厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第四章 天使と悪魔

悪魔の眷属 美凪の強さ

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魔物の集団を見て、トオルはふと思った。
(こいつらって転移組なのかな?)

どこで手に入れるのか、コボルトは各種武器を装備している。
手には剣、槍、長斧、剣斧、短剣等を携えてる。

リザードマンは大剣、大鎌、大鉈などを装備している。

リザードナイトは幅広の長剣を両手に持って、スキルも二刀流や双剣術等を初期からデフォルトで持っているし、素早さが他の魔物より数段高い。

『こんなん、さっきの加奈子の眷属なら秒で殺られるだろうなw』


美凪は、真っ先に突っ込んできたリザードナイトの双剣を大剣のドゥンケルで受ける。

リザードナイトは片方の剣を大剣から外し横薙ぎに振り払ってきた。

リザードナイトが「殺った!」と思った瞬間に美凪は短距離転移で敵の真後ろに回り込み首を刎ねた。
(硬い首w)
美凪の転移レベル1のスキルは、視覚範囲1mほどを移動出来る状態だ。
レベルが上がれば転移距離も格段に伸びるらしいが、やはり熟練度がLvUpには必要なんだろう。


トオルは向かってきたリザードナイトを軽くなし、すぐ後ろに居たもう一体の左腕に強く剣で切りつけた。
死角から現れたトオルの剣鉈に反応すら出来ずに腕を1本落とされた。

痛みで悶えるそのリザードナイトの胸に剣鉈を刺し込んですぐに抜き、最初のリザードナイトの後頭部に剣鉈を切りつける。

首は落ちなかった。


左手に、鞄から短剣を取り出し、意識の薄れているリザードナイトの頸動脈を掻き切る。

あっという間に2体のレベル20以上にもなったリザードナイトがその場に倒れた。


トオルは美凪の方をちらりと見て、リザードナイトが持っていた剣を4本拾って鞄に入れた。
(こんな奴らを相手にしてたら、それなりの武器が手に入るなw)


振り返ると、槍を持ったコボルトが勢いを付けて、矛先をこちらに向けて突いて来た。

トオルは上半身だけで躱し、剣鉈を左下方からコボルトの右肩目掛け振り上げた。

コボルトの左腹から右肩にかけて綺麗に切れ目が入った。
そのまま身体が斜めにずり落ちて、コボルトの生命力が消えて無くなった。

(槍は持ってないから丁度良かった)
トオルはまたその落とした武器を鞄の中に入れて仕舞った。

魔物達はそれなりのレベルだが、STRとDEFに関してはトオルや美凪の3分の1くらいしかない。
それに素早さは二人の方がかなり高い。
相手にはならないだろう。

『たった3体倒しただけでレベルが2つも上がったぞ』

そう話しかけたが、美凪はまだ戦闘中であった。


何となく美凪のステを見ると、いつのまにかトオルを追い越していた。

(やるなぁ、あとは藤浜と掛井橋が俺を抜かすのがいつになるかw)

