厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第三章 健斗と美咲と新たな出会い

初契約

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健斗に連れられてリーダーの子がルームの外に二人で出ると、やはり少し警戒気味に話しかけて来る。

 「でっ?一体何を?」
「まずはその前に趣旨を話すね」
「今からの事はあまりみんなに話さないで欲しいんよ」
「将来的には皆の攻略法として広めたいけど、今は強いリーダーが必要なんだと思ってるから」
 「意味がよぉ~分からんけど?」

「実はね、うちのメンバーが持ってる大剣見たでしょ?」
 「うん、あの凄い大剣やね」

「あれの所有権を持つと”大剣豪”ってスキルを覚えるんよ」
「で、今は所有権はあのお母さんにあるんやけど、俺のステ見てみて」


庄内 健斗 (31)
Lv 28
種族 【新人類】選択
職業 【魔剣士】選択
称号 【風切の刃】
基本能力一覧
GMR/PRE
HP 8686/8686
MP 5667/5667
STR 1374
DEF 1325
AGI 1167(+184)
DEX 740
INT 1094(+343)
SP/1354
OP/12
基本技能一覧
      眷属契約▼ 異次元空間[ルーム]Lv1
      魔風剣 夜目 遠目 鳥観図 超跳躍 索敵
      無酸素呼吸 駿動 投擲 料理 調理 剣術
      写珠変換 大剣豪
      風魔法-[風纏]-[風刃]-[風疾駆]
      治癒魔法-[キュアレ]-[キュアラ]-[エリキュア]
      水魔法-[水口]-[水弾]-[水投槍]
耐性一覧
      風圧耐性 寒冷耐性 物理耐性 精神操作耐性
23170/21111


 「すごっ!」
 「たった二日でこんなに強くなるんですね~」
「鑑定持ったなら分かると思うけど、俺の成長率はプレコシアスって早熟なんだよね」
「だからこんなレベル帯だと人よりも成長が早いんだ」

「それよりも、スキルの所に大剣豪ってあるやろ?」
 「あぁありますね」
「それはあの大剣の所有権を持った時に付いたスキルだけど、所有権を解除してもまだ残ったままなんよね」

「それで実験は、上級風魔法のその竜巻って、多分一回取り込んで宝珠に戻したら残ったままになるんじゃないかって思ってるんよ」

「写珠変換ってスキルが、自分の持ってるスキルを宝珠にして他人に渡す事が出来るんよ」
 「じゃ、じゃぁルームってスキルも?」

「残念やけど、出来るモノと出来ないモノがあるんよ」
「因みに、今、出来ないのはルームとか魔風剣みたいに固有のスキルだね」
「さっきの空間倉庫も出来ないモノだったから俺は取り込んでなかったんだよ」
「もしかしたら熟練度とか上がったら何でも出来るようになるかも知れないけど」


「これを取り込んでみて」

健斗はそう言って大剣豪、キュアレ、風纏の3つの宝珠を手渡した。

「これは宝珠にしても俺のステータス画面に残ったままやろ?」
「まずはそれを取り込んでみて」

リーダーは訝し気いぶかしげに宝珠を取り込む文言を唱えた。

 「おっ?おっ?おおっ?おおおおおおおお!!!」

自分のステータスパネルを眺めて感嘆のため息を漏らす。

 「きゅ、きゅうになんか強くなった気がする・・・」
 「風纏っ!」

風を纏い空に浮かんでいく。

 「うっはぁ~はっぴぃ~~~~」
空中で大声を上げて楽しむリーダーだった。

 「あ、ありがとうございます~」
 「これって、うちの子達にも上げられますか?」
「ごめん、スキルのクールタイムがあるんやー」
「24時間で5個まで、その後に再使用まで24時間、実質48時間の再使用時間が掛かるんよ」
「[竜巻]返すのに1個使うし」
 「そっかー残念」

