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第一章
運命の蜂起-03
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「…という訳です。そこで俺達は今夜、ダーフとバリエーラを隔てる砦を急襲します。作戦上、派手にやる必要があって、前線に出ないまでもできるだけ多くの人に参加して欲しい。このままだと、俺達は飢えて自滅するのを待つだけだ。いろいろ意見はあるでしょうが、俺達に残された時間はあまりにも少なすぎる。…どうでしょう…?」
夕暮れのリバーヴァ家の前、生き残った人々が集う中で、俺は声も高らかに作戦の提示をした。誰もが顔を見合わせ、何かしら意見を交わし合っている。さて、村人たちはどういう結末を望むのか、果たして…!
「…仕方ないよな、自滅するよかマシだ」
誰かがポツリと、そう言った。
「そうだよな。そろそろ限界かなって思っていたところだ」
「起死回生の一手は必要だしな」
誰もが口々に発言しだした。よし、これなら上手くいきそうだ。村人たちの間からも、次々と意見が上がってくる。
「よし、女子供も参加だ。なに、前線に出る必要はない。賑やかに見せればいいだけだ。やろうじゃないか!」
群衆が一つにまとまってきた。これは案外、上手い運びとなるかもしれない。
「女性やや子供、老人は松明を持って賑やかに叫ぶだけでいい。とにかく人員の多さや切羽詰まった様子を演出できればいいんです。決して無理や無謀な事はしないように。…いいですね!」
俺は簡潔に、作戦の概要を伝えた。そして誰もがこの作戦に異存を挟もうとはしなかった。こうして俺達は、夜が更けるのを待つだけとなった。
◇ ◇ ◇ ◇
「皆さん、ご機嫌いかがですか? ブレンドフィア=メンションです。今回はダーフの村で起きた事件を取り扱うことになりました。前回、反乱軍辺境遊撃隊であるブラウ=レジスタルスと、ダーフ村の代表としてのライヴ=オフウェイ少年が接触を持つことに成功したところまでについて語ってまいりました。では今回は、というと、ブラウ=レジスタルスとライヴ少年の実質的な初めての合同作戦となります。果たして、この作戦はうまく言ったのでしょうか? ダーフ地域で発掘されたオベリスクに、その時の様子がいきいきと描かれています。そう、誰もが知っている、バリエーラ砦陥落の物語です…」
クーニフ歴37年1月15の日。その夜はとても静かな満月の夜だったと、ここ、バリエーラ県立考古学博物館に安置されているオベリスクは今に語りかけている。それはとても明るい、そして誰もが強襲をかけてくるとは予想だにしなかった …そんな夜だったと。
「私は今、バリエーラの県立博物館に来ています。この博物館に所蔵されている有名な、保存状態の特にいいオベリスクには、次のようなことが描かれています。星ひとつ見えぬほど明るい夜、深く静かに人々は砦に向かい歩み始めたと。森の開けた砦の前で、突然松明が煌々と焚かれ、村人たちが襲いかかった。その事実を今もありありと伝えているのです」
そう語るのは、アンスタフト=ヒストリカ教授だ。
「ほら、ここ… ここに刻まれたレリーフをよく見てください。丸い満月が誇張されて刻み込まれていますね。それほど、襲われた砦の騎士たちは村人たちの強襲に驚いたのです。この手の作戦は、セオリーに従えば主に新月など、暗闇に紛れて行うべきところです。ですが、彼ら村人たちは敢えてそうしなかった。その背景には、それまでに繰り出してきたライヴ=オフウェイという一人の少年の奇策が有効に活きてきたともいえます」
「現代の人々はみな、実際に発掘されていないという事実から、神鋼機兵というロボットの存在を夢物語として長い間捉えてきました。あるいは、魔法のようなもので強化された甲冑だとも。しかし、私は決してそうは思っていません。それが特によく分かる記述が、このバリエーら県立博物館にあるオベリスクの記述からうかがい知ることができるのです」
そのように語るのは、ミンダーハイト=ギリアートン教授だ。
「ドラグナーの基本全高は約6Yag(5.5m)、肩幅が2.5Yag(2.3m)。この時代の人の平均身長が約2Yag(1.8m)ですから、明らかに鎧や甲冑の類ではないことがわかります。また、陸上戦専用、空中戦専用、水中戦専用と細かく分類されていることからも、一種の機械であることが想像できるでしょう。そう、いわばこのドラグナーとは、最もよく知られた『知識のオーパーツ』とも言うべき代物なのです」
誰もが夢物語として認識している、このクーリッヒ・ウー・ヴァンの物語は実際にあった出来事なのだろうか?
