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第二章

強襲!フェアンレギオン砦-03

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「俺、レクルート・ファハン、出る!」
アジ=ダハーカは最大俯角を取り、高度約55Yag(50m)まで上昇する。その上部甲板では大きく風をはらみ膨らんだパラグライダーを装着し、待機している三騎のドラグナーが順番を待っている。俯角に対し順方向に向いて俺はブースターの圧力を最大にした。パラグライダーは徐々に上方に浮き上がり、ブースターから吐き出される排気は既に推進力へとその内容を変化させていた。甲板スタッフを見る。腕による信号は、グリーン! 飛び立つのに、何も支障はないと来たもんだ。甲板上に応急で拵えた吹き流しも、風が安定していると告げている。よし、と一言俺は呟いた。そして頃合いを見計らって俺はローラーダッシュを加速させる。グン… と後方に感じる強いプレッシャー。行ける! 俺は呟くと、そのまま射出甲板から飛び立った…!

甲板を飛び立つと、一旦グン、と地上へ落ちそうになる。だが、それでいい。自重は背面から上部へと膨らんだパラグライダーの翼が支えてくれる。何一つ臆することはない。暫くすると …な、ほらフワッと浮いた。ブースター圧力を最大のまま、上昇のための紐を引っ張る。レクルート・ファハンは大きく揺れながら、右に左に旋回を続けながら上昇を続けていく。うん、なかなか上等じゃん! 十分な高度を取ると、俺は視線を俺に続く他の二騎に向けた。

俺の後に続いて、ラウェルナ、マガン・カドゥガンがアジ・ダハーカから発艦していた。俺と同じく大きくその体を揺らせながら旋回を続け、少しづつ上昇してくる。…うん、もう随分と慣れたものだ。何の不安材料もなくなっている。俺は改めて上方に目を向けると、全員が必要高度に達するまでの時間を計りだした。

◇     ◇     ◇     ◇

「皆さん、こんばんは。ようこそ、このロマンあふれるクーリッヒ・ウー・ヴァンの世界へ。私が司会進行を務めます、ブレンドフィア=メンションです。ご機嫌はいかがですか?

さて。フェアンレギオン砦攻略戦もいよいよ本番となってきました。パラグライドを使った史上最初ともいわれる上空からの強襲作戦ですが、果たして上手く事を運ぶことができたのでしょうか? …いや、番組を見ている方の多くは既にどのように決着が付いているかを知っておいでかもしれませんね。それ程までに私達の心に染み付いたこのお伽話を、改めて語っていこうと思います。心の準備はよろしいでしょうか…?」

「当時の面影を残す、フェアンレギオン砦です。何千年も経った今もなお、この地方のシンボルとしての役割を務めています」
アンスタフト=ヒストリカ教授は、発掘研究の度にここを訪れると言う。
「今でこそ観光地として有名なこのフェアンレギオン砦ですが、その発掘・修復はとても難航しました。その一番の原因として立地関係があげられます。高く屹立したこの峠の一番上に設置されたこの砦は、先史神話時代からの贈り物であり、その存在ははるか昔から語り継げられてきました。ほんの15年ほど前に砦の修復が終了するまで、この場所はただの遺跡でしかなかったのです。荒れ果てた当時の事を思い返すと、果たして今の光景が当時を正確に忍ばせるものになっているのかどうかについて若干の疑問も残ります。なにせ、古代に描かれた数枚の油絵やフレスコ画の背景として残された資料を元に、この砦の修復が行われたわけですから。先史神話文明の時代に現在のような光景だったかと言われると、正直言って答えることができません。ですが、当時使われていたであろう材料と測量法、建築技術を吟味して現在の形となりました。もし皆さんも機会があれば、一度はこの場所を訪れてみてください。このような過酷な場所で、神話時代の英雄たちが戦っていたのだと、その息吹を感じることができるでしょう」

