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第四章 天使と悪魔
天使軍の成長
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天使軍一行が9番街に着く大分手前で、ゴブリン達の斥候が集まって来る。
加奈子に攫われたゴブリンを見て警戒をしていた所だった。
目視でざっと30体ほどいるだろうか。
レベルも3とか4とかくらいなので問題は無いだろう。
『まずは遠目から魔法で殲滅しましょう』
射程距離は20mほどは有るだろうから、安全に行ける範囲で攻撃させる。
覚えたての火魔法でゴブリン達を攻撃するが、熟練度も低いためになかなか的に当たらない。
それでも、近くに寄ってくると当たるようになってくるので殲滅する事に問題は無かった。
だが
レベルがまだまだ低すぎるので、殲滅する前にMPが尽きて魔法攻撃が出来なくなる。
「どうしましょう?」
雲国の娘が加奈子に指示を仰ごうとしていた。
その横を明日桜とジンガが素早く通り抜ける。
ゴブリンが落とした小刀を拾い、ゴブリンに切りつける。
明日桜と並行してジンガがゴブリンの喉笛に牙を食い込ませる、そして引きちぎる。
それを見て貴崎麗菜も飛び出していく。
緑も赤い子オオカミのレンと連携攻撃を試しに行く。
動物好きな紗衣も、魔物殺戮に躇躊うことなくゴブリンの中に切り込んでいった。
加奈子はみんなの後ろからそこそこの火力の火の絨毯を張り巡らせる。
彩花も皆が行くので自分も飛び込んでいった。
麗菜はモップの柄だけの物を拾い、突き棒の様に扱い、殴る、突くの2段攻撃で戦っている。
他の人達も、ゴブリンが落とした武器でゴブリンを屠る。
ゴブリンは絨毯の上で弱り果てていくので、屠るのは簡単だった。
ものの数分でそこに居たゴブリンは全員動かなくなった。
天使軍はほぼほぼ無傷である。
そして、ドロップが二つ。
青い、瓶に入ったHP回復薬と紫色の同じく瓶に入ったMP回復薬だった。
(ドロップって、やっぱりスキルのおかげかな?)
加奈子には、回収率上昇と言うLUK依存のスキルがある。
瓶を二つ拾うと、加奈子の空間収納にしまった。
初の殺生にも動じる事無く無事にミッション終了である。
『一旦こっちに集まってくれますか~』
加奈子は皆の職業を決めようと集合させた。
「動けるよぉ~走れるよぉ~戦えたよぉ~」
べそをかきながら、今まで出来なかった動きや、魔物を自分の力で倒せたことに感動している。
横で眷属のレンが、緑の足に頭をスリスリと摺り寄せる。
紗衣と麗菜はそんな愛くるしい緑を優しく抱きしめて貰い泣きをしている。
「加奈子さん、ありがとうございます・・・」
『ううん、明日桜ちゃんが選んだ道だよ。私は道標になれば良いなぁって程度だよ』
『初戦闘はどうだった?』
「最初はちょっとビビったけど、私って結構サイコやったんやって思った」
『生き物を殺す事って、やっぱり躊躇うよね』
「でも、なんかなぁ・・・ ちょっと楽しかった・・・」
『生きる事については何か変わったのかな?』
「うん、この世界と今までの世界がまったく違う事には気づいたよ。
だから、ジンガと一緒に生きていくのも悪くないかな?って思えるようになった。
もうあまり考えなくなったけど、家族から言われた事は今でも心に引っ掛かったままやけど…」
『また機会があればその話も聞かせてね』
「そんな大した話じゃないですよ~」
明日桜が少し前向きに、生きる事に目を向けた事が加奈子は少し嬉しかった。
進化した事で、ポジティブ思考になったのが大きいのだろう。
『皆さん、職業はどんなのが出ましたか?』
貴崎麗菜は、槍使い、棒術士、だと言う。
フィルの予言通り、やはり槍の職業が発動している。
『麗菜さん、この武器、使いますか?』
加奈子は先ほど手に入れたカニ槍を麗菜に勧める。