アンスタフト=ヒストリカ教授は語る。
「はい、実際に起きた出来事であると考えています。少なからず神話や叙事詩、オベリスクの碑文などに描かれた出来事は事実を誇張・または改変して伝えられるものです。ですから全くのデタラメを描いたものではないと認識するべきでしょう」
そして、ミンダーハイト=ギリアートン教授も。
「…そうですね。では一体誰が、神話の時代に現代を遥かに超えたテクノロジーを構築できていなかったといえるのでしょう?私の答えは、Noです。神話の時代から連綿と伝わってきた事実の中に、例えば前述のイアイや剣術の稽古などで使用されるバンバス製のシナイもまた、ライヴ=オフウェイ少年が関わってきているのです。そういう文化的な事象のみ扱われて、ドラグナーなどのロボットがありえないとは考えられません。調べれば調べるほどドラグナーを始めとするスーパーウエポンの存在を肯定せざるを得なくなっているのです。ですから、私は今でもその証拠を求めて発掘・研究を続けているのです」
◇ ◇ ◇ ◇
午前零時まで後10分ほど…。俺達実働組と女性や子供・老人らで構成された陽動組はそれぞれ配置についた。お互いに鏡を持たせ、月明かりの反射で信号を送り合う手はずになっている。頬を撫でる初冬の風がやけに冷たい。俺はドラグナーのキャノピーを開けて、実働組と陽動組からの信号を待っていた。実働組のリーダーはアルクさん。そして、陽動組のリーダーとして村長さんにその任をお願いしてある。彼らの掛け声で、俺も一兵士として前線で戦うことになるのだ。
空はこれ以上ないほどに澄み渡った満月。本来この手の作戦を行うには不向きだが、それだけに敵も油断している。その様子が手に取るように、ドラグナーのズームレンズごしに見て取れる。本当に静かな夜だ…。
チカッ …チカッチカッ…!
実働組・陽動組双方から作戦開始の合図が送られてきた。
「松明に火を!」
アルクさんと村長の号令がかかる。実働組・陽動組共に松明が煌々と炊き付けられ、一種異様な雰囲気が醸し出されてきた。
「実働組は前へ!」
「揺動組は騒ぎ立てろ!」
「うわぁぁぁぁぁぁあぁあぁああ!!!」
村人たちは農具や今までに兵士から奪い取った思い思いの武器を手に、砦前へと躍り出た。
「皆さん、これは釣りです! …総員、くれぐれもそこんトコ、忘れないで!」
「うわぁぁぁぁぁぁあぁあぁああ!!!」
俺はファハンのスコープで、砦の見張り連中の様子を観測した。ふむ、明らかに動揺している。
「実働組、突撃!」
アルクさんの号令がかかった!
俺はファハンのキャノピーを閉め、そっと瞳を閉じる。…見えた!
ダッシュローラーMAX、ファハンは踊るように・滑るように砦の入り口へと走り出した。大剣を抜き、中段に構える。その行く手… 砦の入り口から、這々の体でようやく何騎かのドラグナーが確認できた。
「…ようし、いい子だ…」
俺は呟くと、開かれた砦の門に最初に現れた三騎のファハンを相手にする。そう、いつものとおりに、機体番号を確認… と。
012・015・016…。俺にとって、敵ファハンは数字でしかなかった。先頭をノコノコ現れた012に中段から胴体へと大剣を滑り込ませる。ゴフ… という鈍い音とともに、火花が散った。俺はそのまま大剣を引き抜くと、その軌道のまま頭から叩き割る!
「…下がったね? 今、驚いて下がったね…!」
俺にとって、それが丁度いい間合いだった。俺は振り返ると、左右に機体を振りながらフェイントを仕掛ける。…015が引っかかった!突き出された剣を軽く上に弾き、そのまま敵015の胴を薙いだ。真っ二つだった。
後、もう一騎… 俺のファハンが016を指向する。その後ろには、数十騎のファハンが押し寄せていた。
「やべ…!」
俺は砦の門の前から『一生懸命に逃げるけど、ギリで逃げ切れなさそう』に逃げ出した。その先には森がある。このレクルート・ファハンは全高が約5.5m。森の木々に隠れるにはちと大きすぎる。でも、それで正解なのだ。とにかく、走れや走れ!