「はい、本当にこの砦の修復にはとてつもない時間と頭脳が必要となりました」
そう語るのは、ヒストリカ教授と共にこの砦の修復事業に携わってきたミンダーハイト=ギリアートン教授だ。
「意見がよく割れたのを覚えています。当時にはこの技術は無かったはずだ、いや、当時から存在していた、とね。それほどまでに完成度の高い建築技術が、この砦には詰まっていたのです。この砦は、当時で言うウィクサー首長国との国境でした。非常に気性の荒いウィクサー首長国の兵士から見れば、この砦は邪魔な存在でしかありません。もし彼らがこの強大な帝国に侵攻するならば、ジーストディ海を渡りフィスクランドを目指すか、或いはこの切り立った峠をいくつも超えてフェアンレギオン砦の直下を通るしかないのです。結論から言うと、歴史上この砦が他国から落とされたという記述はありません。ですが、数多くの散発的な争いがあったという事実が、発掘され博物館に所蔵されている焼け落ちた煉瓦などからうかがい知ることができます」

◇     ◇     ◇     ◇

「そろそろいけますよ、お待たせしました。あとはローンさんの決断次第です」
アジ・ダハーカに戻った俺は、報告がてら指揮甲板を尋ねていた。
「…そうか。本当にご苦労だった。では明朝の日の出とともに決行する。少しでも成功の確率を高めるため、朝日を背に行おうじゃないか。…そうか、いよいよか…。いや、実に楽しみだ!」
ローンは手近にある伝声管の蓋を開け、全艦内に向けて放送した。
「いよいよ明朝、決行することが決定した! 関係者各担当者は10分後までにブリーフィングルームに集合のこと!」

「…で、明日の日の出とともに、ですか」
陽動班に編成された大男、シュタークが酒臭い息を漂わせながら質問した。
「ああ。奇襲作戦であれば太陽を背にするのがセオリーだ。分かっていると思うが…」
「はい、酒は飲みません! 今までだって、飲んだことなど一切ありません!」
一同から思わず笑いが起こった。
「フフフ… 全くしょうがない男だ。まぁいい、我々はブラガルーンの街を迂回するように侵攻、最大俯角を取って高度を確保した後に、先の演習通り四騎のドラグナーを射出する。その後地上に降りたあとは、作戦通り地上からの陽動だ。強襲班も陽動班も、頼むからやられるなよ? 我々陽動班が敵の目を引きつけてる間に、強襲班は上空から落下。一気に砦の内部へと潜り込み、敵を排除して正門を空ける。ここが開けば、そのまま我々も砦内に侵入、ここを落とす! …ここまでで何か質問は?」

「俺たちゃ、その新入りのための囮ですか?」
マーン=ヴァラートンだった。ザンバラに切りそろえた黒髪にどこかすねたような瞳。そのマーンが口を挟んできた。どうやら彼は俺のことをあまり良く思っていないらしい。俺をキッと睨みつけると、質問を続けた。
「強襲班が現在どの程度の練度かは知りませんが、敵スカイアウフがウジャウジャいるところへそんなお粗末な装置をつけて侵入だなんて、全くどうかしちまってる!」
「まぁ、そう言うな、マーン。アレを見たら、お前もきっとビックリするぞ。それに、そもそも今回の作戦を立案したのはライヴ君だ。指揮をとるのに、これ以上の配置はあるまい? …他に、質問は?」

「…はい」
挙手したのは、ブラウ=レジスタルスのもう一人のスカイアウフ乗り、ヘリン=イリュフレントだった。
「マーンの意見と被るのですが、強襲班の仕上がりについて、私達には何も教えてはくださらないのですか?」
ローンはサングラスの奥から厳しい視線をヘリンに向けた。
「その必要があるのかね? そうでなくとも、作戦中にその勇姿を拝むことができるんだ。単に興味本位であれば、作戦遂行上その内容を伝えることはできない。異論はあるかね?」
「…わかりました」
「では他に…」

意見の挙手はなかった。具申もなかった。ローンは改めてその場の全員を見渡すと、号令をかけた。
「では、これより作戦を開始する! 時間合わせは明朝2時。それまでに、各班は準備を進めておけ。いいな!」
「御意!」

