厄災の街 神戸

Ryu-zu

文字の大きさ
上 下
129 / 154
第四章 天使と悪魔

悪魔と精霊

しおりを挟む
トオルはウエストエリアに視察や調査に行く度に色々な新人類のステータスを観察してきていた。

それは、トオルに有用なスキルを持っている"獲物"を探すという事である。


今まで目星を付けた獲物は数人居るが、そのすべてを取得しなくてはいけない訳では無い。
何かの時に必要なら手に入れようと思っていただけだ。

今回は、美凪に必要な身体強化、そして美凪が欲している精霊術、トオルが欲している空間倉庫の3つのスキルを探しに行く。

身体強化と空間倉庫はだいたいの目星は付いているが、精霊術はまだ見た事が無かった。


そんなことをトオルが考えていると、美凪が小さな声でトオルにお願いをして来た。

「キ、キング、その~ショップのポイントが貯まったので、あの~」

何かを言いにくそうにしている。
トオルは大体の事は察したが、本人の口から聞くまでは出しゃばらない様にしようと考えた。

「あの~、身体強化のスキルの前に~、え~と、精霊術を~、モゴモゴ」

『あっはははは』
『さっきの戦闘でかなりレベルも上がってるし、この先も頑張るってのなら先に取っても良いぞ』

美凪は一気に晴れやかな顔になり、何度も何度もトオルに頭を下げて、激しく喜んだ。

急いでポイントを使い、美凪は精霊術のスキルを取得した。


「キ、キング、聖霊を召喚してもよろしいでしょうか?」
『好きな子を呼べるのか?』

「いえ、ランダムっぽいですね、それとまだ一人しか召喚出来ないみたいです」
『当たりが出ると良いなw』

「先ほど話してたシャドーとかシェイドとかなら嬉しいですが・・・」
『小動物とか無機物の精霊だと外れかな?』

「しょ、小動物でも可愛いければ良いですが、石ころの精霊とかだと泣けますねw」
『そう言うのがフラグになるんじゃないか?(笑)』

「ちょ、ちょっと召喚するのが怖くなってきました・・・」
『あはは、嘘々、俺の眷属なんだから、そんなに運が悪いはずが無いだろw』

「じゃ、じゃぁ呼んでみます」
『おぅ頑張れ!』



「万物の根源を為す者よ!我が従者として今世に顕現けんげんせよ!」

「サモン・スピリット!!!」


美凪の差し出した手の先に光の粒が集まり始める。

やがて光の粒は大きくなり、そして四方に爆ぜる。

その中から現れたのは、オレンジの炎に包まれた大魔神。

『おぉ~~~炎の魔神かぁ~』
「当たり?かな?」

魔神我ヲ顕現セシ強者つわものヨ、汝ノ従者トシテ我ヲ使役スルガ良イ。
我ガ名ハ イフリート」

美凪イフリート、良く呼び掛けに答えてくれた」


精霊を使役した事で美凪に称号や成長補正や新しい職業が追加された。

美凪のステータスボードには、加奈子やキャリヤに勝つまではいかないだろうが、良い勝負が出来うる強さが刻み込まれている。


『こりゃ、天使もびっくりするほどの強さだな・・・』
「セカンド職業の選択に精霊術士が出たのでそれに決めました」
『あぁ俺もセカンドジョブ決めないとな』



美凪イフリートよ、これより我が従者として我に力を貸せ、そしと共に生きよ」
イフリート主ヨ、我ヲ使役スルニ相応ふさわシキ御仁デアル」

イフリート永遠ノ忠誠ヲココニ誓オウ」


『当たりどころか、大当たりだったようだな』
美凪火炎熱に絶対耐性が付いたのも大きいですね」

『新しいステータスのSpirit精神力はイフリートの攻撃力の基礎値かな?』
「そんな感じです、SpPはその攻撃に使う精神力ポイントですね」

『魔力に使うMPみたいなもんだな』
「まったく同じだと思います」

『身体強化よりも先で良かったなぁ、これは驚いた』


イフリート主ノ主人、大主おおあるじヨ、汝ニ敬意ヲ表シテ我ガ権能ノ一部ヲ授ケヨウ」


トオルに精霊召喚1/1が与えられた。

精霊召喚1/1は1度だけ精霊を召喚できるがその後は消失するスキルだった。
 (おぅおぅ、ちょっと嬉しいけど、ポーカーフェイスだ・・・)

