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プロローグ

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「んじゃああこりゃあああああっ!!!」

 俺様が、なんでこんなみすぼらしい格好に、なんなら手足に枷を付けられていて、ご丁寧に足の方の枷は鎖で「10Kg」と書かれた黒い鉄球に繋がっていた。身体を触ると、若返っているようだけれど、栄養が乏しく細身な上に、砂ぼこりで汚れ切っている。

『気づきましたか?』

 脳内に直接響く声が聞こえた。
 あどけない少年のような声でどことなく楽しそうだ。

「この声は・・・・・・・・・」

 俺様が考えた振りをするが、リアクションが返ってこない。
 社長をやっている時は、だいたい恐れをなした相手側が内容を喋り出すと言うのに・・・くそめ。

「誰だっ!?」

『ふふふっ、ボクはこの世界の神です』

 相手のペース、しかも子どもっぽい声に質問するのは癪だったが、質問すると、神から自慢するような声で回答があった。

「神だとっ!!!?」

 どっきりじゃないかと周りを見渡すが、鉄格子に石でできた壁と寝床らしき藁、そして、壺がいくつかあるだけだった。

『そろそろ、念で話しましょうか。イタイ人だと思われますよ?サクヤくん』

(くん呼びだと・・・これが、取引先なら絶対ぶっ潰すのに・・・っ)

 俺様が30代で成功したのを50、60代の社長が年齢というただそれだけ優位性でマウントを取ろうとして、来るのを俺様は圧倒的資本で潰してきた。

『大丈夫ですよ。ボクはすべてにおいて、サクヤくんより優れていますから。特に性格はね』

 笑い声が癪に障る。
 けれど、声に出していないことも読み取れるようだ。

『なぜ、ここに俺はここにいる?俺がこんなところにいれば、日本経済の大きな損失だぞ』

『あはははっ、相変わらず面白いね、キミは。キミの企業にとっては損失でも、日本経済にはプラスでしかないと思うよ?』

 バカにしやがって。

『そんなに怒らないでよ。うん、キミはエリートだもんね。確かに日本経済、いや、世界経済にとって大きな損失かもしれない』

『そうだろ、そうだろ』

 俺様に冗談を言うとはさすが神。いい度胸していることは認めよう。
 下げてから上げるというおだて方の常とう手段に簡単に乗ってしまう。

『でも、そんな他のことを心配している暇はないと思うんだ。サクヤくん。キミはね、Ωになったんだから』

『おめが・・・?』

 その言葉に背筋がぞっとして、ぶるっと震える。

「あっ」

 俺様は思い出した。
 なんで、この場所にいるかを。

『そっ、キミは「呪いのオメガバース」の本を読んで、転生してきたんだよ。ようこそ、官能的な階級社会のオメガバースの世界へ』
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