見た目は趣味の悪いネックレスだが、カニの爪の様なアクセサリーの部分を握ると槍が顕現する。
それは思っていたよりもファンタジーな二股の槍刀だった。
刃渡りは、二股の長い方が70㎝程もあり、持ち手は80㎝程の、突槍と言うよりも蜻蛉切タイプだ。
[所有権:貴崎麗菜 登録完了]
「おぉ~」
槍〔グランキオ〕[所有者:貴崎麗菜] 技能付与 成長度技能覚醒 SSRユニークウェポン
[収納時自動修復]-[装着時、腕力、防御力、5%アップ]
「凄いですね~ 本当に私がもらって良いのですか?」
『フィルとも、その槍は麗菜さんに似合うんじゃないかって話をしてたんですよ』
貴崎麗菜は、スキップしたいくらい嬉しいが、とても冷静に見える様に最大限頑張る。
『また何か武器があったら順次皆さんにも回しますねー』
「はいっ♪」
『それでは行きましょうか』
加奈子は自分が強くなる以上に、眷属たちが強くなることを切に願っている。
しかし、藍髪のゴブリン、キャリヤとの決着も付けないといけない。
今のままでも勝てそうな気はするが、それは自信過剰だろう。
過去に慢心で死に掛けた事を思い出す。
(いくら強くなっても、相手がある事、奴も益々強くなっているはずだ)
加奈子は身も心も引き締める。
9番街に着く。
ここは8階~14階建てのマンションが何棟もコの字に連なっている。
コの字の中には老人ホームがある少し変わった形のマンションだ。
コの字の中の老人ホームの前で下っ端ゴブリンが住人で遊んでいるのが見えた。
10数体のゴブリンが血まみれの男女を囲んで突っつき、後ろから小刀で刺し、悲鳴をあげるのを楽しんでいる。
その悪趣味な遊びを真っ先に貴崎麗菜が止めに入った。
「グランキオッ!」
二股の剣槍を顕現させて手前のゴブリンに切りかかる。
グギャギャ?
敵の侵入にまったく気付いていないゴブリンは、自分が死んだことにも気づかない。
麗菜に続き、天使軍がゴブリンを殲滅する。
加奈子は住人が居たために、火の絨毯を拡げられなかった。
『お二人共大丈夫ですか?』
「な、なんとか・・・」
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ~」
男は気丈に振る舞っているが、女は錯乱している。
女は男に庇われて、怪我らしい怪我は見当たらない。
それでも加奈子は、2人に治癒魔法を掛けて怪我を治す。
「えっ?えっ?えっ?」
「あ、あっちいってぇぇぇぇ」
『御主人さん、奥様と一緒にそこの小学校に避難しましょうか』
加奈子が男の方にそう言って、9番街の道路を挟んですぐ北にある小学校を指さした。
「えっ?この人はまったくの赤の他人ですよ、どこの誰かも知りません」
「そんな見ず知らずの方を、自分が血まみれになりながらもお守りしてたなんて…」
「いや、そんなヒーローみたいなんじゃないですな・・・
自分が守ってたんじゃなくて、彼女に盾にされてただけですよ」
「・・・」
女に振り回されたであろう、男の服は破れ破れになっている。
悲鳴をあげていたのはこの女だったが、男を盾にして自分だけ助かろうとしていたようだ。
見た所、身長の割に横幅はあまりなく、男にしたら少しナヨっとしたかなり細身の30代半ば位の男性だった。
女は、肥満では無いがぽっちゃり気味の20代半ば位に見える女性だった。
加奈子は錯乱して騒ぎ続ける女を、後ろから抱えて小学校の敷地に連れて行こうとして翼を出す。
女は、加奈子のその大きな翼を見て
「いやぁぁぁぁぁ化け物ぉぉぉぉぉぉ~」
そう叫んで一直線に走り、小学校のフェンスをよじ登り、プールと体育館の間の細い通路を全力で走って校舎の方に消えていった。
「ははは・・・」
『化け物はちょっと傷つきますね・・・』
「まぁ人間では無いですからねw」
「確かにw」
「あははははは」
「み、みなさんはお若いですけど、自衛隊か何かですか?」
