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第四章 天使と悪魔
天使の決断ー母の意志
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9番館の殲滅も終わり、皆が雑談して戦闘やスキルの話で盛り上がる。
そんな中、加奈子はその雑談に割って入って皆が拾ってくれていたドロップを集め、HP、MP回復薬をみんなに配り、3つ出た宝珠もみんなに分ける。
2等級、3等級、4等級が1つづつドロップしている。
2等級は水魔法の[細波]
『これを欲しい人は居らっしゃいますか~』
誰も欲しがらない。
皆、火魔法に火の耐性を持っているため、真逆の水魔法は欲しいとは思わなかった。
『それでは、思うところがあるので、私が頂きます』
「全部加奈子さんが取り込んだら良いのでは?」
『いえいえ、私一人が突き抜けて強くなっても仕方が無いんですよ』
『ここに居るみんなで強くなっていかないとね』
3等級は[治癒魔法]
『これは、紗衣さん、あなたが取り込んでくれませんか?』
「わ、私ですか?」
『今日のような隊列を組んだ時、私は基本はフィルと同じになるので、子オオカミもこちらだとすると、明日桜さんと緑ちゃんもこちらという事になりますよね。
だから、そちらの麗菜さんか紗衣さんか彩花さんが持つのが戦略的に良いかと思います。
それで、麗菜さんは先ほど武器を分けたので、これは紗衣さんでお願いします』
「わかりました」
「我が意に従い、我の力と成れ!」
霧が晴れる様に、一瞬の煙が立つような感じで紗衣の手の中に宝珠は消えていった。
紗衣が取り込み、治癒魔法のヒールを覚えたようだ。
『最後は固有登録の武器ですね』
『戦棍ですね。これは・・・ そこの細男さんかなぁ?』
加奈子は出来れば自分の眷属の誰かに渡したいが、戦棍なんて使う人が居ない。
「どんな武器ですか?」
『ん~これって固有登録だけど、本人の意思があれば多分解除出来るんだよね』
『棒妻さん、一度装備してみてくれませんか?』
男は加奈子に言われて宝珠を手に取った。
しかし、さっき加入したばかりの自分が取り込んで良いモノか少し思案している。
先ほどの水魔法も治癒魔法も喉から手が出る位に欲しかったが、そこは遠慮した。
本当は戦棍と聞いて、すぐにでも手に入れたい気持ちはあるのだが・・・
しばし掌の上で転がしていた。
「あっ!」
『どうしました?』
「すみません、鑑定スキルを覚えちゃいました・・・」
本当は飛び上がるほど嬉しいのだが、自分がもたもたしているから覚えた事に罪悪感が残る。
『・・・』
『ちょっと宝珠を麗菜さんに渡してくれますか?』
『麗菜さん、その宝珠を能々見て鑑定スキルを覚えるかやってみて下さいな』
麗菜はしばし宝珠を手のひらの上に置いて眺めている。
1分ほどの時間が経った頃、麗菜も鑑定スキルを覚えた。
『ふ~ん、鑑定スキルはこの宝珠でおぼえられるんだねー』
『そう言えば、私はドロップのアイテムで覚えたんですよ』
加奈子は全員に宝珠を回して鑑定のスキルを覚えさせた。
その後、その宝珠は男に手渡し吸収してもらう。
「俺の想いを受け取り、俺の力となれっ!」
宝珠は男の身体に溶け込んで、手には2mほどの長さで、鉄の角棒をグルグルとネジった様な長柄の先に、真っ黒な直径20㎝弱くらいの髑髏が付いていて、反対側の石鎚にも同じ髑髏が付いている武器が顕現する。
戦棍〔クラーニオン〕[所有者:棒妻洋路]技能習得 成長度技能覚醒 SSRユニークウェポン
[収納時自動修復]-[装着時STR-10%アップ]
「うっわ~それは無いわ」
女性陣がみんなして怪訝そうな顔をする。
「上下にまっくろな骸骨って不気味な武器だぁ」
だが男は心底喜んでいる。
「こ、これ、本当に俺が貰っていいんですか?」
「こんなことも出来ますよ?」