で、後ろは… …ついてきてる、ついてきてる。何も考えずに全騎がついてきている。これで俺の役目の半分はおしまいだ。俺は横目で、アルクさんたちの方を見た。砦の騎士たちが釣られてる釣られてる。アルクさんたち実働部隊の方へと騎士の一軍がそちらへ流れていった。後は、そう。ブラウ=レジスタルスの面々の活躍に期待、なのだ。
さて。俺は森の中ほどまで進行すると、レクルートの体をクルッと反転させた。森の木々の中、ほぼ一列に並んだ敵ファハンがそこにいた。
「チェック!」
俺は大剣を上段から敵の頭に叩きつけた! ゴフ… 鈍い音とともに、大剣はファハンの胴体までズブズブとめり込んでいく。その敵ファハンの足で蹴りつけ、俺は大剣を引き抜いた。ドウ…!という地響きとともに、敵ファハンが後ろへと倒れ込む。
「…次は… 021,お前か?」
木々が邪魔になって思うように動けない敵ファハンたちを、俺は一騎づつ落としていく作戦だった。狭いなら狭いなりの戦い方がある。しかし、以前に気付いたのだが、案外敵のドラグナー乗りはその事に気付いていない。俺のレクルート・ファハンは大剣… 読んで字のごとく大きい剣を振り回すタイプだ。こういった森の中なら、本来避けるべき鬼門でもある。
でも考えてみて欲しい、剣が大きな分、間合い的な意味で俺の方に分があるのだ。そう、リーチが長いのである。
然るに、連中はノコノコとついてきた。ようこそ皆さん、この雁字搦めの森の中へ。
中段からの突き! 上段からの袈裟懸け! 下段からの巻き上げ! で、上段から持ち手を変えての突き!
敵さんには申し訳ないが、面白いように獲物になってくれる。後数騎でおしまいとなった所で、砦から更に増援が出てきた。今度はヘイムダルまで数騎確認できる。…ヤバい。この状況は、まじヤバい。敵ファハンが森の中から撤退していく中、俺もまた森からブースターをふかし脱出した。
砦の門の前は開けており、人一人として隠れるところはない。森だった木々は切り倒され、キレイに整地されている。ま、そりゃそうだ。隠れるところがないから、砦として機能するのである。それにしても、ブラウ=なんたらさんよ、ちゃんと上手くやってくれてるの? 敵の全軍が、なんだかこっちにやって来てるんですけど?
俺は砦の壁と平行にドラグナーを走らせた。敵ドラグナーから飛び道具が次々と発砲されてくる。俺は信地旋回を繰り返しながらそれらを避けた。それにしたって限界というものがある。
突然、足元で弾丸が弾けた! 俺がかろうじて転倒を避けると、その先には回り込んできた敵のヘイムダルが四騎、待ち構えていた。
『-ケッ、どうやらここが年貢の納め時って感じだな-』
『-へへ、流石にこの白いヤツも、この数相手にビビってやがる-』
『-これだけの数がいるんだ、勝ってよし!-』
『-楽勝、楽勝~♪-』
…ヘン、好きなこと言ってろっての!
この状況下でも、俺はちゃんと実働隊を横目で見ていた。動向をちゃんと追っていた。…うん、ちゃんと付かず離れずで上手く逃げてるな。それだけ確認でいればいい。俺は改めて敵ヘイムダル4騎を睨みつけると、再びナンバリングを開始した。
…101・103・105・106…
つぶやきながら、敵を背後に回らせないよう牽制していた。しかし。
…ダメだ。こいつらはファハンと違ってヘボじゃない。なかなか間合いを取らせてくれない!
ドオぉぉぉ… ン!
