厄災の街 神戸

Ryu-zu

文字の大きさ
上 下
130 / 154
第四章 天使と悪魔

精霊の格と悪魔の格

しおりを挟む
ヘスティアと言う神話の世界の精霊神が、主であるトオルの肩にチョコンと座っている。

美凪精霊の格で言えば、ヘスティアの方がイフリートより上って事ですね」
ヘスティア神格で言えばア奴は精霊魔神でわらわは精霊神、ほぼ同じじゃよ。
 違いと言えば、妾の方が圧倒的に信徒が多いゆえ、霊核が高いってだけじゃ」

美凪そうですか… イフリートの霊核を上げる方法ってあるのですか?」
ヘスティア何を言っとる?我らは異世界の住人に使役する事で霊核も神格も上がるのじゃよ」

『へぇ~ それで俺らの様なゴミクズにでも使役するんだなw』

ヘスティアお前様達がゴミクズだとは思えないが、人と言う生き物はそのたぐいであろうな。
 二人共能力を隠しとるようじゃが、溢れ出すオーラの格が人間とは比べ物にならんわ」

美凪ど、どうすればイフリートをヘスティアの様な強い精霊に出来ますか?」
ヘスティア簡単じゃよ、こき使う事じゃ(笑)それで霊核が上がってゆく」

ヘスティア霊核が上がれば、妾の様に擬人化や妖精化する事も出来るじゃろう」

美凪は心の中で、イフリートが妖精化した姿を思い浮かべてニヤリと笑った。

『まぁ俺らが言うところの、熟練度みたいなもんだな』


『ヘスティアは長いから、ティアと呼ぶが異存はあるか?』
ヘスティアよかろう、特に異存はないぞ」

『じゃぁティア、お前は常時顕現してられるのか?』
ヘスティアさすがにこの世界の丸1日、24時間も顕現しとれば、お前様に負担が掛かる」

『ティア自体は大丈夫って事なんだな?』
ヘスティアそりゃ妾はお前様の精霊力を喰らうだけじゃからな」

のどかに妖精と話をしていると、11番街の前のスーパーの辺りにイノシシの魔獣が2体、こっちを睨んでいるのが目に入った。

ヘスティア魔獣もこっちの世界に召喚されたのじゃな」

ヘスティアはそう言うと、左の手のひらを上にしてフッと息を吹きかける。

その息は、炎の槍と化しイノシシの魔獣に光速で突き刺さった。

解読で見るとシルバーボアと言う名の魔獣が、何が起こったのかもわからず、自分が死んだ事にさえも気づかないで息絶えた。

『ティアは凄すぎるなw』
美凪本当にティアは凄い!イフリートももっと活躍させてあげないと…」

褒められて本当に嬉しそうな顔で喜ぶ妖精は、とても神話の神とは思えない様な可愛らしさだった。



『このイノシシは食用だが、どうしたもんだろうか』
美凪す、すみません、自分が空間倉庫を取得して居れば・・・」

『その代わりに、お前のおかげでティアと巡り会えたからな。礼を言うよ』
ヘスティアそうじゃな、おぬしがおらなんだら、お前様ともえにしつむげなんだからの」

『まぁ仕方が無い、そこに転がしとくか』
ヘスティアお主、美凪と呼んでも良いかの?」
美凪はいっはいっ、美凪と呼んで下さい」



トオルは、スーパーの前の駐車スペースにシルバーボアの死体を転がして中に入って行く。

『どうせもうスーパーの中は略奪された後だろうがな、一応見ておこう』

店内は荒らされていて、冷凍の食品などが床に散乱している。
腐敗臭が漂う。
バックヤードに移動すると、数人の遺体が転がっていた。

ヘスティアこれは・・・ 魔物にやられたんじゃ無いじゃろな」
『人間の仕業だな、よくこんな事が出来るよな』
美凪酷い事をしますね、本当に人間って生き物は・・・」

多分、ネタでは無いのだろうが、美凪もトオルも心底そう思っての発言なんだろう。
高い棚の上にげたモノは、下から見えないもんだから・・・

お湯が使えないからの腹いせなんだろうが、カップ麺が踏み潰されて多数転がっている。
心底腹が減ったなら、お湯なしでも食べられるし水で戻しても食べられると言うのに。


死体や遺体や荒らされてゴミになった物が散乱しているその現状は、法治国家だったとはとても思えない。
だが、そのおかげで、箱のままのカップ麺が数箱残ったままだった。

カップのスープ春雨とか飯類もそこそこ奥の方に積んである。
トオルはすかさず、綺麗なバラバラの物も含めて魔通鞄に全部仕舞い込んだ。

『ちょっと収穫はあったな~』
美凪これはクランの食糧庫に入れるのですか?」

