厄災の街 神戸

Ryu-zu

文字の大きさ
上 下
133 / 154
第四章 天使と悪魔

天使軍 紗衣の葛藤

しおりを挟む
2階に上がろうと階段に差し掛かって気が付いた。

階段には、教室の机や椅子が山積みにされてバリケードの様相を呈している。
ラットの大きさでは2階に抜ける事は出来ないだろう。

だが、加奈子たちは全員が宙に浮けるので、バリケードの上部を飛んで2階に上がれた。
加奈子は翼を出さずに浮き、隙間を抜けていった。

2階に上がると、そこもゴブリンの死体と人間の遺体が転がり、それを食事にしている魔物が多数いた。

明日桜ガリレオキャット、悪だくみに長けた猫型魔獣~ レベル低い子ばっかり」

『ガリレオキャットにガリレイラットって(笑)』
ガリレオ・ガリレイ?本で見たぁ~」

下のラットもここのキャットも何故か敵対してこないのでスルーする事にした。

3階、4階と上がるごとに数は減るものの、どこも同じような光景だった。

5階は死体も遺体も無かったので、キャットも居ない静かな階だ。
その代わりに生きた人間も居ない。


もうここの学校には生存者は居ないのだろうか。
向かいの棟も窓から見える範囲では、死肉喰らいの魔物しか動くものは見えなかった。
ゴブリンやオークすら居ない。


一行はもう一度4階まで降りてきた。

明日桜なんでこの子らって、うちらを敵視しないんやろうなぁ」
『まぁ捜索するのに邪魔にならないから良いですけどw』

明日桜紗衣さんが居たら抱きしめてたかもねぇw」
『あ、何か眷属欲しいって言ってたけど、知らせてあげようかな』

{紗衣さん、そっちはどうですか?}

紗衣あっ、加奈子さん、こっちにスプーンのロゴのお砂糖屋さんとかお母さんのマカロニ屋さんとかがありましたよ}

{あら、ここから見えるわ、その北側に学校が見えるでしょ?そこに猫型やネズミ型の魔獣が居るんだけど見に来ませんか?}
紗衣いくぅ~}


3階の南側の窓から見ていると、紗衣とあやかが飛んでくるのが見える。
明日桜と緑が千切れんばかりに手を振り誘導する姿が可愛い。


部屋に入ってきた紗衣は、1オクターブ高い声で叫んだ。

紗衣いやぁぁぁぁネコばたけぇ~」


白や黒や茶色いネコ。ブチや三毛やまだらや言いようのない有色猫達。
毛足の長い子短い子、足の短い子、多種多様だ。
普通のネコよりも体躯はかなり大きく、バランス的には胴が長く見える。

