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或いは夢のようなはじまり
46 決戦・3
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(――そう、このままならな!)
幸いにも、直樹は自身の立ち位置が絶好のものである事に気が付いていた。
同時に、手にしていた警棒を鵺めがけて投げつける。
折れた警棒はブーメランよろしく、不格好な風切音を発しながら鵺へと襲い掛かる。
確実に鵺に当たる軌跡を描く警棒だったが、その結果を直樹は確認しない。
自身の身体が衝突した事により半壊したロッカーに手を伸ばすと、外れかけている扉を力任せに毟り取った。
「こいつもくらえっ!!」
両腕を振りかぶり、ロッカーの扉を鵺に向けて放り投げる。
決して自棄になった訳ではない。
警棒にしろロッカーの扉にしろ、こんなもので鵺にダメージを与えられるとはそもそも思っていない。
ほんの少しだけ、鵺に対して目眩ましになれば良いのだ。
本命は、ロッカーに残っている――
「怪我の功名ってやつだな!」
引っ張りだしたのは木刀。
直樹が壊したのは、剣道部が管理する木刀が収められているロッカーだったのだ。
「全部、借りるぜ!」
ロッカーに収められていた木刀を、言葉通りにすべて抱え出す。
30を超える数の木刀を両脇に抱え、直樹は倉庫を飛び出した。
【………】
直樹が得物を手にした事は理解しているのだろうが、抱えきれない程の木刀を持った姿を鵺は怪訝そうに見遣っている。
それとも、直樹が何をしてくれるのかお手並み拝見といったところか。
「そんなに落ち着き払って、後悔したって知らないからな!」
戦闘開始以降、最も近い距離にまで接近した直樹だったが、それでも木刀が届く距離には程遠い。
両手に一本ずつの木刀を残し、残りを足元にばら撒いた。
「受けてみやがれ!!」
直樹は足元の木刀の柄を次々と蹴り抜いた。
木刀が矢の如き速度で、次々と鵺に襲い掛かる。
単純な攻撃力で言えば、直樹と最も相性が良いのは日本刀だ。
木刀の攻撃力は日本刀に遠く及ばないが、その材質は直樹の霊力との融和性が高く、使い方と相手次第で日本刀を凌ぐ攻撃力を発揮する。
ほんの短時間抱えていただけで木刀のすべてに直樹の霊力が行き渡り、こうして蹴り出すだけでも凄まじい攻撃手段となるのだ。
10秒とかからず、両手に握っている以外の木刀すべてを蹴り出した直樹だったが、急拵えの飛び道具だけでは鵺を仕留める事などできなかった。
鵺にしてみても全くの無傷ではなかったが、急所から外れた少々の傷など大したものでもない。たちどころに治してしまうのは確認するだけ時間の無駄だと言える。
(まぁ、こんなもので致命傷になるなんて思ってもないけどな)
残された二本の木刀を構え直し、直樹は鵺に突撃する。
武器の間合いが多少広がったところで劇的な戦力増強とは言い難いが、直樹には勝算があった。
ここで、直樹の霊力と木刀の相性の良さが最大限に発揮される。
木刀を覆う霊力同士が磁力のように引き付け合い、一振りの武器となるのだ。
直列繋ぎも並列繋ぎも、直樹の意のままである。
「――ふんっ!!」
右腕を大きく引くように振りかぶる。
散らばっていた十数本の木刀が床を滑り、宙に浮く。その木刀は霊力によって固着され、滑らかな曲線を描いている。
「くらえっ!!」
右手の木刀から連なるすべての切先を鵺に向け、渾身の力を込めて叩きつける。
武器は大きくなればなる程に重量も増し威力が上がる反面、動きが単調で緩慢になってしまう事が多い。
しかし、霊力でコーティングされている状態ならば、空気抵抗は限りなく低減される。
十数本の木刀が、音速の刃となって鵺に襲い掛かる。
【……ッ!!】
この攻撃には、さすがの鵺も慌てた様子で飛び退いた。
「逃がすかっ!」
今度は直樹の左腕が振るわれた。
多節棍と化した木刀が飛び退こうとした鵺の四肢に絡みつく。
地力に勝る鵺は霊力の紐を引き千切るが、それでも目に見えてバランスを崩した。
「上出来いいぃぃぃ!!」
直樹は、力比べで勝とうなどとは露ほども思っていない。
渾身の一撃を確実に撃ち込める隙さえ作れれば、そこからは体力の続く限りに斬り続けるだけだ。
そしてそこに至れば、どんな敵でも粉砕できると確信している。
最初に、尾が根元近くから切断された。
その激痛に硬直した隙を逃さず、胴体に木刀を四本突き立てる。深く食い込んだ木刀は霊力の紐から外れてしまうが、霊力によるコーティングは残っているために鵺自身が引き抜くことは至難であろう。
「まだまだあっ!!!」
直樹に近い位置から四肢が一本ずつ薙ぎ払われる。床に落ちた脚は小さくバウンドして塵と化してゆく。
自立できなくなり倒れ込んだ胴体に木刀を突き立て、噛み付こうと顔を向けてきたところを逆袈裟に斬り上げて左目を潰す。
【……! ………っ!!】
叫び声ひとつ発しない鵺だったが、四肢を失い、木刀によって床に縫い付けられた状態では勝敗は決したも同然だ。
もちろん直樹はとどめを刺すまで手を抜くつもりはない。
満身創痍の鵺ではあるが致命傷に至るほどの深手ではなく、油断して攻撃の手を緩めれば、これらの傷も完全に癒されるだろう。