その服装を見ても自衛隊には到底見えないだろうに、と天使軍は思った。
少し残念な人なのかな?と思われてしまった。
『私たちはそこの中学校のクランのメンバーですよ』
「やっぱり、異世界に転移しちゃったんですよね・・・俺・・・
異世界転移とか憧れてたけど、実際に殺されそうになって、あんな活躍出来るんは漫画や小説の中だけの話だって凄く理解出来た・・・」
何やら一人でつぶやく男に向かって緑が話しかける。
「おじさん、ここは異世界じゃないよ、神戸の六アイだよ」
「じゃぁゴブリンやそっちの羽を持った人が神戸に居るってのか?」
「うん、加奈子さんは天使様だけど神戸の人だよ」
「はぁ?意味がまったくわからないんやけど?」
男は子供に諭されるように言葉を投げられ、緑に軽くだが食って掛かる。
「どうみても神戸にゃ~見えないやろ、空も変な色やし魔物はおるし天使はおるし」
『ふふふ、厄災からもう5日も経ってるのに、いまだに現状を理解されてないのですね』
「お兄さん、神戸は結界で封鎖されて、その中で魔物が召喚されたんですよ」
「そして、神戸はレベルとスキルと魔法の世界になっちゃったんだよ」
「はぁ?それを信じろとでも言うのか?みんなして・・・」
『信じるも何も、今の現状を話しているだけで、あなたをこんな話で騙しても何の得も無いですよ』
「まぁ・・・そりゃそうですけど・・・ じゃぁここは六アイのままって事かなぁ」
「だからそう言ってるよ、魔物を倒したらレベルが上がって進化するんやで」
男は思案顔で加奈子たちを見つめる。
「・・・ じゃ、じゃぁ~俺もレベル付ければ戦えるって事かな?」
「おっちゃんが頑張ればって事やで~」
「さっきも自分でゆぅとったけど、チートなんてあらへんで、努力だけや」
『まぁ~頑張って下さいな~』
加奈子は少しめんどくさくなってきたので、男を軽くあしらった。
他のメンバーも早く狩りがしたいのに、と思っていた所だった。
全員が建物の入り口に向かって歩き出す。
「えっ?保護してくれへんの?」
「???」
『そこの小学校が避難場所になってますよ~』
加奈子は優しく突き放した。
加奈子に攫われたゴブリンを見て警戒をしていた所だった。
目視でざっと30体ほどいるだろうか。
レベルも3とか4とかくらいなので問題は無いだろう。
『まずは遠目から魔法で殲滅しましょう』
射程距離は20mほどは有るだろうから、安全に行ける範囲で攻撃させる。
覚えたての火魔法でゴブリン達を攻撃するが、熟練度も低いためになかなか的に当たらない。
それでも、近くに寄ってくると当たるようになってくるので殲滅する事に問題は無かった。
だが
レベルがまだまだ低すぎるので、殲滅する前にMPが尽きて魔法攻撃が出来なくなる。
「どうしましょう?」
雲国の娘が加奈子に指示を仰ごうとしていた。
その横を明日桜とジンガが素早く通り抜ける。
ゴブリンが落とした小刀を拾い、ゴブリンに切りつける。
明日桜と並行してジンガがゴブリンの喉笛に牙を食い込ませる、そして引きちぎる。
それを見て貴崎麗菜も飛び出していく。
緑も赤い子オオカミのレンと連携攻撃を試しに行く。
動物好きな紗衣も、魔物殺戮に躇躊うことなくゴブリンの中に切り込んでいった。
加奈子はみんなの後ろからそこそこの火力の火の絨毯を張り巡らせる。
彩花も皆が行くので自分も飛び込んでいった。
麗菜はモップの柄だけの物を拾い、突き棒の様に扱い、殴る、突くの2段攻撃で戦っている。
他の人達も、ゴブリンが落とした武器でゴブリンを屠る。
ゴブリンは絨毯の上で弱り果てていくので、屠るのは簡単だった。
ものの数分でそこに居たゴブリンは全員動かなくなった。
天使軍はほぼほぼ無傷である。
そして、ドロップが二つ。
青い、瓶に入ったHP回復薬と紫色の同じく瓶に入ったMP回復薬だった。
(ドロップって、やっぱりスキルのおかげかな?)
