厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第四章 天使と悪魔

悪魔のペット

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トオルはいつも通りにペットを管理している建物の最上階まで上がり、デジタルキー入力の鍵を開ける。
廊下をスタスタと奥に向かって歩き、ある部屋の前で止まる。

その一番奥の部屋の鍵を開け、トオルは中に入っていった。
「おはよー」

 「お、櫻庭おおばさん・・・」

そこには丸裸で首輪と足枷あしかせをつけられた、元タピオカ店の初代店長の女性が居た。

「あ~ぁ、また糞尿まみれだねw」
 「ご、ごめんなさいごめんなさいっ」

この部屋にはトイレは無く、大型犬のトイレシーツをひいているだけだ。
行動範囲も半径50㎝くらいしか無いので、用を足せば自分の身体に接触するのは当然である。
寝転ぶのも糞尿のシーツの中でしか出来ない状態だった。

「いいよ、綺麗にしようか」

トオルはそう言って便器掃除用の束子たわしで女性の身体を洗う。

「もう痛いとは言わなくなったね、偉い子だよ」

女性は痛みを訴えると、それ以上の苦痛を与えられる事を学習していた。

「そろそろ服を着ようか、ここが暖かいと言っても裸族じゃないんだからね」
 「お、お任せします」

トオルは今朝、姉である加奈子から聞いた眷属契約の行動を開始する。
その女性の頭に手を置くと、女性は異常にビクつき、何をされるのか恐怖で顔が強張こわばる。

相手が恐怖でトオルに対して怪訝な気持ちしか持てないからか、トオルのやり方に問題があるのか、すぐにはスキルは覚えなかった。
少しイラついたが、それはまぁ仕方が無い事だと思い、その女性で性処理をした後に下着を履かせブラを付け、ブラウスを着せてショートパンツを履かせた。
首輪のリードを少し伸ばし、トイレとベッドと移動出来るようにしてあげた。
厄災以降、トオルに捕まってからはベッドでなど寝た事が無かった。
トオルに感謝の言葉を返す。

「これで少しは楽になるでしょ」
優しい微笑みを女性に向けてその部屋を出て行く。


次に2番目の部屋に入る。

そこには共同で会社を作った男がやはり全裸で繋がれて居た。
こいつは会社の金を持ち逃げしてトオルを苦境に陥れた最初の人間だ。

「おはよっ」
 「と、トオル君、もう堪忍してくれませんか・・・」
「んっ?言ってる意味が全く分からないんですが?」
「あなたは生きてるだけで"ありがたい"と感謝をしてくれないとおかしいでしょ?」
 
 「こ、これからは君の為に粉骨砕身の想いで臨みます」
「ふ~ん、あなたはまだ反省が足りないようですね」

トオルはそう言っていつもの鞭で背中を数発叩いた。
だが、あまり苦痛に思わないのか、大声は出すが苦悩の顔をする事は無い。
やせ我慢もここまでいくと大したもんだ。
(ん~もう少し上位の拷問をするか)

糞尿を片付けて、頭から、引き込んだホースで水を掛けて汚れを落とす。
(こいつはまだ俺に反抗するのは間違いないな)

そう思うと、身体を拭いてあげる気にはなれない。
「まぁまた明日来ますね」

食い物を与え出て行く。



3番目の部屋に入る。

そこにはトオルの元彼女の入信していた新興宗教の大幹部の女性が全裸で繋がれていた。
元彼女と一緒になってトオルからチマチマとお金を巻き上げていった女だ。
トオルは元カノを探したが、どうやら神戸には居ないようだった。

「おはよっ」
 「お、おはよぅ、ござ、ます」

しどろもどろでトオルに挨拶をする。

「君はいつも綺麗なままだね」

他の連中と同じ仕様だけれども、こいつは用を足す場所と自分が生きる場所を綺麗に分けている。

ぬるま湯でタオルを浸し、その女性の身体全身を綺麗に拭いてあげた。
そして、頭髪もシャンプーして洗い流し、風魔法で乾かした。

「それでは、サービスしてくれますか」
 「は、はいっ」

女性はカチャカチャとトオルのベルトを外しズボンと下着をずらし、イチモツを口に含む。
「うっ、上手になってきたなっ」

そう言って女の頭を撫でる。

若返って体力も気力も上がったトオルは、朝だけでも3回4回いたせるくらいの身体になっていた。

「君は何か企んでいるのだろうが、素直に俺の言う事を聞く可愛い奴だ」
何度も頭を撫でていると、眷属契約のスキルを覚えた。

(おっ?やっとだな・・・)
(よしよし、まずはスキルを覚えられた、こいつから眷属にするか)


 汝

 我が眷属となりてその身を捧げ

 我が命令に従順に従い

 我が身に危険を寄せ付けず

 我が生き様をその眼で見守り

 我が身が亡びる今際の時まで未来永劫共に生きると

 誓うか?