直樹の武器も手にした二本の木刀のみになってしまったが、この状況で鵺を消滅させるには十分だ。
「俺の――勝ちだ!」
直樹は右腕を振りかぶった。
幸いにも、直樹は自身の立ち位置が絶好のものである事に気が付いていた。
同時に、手にしていた警棒を鵺めがけて投げつける。
折れた警棒はブーメランよろしく、不格好な風切音を発しながら鵺へと襲い掛かる。
確実に鵺に当たる軌跡を描く警棒だったが、その結果を直樹は確認しない。
自身の身体が衝突した事により半壊したロッカーに手を伸ばすと、外れかけている扉を力任せに毟り取った。
「こいつもくらえっ!!」
両腕を振りかぶり、ロッカーの扉を鵺に向けて放り投げる。
決して自棄になった訳ではない。
警棒にしろロッカーの扉にしろ、こんなもので鵺にダメージを与えられるとはそもそも思っていない。
ほんの少しだけ、鵺に対して目眩ましになれば良いのだ。
本命は、ロッカーに残っている――
「怪我の功名ってやつだな!」
引っ張りだしたのは木刀。
直樹が壊したのは、剣道部が管理する木刀が収められているロッカーだったのだ。
「全部、借りるぜ!」
ロッカーに収められていた木刀を、言葉通りにすべて抱え出す。
30を超える数の木刀を両脇に抱え、直樹は倉庫を飛び出した。
【………】
直樹が得物を手にした事は理解しているのだろうが、抱えきれない程の木刀を持った姿を鵺は怪訝そうに見遣っている。
それとも、直樹が何をしてくれるのかお手並み拝見といったところか。
「そんなに落ち着き払って、後悔したって知らないからな!」
戦闘開始以降、最も近い距離にまで接近した直樹だったが、それでも木刀が届く距離には程遠い。
両手に一本ずつの木刀を残し、残りを足元にばら撒いた。
「受けてみやがれ!!」
直樹は足元の木刀の柄を次々と蹴り抜いた。
木刀が矢の如き速度で、次々と鵺に襲い掛かる。
単純な攻撃力で言えば、直樹と最も相性が良いのは日本刀だ。
木刀の攻撃力は日本刀に遠く及ばないが、その材質は直樹の霊力との融和性が高く、使い方と相手次第で日本刀を凌ぐ攻撃力を発揮する。
ほんの短時間抱えていただけで木刀のすべてに直樹の霊力が行き渡り、こうして蹴り出すだけでも凄まじい攻撃手段となるのだ。
10秒とかからず、両手に握っている以外の木刀すべてを蹴り出した直樹だったが、急拵えの飛び道具だけでは鵺を仕留める事などできなかった。
鵺にしてみても全くの無傷ではなかったが、急所から外れた少々の傷など大したものでもない。たちどころに治してしまうのは確認するだけ時間の無駄だと言える。
(まぁ、こんなもので致命傷になるなんて思ってもないけどな)
残された二本の木刀を構え直し、直樹は鵺に突撃する。
武器の間合いが多少広がったところで劇的な戦力増強とは言い難いが、直樹には勝算があった。
ここで、直樹の霊力と木刀の相性の良さが最大限に発揮される。
木刀を覆う霊力同士が磁力のように引き付け合い、一振りの武器となるのだ。
直列繋ぎも並列繋ぎも、直樹の意のままである。
「――ふんっ!!」
右腕を大きく引くように振りかぶる。
散らばっていた十数本の木刀が床を滑り、宙に浮く。その木刀は霊力によって固着され、滑らかな曲線を描いている。
「くらえっ!!」
右手の木刀から連なるすべての切先を鵺に向け、渾身の力を込めて叩きつける。
武器は大きくなればなる程に重量も増し威力が上がる反面、動きが単調で緩慢になってしまう事が多い。
しかし、霊力でコーティングされている状態ならば、空気抵抗は限りなく低減される。
十数本の木刀が、音速の刃となって鵺に襲い掛かる。
【……ッ!!】
この攻撃には、さすがの鵺も慌てた様子で飛び退いた。
「逃がすかっ!」
今度は直樹の左腕が振るわれた。
多節棍と化した木刀が飛び退こうとした鵺の四肢に絡みつく。
地力に勝る鵺は霊力の紐を引き千切るが、それでも目に見えてバランスを崩した。
「上出来いいぃぃぃ!!」
直樹は、力比べで勝とうなどとは露ほども思っていない。
渾身の一撃を確実に撃ち込める隙さえ作れれば、そこからは体力の続く限りに斬り続けるだけだ。
そしてそこに至れば、どんな敵でも粉砕できると確信している。
最初に、尾が根元近くから切断された。
その激痛に硬直した隙を逃さず、胴体に木刀を四本突き立てる。深く食い込んだ木刀は霊力の紐から外れてしまうが、霊力によるコーティングは残っているために鵺自身が引き抜くことは至難であろう。
「まだまだあっ!!!」
直樹に近い位置から四肢が一本ずつ薙ぎ払われる。床に落ちた脚は小さくバウンドして塵と化してゆく。
自立できなくなり倒れ込んだ胴体に木刀を突き立て、噛み付こうと顔を向けてきたところを逆袈裟に斬り上げて左目を潰す。
【……! ………っ!!】
叫び声ひとつ発しない鵺だったが、四肢を失い、木刀によって床に縫い付けられた状態では勝敗は決したも同然だ。
もちろん直樹はとどめを刺すまで手を抜くつもりはない。
満身創痍の鵺ではあるが致命傷に至るほどの深手ではなく、油断して攻撃の手を緩めれば、これらの傷も完全に癒されるだろう。
直樹の武器も手にした二本の木刀のみになってしまったが、この状況で鵺を消滅させるには十分だ。
「俺の――勝ちだ!」
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