突然、砦の方から轟音が響いてきた。俺はその音で後ろを振り返った105のコクピットに、その刃を突き立てた。
『-ジェスターッ!?-』
『-貴様…!-』
「…遅いよ!」
俺は再び足で105を蹴り大剣を引き抜くと、上段から袈裟懸けに103を切り伏せた。
『-貴様、マルコまで…!-』
「はいはい、だから…!?」
振り下ろした大剣を振り抜かず、俺は更に奥にいた106に大剣を突き刺した。
『-ぐふぅ…!? …許さ…んぞ! …この剣ごと、お前を冥府に…送ってやんよ…-』
そのヘイムダルはしっかりと俺の大剣を掴んで話さなかった。振り回しても抜けない。だから、俺は…。
『-カイン…! その無念、晴らしてやろうぞッ!-』
大剣から手を離し、転がって106が手放した剣を拾い上げる。哀れ106は勢い余って、仰け反るように倒れ込んだ。
そして。
上段から突っ込んできた101の胴体に向けて、俺は後ろを向いたままレクルートの肩口から剣の切っ先を突き出し後ろへ立ち上がった。…ヒット…。
『-そ、そんな… 貴様、後ろにも目がついているとでも言うのか…-』
「…最初から決まってたんだよ。お前の取りうるドラグナーの軌道は…」
俺は剣を101から引き抜くと、すでに数騎のファハンに取り囲まれていることに気付いた。
「クソ…! 全くキリがない!」
レクルートの瞳を通して、俺はぐるりを見渡した。
パァ… ン! パパァ… ン!
上空から発砲音! そして、俺の背後にいた3騎のファハンが砕け散った。
『-ごめんごめん、遅くなっちゃった!-』
言うが早いか、更に数発の発砲音が鳴り響いた。見上げると、そこには見覚えのあるドラグナーが落下してきていた。
「…ラーヴァナ… シェスターか!」
『-あったり~! で。ボク、参上!-』
俺の眼前の二騎を吹き飛ばすと、ラーヴァナは逆噴射をかけて俺の隣に着地した。
『-それにしても、すごかったね。上空から見てたけど、まさに一騎当千の活躍だったじゃん! ボク、感心しちゃった!-』
「見てたのかよ! 早く助けろよ! 必死だったんだぞ!」
『-まぁまぁ、無事だったんだからいいじゃない。砦、たしかに落としたよ!-』
俺は視線を上げた。遠くで砦が燃えているのが見て取れた。
『-ね? ちゃんと約束、守ったでしょ? 後はボク達に任せてよね-』
◇ ◇ ◇ ◇
夜明けを迎えた。砦を守っていたドラグナー乗りや騎士たちは投降し、何騎かのヘイムダルやファハンが無傷で手に入った。手に入ったとはいえ、希望する誰もがこれらのドラグナーに騎乗できるわけではない。乗るためには、ドラグナーによって選ばれる必要があるのだ。それを適正と呼ぶのなら、殆どの場合、結局その場にいるドラグナー乗りしか適性がないと来たもんだ。本当に何やら胡散臭い乗り物である。
「朝… か。随分と長い夜だった気がするな…」
砦の高い壁の上で、俺は大きく伸びをした。ふと視線を城砦の出入り口にやると、長いストレートの髪をふたつに分け、サングラスをかけた男がやって来た。その額には大きなバッテンの傷跡が刻まれている。いや、傍で見ると本当にツヤツヤできれいな黒髪だった。若干痩せた印象のあるその男は22・3歳くらいだろうか?いや、本当はもっと上かもしれない。育ちはいいが、随分と苦労してきたような雰囲気をその身にまとっている。彼は俺に握手を求めてくると、そのまま自己紹介を始めた。
「はじめまして、ライヴ君。私がブラウ=レジスタルスの団長、ローン=リアリズレンだ」
◇ ◇ ◇ ◇
クーニフ歴37年1月17日、この出会いからすべてが大きく変わりだした。
歴史家は言う。この出会いがなかったならば、この歴史は大きく変わっていただろうと。それほどまでに、この出会いが時代の転換期と言えた。それほどまでに、ライヴ=オフウェイの存在は大きくなっていたのだ。そう、文献や叙事詩、オベリスクのレリーフに彼の名が登場してから一月もたたぬ内に、である。この頃には帝国内でも彼の名を知らぬものはいないと言われるほどの存在感を示していた。
歴史家は語る。この少年の登場で、グロウサー帝国の黄昏は大きく早まったと。もし彼の存在がなかったならば、どのような世界になっていただろう? おそらく、この王朝の瓦解は10年と言わず遅れることとなり、古代民主化の道も大幅に書き換える必要に迫られただろう。
そして、歴史は語りかける。
いついかなる時にも、英雄は現れると。そして、彼の者の後の運命もまた、数多の英雄と同じ道筋をたどるのか…。
夕暮れのリバーヴァ家の前、生き残った人々が集う中で、俺は声も高らかに作戦の提示をした。誰もが顔を見合わせ、何かしら意見を交わし合っている。さて、村人たちはどういう結末を望むのか、果たして…!