棒妻は鑑定スキルで自分の武器を鑑定した結果、隠しギミックを見つけている。
「双棍!」
戦棍は調度真ん中から2つに分かれ、長さ1m弱ほどの棍と言うにふさわしい両手棍に早変わりした。
『へぇ~ 長くもなるし短くもなるんですね』
みんなして、そのギミックに感心したような顔になった。
だが誰一人としてその武器を使いたいとは思っていない。
『良くお似合いですよ、存分に使ってくださいな』
「本当にありがとうございます」
(うっひょ~カッコイイなぁ~)
棒妻洋路は、天まで飛び上がるほど嬉しいのだが、一度お調子者と言われているので少し自重している。
あまりにも早く殲滅出来てしまったので、次の段取りをどうするか話合いを始める。
その時、加奈子の頭の中に急に声が飛び込んで来た。
(((( ししょ きこ ま か? ))))
(((( し ょう ししょ 、き えま か ))))
加奈子は瞬時に徳太郎だと分かり、返事を返す。
(徳さん、途切れ途切れだけど聞こえています)
徳太郎もハッキリとは聞き取れなかったが、返事があった事に安堵する。
加奈子はどこから飛んできているのか分からないが、9番館から小学校の方に向かって歩き出した。
念話を持たないメンバーは、加奈子の行動に全く理解が出来てないので、明日桜が事情を話す。
「今、徳爺から念話が届いてるんよ」
「なんか、徳爺、慌てとるみたい」
(((( くも にさ が、お け をし まし ))))
(((( へや か て ます ))))
(((( しきゅ か ってき く ま んか ))))
(((( く くに んが おけが し した ))))
(((( し ゅうちりょ をおね い ます ))))
「くもくにさんがおおけがをしたから、しきゅうかえってほしい」
「みたいな感じかな?」
『紗衣さん、彩花さん、行きましょう』
加奈子は二人を抱えて6番街の方向に飛び出した。
(徳さん、徳さん)
(徳さん、聞こえてます?)
(ヒュン)
『えっ?』
加奈子のステータスボードに新しいスキル【眷属通信】が発生した。
眷属限定だが、加奈子と眷属が、長距離離れていても会話が出来るスキルである。
だが雲国母娘を抱えているため、手が空けれなくて通話のマークを押せない・・・
一旦小学校のグラウンドに降ろそうとした時、親娘のうち、母の紗衣が飛空スキルである[飛翔]を覚えて空に浮かぶ。
「か、加奈子さん、ありがとうございます」
「いいなぁ~おかあさん」
「・・・」
加奈子はそのまま空いた片手で徳太郎に眷属通信を送る。
{徳さん、聞こえるかな?}
{あっ、師匠?、これは?、いやいやそれよりも、雲国さんが大怪我をしたので部屋に戻ってる最中です}
{今から奥さんと娘さんを連れて部屋に行きますね}
加奈子のスピードならすぐに教室に辿り着く。
彩花はまだ飛空スキルは覚えてないのがすごく残念そうな顔をしている。
父親が大怪我をしたと聞いているのに・・・
部屋で待っていると、徳太郎の背中に担がれて雲国才楊が運ばれてきた。
護衛に着いて来た二人に紗衣が礼を言って頭を下げる。
「徳さんありがとうございました」
瀕死の才楊を学校机で作ったベッドに寝かせ、横っ腹に刺さったままの小刀を抜いた。
血がドボドボと流れて来る。
まったく意識は無いようだ。
加奈子は才楊に早く治癒魔法を掛けないと、と思ったがその行為は紗衣によって止められた。
『んっ???紗衣さん?どうしたの?」
「おかあさん、どうしたの?」
「加奈子さん、すみませんが死なない程度の治癒だけお願いできますか?」
加奈子はよく意味が分からないが、妻君である紗衣が言うのだからとエンジェルヒールは使わないで、普通に傷口に向かって手を伸ばしヒールだけを唱えた。
才楊の傷口は閉じていき、他の切り傷や裂傷、殴打痕も消えていく。
だが、肉体に負ったダメージはまだ残り、意識は戻ったもののやっと口がきける程度の回復状態だ。
