厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第三章 健斗と美咲と新たな出会い

大改装

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家具売り場である7階に着いた面々は各々おのおのの行動を開始する。

女性陣は皆こぞって女子トイレに向かった。

健斗はルームの中に居るメンバーを一旦外に出してリノベーションを始める。


咲姫が剣術女を呼び止める。
「南森さん、さっきの話ですが」
 「兎月でいいですよ~」
「んじゃ~兎月さん、眷属の事を聞かれてましたよね」
 「眷属って意味は分かるけど、どうなってるんかな?って思って」

2人は女子トイレに向かいながら話を続ける。

「健斗さんのメンバーを見たと思いますが、熊さんや狼さんを眷属にしてらっしゃる方も居ます」
「そして、私は人間でありながら健斗さんと眷属契約をしたと言う事です」
 「それは何のために?」
「まぁいきさつはちょっとアレですが、眷属になったら色々と恩恵もあるんですよ」
「ステータスやスキルとか恩恵は有難いし、主と心で繋がると思います」
 「ふ~ん・・・」
 「そのスキルってどうやって手に入れたん?」
「結構簡単に手に入りますよ」
「健斗さんの本拠地に行ったら教えましょうか?」
 「うんっお願いするよ」
「了解ですっ」


健斗は腕を組みながら目を閉じ深く考えている。

トイレにお風呂に洗面台、システムキッチンに・・・
給湯器も必須だ。照明も付けたいし、ドアは必要・・・
自分の部屋も作ったら、もうポイントが足りなくなるだろう。

あとどれくらい残っているのか、ステータスボードを開けてみたら驚いた。

なんと、ポイントの数字にマイナス表記が・・・
マイナスって事は、先入れで使い放題って事かも・・・

ポイントの借金が出来るのなら、思い描いた通り好き勝手にやってみたい。
どこまでポイントがマイナスになるのかも知りたい。

(くっくっく、楽しすぎる)


思ったよりも大きいルームになってしまった・・・

近くの家具を取り込んでいく。
ベッドルームには入るだけベッドを入れておこう。
ポイントでも色々と手に入る。


「ん~こんなもんか」


<i605599|36522>


総平米数185㎡、56坪、112畳。
少し大きめのマンション2軒分くらいの大きさになってしまった。
ポイントも-29.25って(笑)
借金返済が大変だ・・・

んっでもまぁお風呂もキッチンも付いたし、トイレも2か所設置出来て洗面台も2台。
自分の部屋のクローゼットの奥に隠し部屋も出来たし。


ゲートは、中央の左上の小さい廊下の左端に設置。
そこから正面は自分の部屋、右に出るとキッチンでそこから大きく広がっていく。
ゲートを出て左にも部屋がある。部屋の西側に洗濯機を2台設置している。
キッチンからもその部屋からも風呂洗面、トイレに行けるように廊下で続けてみた。

応接間もキッチンの南側に16畳の部屋を2つにソファーを20人分ほど設置。
北東の部屋にはセミダブルのベッドが4つ。
中央東側には6畳+1.5畳のクローゼットで、シングルベッド2つ。

中央の、元のゲート設置場所であった5畳の部屋の北部にトイレ、その前の壁に洗面台を設置。
そこからキッチンに続き、その向こうにドアを介して廊下、その廊下の西面にトイレ、洗面、お風呂。


これ、マイナスポイントを減らさないと何か弊害があるのだろうか?
ちょっと怖い。




取り敢えず出来たので、皆を呼んで中に入ってもらう。

『すんごぉ~』

先にトイレを済ませた母が一番に中を見た。

『ちょっとした豪邸の1階部分って感じやな』
「なんやそれっ(笑)」


用事を済ませた人から中に入ってもらう。

中を見た人々が一様に言うのが
「すっごいなぁ」「なんじゃこりゃ?」「これがスキル?」

そう言った感嘆の言葉だった。


そして、皆が皆、探索を始める。

ドアを開けて次の部屋に入っていく。
トイレや洗面所や、お風呂を覗く。
 「お風呂広~い」

キッチンの吊戸棚を開ける。
洗面台で顔を洗う。
まだ一度も使ってないトイレを使う。

やりたい放題だ。


真ん中の自分の部屋にはクローゼットの奥に隠し部屋があるのだが、キャリーバックやリュックをクローゼットの中に入れてるので、それを乗り越えてまで奥を探索する大人は居ないだろう。

小さな子供なら危なかったが。


一通り見終わった人から、応接間のソファーに腰を下ろし始めた。

ポイントで手に入れたテレビもプロジェクターも置いてあるが、今はDVDやブルーレイしか見れない。
それでも画面から映像が流れるのが良いのか、誰かが〔ライラの冒険〕という昔のDVDを流し始めた。