『イフリートよ、お前の様に強く気高い精霊をこのスキルで召喚できるのか?』
イフリート我ガ世界、ムスペルヘイム ニ繋ゲレバ、火炎系ノ精霊ガ召喚可能ダロウ」

『火炎系でイフリートと同等となると、サラマンドラかフェニクスくらいしか思い浮かばんわ』
『でも美凪が炎の系統なら俺も相反するよりも同系の方が良いのかもな』

「ふ、二人でお揃いの属性の精霊を携えましょう♪」


『イフリートよ、ムスペルヘイムに繋げといてくれないか』
イフリート大主ヨ、容易タヤスイ事、了承シタ」



『炎の神髄しんずいを知る者よ、我がしもべと成りて今世こんせ顕現けんげんせよ!』

『サモン・スピリットッ!!!』


先ほどと同じように、トオルの指し伸ばした手の先に光が集まり始める。
そして大きくなった光の塊りは強く弾け、その中から精霊が顕現する。

  ポヨ~ン

『はぁ?』

そこには背丈30㎝ほどの、「日本感覚的な妖精」と言うイメージに近い4枚の炎の羽を羽ばたかせる小さき女性型の精霊がにこやかな顔でこちらを見ている。

トオルは少しがっかりしている。
出来れば生命を司るフェニクスか、4大精霊のサラマンドラが良かったんだが・・・


妖精我が名はヘスティア、お前様がわらわを召喚せし者か?」
美凪ヘ、ヘスティア? オリンポス12神柱のヘスティア?」

『美凪、この子を知っているのか?』
美凪ヘスティアと言えば、ハデスやゼウスやポセイドンの姉弟の長姉で、オリンポス12神の1人の火を司る大精霊ですよ・・・」

妖精それはちと違うな、12神柱は甥っ子のディオニュソスに譲った故、わらわはその柱に含まれとらんぞ」

『ディ、ディノニュース?』
トオルは少し尽いていけてない。
北欧神話なら少しは聞きかじっているが、ギリシャ神話は聞いた事が有る程度だ。

美凪キング・・・ アテネやアポロン達の兄弟ですよ・・・」
『あぁ、そ、そうなんや・・・』

聞いた事は有る名前だが、どんな存在だったのかとか、まったくわからないトオルだった。


妖精あ奴は不憫な生い立ち故、承認欲求の強い子じゃからのぉ~」
ヘスティアがしみじみした口調で甥っ子の話をするのを、横で眺めていたイフリートが口を挟む。

イフリート主ヨ、コノ姿ハ精神力ヲ使ウ故、主ニ寄リ添ウ事トスル。
 ヘスティア…ヨ、オ先ニ失礼致ス」
イフリートはそう告げると、美凪の肉体に染み込んでいった。

美凪おっ?おっ? おおおおおお~~~~~~」

美凪の肉体はイフリートが[憑依]した事により【覚醒】したようで、さらに戦闘力が上がった。

美凪キ、キング、とても異常に少し強くなっちゃいました・・・」
美凪が興奮して、おかしな言葉でトオルに報告する。

トオルが美凪のステを見ると、先ほどよりもさらに大幅にステータス数値が上昇していた。


青空美凪(35)
Lv32

種族 【新人類】 選択
職業 【暗黒剣士】【精霊術士】 選択
恩恵 【技能取得】
称号 【同族殺し】【殺人鬼】【虐殺者】【惨殺者】
   【大剣飛戦士】【炎の魔人を従えし者】
状態 【眷属化-櫻庭通】
   【精霊憑依-イフリート】
   【覚醒】
   
基本能力一覧
GMR/USU+
HP 21875/16717<+3065>(+2093)
MP 4811/2718(+2093)
SpP 12286/10193(+2093)

STR 5222/3823〔+100〕<+701>(+598)
DEF 4579/3280〔+100〕<+601>(+598)
AGI 4363/2465〔+1300〕(+598)
DEX 1432/834(+598)
INT  1160/562(+598)
Spirit 3333/2311<+424>(+598)
SP/18
sp/6
基本技能一覧
      技能店舗⒮ 眷属契約 暗黒剣 武装 精霊召喚[1]
      身体強化² 空間倉庫 双剣 個別空間Ⓢ
      転移¹ 隠蔽 大剣豪 一撃必殺 浮遊 超速動
      跳躍 二刀流 双剣術 鑑定 神速剣技 風纏
      索敵
      えん術-[焱弾]-[焱剣]-[焱球]-[魔人戦装]
耐性一覧
     物理耐性 絶対火炎熱耐性
35937/33983



妖精妾をほったらけにするでない」
小さき妖精が口を尖らせてトオルに文句を言う。
フワフワと宙に浮くその姿の愛らしい事、この上ない。


トオルは、美凪の急成長に少し羨ましさを感じたが、それよりもこの可愛らしい従者に心を奪われかけていた。

『ヘスティアよ、お前は顕現した状態で精神力を使わないのか?』
ヘスティアやっと名で呼んでくれたな。妾はこの大きさゆえ、あ奴ほど力は使わぬ」

『それじゃ~精霊力も低いって事か?』
ヘスティアふっ、お前様は見た目で判断するような器の小さい男かえ?」

小さき妖精はそう言うと、道路向こうに見えているビルに向かって手を伸ばし炎の塊りを撃ち込んだ。

 ドッガーン

8階建てくらいのそのビルは、轟音と共に崩れ落ちた。

『す、すげぇなぁヘスティアよw すまなかった、お前は凄い奴だった』
ヘスティアふふふ、妾は精霊神ぞ、この力、思う存分使うが良い、お前様よ」

その火力に、トオルは驚愕の気持ちと共に最高の戦闘力を手に入れた事に喜びを隠せなかった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

処理中です...