紗衣が徳太郎の顔を見る。
「だいたいの予測は付きますが、どうしてこうなったのでしょうか?」
「まずは、奥様、俺が尽いていながら本当に申し訳ありませんでした」
「いえいえ、徳太郎さんが悪い訳じゃないのは想像がつきます」
「どうせ親父が自分勝手な事して怪我したんやろ」
「・・・」
そして、徳太郎が加奈子を見て事のいきさつを話し出した。
エントランスの警備ゴブリンを皆で殲滅した後、何かを勘違いしている雲国才楊が先頭で中庭に出ると、そこには多数のゴブリンがくつろいでいた。
玄関の警備の交代の時間まではまだかなりあったので、のんびりとしていたようだ。
そこに雲国才楊がツカツカと近寄りゴブリンに見つかり臨戦態勢を取られてるのに、それを気にもせず、そして才楊は木刀で一番手前のゴブリンに殴りかかる。
剣技も何も無い、ど素人の木刀が簡単に躱されるのは当たり前の事である。
「雲国さん、後ろに下がって下さい~」
徳太郎は、火の耐性の無い才楊が前に居ると火撒のスキルが使えないから呼び戻そうとした。
だが、才楊は聞く耳を持たず尚、木刀を振り回しゴブリンに突っ込んでいく。
それを見て、老人セブンズと戸弩力組のメンバーが才楊の後に続く。
不意打ちをされたが見事に躱したゴブリンは才楊目掛けて蹴りを入れる。
蹴られて避ける事も出来ない才楊はその場にしゃがみ込む。
そこを一斉に周りに居たゴブリンが襲い掛かる。
徳太郎は才楊に当たらない様に火の弾を絶え間なく撃ち続ける。
水の鞭使いの半田檸檬がゴブリンの頭を飛ばしていく。
土魔法の須布来人が【土針】を連発しゴブリンを才楊から遠ざけようとする。
魔法が使える者は徳太郎と並んでゴブリンを攻撃。
剣士や格闘系の者は散開して周りのゴブリンを殲滅しつつ、才楊を助け出そうと試みる。
見ると、才楊はもう血まみれで動かない。
徳太郎は来人と檸檬に攻撃を止めさせて、体術を駆使し才楊を助け出す。
「みんなぁ~雲国さんを教室に運ぶから、二人だけ護衛してくれ」
須布来人と半田檸檬が名乗りを上げて護衛を申し受ける。
「残った人はエントランスまで後退して、あそこで戦ってくれ」
「危なくなったり怪我をしたらすぐに撤退して教室に戻ってな」
そう言って徳太郎と2名の護衛は狩場を後にした。
そんな中、加奈子はその雑談に割って入って皆が拾ってくれていたドロップを集め、HP、MP回復薬をみんなに配り、3つ出た宝珠もみんなに分ける。
2等級、3等級、4等級が1つづつドロップしている。
2等級は水魔法の[細波]
『これを欲しい人は居らっしゃいますか~』
誰も欲しがらない。
皆、火魔法に火の耐性を持っているため、真逆の水魔法は欲しいとは思わなかった。
『それでは、思うところがあるので、私が頂きます』
「全部加奈子さんが取り込んだら良いのでは?」
『いえいえ、私一人が突き抜けて強くなっても仕方が無いんですよ』
『ここに居るみんなで強くなっていかないとね』
3等級は[治癒魔法]
『これは、紗衣さん、あなたが取り込んでくれませんか?』
「わ、私ですか?」
『今日のような隊列を組んだ時、私は基本はフィルと同じになるので、子オオカミもこちらだとすると、明日桜さんと緑ちゃんもこちらという事になりますよね。
だから、そちらの麗菜さんか紗衣さんか彩花さんが持つのが戦略的に良いかと思います。
それで、麗菜さんは先ほど武器を分けたので、これは紗衣さんでお願いします』
「わかりました」
「我が意に従い、我の力と成れ!」
霧が晴れる様に、一瞬の煙が立つような感じで紗衣の手の中に宝珠は消えていった。
紗衣が取り込み、治癒魔法のヒールを覚えたようだ。
『最後は固有登録の武器ですね』
『戦棍ですね。これは・・・ そこの細男さんかなぁ?』
加奈子は出来れば自分の眷属の誰かに渡したいが、戦棍なんて使う人が居ない。
「どんな武器ですか?」