「…仕方ないよな、自滅するよかマシだ」
誰かがポツリと、そう言った。
「そうだよな。そろそろ限界かなって思っていたところだ」
「起死回生の一手は必要だしな」
誰もが口々に発言しだした。よし、これなら上手くいきそうだ。村人たちの間からも、次々と意見が上がってくる。
「よし、女子供も参加だ。なに、前線に出る必要はない。賑やかに見せればいいだけだ。やろうじゃないか!」
群衆が一つにまとまってきた。これは案外、上手い運びとなるかもしれない。
「女性やや子供、老人は松明を持って賑やかに叫ぶだけでいい。とにかく人員の多さや切羽詰まった様子を演出できればいいんです。決して無理や無謀な事はしないように。…いいですね!」
俺は簡潔に、作戦の概要を伝えた。そして誰もがこの作戦に異存を挟もうとはしなかった。こうして俺達は、夜が更けるのを待つだけとなった。
◇ ◇ ◇ ◇
「皆さん、ご機嫌いかがですか? ブレンドフィア=メンションです。今回はダーフの村で起きた事件を取り扱うことになりました。前回、反乱軍辺境遊撃隊であるブラウ=レジスタルスと、ダーフ村の代表としてのライヴ=オフウェイ少年が接触を持つことに成功したところまでについて語ってまいりました。では今回は、というと、ブラウ=レジスタルスとライヴ少年の実質的な初めての合同作戦となります。果たして、この作戦はうまく言ったのでしょうか? ダーフ地域で発掘されたオベリスクに、その時の様子がいきいきと描かれています。そう、誰もが知っている、バリエーラ砦陥落の物語です…」
クーニフ歴37年1月15の日。その夜はとても静かな満月の夜だったと、ここ、バリエーラ県立考古学博物館に安置されているオベリスクは今に語りかけている。それはとても明るい、そして誰もが強襲をかけてくるとは予想だにしなかった …そんな夜だったと。
「私は今、バリエーラの県立博物館に来ています。この博物館に所蔵されている有名な、保存状態の特にいいオベリスクには、次のようなことが描かれています。星ひとつ見えぬほど明るい夜、深く静かに人々は砦に向かい歩み始めたと。森の開けた砦の前で、突然松明が煌々と焚かれ、村人たちが襲いかかった。その事実を今もありありと伝えているのです」
そう語るのは、アンスタフト=ヒストリカ教授だ。
「ほら、ここ… ここに刻まれたレリーフをよく見てください。丸い満月が誇張されて刻み込まれていますね。それほど、襲われた砦の騎士たちは村人たちの強襲に驚いたのです。この手の作戦は、セオリーに従えば主に新月など、暗闇に紛れて行うべきところです。ですが、彼ら村人たちは敢えてそうしなかった。その背景には、それまでに繰り出してきたライヴ=オフウェイという一人の少年の奇策が有効に活きてきたともいえます」
「現代の人々はみな、実際に発掘されていないという事実から、神鋼機兵というロボットの存在を夢物語として長い間捉えてきました。あるいは、魔法のようなもので強化された甲冑だとも。しかし、私は決してそうは思っていません。それが特によく分かる記述が、このバリエーら県立博物館にあるオベリスクの記述からうかがい知ることができるのです」
そのように語るのは、ミンダーハイト=ギリアートン教授だ。
「ドラグナーの基本全高は約6Yag(5.5m)、肩幅が2.5Yag(2.3m)。この時代の人の平均身長が約2Yag(1.8m)ですから、明らかに鎧や甲冑の類ではないことがわかります。また、陸上戦専用、空中戦専用、水中戦専用と細かく分類されていることからも、一種の機械であることが想像できるでしょう。そう、いわばこのドラグナーとは、最もよく知られた『知識のオーパーツ』とも言うべき代物なのです」
誰もが夢物語として認識している、このクーリッヒ・ウー・ヴァンの物語は実際にあった出来事なのだろうか?
