使用人の僕とお嬢様の秘められた情事

灯台守

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1. お嬢様への穢れた想い

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窓を開け放ったパントリーで午後のお茶の準備をしていると、ミエルお嬢様のピアノの音が春風と共に舞い込んできた。僕はうっとりとして、その美しい音色に聴き入ってしまう。

お嬢様のすらりと美しい白魚のような指が鍵盤の上を自在に跳ねる様子や、真剣な横顔を思い浮かべながら、ゆったりと耳を傾けるひとときは、何にも変え難いものだ。
そして、流麗な調べがふと途切れて、僕はいつも我に帰る。ピアノのレッスンが終わったのだ。
お嬢様とピアノ教師の分のお茶とお菓子を盆にのせ、僕は音楽室へ向かう。
ノックをして「失礼します」と言うと、「入りなさい」とお嬢様の冷ややかな声がした。
ドアを開け、一礼して部屋に入る。レッスンの終わったお嬢様は寛いだ様子で、レースのカーテン越しの午後の日差しを受けて、栗色のロングヘアが輝いて見えた。そして僕に一瞥もせず、「ありがとう」と言いながら僕からカップを受け取った。
「ミエル様、流石、上達が早いですね。もう次回は新しい曲に入れそうですね」
柔和な女性教師がそう言うと、お嬢様は可愛らしい唇の端を上げ、「ありがとうございます」と頭を下げた。育ちの良い、気品に満ちたその仕草は、僕の心をどうしようもなく、くすぐってしまう。
使用人である僕なんかには、お嬢様はそんなに優しい顔を向けてはくれない。僕に対する表情はどこまでも冷たく、何の感情もない。
僕はそのことを哀しく思う反面、お嬢様に冷淡にされることに、恥ずかしながら、何とも言えない後ろめたい快感を覚えていた。
お嬢様の美しい瞳に少しでも僕の姿を映してほしいという気持ちと相反して、僕のことを取るに足らないその辺の石ころのように扱って欲しい、という矛盾した気持ちが芽生えていた。僕はお嬢様の冷ややかな態度に接するたびに、どうしようもなく気持ちを昂らせてしまう。僕は自分が、使用人として度の過ぎた感情をお嬢様に抱いてしまっていることを、痛いほど自覚している。
屋根裏部屋の寝室で、お嬢様を想いながら自涜行為に耽ってしまったことを、僕は懺悔しなければならない。一度だけでなく、何度も、何度もー。
正直に告白すると、僕の青臭い性を呼び覚ますのは、他でもなくミエルお嬢様なのだった。きっと、お嬢様にこんなことを知られたら、軽蔑されることだろう。穢らわしいと思われるかもしれない。いや、嫌悪感を抱かれるのはまだましかもしれない。僕がお嬢様に欲情しようがしまいが、そんなことはミエル様にはどうでもいいことなのかもしれない。
そんな遣瀬ない気持ちになりながらも、昼間目にしたお嬢様の姿ー憂いを含んだ美しい眼差しや紅い唇、すらりとした肢体に不似合いな、ちょっぴり重たげな乳房や臀部、スカートの裾からちらりと覗く小さなおみ足ーを思い浮かべていると、どうしようもなく、僕はたぎってしまうのだった。

あの目で見つめられて、あの唇で僕の体を貪られたい・・・。
あのしなやかな肉体を、生まれたままの姿で拝んでみたい・・・。
彼女の一番秘められた部分を、僕のものだけにしてみたい・・・。
僕はその夜も、爛れた夢想で無駄に精を使い果たしてしまった。
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