◇     ◇     ◇     ◇

作戦はまだ陽も上がらない早朝の二時から始まった。総員起床の号令がかかり、慌てて身支度を済ませる。俺もまた、レクルート・ファハンの元へと走ると、フラウが既に待機していた。
「さて、お手並み位拝見といかせてもらわよ。ライヴ、あなたはまれに見る一騎当千の猛者と聞いてる。期待しているわ」
「さぁて、その後期待に添えるといいんですがね」
「あら、案外と謙虚なのね。まァいいわ。戦場がすべてを教えてくれる。楽しみね!」
「はいはい、了解です」

「お、流石に早いね。ライヴ。ちゃんと眠れたかい?」
「ああ。いつもどおり…とはいかなかったけれど、ちゃんと眠れたよ、アギル。あなたは?」
「まぁ、俺達にはいつもの通りがコレだからね。休める内に休める身体になってる」
俺は笑顔でアギルの言葉に答えると、やや遅れ気味にシェスターがやって来た。

「ああ~、ごめんごめん! ボクってば朝だけは苦手なんだよね」
「大丈夫だ、作戦中の居眠りだけはゴメンだからな」
「何余裕カマしちゃってるのさ、ライヴ。本当はキミの方がブルってるんじゃないの?」
「ああ、ブルってるさ。武者震いってやつだな」
「何、それ。ムシャ… なに?」
「武者震い。いつでも準備OKって事さ」

「さぁさぁ、そろそろ時間よ。私達もドラグナーに搭乗しないとね」
「分かってますよ、フラウさん。忘れてませんよ!」

短い会話をかわすと、俺達はそれぞれのドラグナーの元へと駆け出していった。

◇     ◇     ◇     ◇

「俯角上げ…!」
伝声管を通して、だんだんと時間が迫っているのがわかる。
「全推力をMAXに、アジ=ダハーカ浮上!」
ぐぐぐ… 。毎度のことながら、俺達はその上昇時のGに耐えながら、上部甲板を目指す。応急で作られたスターターに足をかけ、握り手をしっかりと掴んだ。これで少しは安定する。
「アジ=ダハーカ、限界高度に到着。頼りにしてますぜ、少年!」
「ああ、任せてくれ!」
俺はブースター出力を上げ、前傾姿勢を取った。アジ=ダハーカの加速もあってか、既にパラグライダーは大きく膨らんでいる。思い返せば、翼面積故に、イロイロ大変だったなぁ… と感慨深く思っていた。

「では1番機、レクルート・ファハン、ライヴ=オフウェイ、出る!」
ダッシュローラーを最大スピードに、ブースター出力もまた最大にキープして俺は発艦した。俺のパラグライダーはうまく風に乗り、気付いた時には大空を舞っている。俺は旋回しながら高度を上げ、約500Yag(約457m)まで上昇した。

『-二番騎、マガン・カドゥガン。アギル=イエーガー、出る!-』
…俺の真似すんじゃないよ。今までそんなこと一言も言わずに発艦してた癖にさ。俺は苦笑いしながら、更に上方へとパラグライダーを操作した。

『-三番、ラウェルナ。フラウ=シュルヌ、行くわよ!-』
ハハハ… あなたもですか。俺は笑いながら更に上へとパラグライダーを上昇させた。
後に続く二人もゆっくりと上昇を始めている。希望する高度はあと300Yag(274m)上方。これなら、地上さえちゃんと陽動してくれれば一気に降下できるだろう。その一方で、下を見るとやや失速気味にアジ=ダハーカが降りていくのがわかる。日の出が約5時前後だから、作戦開始まであと1時間少しあることになる。

「おまたせ~! ボク、参上!」
シェスターがおっとり刀でやって来た。彼女のドラグナーは空戦用である。わざわざパラグライダーを装着しなくても空を自由に飛行可能な機体だった。その名前はラーヴァナ! かつて俺を救った唯一の機体である!