『ん~これって固有登録だけど、本人の意思があれば多分解除出来るんだよね』
『棒妻さん、一度装備してみてくれませんか?』
男は加奈子に言われて宝珠を手に取った。
しかし、さっき加入したばかりの自分が取り込んで良いモノか少し思案している。
先ほどの水魔法も治癒魔法も喉から手が出る位に欲しかったが、そこは遠慮した。
本当は戦棍と聞いて、すぐにでも手に入れたい気持ちはあるのだが・・・
しばし掌の上で転がしていた。
「あっ!」
『どうしました?』
「すみません、鑑定スキルを覚えちゃいました・・・」
本当は飛び上がるほど嬉しいのだが、自分がもたもたしているから覚えた事に罪悪感が残る。
『・・・』
『ちょっと宝珠を麗菜さんに渡してくれますか?』
『麗菜さん、その宝珠を能々見て鑑定スキルを覚えるかやってみて下さいな』
麗菜はしばし宝珠を手のひらの上に置いて眺めている。
1分ほどの時間が経った頃、麗菜も鑑定スキルを覚えた。
『ふ~ん、鑑定スキルはこの宝珠でおぼえられるんだねー』
『そう言えば、私はドロップのアイテムで覚えたんですよ』
加奈子は全員に宝珠を回して鑑定のスキルを覚えさせた。
その後、その宝珠は男に手渡し吸収してもらう。
「俺の想いを受け取り、俺の力となれっ!」
宝珠は男の身体に溶け込んで、手には2mほどの長さで、鉄の角棒をグルグルとネジった様な長柄の先に、真っ黒な直径20㎝弱くらいの髑髏が付いていて、反対側の石鎚にも同じ髑髏が付いている武器が顕現する。
戦棍〔クラーニオン〕[所有者:棒妻洋路]技能習得 成長度技能覚醒 SSRユニークウェポン
[収納時自動修復]-[装着時STR-10%アップ]
「うっわ~それは無いわ」
女性陣がみんなして怪訝そうな顔をする。
「上下にまっくろな骸骨って不気味な武器だぁ」
だが男は心底喜んでいる。
「こ、これ、本当に俺が貰っていいんですか?」
「こんなことも出来ますよ?」
棒妻は鑑定スキルで自分の武器を鑑定した結果、隠しギミックを見つけている。
「双棍!」
戦棍は調度真ん中から2つに分かれ、長さ1m弱ほどの棍と言うにふさわしい両手棍に早変わりした。
『へぇ~ 長くもなるし短くもなるんですね』
みんなして、そのギミックに感心したような顔になった。
だが誰一人としてその武器を使いたいとは思っていない。
『良くお似合いですよ、存分に使ってくださいな』
「本当にありがとうございます」
(うっひょ~カッコイイなぁ~)
棒妻洋路は、天まで飛び上がるほど嬉しいのだが、一度お調子者と言われているので少し自重している。
あまりにも早く殲滅出来てしまったので、次の段取りをどうするか話合いを始める。
その時、加奈子の頭の中に急に声が飛び込んで来た。
(((( ししょ きこ ま か? ))))
(((( し ょう ししょ 、き えま か ))))
加奈子は瞬時に徳太郎だと分かり、返事を返す。
(徳さん、途切れ途切れだけど聞こえています)
徳太郎もハッキリとは聞き取れなかったが、返事があった事に安堵する。
加奈子はどこから飛んできているのか分からないが、9番館から小学校の方に向かって歩き出した。
念話を持たないメンバーは、加奈子の行動に全く理解が出来てないので、明日桜が事情を話す。
「今、徳爺から念話が届いてるんよ」
「なんか、徳爺、慌てとるみたい」
(((( くも にさ が、お け をし まし ))))
(((( へや か て ます ))))
(((( しきゅ か ってき く ま んか ))))
(((( く くに んが おけが し した ))))
(((( し ゅうちりょ をおね い ます ))))
「くもくにさんがおおけがをしたから、しきゅうかえってほしい」
「みたいな感じかな?」
『紗衣さん、彩花さん、行きましょう』
加奈子は二人を抱えて6番街の方向に飛び出した。
(徳さん、徳さん)
(徳さん、聞こえてます?)