 「ンモゴッ?」
(あぁ言葉で返さないと駄目だったのか?)

トオルはしばし考える。
(うん、強制的にやれば良いだけだ)

 なんじ 我がわが眷属けんぞくとなりて
 われ従属じゅうぞく
 われさからわず
 われたす
 われ見守みまも
 われ付従つきしたが
 われちるそのはてまで
 われともきると
 かえっ!

「コヴェナントッ!」

淡い光に包まれてその女はトオルの眷属になった。


「うっう・・・ふぅ~」
トオルは女の口の中で果てた。

「それはいつも通り全部飲み干して下さいね」
 「ふぁいっ」
(良い返事だ)
(しかし、契約の文言は長いなぁ~、もっと簡素化出来んもんかな?)

トオルは物思いながら、その女の口の周りをウェットティッシュで綺麗に拭いてあげ、そして首輪の鍵を外した。

 「ト、トオル様、よろしいのですか?」
「様はつけなくていいよ、今からお前は俺の眷属1号として最良の仕事をして欲しい」
 「御心のままに」

女は片膝を付き、両手を胸の前で交差させてトオルに向かいこうべを垂れた。

「これからお前たちにレベルを付けて、そして俺を守れるくらいに強くなって欲しい」
 「はいっ、命に代えてもトオル様をお守りいたします」
「ふっ、人前ではトオルさん、二人の時はキングと呼びなさい」
 「わかりました、キング」

女に服を着せ、靴も履かせて一緒に最後の部屋に行く。
「体調はどうだ?しばらく歩いてないから足はつらくないか?」

トオルはそう言ってその元新興宗教の幹部女の腰に手を回し軽く支えてあげる。
 「キ、キング、だ、大丈夫です・・・」

顔を赤らめトオルに感謝の気持ちを表す。
 「あ、ありがとうございます」

宗教女は考えていた。
さっきまでトオルに対して嫌悪感とこんな状況に陥れられた復讐心しか無かった。
自分がやった過去のおこないは棚の最上段に上げたままだ。

今はトオルの言う事を素直に聞いて、酷い目に合わない様に心がけていた。
だが、チャンスがあれば反撃を試みる、もしくは逃げるつもりであった。

それが、なんと言う事でしょう。
今ではそんな気持ちは全て綺麗に消え失せ、反対に信頼感や敬意しか湧いてこない。
トオルをあるじうやまう事に、疑心の余地は微塵も無かった。
 (この人についていけば間違いはない)



ドアに厳重に掛かった鍵と、中からは絶対に出られない様に掛けた錠前を開け、二人で中に入る。
そこには、口を開けたまま天井を見つめ、呆けた全裸の女性がトイレシートの真ん中で糞尿にまみれて座っている。

「その子を綺麗にしてあげて下さい」

トオルが言う前に、宗教女はその汚い女に歩み寄っていた。

「少し出るので、その子を綺麗にしてから服を着せといて下さいね」
「服はそこのドレッサーの中に入っています」
 「はいっ」
トオルはそう指示して最初の部屋に向かう。



元店長は、トオルが一日に2度来ることは無かったため、気が緩んでベッドの上で寝てしまっていた。
厄災2日目に捕まってから今日まで、ゆっくりと睡眠を取れていなかったからだ。

服も着せてもらい、布団の中に入り、ぬくぬくとしたその微睡まどろみの一時ひとときに、意識が夢世界に持っていかれてしまった。

 「ふふふっ、起きて下さいな」

トオルが声を掛けるが、部屋に入ってきた事さえ気づいていなかった。

トオルは寝ていてもお構いなしに元店長の額に手を当てて眷属契約の文言を唱える。

淡い光に包まれて、元店長もトオルの眷属になった。
本人は夢の中でトオルとの良い夢でも見ている事だろう。




トオルには追跡と言うスキルがある。
捜したい相手をスキルで探すだけで半径10㎞~100㎞以内に居れば捜索可能な便利スキルである。
色々と制約は多いし、近々まで近寄っても、半径100m以内くらいじゃないとハッキリとは居場所が特定できないが、探したかった相手は見つけられたので、トオルにとっては優秀なスキルだ。

トオルを騙した、裏切った、利用した、見下した連中をスキルで探したら、六甲アイランドに4人も潜伏していた。
その4人以外は、もう神戸には居なかった。
獲物が全て六甲アイランドに潜伏していた事もトオルにとっては幸運としか言い様が無い。

トオルはファンタジー世界に入り込んだ事と同等程度にこのスキルを喜んだ。


そして、狩りの時間が始まり、獲物はことごとくトオルに捕獲されてしまっていた。


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