加奈子には、回収率上昇と言うLUK依存のスキルがある。
瓶を二つ拾うと、加奈子の空間収納にしまった。
初の殺生にも動じる事無く無事にミッション終了である。
『一旦こっちに集まってくれますか~』
加奈子は皆の職業を決めようと集合させた。
「動けるよぉ~走れるよぉ~戦えたよぉ~」
べそをかきながら、今まで出来なかった動きや、魔物を自分の力で倒せたことに感動している。
横で眷属のレンが、緑の足に頭をスリスリと摺り寄せる。
紗衣と麗菜はそんな愛くるしい緑を優しく抱きしめて貰い泣きをしている。
「加奈子さん、ありがとうございます・・・」
『ううん、明日桜ちゃんが選んだ道だよ。私は道標になれば良いなぁって程度だよ』
『初戦闘はどうだった?』
「最初はちょっとビビったけど、私って結構サイコやったんやって思った」
『生き物を殺す事って、やっぱり躊躇うよね』
「でも、なんかなぁ・・・ ちょっと楽しかった・・・」
『生きる事については何か変わったのかな?』
「うん、この世界と今までの世界がまったく違う事には気づいたよ。
だから、ジンガと一緒に生きていくのも悪くないかな?って思えるようになった。
もうあまり考えなくなったけど、家族から言われた事は今でも心に引っ掛かったままやけど…」
『また機会があればその話も聞かせてね』
「そんな大した話じゃないですよ~」
明日桜が少し前向きに、生きる事に目を向けた事が加奈子は少し嬉しかった。
進化した事で、ポジティブ思考になったのが大きいのだろう。
『皆さん、職業はどんなのが出ましたか?』
貴崎麗菜は、槍使い、棒術士、だと言う。
フィルの予言通り、やはり槍の職業が発動している。
『麗菜さん、この武器、使いますか?』
加奈子は先ほど手に入れたカニ槍を麗菜に勧める。
見た目は趣味の悪いネックレスだが、カニの爪の様なアクセサリーの部分を握ると槍が顕現する。
それは思っていたよりもファンタジーな二股の槍刀だった。
刃渡りは、二股の長い方が70㎝程もあり、持ち手は80㎝程の、突槍と言うよりも蜻蛉切タイプだ。
[所有権:貴崎麗菜 登録完了]
「おぉ~」
槍〔グランキオ〕[所有者:貴崎麗菜] 技能付与 成長度技能覚醒 SSRユニークウェポン
[収納時自動修復]-[装着時、腕力、防御力、5%アップ]
「凄いですね~ 本当に私がもらって良いのですか?」
『フィルとも、その槍は麗菜さんに似合うんじゃないかって話をしてたんですよ』
貴崎麗菜は、スキップしたいくらい嬉しいが、とても冷静に見える様に最大限頑張る。
『また何か武器があったら順次皆さんにも回しますねー』
「はいっ♪」
『それでは行きましょうか』
加奈子は自分が強くなる以上に、眷属たちが強くなることを切に願っている。
しかし、藍髪のゴブリン、キャリヤとの決着も付けないといけない。
今のままでも勝てそうな気はするが、それは自信過剰だろう。
過去に慢心で死に掛けた事を思い出す。
(いくら強くなっても、相手がある事、奴も益々強くなっているはずだ)
加奈子は身も心も引き締める。
9番街に着く。
ここは8階~14階建てのマンションが何棟もコの字に連なっている。
コの字の中には老人ホームがある少し変わった形のマンションだ。
コの字の中の老人ホームの前で下っ端ゴブリンが住人で遊んでいるのが見えた。
10数体のゴブリンが血まみれの男女を囲んで突っつき、後ろから小刀で刺し、悲鳴をあげるのを楽しんでいる。
その悪趣味な遊びを真っ先に貴崎麗菜が止めに入った。
「グランキオッ!」
二股の剣槍を顕現させて手前のゴブリンに切りかかる。
グギャギャ?