選択項目にあった ホームシアター(0.3)をセットしたら、部屋の4隅にブルートゥース接続でスピーカーも設置されたので、音響効果も抜群である。


「それじゃぁこのままくつろいでてね」
「生田川にはすぐに着くけど、着いたら呼びに来るよ」

そう言って健斗はルームを出て行った。

そのすぐ後を咲姫がついて行く。


健斗は一旦ルームから出たものの、ふと思いついた事があったのでもう一度中に入り、咲空と三ノ宮クランの3人を呼び出した。

 「どうしましたか?」
「生名さん、風纏を覚えませんか?戦闘形態にバリエーションが出ますよ」
 「はいっはいっお願いします」

3人は大きく何度もうなずき伝授を求めた。

そしていつも通り健斗が女性を抱きかかえるパターン。

 『おっちゃん、ほんま女性が好きやなぁ』
「ちゃ、ちゃうって、どうせなら異性がいいかなってだけや」
 「あはははは、健斗さんって・・・」
「さ、咲姫、勘違いせんといてなっ?」

統括者んじゃ~咲空さん、お願いして良いかな?」
 『OK~行こうっ!」
咲空は生名を肩に担ぐように飛び上がった。

 「それでは私たちも行きましょうか」
咲姫と強格闘家も飛び立った。


空中で各々が会話を交わす。

統括者さくらさん、本当に今日はありがとうでした」
 『いやぁ~下手うって死に掛けただけやでw』
統括者その前から治癒魔法で仲間を沢山助けてもらってます」
統括者君が居なかったら死人が沢山出てた事は間違いが無い事実だよ」
 『そんな・・・ ただみんなが戦いたがってたから手助けしただけやって』
統括者それでも本当に助かった。ありがとね」
 『てへへっ』

咲空は苦笑いしながら生田川を目指し飛んでいる健斗の後を追う。




フラワーロードの上空に差し掛かった所で全員が下を見た。
まだまだ数千人から万単位の人が、広く長い道路の道一杯に広がっている。

これだけの人間の食料を確保する事が本当に出来るのだろうか?

多分、皆同じような事を考えているのだろう、急に無口になった。


咲姫と咲空が健斗の風纏と合体して6人で一塊ひとかたまりになる。

「自分達の事で手一杯やし、すべての人を助けるのも無理やけど、この人等を見放す事は出来ないよなぁ」

健斗が独り言のようにつぶやく。
強格闘家でも、取捨選択は必要じゃないかな?」
剣術女全員を助けようとして、全滅させるような事は本末転倒やし」
咲姫理想と現実の境を見極めないと、共倒れだけは駄目ですね」
 『生きたい人は自分で頑張ってもらわなね』
 『誰かに頼るだけの人は切り捨てらんと、それこそ共倒れするやろ』

健斗切り捨てられた人はそのまま死ねと?」
 『おっちゃんが言ってる事やん、生きる気力と生きる力が無い奴は淘汰されるって』
 『あれは思い付きでゆぅたんか?矛盾した事言うなよ』
健斗む、矛盾した事を言ってるつもりは無いけど・・・」 

 『ってかさぁ、おっちゃんは何様のつもりで全員助けないとって思っとんや?』
 『イチビるのも大概にしとかんと、そこまでいったら偽善者も通り越して頭おかしい人やで?』
 『あれだけの数の人間を助けようと思ったら、生名さんらみたいに超巨大な組織を作らんと絶対に無理やと、中学生のうちにでも分かる事やけどな?』

統括者確かにねぇ、昨日もあの人達にレベルを付けましょうって言って回ったけど、結局賛同してくれたのは、あれだけ居るのにたったの200人程だけでしたしね」
剣術女全員を助けるなんて、夢みたいな話だと思いますよ」
剣術女だいたい、あのフラワーロードに居る人らでも、神戸に残された人間のほんの一部でしか無いですからね
強格闘家神戸の人口150万人とビジネス観光不法滞在とかで160万~180万人位は厄災に取り込まれてると思うけど、そのうち今、何人くらいが生きてるのかさえ分からないですからな」
剣術女だいたい、中央区は人口少ない、と言っても15万人弱はおるんよ。それに仕事や観光で来てる人は中央区に泊ってるのが一番多いんやからね」


そんな討論をしているとコンビニ跡に着いた。
着いたけど、そこには数人の人らが酒盛りをしているだけで、クランのメンバーが見当たらない。

「ただいま~」
 「おぉ~おかえりなさい~」
 「美咲さんらはそこの干潟に狩りにいっとるよ~」

全員で着地をすると、三ノ宮の3人はすでに風纏を覚えていた。
飛ぶスキルを覚えた事で、3人は嬉しがって空中に浮き、咲空の指導の下、操作の練習を始めた。
咲姫は一応眷属なので、健斗の傍らに立っている。

「みなさんはここで何を?」
そこで何をしているのか不審に思ったので、健斗はその人らに聞いてみた。

 「ワシらはレベルも10を超えたし、これからどないするか話し合いや」
 「そいゆぅの酒盛りやけどな(笑)」

三ノ宮クランの人らの手前、こんな堕落したような姿を見せたくなかった。

健斗が文句を言おうとした矢先、干潟のモンスターを殲滅した一行が戻ってきた。

それを見て三ノ宮クランの3人と咲空も降りて来て、スっと健斗の横に並んだ。

 「お~健ちゃん、おかえり~」
 「遅かったなぁ~」
「あぁただいま」
 「お昼まだやろ?今からお肉焼くからな~」

美咲はそう言って急ごしらえのかまどに火を入れた。


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