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第3話
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その言葉に伯爵とマルチナは呆気に取られた。
「は? 何をおっしゃいます?」
「え? 何を言っているのですか?」
親子の言葉にウォレスはにこにこと微笑んで答える。
「この家の侍女アデルを婚約者にすると言ったのだ。だって彼女ほど僕の婚約者に相応しい女性はいないだろう?」
そしてウォレスはアデルをじっと見詰めた。彼のその射貫くような視線を受けた女性は大抵頬を染める。しかしアデルは無言のまま無表情を崩さない。一方、伯爵とマルチナは狼狽えていた。まさか侍女が選ばれるとは夢にも思っていなかったのだ。
「しかしアデルは下賤な侍女ですよ!? 王妃になれる訳がありません!」
「そうですわ! どうしてこんなに醜い女が王妃に選ばれるのでしょう!?」
ウォレスは騒ぎ立てる親子を制すると、こう提案した。
「ふむ、確かにアデルは侍女だし、野暮ったい見た目をしている。しかししばらく彼女を少し貸してくれ給え。彼女が王妃に相応しいことを僕が証明してみせよう。さあ、彼女を着替えさせてくれ」
ウォレスが手を叩くと、従者達がアデルを囲んで連れ去った。
それから数十分後――
「ウォレス様、準備ができました」
「よし、アデルを通せ」
やがて広間にひとりの美少女が入ってきた。美しく巻かれた漆黒の髪、エメラルドを光に透かした瞳、瑞々しい果実を思わせる赤い唇、豊かな胸元と細腰が強調された濃緑色のドレス――それは誰もが息を飲むほどの美貌で、目が離せないほどの魅力だった。
「だ、誰ですの……!? この令嬢は……!?」
「そうだ……! どこから連れてきたんです……!」
そう訴えるマルチナと伯爵にウォレスは言った。
「彼女はアデルだよ。美しいだろう?」
「そんな……あのブスが……こんな……」
「し、信じられん……こんな美少女だったとは……」
「は? 何をおっしゃいます?」
「え? 何を言っているのですか?」
親子の言葉にウォレスはにこにこと微笑んで答える。
「この家の侍女アデルを婚約者にすると言ったのだ。だって彼女ほど僕の婚約者に相応しい女性はいないだろう?」
そしてウォレスはアデルをじっと見詰めた。彼のその射貫くような視線を受けた女性は大抵頬を染める。しかしアデルは無言のまま無表情を崩さない。一方、伯爵とマルチナは狼狽えていた。まさか侍女が選ばれるとは夢にも思っていなかったのだ。
「しかしアデルは下賤な侍女ですよ!? 王妃になれる訳がありません!」
「そうですわ! どうしてこんなに醜い女が王妃に選ばれるのでしょう!?」
ウォレスは騒ぎ立てる親子を制すると、こう提案した。
「ふむ、確かにアデルは侍女だし、野暮ったい見た目をしている。しかししばらく彼女を少し貸してくれ給え。彼女が王妃に相応しいことを僕が証明してみせよう。さあ、彼女を着替えさせてくれ」
ウォレスが手を叩くと、従者達がアデルを囲んで連れ去った。
それから数十分後――
「ウォレス様、準備ができました」
「よし、アデルを通せ」
やがて広間にひとりの美少女が入ってきた。美しく巻かれた漆黒の髪、エメラルドを光に透かした瞳、瑞々しい果実を思わせる赤い唇、豊かな胸元と細腰が強調された濃緑色のドレス――それは誰もが息を飲むほどの美貌で、目が離せないほどの魅力だった。
「だ、誰ですの……!? この令嬢は……!?」
「そうだ……! どこから連れてきたんです……!」
そう訴えるマルチナと伯爵にウォレスは言った。
「彼女はアデルだよ。美しいだろう?」
「そんな……あのブスが……こんな……」
「し、信じられん……こんな美少女だったとは……」
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