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第1話

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 妹のジャネットが言った。
 姉のイヴェットは聞き逃がした。

「え? 今、何て言ったの?」

 ここはイヴェットと夫が暮らす新居である。
 そこに妊娠の便りを受け取った両親と妹が遊びに来ていた。
 両親との会話に夢中になっている間、妹が何かを言ったらしい。
 姉が聞き返すと、妹は子供のように頬を膨らませて文句を言った。

「もううぅ! お姉様ったら、ちゃんと聞いて! 大事なことなのぉ!」
「ああ、はいはい、分かったわ。もう一度言って?」

 そして妹はにっこり微笑むと言った。
 それはまるで髪飾りをねだるような調子だった。

「あのね、お姉様が身籠っている赤ちゃんがほしいの。私にちょうだい?」
「――え? 赤ちゃん?」
「そう! 私、ずっとずっと大事にするわ! だから、赤ちゃんちょうだい!」

 その言葉にイヴェットは凍り付いた。
 まだ膨らんでもいないお腹を押さえ、黙り込む。
 すると傍にいた両親が手を叩いて、妹に賛同したのだ。

「まあ! それは良いわ! そうしなさいな!」
「ああ、それがいいだろうな。そうするといい」
「は……? 何を言っているのお母様、お父様……?」

 イヴェットは妹と両親の言葉が理解できないでいた。
 いいや、言っている意味は分かるのだが、理解を示せない。
 なぜ自分の子を妹に差し出さなければいけないのか、頭を悩ませる。

「お姉様、いいじゃない! ね? ね? くれるでしょう?」
「うふふ、くれるに決まってるわよ? ジャネット」
「そうだぞ、きっとお姉ちゃんは喜んで差し出すぞ」

 三人の言葉にイヴェットは寒気がした。
 このままでは自分の子供が奪われる――そう思った彼女は拒否する。

「ちょ、ちょっと! 赤ちゃんをあげるなんて、絶対に嫌よ! そんなに子供が欲しいなら、ジャネットは結婚でも何でもすればいいじゃない!」

 そう言った途端、三人は冷たい視線を向けてきた。
 それはまるで三匹の蛇に睨まれたようだった。
 イヴェットは恐怖を感じ、息を飲み込む。

「お母様ぁ! お父様ぁ! お姉様が意地悪を言うわ!」
「イヴェット! どうしてそんなことを言うの!」
「そうだぞ! どうしてジャネットを非難する!」

 イヴェットの額から冷や汗が流れ、目の前が歪んで見える。
 ああ、この三人を新居へ招くんじゃなかった。
 やはりこいつらはモンスターなのだ――
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