(ヒュン)
『えっ?』
加奈子のステータスボードに新しいスキル【眷属通信】が発生した。
眷属限定だが、加奈子と眷属が、長距離離れていても会話が出来るスキルである。
だが雲国母娘を抱えているため、手が空けれなくて通話のマークを押せない・・・
一旦小学校のグラウンドに降ろそうとした時、親娘のうち、母の紗衣が飛空スキルである[飛翔]を覚えて空に浮かぶ。
「か、加奈子さん、ありがとうございます」
「いいなぁ~おかあさん」
「・・・」
加奈子はそのまま空いた片手で徳太郎に眷属通信を送る。
{徳さん、聞こえるかな?}
{あっ、師匠?、これは?、いやいやそれよりも、雲国さんが大怪我をしたので部屋に戻ってる最中です}
{今から奥さんと娘さんを連れて部屋に行きますね}
加奈子のスピードならすぐに教室に辿り着く。
彩花はまだ飛空スキルは覚えてないのがすごく残念そうな顔をしている。
父親が大怪我をしたと聞いているのに・・・
部屋で待っていると、徳太郎の背中に担がれて雲国才楊が運ばれてきた。
護衛に着いて来た二人に紗衣が礼を言って頭を下げる。
「徳さんありがとうございました」
瀕死の才楊を学校机で作ったベッドに寝かせ、横っ腹に刺さったままの小刀を抜いた。
血がドボドボと流れて来る。
まったく意識は無いようだ。
加奈子は才楊に早く治癒魔法を掛けないと、と思ったがその行為は紗衣によって止められた。
『んっ???紗衣さん?どうしたの?」
「おかあさん、どうしたの?」
「加奈子さん、すみませんが死なない程度の治癒だけお願いできますか?」
加奈子はよく意味が分からないが、妻君である紗衣が言うのだからとエンジェルヒールは使わないで、普通に傷口に向かって手を伸ばしヒールだけを唱えた。
才楊の傷口は閉じていき、他の切り傷や裂傷、殴打痕も消えていく。
だが、肉体に負ったダメージはまだ残り、意識は戻ったもののやっと口がきける程度の回復状態だ。
紗衣が徳太郎の顔を見る。
「だいたいの予測は付きますが、どうしてこうなったのでしょうか?」
「まずは、奥様、俺が尽いていながら本当に申し訳ありませんでした」
「いえいえ、徳太郎さんが悪い訳じゃないのは想像がつきます」
「どうせ親父が自分勝手な事して怪我したんやろ」
「・・・」
そして、徳太郎が加奈子を見て事のいきさつを話し出した。
エントランスの警備ゴブリンを皆で殲滅した後、何かを勘違いしている雲国才楊が先頭で中庭に出ると、そこには多数のゴブリンがくつろいでいた。
玄関の警備の交代の時間まではまだかなりあったので、のんびりとしていたようだ。
そこに雲国才楊がツカツカと近寄りゴブリンに見つかり臨戦態勢を取られてるのに、それを気にもせず、そして才楊は木刀で一番手前のゴブリンに殴りかかる。
剣技も何も無い、ど素人の木刀が簡単に躱されるのは当たり前の事である。
「雲国さん、後ろに下がって下さい~」
徳太郎は、火の耐性の無い才楊が前に居ると火撒のスキルが使えないから呼び戻そうとした。
だが、才楊は聞く耳を持たず尚、木刀を振り回しゴブリンに突っ込んでいく。
それを見て、老人セブンズと戸弩力組のメンバーが才楊の後に続く。
不意打ちをされたが見事に躱したゴブリンは才楊目掛けて蹴りを入れる。
蹴られて避ける事も出来ない才楊はその場にしゃがみ込む。
そこを一斉に周りに居たゴブリンが襲い掛かる。
徳太郎は才楊に当たらない様に火の弾を絶え間なく撃ち続ける。
水の鞭使いの半田檸檬がゴブリンの頭を飛ばしていく。
土魔法の須布来人が【土針】を連発しゴブリンを才楊から遠ざけようとする。
魔法が使える者は徳太郎と並んでゴブリンを攻撃。
剣士や格闘系の者は散開して周りのゴブリンを殲滅しつつ、才楊を助け出そうと試みる。
見ると、才楊はもう血まみれで動かない。
徳太郎は来人と檸檬に攻撃を止めさせて、体術を駆使し才楊を助け出す。
「みんなぁ~雲国さんを教室に運ぶから、二人だけ護衛してくれ」
須布来人と半田檸檬が名乗りを上げて護衛を申し受ける。
「残った人はエントランスまで後退して、あそこで戦ってくれ」
「危なくなったり怪我をしたらすぐに撤退して教室に戻ってな」
そう言って徳太郎と2名の護衛は狩場を後にした。
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