トオルは眷属達が成長する事が楽しくて仕方が無い。


もうトオルの方に向かってくる魔物が居なくなったので、宝珠を抜いて回る。
リザードナイトの双剣術、両手剣、二刀流、コボルトの槍術と魔物使役。

魔通鞄にすべて仕舞い込んで、ゆっくりと歩いて美凪の元に近寄る。



美凪の傍には3体のリザードマン、3体のコボルト、2体のドレイクが転がっていた。
『俺が3体倒す間に、本当におまえは凄いなぁ~』

美凪は全身鎧の兜の中でとても嬉しそうな顔をしていた。

美凪の目の前には、まだ2体の双剣を操るリザードナイトが居る。


大剣ドゥンケルで双剣を弾き、返す剣技で斜めに斬り上げリザードナイトの前面に大きな切傷を付けて戦意を喪失させ、脳天に大剣を叩きこむ。

最後の1体は少ししり込みをしているようなので、美凪の方から突っ込んでいった。

両剣で、美凪の剣筋を見切りクロスガードをしたが、パワーで負けているリザードナイトは受け止めるだけで精いっぱいだった。

美凪は大剣を押し込んだまま、リザードナイトの腹に蹴りを入れるとそのまま後ろによろめきガードが外れた。
大剣はその隙を見逃さず、大きく振りかぶり斬りつける。

グギっという声を発してリザードナイトは息絶えた。

美凪ふぅ~なかなか楽しかったです~」
『あはは、しかし本当にすごかったぞ、もう青髪のゴブリンくらいなら勝てそうだなw』

そう笑いながらトオルは宝珠を抜いていく。

美凪あ、キングあれは・・・」

ノソノソとこちらに歩いて来る大きな2足歩行のワニが目に入る。

『クロコダイルウォーリア、レベル25やって』
『かなり強いぞ?小ボスって感じかな?奥にはまだ上位の気配がいくつもあるから』

美凪あいつ、笑ってますね、戦闘狂かよっw」

『力も防御もお前ほどでは無いけどかなり高いぞ、いけそうか?』
美凪ちょっと楽しみです♪」

『やばそうなら手助けするよ』
美凪キングの手をわずらわせない様に頑張ります」

『獣王なんやらげきとかって来るかも知れんぞw』
美凪そんなスキル持ってたら笑いますよw」


クロコダイルウォーリアは、美凪と同じプレートアーマーだが頭部と尻尾だけは何も防御している物が無い様子だ。

『尻尾と頭が弱点かな?』
美凪いえ、あれは誘いの無防御だと思いますよ」

『そっかー、この強さで目に見える様な弱点曝してる訳ないなぁw』
美凪うかつに行くと逆手に取られるかもしれません」

『んっ? なんでそんなに嬉しそうな声出しとんねんw』
美凪えっ?」

目の前の強敵と戦える事が心底嬉しいようだ。



クロコは足を止めて正対する。
美凪もそれに応じて正面で構える。

先制はクロコだった。

大剣を袈裟懸けに斬り込んで来る。
美凪はドゥンケルでそれを正面から受ける。

カッキーン!

お互いに剣を引かず、ジリジリと力比べに入ったがここは美凪に分がある。
クロコは後ろにやや押され気味だ。

焦れたクロコは、右足で美凪の横っ腹に蹴りを入れるが、美凪は膝を上げてその蹴りを受ける。

思うように攻撃が通らないクロコダイルウォーリアは気持ちが焦れて来た。

そして大振りに大剣を振り上げた時、美凪の大剣は横薙ぎ一閃、クロコのアーマーの胸辺りを切り裂く。

慌てて後ろに飛ぶが、美凪の追従の方が早い。


右わき腹に両手で剣を控え、一足飛びにクロコの目前に飛び込んだ。
そしてそのまま大剣を突き出す。

クロコは身体をひねり躱そうとしたが、左腕に美凪の大剣が突き刺さり神経を切り裂く。

グギョ~~~

何とも言えない悲鳴をあげて数歩下がるが、美凪はお構いなしにもう一度突っ込み剣を突く。

2度目の突きを上手く躱したクロコは、反撃の剣技を片手で行う。

横薙ぎに振られたクロコの大剣を美凪は躱さず、そのまま大剣で受け止める。

 ガッキーン

剣と剣が激しくぶつかり、そして弾ける。

足元が綻んだクロコの顔面に向けて美凪の大剣ドゥンケルが振り落とされる。

クロコは身体を反転させ、隠し攻撃である尻尾で美凪の腰を狙う。

空ぶった大剣の推進力で、その不意打ちの様な尻尾攻撃を避ける事など出来る態勢では無かった。

常人なら。


しかし美凪には短距離転移と言う技がある。

クロコの反対側の側面に転移した美凪の大剣が、クロコの無防備な右肩に上段から振り下ろされる。

 ザシュッ

クロコの右肩から肘にかけて二つに切り裂かれる。

両腕が使えなくなったクロコにもう反撃の手段は尻尾以外になかった。

だが、その尻尾も美凪のゴルフスイングの様な剣戟に根元から切り落とされた。

大声で、戦う術が無くなった事への悔しさを込めて、クロコは咆哮を吠える。
残された攻撃手段は噛みつきだけだ。

だが

次の瞬間には美凪の横薙ぎの一閃がクロコの頭と胴を二つに分かつ。

 ドサッ

クロコが息絶えた。

「ふぅ~ 思ったより強かったかな?」
『そうか?余裕そうに見えたけど?』

「いえいえ、必死でしたよw」

『あとの奴らはどうする?』
「キングの赴く方向にお供いたします」

トオルはクロコダイルの宝珠を抜きながら考えていた。

『ここに居る奴らなら多分倒せる奴なんか六アイに居ないだろうし、もう少し太らせてから狩った方がいいかな? ならば今日は本題のウエストエリアに行くか』

「はいっ」

『たまにレベリングに来るくらいでも良いかなぁ』

『そういや、レベル30でセカンドジョブが選択できるようになったな』
「はい、何にしようか思案中です」

『クロコの宝珠は、剛腕に剣豪に咆哮に威圧だけだな』

そんな会話をしつつ、二人はウエストエリアへと行くために7番街を後にした。



背後から厳しく見つめる多くの殺意がこもった目がある事は、二人共分かっている。


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