…さて、シェスターちゃん。キミの宣伝はちゃんと終わったぜ。

これで強襲班は全員が揃った。後は地上からの号令を待つばかりである。
俺は渡された時計に目をやった。発艦直前に時間合わせをしておいてよかったと本当に思う。俺がいた日本では腕時計は全て電波時計になっており、合わせる必要がなかったのだ。この世界ではねじ巻き式の時計が主流だった。発艦してからは通信ができないので、各自時間を頼りに作戦を遂行する必要がある。あとは、ハンドサインや投光機によるコミュニケートで意志のやり取りをするしかなかった。

俺達は待った。その間も旋回をしながら上昇を続ける。出向く方向は、フェアンレギオン砦。俺は手元のコンパスと地形を見比べながら、そそり立つ岩場を旋回していた。

俺達の背から太陽が登ってくる。時計を見ると、そろそろ作戦時間だった。下では上手くやってくれているだろうか…?

『-かかれ…!-』
突然、ローンの声が下から聞こえてくる。作戦開始だ。俺は遙か下方にあるフェアンレギオン砦の方向をズームアップした。敵もランダーとスカイアウフを出して応戦しているのが見える。ざっと数えて、ランダーが15騎、スカイアウフが7騎といったところか。後は一般兵がこちらの騎士たちとチャンバラをやっているのがよく分かる。今のタイミングを逃すのは愚の骨頂というものだ。

「強襲班、全員俺に続け!」
俺はパラグライダーを自由落下モードに移すと、一気に高度を落とした。俺達のドラグナーが旋回しながらほぼ垂直に砦へと落下する。そして、高度計が100Yag(約91m)を切ったところでパラグライダーを地面と平行に開き、落下速度を落としていく。十分に速度が落ちた所でパラグライダーを切り離し、俺達は砦の内部へと突入した。スタビライザーで体幹を戻し、スタビライザーをふかして着地する。そして周囲を見渡すと、そこにはほとんどドラグナーの姿は見受けられなかった。

『-では、早速やらかしてもらいましょうかね!-』
アギルが何やら飛び道具を城門に向けた。そして、シュート!
城門は完全に破られ、どっと我が軍の兵士たちがなだれ込む。

俺のレクルート・ファハンはジャンプして城門の上へ、更にジャンプして高度を取った。眼下には敵のスカイアウフ・ドラグナーが数騎見受けられる。そのドラグナーは、まるで蜂を思わせるフォルムをしていた。それも凶悪なスズメバチ。俺はブースターの向きを上の向け、一気に間合いを詰める。腰溜めに構えた大剣をそのまま背後から突き刺した。俺とそのドラグナーはかなりの勢いで地面に叩きつけられた。が、敵さんがクッションになってくれたので、大したダメージは被っていない。俺は再び上を向くと、城壁へとジャンプ、更にジャンプして、再び高度を取った。

俺の存在に気付いた敵のスカイアウフがこちらを指向する。
『-ランダーが飛ぶ… だと? しかも、例の白いやつか…!?-』
「ああ、飛んでるさ。俺はライヴ=オフウェイ! いざ尋常に勝負!!」
『-ぬかせ! このクワットを相手に、勝てると思うてか!-』
「みんなそう言うんだよね~」
俺はブースターを調整しつつ、落下方向を微妙にコントロールしていた、俺のファハンは敵さんからは左右に振れて見えるはず。そして、太刀筋を見せぬよう、半身になってファハンの影にシュエートを隠した。
『-小賢しい真似を…!-』
そのクアットというドラグナーはまっすぐに胴体を突きに来た。俺は左右に振っていたファハンを右にフェイントを入れて左へと抜ける。同時に既に逆手に持っていた大剣を思い切り横に薙いでみせた!