アンスタフト=ヒストリカ教授は語る。
「はい、実際に起きた出来事であると考えています。少なからず神話や叙事詩、オベリスクの碑文などに描かれた出来事は事実を誇張・または改変して伝えられるものです。ですから全くのデタラメを描いたものではないと認識するべきでしょう」
そして、ミンダーハイト=ギリアートン教授も。
「…そうですね。では一体誰が、神話の時代に現代を遥かに超えたテクノロジーを構築できていなかったといえるのでしょう?私の答えは、Noです。神話の時代から連綿と伝わってきた事実の中に、例えば前述のイアイや剣術の稽古などで使用されるバンバス製のシナイもまた、ライヴ=オフウェイ少年が関わってきているのです。そういう文化的な事象のみ扱われて、ドラグナーなどのロボットがありえないとは考えられません。調べれば調べるほどドラグナーを始めとするスーパーウエポンの存在を肯定せざるを得なくなっているのです。ですから、私は今でもその証拠を求めて発掘・研究を続けているのです」
◇ ◇ ◇ ◇
午前零時まで後10分ほど…。俺達実働組と女性や子供・老人らで構成された陽動組はそれぞれ配置についた。お互いに鏡を持たせ、月明かりの反射で信号を送り合う手はずになっている。頬を撫でる初冬の風がやけに冷たい。俺はドラグナーのキャノピーを開けて、実働組と陽動組からの信号を待っていた。実働組のリーダーはアルクさん。そして、陽動組のリーダーとして村長さんにその任をお願いしてある。彼らの掛け声で、俺も一兵士として前線で戦うことになるのだ。
空はこれ以上ないほどに澄み渡った満月。本来この手の作戦を行うには不向きだが、それだけに敵も油断している。その様子が手に取るように、ドラグナーのズームレンズごしに見て取れる。本当に静かな夜だ…。
チカッ …チカッチカッ…!
実働組・陽動組双方から作戦開始の合図が送られてきた。
「松明に火を!」
アルクさんと村長の号令がかかる。実働組・陽動組共に松明が煌々と炊き付けられ、一種異様な雰囲気が醸し出されてきた。
「実働組は前へ!」
「揺動組は騒ぎ立てろ!」
「うわぁぁぁぁぁぁあぁあぁああ!!!」
村人たちは農具や今までに兵士から奪い取った思い思いの武器を手に、砦前へと躍り出た。
「皆さん、これは釣りです! …総員、くれぐれもそこんトコ、忘れないで!」
「うわぁぁぁぁぁぁあぁあぁああ!!!」
俺はファハンのスコープで、砦の見張り連中の様子を観測した。ふむ、明らかに動揺している。
「実働組、突撃!」
アルクさんの号令がかかった!
俺はファハンのキャノピーを閉め、そっと瞳を閉じる。…見えた!
ダッシュローラーMAX、ファハンは踊るように・滑るように砦の入り口へと走り出した。大剣を抜き、中段に構える。その行く手… 砦の入り口から、這々の体でようやく何騎かのドラグナーが確認できた。
「…ようし、いい子だ…」
俺は呟くと、開かれた砦の門に最初に現れた三騎のファハンを相手にする。そう、いつものとおりに、機体番号を確認… と。
012・015・016…。俺にとって、敵ファハンは数字でしかなかった。先頭をノコノコ現れた012に中段から胴体へと大剣を滑り込ませる。ゴフ… という鈍い音とともに、火花が散った。俺はそのまま大剣を引き抜くと、その軌道のまま頭から叩き割る!
「…下がったね? 今、驚いて下がったね…!」
俺にとって、それが丁度いい間合いだった。俺は振り返ると、左右に機体を振りながらフェイントを仕掛ける。…015が引っかかった!突き出された剣を軽く上に弾き、そのまま敵015の胴を薙いだ。真っ二つだった。
後、もう一騎… 俺のファハンが016を指向する。その後ろには、数十騎のファハンが押し寄せていた。
「やべ…!」
俺は砦の門の前から『一生懸命に逃げるけど、ギリで逃げ切れなさそう』に逃げ出した。その先には森がある。このレクルート・ファハンは全高が約5.5m。森の木々に隠れるにはちと大きすぎる。でも、それで正解なのだ。とにかく、走れや走れ!
