群青の緋

竜田彦十郎

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或いは夢のようなはじまり

29 学園に到着・直樹

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「……マジかよ」

 校門越しに校舎を見上げ、直樹は口元が引き攣る感覚を覚えた。

 マズい。実にマズい。
 これは……『いる』。
 校舎の奥底から漏れ出てくる妖気。それが学園の敷地全体を覆っている。
 人外の存在を知覚できる直樹ではあるが、そういった能力を持たぬ者にとっても今の学園は不気味な場所であると感じられる程に妖気の密度が濃い。
 一般的な感覚の持ち主であれば、こんな気味の悪い場所からは早々に離れようと考える筈である。

(………)

 無言のまま、直樹は校門前に倒されている自転車を見遣った。
 香月は自身の発した言葉の通り、ここまで来た事は間違いない。
 状況から察するに、学園の敷地に踏み入ったのだろう。

(ここの違和感に、気付かない筈がないだろ)

 それなりの訓練経験もある直樹ですら、何の用もなければ回れ右して帰りたいところなのだ。
 一般人に毛の生えた程度の香月では、長居すればするだけ気分を害してゆくだろう。
 偏頭痛程度で収まるうちに、見つけて連れ出さねば。

「…さっさと行くか」

 立ち止まったまま考え込んでみても仕方がない。
 香月が開けたであろう校門の隙間に身体を滑り込ませると、学園の敷地に踏み入った。

(これは……想像以上だな)

 敷地内に入った途端、直樹の全身を悪寒が圧し包んだ。
 まるで獲物を見つけた液状の生物が、一気に押し寄せてきたかのようだ。
 この感覚を例えるならば風邪をひく一歩手前といったところであり、身を置く環境を変えなければ、間違いなく体調を崩すと自覚できる状態だ。

「ふぅぅぅぅ………っ」

 深く息を吐き意識を落ち着けると同時に、全身を己の氣で覆うイメージをとる。
 直樹はいわゆる『気を張る』状態を意識的に作り出した。
 緊張状態を保ち続けるため長時間の維持には無理があるが、徹夜する程でなければ問題でもない。
 改めて校舎を見上げ、ゆっくりと駆け始める。まずは香月の教室からだ。

 この時、直樹は考えていなかった。
 どうして、香月の自転車が倒れていたのかを。
 自分の乗った自転車くらいきちんとスタンドを立てていけ、程度の事は考えたが、時間を惜しんだ直樹はそれ以上の可能性を追求しなかったのだ。

 直樹が校舎内に姿を消したのを見計らったかのように、僅かに開いていた校門は本来の重量からは信じられない軽やかさで、ぴったりと閉じられた。
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