ヒット! 無残にも胴体を真っ二つにされたクアットは、その勢いのまま放物線を描いて落ちていく…。
「へへ、変身抜刀霞斬りへんみばっとうかすみぎりってね!」
俺はファハンを空中でくるっと前転させると、ブースターをふかし、無事に着地した。次は…!?
『-よくも、アビス卿を…!!-』
おうおう、やって来るじゃん。目立つと、どうしても敵さんの方から寄ってくるのよね。
俺は後ろにダッシュローラーで移動しながらその第一撃をかわした。そのまま再びブースターをふかして、ジャンプしながら前転する。シュエートは眼前に垂直に構えたまま、くるっとひと回転!見事にクアットの頭を粉砕していた。
『-ぐぬう…-』
俺はそのまま腰溜めに構えると、いつものとおりにコクピットへと一撃を加えた。そしてこのドラグナーも沈黙したのである。

ここいらで、俺は周囲を見渡してみた。流石一騎当千の猛者ぞろいと言ったところか? 殆どのランダー・ドラグナーは片付いており、何騎かのスカイアウフ・ドラグナーの姿が見受けられるだけとなっていた。敵一般兵士の士気は既になく、とうに逃げ出しているものもいた。

『-聞くが良い!-』
突然、ローンの声が周囲に響き渡った! そう言えば、ドラグナー:ダイティーヤで出陣するって言ってたよな。
『-当フェアンレギオン砦の長、フォルト=チェフ卿はこのローン=リアリズレンが討ち取った! これ以上の抵抗は無意味である。この場に集いし騎士たちよ、振り上げた剣を収め投降すべし! さもなくば一兵卒に至るまで血祭りにあげようぞ。繰り返す。我が軍に対し攻撃をやめ、投降せよ。我らには貴君たちを名誉ある捕虜として丁重に迎え入れる用意がある…-』

◇     ◇     ◇     ◇

歴史家は言う。
この強襲の裏にライヴ=オフウェイの姿があり、多大に貢献しているとの記述が残っていると。彼は戦士として一流であるだけでなく、軍師としての采配、そして工作兵としてもまれに見る才能の持ち主だった。このフェアンレギオン砦の攻城戦以降、ライヴ=オフウェイはローン=リアリズレン卿の右腕として確固たる立場を擁立した。しかし、彼の活躍の裏では、それを面白く思わない者も出てきていたのである。その点について当時のライヴにはまだ、知る由もなかった。

出過ぎる杭は、打たれるしかないのだろうか?

◇     ◇     ◇     ◇

「え? マジですか?」
「マジ… それはどういう意味だね?」
ローンは不思議そうな声を上げた。それもそうである。俺を正式にブラウ=レジスタルスへと入らないか、とのお誘いがあったのだ。もちろん、それに越したことはない。が、心配もある。果たしてこのことが俺の記憶に関して有効な手段となりえるのか? それに、今回の件で作戦上、俺にかなりの無茶振りをしてくるとわかったこともある。俺の記憶や俺の世界に帰る方法を見つける前にお陀仏という結果だけは、なんとしても避けたかった。

「俺のことを買ってもらえるのはありがたいのですが、いつもいつも同じ成果をあげられるとは限りません。今回は偶然うまくいきましたが、今度はどうなるか…。不安ではありませんか? ね、不安でしょ?」
「私はそういう慎重さも買っているのだがね。まぁまずは、君の手回り品と君の恋人を同伴させよう」
「恋人?」
「リーヴァとかいう少女がいたではないか。彼女ではないのかね?」
「リーヴァは… 確かに俺にとって大事な人です。できれば戦争に巻き込みたくはない」
「…ということは、君は戦い続けなくてはならないことになる。どちらにしても、なのだが」
「それは、どういうことでしょう」
「君はいささか有名になりすぎてしまったということさ。それに今回の勝利。帝国は君の首を本格的に取りに来るぞ」

ええええええええええ…!? マジっすか~?
「君の命と大事な人を守るためにも、我が同胞になることをおすすめする。どうだ?」
そうだった。この人もなかなかの策士だよ。こうなること、はじめっから分かってやがったんだ。
「…わかりました。では俺の命、ここに預けましょう」

こうして、俺はブラウ=レジスタルスの一員となったのだった。なんだか複雑な気分だが、仕方ない。運命とは本当に巧くいかないものである。俺は大きく溜息をつくと、傍にあったソファに倒れ込んだ。
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