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2.お嬢様の縁談
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その日は、珍しくお嬢様のお父上であるご主人様がご在宅だった。
ご主人様は旅好きで、1ヶ月のうち3週間以上はどこかへ出掛けていて留守だった。お嬢様には兄が一人いたが、お兄様は今、海外に留学している。お嬢様の母にあたる奥様は、お嬢様が幼い頃に亡くなってしまったという。
よって、この屋敷にはお嬢様しかいらっしゃらないことも多かった。
ご主人様に呼び出された僕は、昼に来客があることを知らされた。「大切なお客なので、丁重にもてなすように」とのことだった。
来客はマレシャルという名家の60代くらいの紳士と、その息子と思われる20代後半か30代前半くらいの青年だった。父親の方は人の良さそうな好々爺といった風情だったが、息子の方は、何と言うか、いけすかない男だと思った。育ちもよく、外見も整っており、聡明そうで、一見非の打ちどころがないのだが、自分に酔っているような傲慢さが感じられた。いかにも爽やかにお嬢様に話しかける姿を見て、僕は思わず嫉妬せずにはいられなかった。僕は感情を殺し、慇懃に料理を給仕し続けた。
だが、ご主人様の一言で、僕の心は大きく乱されることになる。
「セルジュ君、うちの娘を貰ってやってくれないかね。君のような人が義理の息子になってくれるなら光栄だよ」
その時、僕はすべてを理解した。今日の昼餐は、お嬢様の縁談のために企てられたのだ。
「ミエル、お前はどうだ?彼はなかなかいい青年だろう」
父親二人はどちらも顔をほころばせ、満足げに見えた。
「僕も、ミエルさんのような素敵なお嬢さんを妻にできるのは、とても光栄なことです」
セルジュは完璧に受け応えた。彼のにやけた顔が、どうにも憎たらしかった。どうせお前は、お嬢様を性の対象としてしか見ていないだろう。この世界に数多いる、若く美しい娘のうちの一人でしかないのだろう。
こんないけすかない奴にお嬢様のヴァージンが奪われると思うと悔しさで気が狂いそうになるが、反面、僕は心の奥底でそれを望んでいるような気がしてならなかった。
一方、当のお嬢様はというと、いつものようにクールな表情を浮かべていて、内心何を考えているのか知る由もなかった。
それから数日後、僕は思っても見なかった光景を目の当たりにすることになる。
ご主人様は旅好きで、1ヶ月のうち3週間以上はどこかへ出掛けていて留守だった。お嬢様には兄が一人いたが、お兄様は今、海外に留学している。お嬢様の母にあたる奥様は、お嬢様が幼い頃に亡くなってしまったという。
よって、この屋敷にはお嬢様しかいらっしゃらないことも多かった。
ご主人様に呼び出された僕は、昼に来客があることを知らされた。「大切なお客なので、丁重にもてなすように」とのことだった。
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だが、ご主人様の一言で、僕の心は大きく乱されることになる。
「セルジュ君、うちの娘を貰ってやってくれないかね。君のような人が義理の息子になってくれるなら光栄だよ」
その時、僕はすべてを理解した。今日の昼餐は、お嬢様の縁談のために企てられたのだ。
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こんないけすかない奴にお嬢様のヴァージンが奪われると思うと悔しさで気が狂いそうになるが、反面、僕は心の奥底でそれを望んでいるような気がしてならなかった。
一方、当のお嬢様はというと、いつものようにクールな表情を浮かべていて、内心何を考えているのか知る由もなかった。
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