厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第四章 天使と悪魔

本当の天使の眷属2

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生理用品や化粧水などバッグに詰め込み、入りきれない物はカゴに入れて持って帰る。

子オオカミは徳太郎に抱いていってもらう。

フィルは加奈子が抱いて、大荷物は雅史が持って帰る事にした。
リュックに必要そうなものを詰め込んでホームセンターを出る。

フィルにゴブリンの巣窟のある方を教えてもらい、明日倒しに行こうと約束する。

飛んで帰ればすぐなんだけど、フィルが歩きたいと言うので、散歩がてら湾岸線を帰路にする。


どこから入ったのか、ちょこちょこゴブリンが出てくる。
中にはそこそこ強い奴も居る。

雅史と徳太郎に任せて、子オオカミを守る。
フィルも練習がてら戦わせる。


フィルは大きく飛び上がり、火爪 を使う。
右前足を右上から左下に振り降ろす。
前足の動きに合わせて、4本の爪の形をした火がゴブリンを切り裂き燃やす。

着地と同時に、口から火炎放射器のように火を放つ。

ゴブリンに被弾すると、大きな火の塊となり、盛大に燃え上がりそして燃え尽きる。

ゴブリンからの攻撃は素早い動きで、ひらりと躱し、火を纏った爪で肉を抉る。
なかなかすばしっこくて見ていて安心感がある。


徳太郎は、眠いのかあまり動きが良くは無い。
普段ならもうとっくに夢の中だろうに、ごめんなさい・・・

途中、再三、雅史と徳太郎が眷属にしてくれと懇願してくるので、二人を眷属化する。

2人の頭に両の手を置き、静かに簡略化した呪文を唱える。

 なんじ 我がわが眷属けんぞくとなりて
 われしたが
 われたす
 われ見守みまも
 われともきると
 かうか?

 「「はいっ」」

「コヴェナント!!」


淡い光が二人を包み込み、加奈子の正式な眷属として契約が滞りなく終了する。



 「はぁー これでやっと加奈子さんと深く繋がれました」
  「儂も師弟関係から眷属関係に上化出来たって事じゃな」
「そんな大袈裟なもんじゃないですよー」





六甲アイランドの手前の魚崎浜まで歩き、そこからは飛ぶことにした。
理由は、キャリヤのテリトリーを避けたいからだ。
子オオカミを庇いながら戦うのはキツイ。





魚崎浜に降りるスロープを歩いていると、オークの群れに出会ってしまった。
雅史に大丈夫かと聞くと、問題ないと頼もしい返事が来る。

距離を取って弓で殲滅する。
火を纏う弓は、離れて見ているととても綺麗だ。

だが、その綺麗さとは裏腹に、威力は高くオークの頭部に当たった時には、頭が爆ぜた。



徳太郎とフィルも連携してオークと戦う。

火を纏う徳太郎は、闇夜の中で赤々と燃える火の神の様で美しいと加奈子は思った。
動きが鈍いとは言っても、体術に魔法を絡めて戦う戦術に、オークはなすすべも無く倒されていく。



本来なら、魚崎浜では無く六甲アイランド大橋を渡り、六甲島北まで行くのだが、出来るだけキャリヤのテリトリーには近づきたくない。

そこからは空路を取る。



フィルを背中に背負って加奈子は飛ぶ事にした。

子オオカミは2匹とも徳太郎が抱きかかえて飛んでいる。

雅史は皆の大荷物を一人で抱えて少し苦しそうだ。



加奈子は手が空くようにしたので、かごを二つ持つ事にした。

しばらく飛んでいると、背中が軽く感じたのでフィルにスキルを覚えたのかと尋ねる。
 (あるじよ、なにやら飛空術というスキルを覚えたようだ)