飼い猫や野良猫の進化系かも知れない。

見た目は、知ってる範囲で言えば、ヤマネコかビントロングかフォッサのようなのもいる。






紗衣どの子にしよっかなぁ~」

紗衣が触っても、どの子も嫌がらないし抵抗すらしない。
こんな危機感のない生き物は淘汰されてしまうんじゃないだろうかとさえ思ってしまう。



紗衣は少し壊れかけである。
紗衣にゃぁぁぁぁぁぁぁ~~~どの子にしようかにゃぁ~」

才楊と別れて自由になった紗衣は、これからは大好きな動物と一緒に生きていきたい。
その為の眷属を吟味したい、でもどの子も可愛くて選び切れない・・・


『明日桜ちゃん、緑ちゃん、ちょっと紗衣さんに尽いててあげてもらえないですか?』

明日桜いいですよぉ~、コメちゃんの眷属用にネコちゃん持って帰ってあげたいし」

明日桜は緑と相談して、何匹かのネコとネズミを持って帰ろうと計画していた。
それは、ファミリーの友達が眷属を欲していたからだ。

明日桜加奈子さん、ちょっと一回クランに戻っても良いですか?」
『どうしたのかしら?』
あんね、ネコちゃんとネズミちゃんを眷属をほしがってたひとにあげたいの」

『あぁ良いですよ~でも気を付けてね』
明日桜ありがとうございます~」


加奈子はあやかを連れてお母さんロゴのマカロニ工場に向かった。
乾燥パスタやマカロニ等を大量に仕入れられた。
しばらくの食料はこれだけでも十分事足りる。

その後はスプーンのロゴのお砂糖工場であるだけの物資を空間倉庫に詰め込んだ。

明るい星のインスタント麺の工場では当分食べきれないであろう数の各種麺類が手に入った。
その工程で使われるであろう食材も色々と空間倉庫に詰め込んだ。

神戸発祥のお菓子屋さんでは、大量の小麦粉の薄力粉を手に入れた。
20㎏入りの袋を500袋はあるだろうか?
別の棟には、強力粉が同じくらいの量が積みあがっていた。

奥の冷蔵室には卵や生クリームが驚くほど大量に在庫してあるままだった。
誰もここには盗掘に入ってこなかったんだろう。
冷凍庫にはまた大量のバターや多種の冷凍フルーツがあった。

電気が止まってるとは言え、耐熱加工のされた部屋なので、まだまだひんやりとしている。

食品加工会社や物流センター等も見て回り、食になりそうなものは全て攫えて倉庫に入れた。

一番東の小天使のマヨネーズ屋さんはここでも大きい部類の工場だ。
マヨネーズに使う鶏卵を始め、オイルや見学者に振る舞う試食用の野菜がたっぷりとあった。
ドレッシングもここで作っているようで、それの原材料の玉ねぎ等のストックがかなりあり、申し分のない収穫だった。


これで今の1000人前後の人数なら、年単位で延命できるだろう。
六アイウエスト地域の外周部の、春にパン祭りをする所やハム屋やお菓子屋さん等、まだ見てない所も多いから、近いうちに見に行こうと加奈子は思った。



途中で合流した麗菜や徳太郎と一緒に高校に戻る。
その道すがら、人間には逢わないがモンスターにはチョコチョコと出会う。

あまり強いのは居なくて、ほとんどは洋路のレベリング用に消化されていく。



高校に戻ると、明日桜と緑はすでに帰って来ていて、紗衣を生温かい目で見ている。
紗衣は2匹の大きめの短毛のガリレオキャットを抱きしめていた。

『紗衣さんはその子達に決めたのでしょうか?』
明日桜あははは、まだ決めかねているんだよ~ん」
紗衣もぅどの子も可愛くて可愛くて選び切れないですぅ~」

もういっそ、ここに住んだら楽しいよねぇ~」
紗衣!!!」


『さ、紗衣さん?』
あやかお、お母さん?なんか変な事考えてない?」

紗衣加奈子さん、ここを天使軍の基地にしませんかぁ~?」

満面の笑みで紗衣が加奈子に問い願う。

『・・・』

紗衣駄目ですかぁ?」
少女返りしたような紗衣がもう一度懇願するが、加奈子が危惧する事がまだ解消出来てない。

『この近くにね、フィルを傷つけたゴブリンの集団がまだ居るのよ。
 それを討伐出来たら、元々自分たちの拠点を何処かに作ろうとは思ってたからね』



洋路加奈子さんって土魔法のフォートとか持ってるでしょ?」

唐突に洋路が加奈子に問いかける。

『うん、小屋シェードフォートがあるよ?』
洋路それを使ってこの校舎を囲えばちょっとした要塞が出来るんじゃないかなぁ?」

『・・・』

『具体的にどうやれば?』

洋路まずは砦とかを作るのにその原材料がどう使われるのかとかわかりますか?」
『ううん、まったく何もわからないわ』

洋路それじゃーちょっと外に出ましょうか?」

紗衣と緑とレンを残してみんながゾロゾロと付いて来る。

明日桜攻撃土魔法は少しは見た事あるけど、要塞を造るなんてまるで魔法のようだ!」
全員あはははは」

明日桜もすっかりポジティブ思考に切り替わり、こんな世界を楽しんでいるようだ。
戸弩力組も、全体に暗かった雰囲気が今はとても明るくなったのは加奈子のおかげだろう。

そんな事を思いながら天使軍はちょっとワクワクしながら笑顔で外に出て行った。












Private Zoo Garden:動物図鑑
https://pz-garden.stardust31.com/namae.html

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……

踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです (カクヨム、小説家になろうでも公開中です)

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...