『いやいや、これはうちのファミリー用だよ、強くなっても腹は減るからなw』
『そういやティアは何を食べて生きているんだ?』

ヘスティア妾はお前様の精霊力で生きれるが、普通に皆が食すものも好きであるぞ」

『トイレとかはどうすんの?』
ヘスティアそんな事を女子おなごに問うとは、不躾ぶしつけな奴じゃ!」

ポコポコとトオルの頭を両手で叩く小さき妖精が可愛すぎる。




 「おぉ~猪が死んどるぞ、これって食えるんちゃうんか?」
 「そのままじゃ食えんやろ~w」
 「誰か捌けんのか~?」

スーパーの外で何人かの声がする。
面倒事になる前にさっさとここを去ろうとトオルが言うので、美凪も尽いて行く。


スーパーの外に出ると、シルバーボアの周りに10人程のレベル付きが居た。
みんなレベル15前後で、それなりに狩りを頑張っているんだろう。

しかし、全員に殺人称号とURやSSRの武器やスキルがある・・・
全員、鑑定と風纏と言うスキルも持っている。

 「おっ?べっぴんさん連れとるのぉ~」
 「おいっあれは妖精かっ?」
 「おぉおおおおおっ!妖精じゃぁ」

美凪がイラっとするが、トオルが黙って通り過ぎようとしていたので相手にしない事にした。


ところがこいつらは自分と相手の力量の違いに気づかず、トオル達に絡んで来る。
武器も持たず、男が一人、女連れで妖精まで肩に乗せてるチャラ男に見えたようだ。
 
 「おいっ兄ちゃん、その女と妖精を置いて行くか、ここで死ぬかどっちか選ばせたるわw」

全員がニタニタと気味の悪い笑顔で二人と精霊神を取り囲む。

 「おいっ!聞いとんかぃ!」
 「やさしゅうしたったら調子に乗りやがって」
 「いちびんなよ、こらっ!!!」

 「おぅおまえらやってまえ」

丸腰の男一人に、こちらは11人も仲間がいる。
そんな単純な事で相手を侮り、慢心する奴に勝ち目はあるのだろうか。


手に手に異空間から取り出した武器で、トオルに襲い掛かろうとした瞬間。

「ドゥンケルッ!」

 シュパッ

トオルの後方に居た4人の上半身と下半身が真っ二つに分かれた。

トオルの目の前に居た3人を、魔通鞄から取り出した剣鉈で横薙ぎ一閃、3つの首が飛んで行く。

「炎柱!」

横に居た4人はヘスティアの超ゆるめの炎の柱に取り込まれて焼かれてひざまずく。

ほんの瞬きする一瞬に起こった事に、自分たちの現状が意識として追いついていない。

ヘスティアん?なんじゃ?殺しても良かったのかぇ?」
美凪キングに不遜な態度を取る輩を生かしておく道理がありません」

トオルはへたり込んでる4人の前に立ち、優しい声で語り掛ける。

『絡む相手はちゃんと選ばないからそうなるんだよ、おやすみ』

反論や言い訳すらする隙を与えず、ボス格を残してそいつらの首は肩から転げ落ちていった。

『ティア、実験だけど、こいつの身体の中から燃やし尽くすって事が出来るか?』
ヘスティア容易い事じゃ」

 「ま、待ってくれ~、なんでもゆう事を聞くから許してくれ~」

『ん?俺を殺そうとしてたのに、助かる訳ないだろう?
 格の違いも見抜けないのにこの先おまえに未来は無いだろうしな』

 「い、色々とアイテムを持っているから、それを全部渡すから」

ステを見ると、待望の空間倉庫と身体強化²のスキルを持っている。

鑑定のスキルも持っているのに何故?と思ったが、トオル達の隠蔽の方が上位だったのだろう。

隠匿したステータスを見て騙されたとしても、レベル21と自分達よりも上なのに、馬鹿な奴らだ。

『心配するな、お前が死んだらそのスキルごと俺が頂くから』

ヘスティアもう良いか?」
『あぁいつでもいいぞ』
 「あっ、まってまって~」

 「爆炎」

その男の腹が爆ぜて炎が少し噴き出した。
だが、腹に大穴が開いて燃えているだけで、まだ生きている。

 「あぁぁぁ、いだいっ~ あづいぃ~ 腹がぁぁぁぁ」

ヘスティアあはははは、お前様や美凪に当たらんように手加減しすぎたわぃ」

『これはこれで面白いけどな(笑)』

美凪ははは、おのれの馬鹿さ加減を恨んで逝くが良い」

美凪は大剣でその男の首を刎ねた。


『おっ?新しい殺人称号が増えたぞ?変身スキルでも手に入ったかな?』

トオルが嬉しそうに自分のステータスボードを眺めている。

しおりを挟む

処理中です...