加奈子の背中で立ち上がり、そのまま風に乗るようにフィルが飛び立つ。
 「おっ?フィルが飛んでるな~」
  「天翔ける狼か、素晴らしいのぉ」

レベルが付いてないとは言え、子オオカミも徳太郎が抱いて飛んでいるのだから、同じように飛行スキルを覚えないのかな?と当の徳太郎は思った。

だが、やはりスキルを覚える事は無かった。



イースト5番街を超えて住宅地に降りる。
ここまで来ればもう大丈夫だろう。

少し手前で降りて歩き、そして櫻庭家に皆を招き入れた。



ランタンに魔法で火を入れ込むと、消えないランタンの出来上がりだ。

明るい所で見ると、人懐っこい子オオカミは体毛が赤黒い。
そうでない方の子は薄茶とオレンジが混じったような毛並みだ。
持ち上げると、お腹は真っ白だった。


フィルはやはりオレンジっぽい毛色で、みんな火の属性なんだろうなって思わせる。

ちょっと嬉しい。


「徳さん、ちょっと洗面所からタオルを持って来て頂けないかしら?」
「そこの奥ね」


小腹が減ったので、軽食のおもてなしをする。
お湯が沸くまでの間、ステータスを眺めてみた。

フィル(3)
Lv6
種族 【魔狼まろう】 選択
職業 【火魔闘獣】 選択
恩恵 【火魔法付与】
称号 【--】
状態 【眷属化-櫻庭加奈子】

基本能力一覧
GMR/MPR
HP 232/232
MP 315/315(+77)
STR 74
DEF 70
AGI 77
DEX  23
INT 111/73(+28)
SP/67
基本技能一覧
      狼牙 瞬速 念話
      火魔法-[火爪]-[火息]
耐性一覧
      火炎高熱耐性 水属性耐性
343/303



恩恵と言う新しい項目が増えている。

魔獣のレベルの割に強いのかな?
全体的に突出した所が無い均一なステっぽい。

SPが余ってるので、明日にでも相談しながら振り分けるとするか。
自分的には、素早さに全部振るのが良いかと思うが。


戸弩力とどろき雅史(30)
Lv14
種族 【新人類】 選択
職業 【弓士】 選択
恩恵 【魔法力UP】
称号 【--】
状態 【眷属化-櫻庭加奈子】
基本能力一覧
GMR/USU
HP 731/636(+95)
MP 1288/1272(+291)
STR 137(+27)
DEF 184(+27)
AGI 91(+27)
DEX 276(+27)
INT 374/288(+113)
SP/231
基本技能一覧
      弓術 魔弓術 跳躍 夜目 空翔 索敵 念話
      無酸素呼吸
耐性一覧
      絶対火炎耐性 
3214/3097


なかなかレベルが上がっている。
予定のレベル10などとうに超えている。
頑張ったね、雅史さん。

そして、やっぱり恩恵が付いている。
魔法力アップは良い物が付いたね。
念話も覚えて、フィルとも話せるよ。


原田徳太郎(73)
Lv10
種族 【新人類】 選択
職業 【--】 選択
恩恵 【火魔力増加】
称号 【--】
状態 【眷属契約-櫻庭加奈子】
基本能力一覧
GMR/USU
HP 241/206(+35)
MP 121/106<+14>(+35)
STR 108(+10)
DEF 108(+10)
AGI 108(+10)
DEX  108(+10)
INT 142/108<+24>(+10)
SP/98
基本技能一覧
      跳躍 駿動 夜目 飛翔 無酸素呼吸 念話
      火魔法-[火撒]-[火球]-[火投槍]
耐性一覧
      火炎耐性/極
1292/1104


やはり徳さんにも恩恵はついている。
だけど、二人にはステータスの補正が付いてるが、フィルには付いてない。
これはレベル的なものなのかな?

気になったので鑑定で調べると、恩恵項目はレベル5、30、75。ステータス補正はレベル10で付くようだ。
明日、フィルには頑張って貰わないと。


「徳さん、職業に就いてないんですね?」
  「ん~何にしたらえぇんかよぅわからんのじゃ」
「何があるのかな?」

加奈子は眷属になった徳太郎のステータスボードをわれるが、やっぱり自分でやって欲しい。

  「火魔法士、火魔導士、火魔闘士の3つ」
「近接もやるなら魔闘士、魔法だけで行くなら魔導士かな?」

 「ん~師匠ならどうします?」
「ふふっ間違いなく魔闘士ですよ」



 ドンドンドンドン



和やかな夜のとばりを引き裂くような大きなノック音が聞こえてきた。

「こんな時間に誰かしら?」
 「なんか切羽詰まったような叩き方ですね」

  (すいませーん、要救助者ですー)

「「「はぁ?」」」
 「な~んか怪しい奴が来たみたい あはは」



 ドンドンドンドン



「は~い」
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