 このまま出産を迎え、赤ん坊と共に家へ帰ったらお仕舞だ。
 イヴェットはその状況を想像し、震えてしまう。
 そんな彼女を見たアランはその肩に優しく手を置いた。

「心配はいりませんよ、イヴェット様。あなたはこのまま治療院へ残って下さい。全部僕達が何とかします。しばらくは安心してお過ごし下さい」
「アラン様……どうして……どうしてそんなにお優しいのですか……?」

 イヴェットは返しきれないほどの恩を受け、恐縮していた。
 するとアランはにっこりと微笑んで、彼女を元気付けたのだ。

「あなたが陥っている状況は、昔からジャックの話しで知っています。僕もひとりの人間として、全てを奪っていこうとする妹さんとご両親が許せないのです。僕もジャックもあなたの味方ですよ」

 その言葉にイヴェットは大きく目を見開いた。
 今までずっとひとり切りで耐えてきた――しかしここで味方が現れた。

「ありがとう……ありがとうございます……アラン様……」

 彼女は次々と涙を零し、咽び泣いたのだった。
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