で、後ろは… …ついてきてる、ついてきてる。何も考えずに全騎がついてきている。これで俺の役目の半分はおしまいだ。俺は横目で、アルクさんたちの方を見た。砦の騎士たちが釣られてる釣られてる。アルクさんたち実働部隊の方へと騎士の一軍がそちらへ流れていった。後は、そう。ブラウ=レジスタルスの面々の活躍に期待、なのだ。
さて。俺は森の中ほどまで進行すると、レクルートの体をクルッと反転させた。森の木々の中、ほぼ一列に並んだ敵ファハンがそこにいた。
「チェック!」
俺は大剣を上段から敵の頭に叩きつけた! ゴフ… 鈍い音とともに、大剣はファハンの胴体までズブズブとめり込んでいく。その敵ファハンの足で蹴りつけ、俺は大剣を引き抜いた。ドウ…!という地響きとともに、敵ファハンが後ろへと倒れ込む。
「…次は… 021,お前か?」
木々が邪魔になって思うように動けない敵ファハンたちを、俺は一騎づつ落としていく作戦だった。狭いなら狭いなりの戦い方がある。しかし、以前に気付いたのだが、案外敵のドラグナー乗りはその事に気付いていない。俺のレクルート・ファハンは大剣… 読んで字のごとく大きい剣を振り回すタイプだ。こういった森の中なら、本来避けるべき鬼門でもある。
でも考えてみて欲しい、剣が大きな分、間合い的な意味で俺の方に分があるのだ。そう、リーチが長いのである。
然るに、連中はノコノコとついてきた。ようこそ皆さん、この雁字搦めの森の中へ。
中段からの突き! 上段からの袈裟懸け! 下段からの巻き上げ! で、上段から持ち手を変えての突き!
敵さんには申し訳ないが、面白いように獲物になってくれる。後数騎でおしまいとなった所で、砦から更に増援が出てきた。今度はヘイムダルまで数騎確認できる。…ヤバい。この状況は、まじヤバい。敵ファハンが森の中から撤退していく中、俺もまた森からブースターをふかし脱出した。
砦の門の前は開けており、人一人として隠れるところはない。森だった木々は切り倒され、キレイに整地されている。ま、そりゃそうだ。隠れるところがないから、砦として機能するのである。それにしても、ブラウ=なんたらさんよ、ちゃんと上手くやってくれてるの? 敵の全軍が、なんだかこっちにやって来てるんですけど?
俺は砦の壁と平行にドラグナーを走らせた。敵ドラグナーから飛び道具が次々と発砲されてくる。俺は信地旋回を繰り返しながらそれらを避けた。それにしたって限界というものがある。
突然、足元で弾丸が弾けた! 俺がかろうじて転倒を避けると、その先には回り込んできた敵のヘイムダルが四騎、待ち構えていた。
『-ケッ、どうやらここが年貢の納め時って感じだな-』
『-へへ、流石にこの白いヤツも、この数相手にビビってやがる-』
『-これだけの数がいるんだ、勝ってよし!-』
『-楽勝、楽勝~♪-』
…ヘン、好きなこと言ってろっての!
この状況下でも、俺はちゃんと実働隊を横目で見ていた。動向をちゃんと追っていた。…うん、ちゃんと付かず離れずで上手く逃げてるな。それだけ確認でいればいい。俺は改めて敵ヘイムダル4騎を睨みつけると、再びナンバリングを開始した。
…101・103・105・106…
つぶやきながら、敵を背後に回らせないよう牽制していた。しかし。
…ダメだ。こいつらはファハンと違ってヘボじゃない。なかなか間合いを取らせてくれない!
ドオぉぉぉ… ン!