敵の侵入にまったく気付いていないゴブリンは、自分が死んだことにも気づかない。
麗菜に続き、天使軍がゴブリンを殲滅する。
加奈子は住人が居たために、火の絨毯を拡げられなかった。
『お二人共大丈夫ですか?』
「な、なんとか・・・」
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ~」
男は気丈に振る舞っているが、女は錯乱している。
女は男に庇われて、怪我らしい怪我は見当たらない。
それでも加奈子は、2人に治癒魔法を掛けて怪我を治す。
「えっ?えっ?えっ?」
「あ、あっちいってぇぇぇぇ」
『御主人さん、奥様と一緒にそこの小学校に避難しましょうか』
加奈子が男の方にそう言って、9番街の道路を挟んですぐ北にある小学校を指さした。
「えっ?この人はまったくの赤の他人ですよ、どこの誰かも知りません」
「そんな見ず知らずの方を、自分が血まみれになりながらもお守りしてたなんて…」
「いや、そんなヒーローみたいなんじゃないですな・・・
自分が守ってたんじゃなくて、彼女に盾にされてただけですよ」
「・・・」
女に振り回されたであろう、男の服は破れ破れになっている。
悲鳴をあげていたのはこの女だったが、男を盾にして自分だけ助かろうとしていたようだ。
見た所、身長の割に横幅はあまりなく、男にしたら少しナヨっとしたかなり細身の30代半ば位の男性だった。
女は、肥満では無いがぽっちゃり気味の20代半ば位に見える女性だった。
加奈子は錯乱して騒ぎ続ける女を、後ろから抱えて小学校の敷地に連れて行こうとして翼を出す。
女は、加奈子のその大きな翼を見て
「いやぁぁぁぁぁ化け物ぉぉぉぉぉぉ~」
そう叫んで一直線に走り、小学校のフェンスをよじ登り、プールと体育館の間の細い通路を全力で走って校舎の方に消えていった。
「ははは・・・」
『化け物はちょっと傷つきますね・・・』
「まぁ人間では無いですからねw」
「確かにw」
「あははははは」
「み、みなさんはお若いですけど、自衛隊か何かですか?」
その服装を見ても自衛隊には到底見えないだろうに、と天使軍は思った。
少し残念な人なのかな?と思われてしまった。
『私たちはそこの中学校のクランのメンバーですよ』
「やっぱり、異世界に転移しちゃったんですよね・・・俺・・・
異世界転移とか憧れてたけど、実際に殺されそうになって、あんな活躍出来るんは漫画や小説の中だけの話だって凄く理解出来た・・・」
何やら一人でつぶやく男に向かって緑が話しかける。
「おじさん、ここは異世界じゃないよ、神戸の六アイだよ」
「じゃぁゴブリンやそっちの羽を持った人が神戸に居るってのか?」
「うん、加奈子さんは天使様だけど神戸の人だよ」
「はぁ?意味がまったくわからないんやけど?」
男は子供に諭されるように言葉を投げられ、緑に軽くだが食って掛かる。
「どうみても神戸にゃ~見えないやろ、空も変な色やし魔物はおるし天使はおるし」
『ふふふ、厄災からもう5日も経ってるのに、いまだに現状を理解されてないのですね』
「お兄さん、神戸は結界で封鎖されて、その中で魔物が召喚されたんですよ」
「そして、神戸はレベルとスキルと魔法の世界になっちゃったんだよ」
「はぁ?それを信じろとでも言うのか?みんなして・・・」
『信じるも何も、今の現状を話しているだけで、あなたをこんな話で騙しても何の得も無いですよ』
「まぁ・・・そりゃそうですけど・・・ じゃぁここは六アイのままって事かなぁ」
「だからそう言ってるよ、魔物を倒したらレベルが上がって進化するんやで」
男は思案顔で加奈子たちを見つめる。
「・・・ じゃ、じゃぁ~俺もレベル付ければ戦えるって事かな?」
「おっちゃんが頑張ればって事やで~」
「さっきも自分でゆぅとったけど、チートなんてあらへんで、努力だけや」
『まぁ~頑張って下さいな~』
加奈子は少しめんどくさくなってきたので、男を軽くあしらった。
他のメンバーも早く狩りがしたいのに、と思っていた所だった。
全員が建物の入り口に向かって歩き出す。
「えっ?保護してくれへんの?」
「???」
『そこの小学校が避難場所になってますよ~』
加奈子は優しく突き放した。
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