突然、砦の方から轟音が響いてきた。俺はその音で後ろを振り返った105のコクピットに、その刃を突き立てた。
『-ジェスターッ!?-』
『-貴様…!-』
「…遅いよ!」
俺は再び足で105を蹴り大剣を引き抜くと、上段から袈裟懸けに103を切り伏せた。
『-貴様、マルコまで…!-』
「はいはい、だから…!?」
振り下ろした大剣を振り抜かず、俺は更に奥にいた106に大剣を突き刺した。
『-ぐふぅ…!? …許さ…んぞ! …この剣ごと、お前を冥府に…送ってやんよ…-』
そのヘイムダルはしっかりと俺の大剣を掴んで話さなかった。振り回しても抜けない。だから、俺は…。
『-カイン…! その無念、晴らしてやろうぞッ!-』
大剣から手を離し、転がって106が手放した剣を拾い上げる。哀れ106は勢い余って、仰け反るように倒れ込んだ。
そして。
上段から突っ込んできた101の胴体に向けて、俺は後ろを向いたままレクルートの肩口から剣の切っ先を突き出し後ろへ立ち上がった。…ヒット…。
『-そ、そんな… 貴様、後ろにも目がついているとでも言うのか…-』
「…最初から決まってたんだよ。お前の取りうるドラグナーの軌道は…」
俺は剣を101から引き抜くと、すでに数騎のファハンに取り囲まれていることに気付いた。
「クソ…! 全くキリがない!」
レクルートの瞳を通して、俺はぐるりを見渡した。
パァ… ン! パパァ… ン!
上空から発砲音! そして、俺の背後にいた3騎のファハンが砕け散った。
『-ごめんごめん、遅くなっちゃった!-』
言うが早いか、更に数発の発砲音が鳴り響いた。見上げると、そこには見覚えのあるドラグナーが落下してきていた。
「…ラーヴァナ… シェスターか!」
『-あったり~! で。ボク、参上!-』
俺の眼前の二騎を吹き飛ばすと、ラーヴァナは逆噴射をかけて俺の隣に着地した。
『-それにしても、すごかったね。上空から見てたけど、まさに一騎当千の活躍だったじゃん! ボク、感心しちゃった!-』
「見てたのかよ! 早く助けろよ! 必死だったんだぞ!」
『-まぁまぁ、無事だったんだからいいじゃない。砦、たしかに落としたよ!-』
俺は視線を上げた。遠くで砦が燃えているのが見て取れた。
『-ね? ちゃんと約束、守ったでしょ? 後はボク達に任せてよね-』
◇ ◇ ◇ ◇
夜明けを迎えた。砦を守っていたドラグナー乗りや騎士たちは投降し、何騎かのヘイムダルやファハンが無傷で手に入った。手に入ったとはいえ、希望する誰もがこれらのドラグナーに騎乗できるわけではない。乗るためには、ドラグナーによって選ばれる必要があるのだ。それを適正と呼ぶのなら、殆どの場合、結局その場にいるドラグナー乗りしか適性がないと来たもんだ。本当に何やら胡散臭い乗り物である。
「朝… か。随分と長い夜だった気がするな…」
砦の高い壁の上で、俺は大きく伸びをした。ふと視線を城砦の出入り口にやると、長いストレートの髪をふたつに分け、サングラスをかけた男がやって来た。その額には大きなバッテンの傷跡が刻まれている。いや、傍で見ると本当にツヤツヤできれいな黒髪だった。若干痩せた印象のあるその男は22・3歳くらいだろうか?いや、本当はもっと上かもしれない。育ちはいいが、随分と苦労してきたような雰囲気をその身にまとっている。彼は俺に握手を求めてくると、そのまま自己紹介を始めた。
「はじめまして、ライヴ君。私がブラウ=レジスタルスの団長、ローン=リアリズレンだ」
◇ ◇ ◇ ◇
クーニフ歴37年1月17日、この出会いからすべてが大きく変わりだした。
歴史家は言う。この出会いがなかったならば、この歴史は大きく変わっていただろうと。それほどまでに、この出会いが時代の転換期と言えた。それほどまでに、ライヴ=オフウェイの存在は大きくなっていたのだ。そう、文献や叙事詩、オベリスクのレリーフに彼の名が登場してから一月もたたぬ内に、である。この頃には帝国内でも彼の名を知らぬものはいないと言われるほどの存在感を示していた。
歴史家は語る。この少年の登場で、グロウサー帝国の黄昏は大きく早まったと。もし彼の存在がなかったならば、どのような世界になっていただろう? おそらく、この王朝の瓦解は10年と言わず遅れることとなり、古代民主化の道も大幅に書き換える必要に迫られただろう。
そして、歴史は語りかける。
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