「でも、今渡した大剣豪以外は結構簡単に覚えれるもんやで」
「俺のスキルのほとんどはすぐに取得できる簡単なもんばっかりなんよ」

健斗は先に見返りとして宝珠を渡したし、そして各スキルの取得方法も伝授した。

 「へぇ~聞けば全部簡単に覚えられそうやけど、最初になかなか思いつかないな」
「そう、発想と想像とイメージがあればなんでも出来ると思うよ」

「風纏も、INT100あれば伝授できるからな」
「あともうちょっとレベル上げてメンバーに教えてあげてな」
 
 「わかったー」
 「んじゃ信用してこの宝珠貸すわな」
「あと、他の宝箱から出て、俺が持ってないもんもどれか1個貸し出ししてくれへんかな?」

 「ぜ~んぜん問題ないよ」

健斗は竜巻を取得し、そしてすぐにまた宝珠に戻した。

「このスキルの事はまだ誰にも言ってないから、内緒にしといて欲しいねんけど」
 「まぁこんなん知られたら面倒な事に巻き込まれるかもやしね」

「その代わりに、ルームがコピー出来たら真っ先に渡すよ」
 「お~~OKOK」
 
「・・・」
「もう一つ提案なんやけど・・・」
 「ん?セクハラとかやったら断りますよ?」
「アホやで・・・」
「あいつらの言う事を真に受けらんといてや」

 「んじゃぁ何かな?」
「・・・」
「俺の眷属にならへんか?」

 「け、眷属って奴隷化の事ちゃうの?」
 「奴隷にしてからセクハラか~?」
「ちゃうちゃう」
「そんな重い契約じゃないんよ」
「俺も手違いで一度他人の眷属になったけど、その人に対する信頼とかが増すだけで、あとは何にも変わりは無かったから大丈夫やと思う」
  
 「なんか凄い不安やけど・・・」
「うん、それはわかるよ」
「ついさっき知り合ったばかりの人に眷属になれって言われりゃそりゃ誰でも怪しむよ」
「鑑定でステ見るからか、多分自己紹介もまだしてないよね(笑)」

「自分は庄内健斗と言います。進化前は31歳でした」
 「あ、私は陽風はるかぜ咲姫さきと言います」
 「年齢はもう見て知ってると思うけど、ちょっと年上の33歳です」

「じゃぁ眷属OKって事で良いかな?」
 「なぜ私なんですか?」

「ん~」
「最初は、君とあの子が眷属関係になればいいのになってまず思ったんやけど、その時になぜか君を眷属にしたいって急に強く想い出したんだよ。
インスピレーションだと言えばそうなんだろうけど、幸運の力が高い君を眷属にするって事が、君にとって良い傾向じゃないと急にそんな事を思うなんて無いんじゃないか?って考えてね。
君が拒絶するならそれまでの話なんだけど、受け入れるなら絶対に何か良い方向に進むんじゃないかなぁって思って誘ってみたんだよ」

 「詐欺師じゃないですよね?」
 「お話が凄く上手で、疑り深い私でもなんか説得されてしまいました・・・」
「そうか?語彙力がある方じゃないと思うし、よく考え方がおかしいって言われるし」
 
 「・・・」
 「宜しくお願いします」



 なんじ 我がわが眷属けんぞくとなりて
 われしたが
 われたす
 われ見守みまも
 われともきると
 かうか?

 「・・・ はいっ」

「コントラクト!」

咲姫は淡い光に包まれて、健斗の眷属となった。



 「あれっ?ちょっと疑いの目を向けてたのに、まったくなくなった」
「あぁなんか俺もあまり良く知らないのに、凄い信頼感が湧いてきた」

 「うふふふ、これが主従関係の感覚なんですね」
「君もあの子と関係結んだらいいと思うよ」
 「はいっ」
 「それと、"君"は辞めて下さいな、せめて名前で呼んでください」
「それじゃぁ咲姫でいいかな?」
 「はいっ♪」

咲姫は自分のステータスを見始めた。

 「健斗さん、なんか恩恵って項目と称号が付きましたけど、これって?」


陽風はるかぜ咲姫さき(33)
Lv11

種族 【新人類】 選択
職業 【聖剣士】 選択
恩恵 【成長率上昇】
称号 【幸運の星】【運に見守られし者】
状態 【眷属化-庄内健斗】
基本能力一覧
GMR/USU+
HP 834/789(+45)
MP 541/496(+45)

STR 223/160(+13)[50]
DEF 213/145(+13)[55]
AGI 181/123(+13)[45]
DEX  143/130(+13)
INT 106/93(+13)
SP/0
基本技能一覧
      聖剣術 鑑定 大剣豪 風纏
      治癒魔法-[キュアレ]
      
1642/1468 


 「凄く賑やかになりました(笑)」

「恩恵とステ全部に補正が付いたね」
「INTも100超えたからメンバーに風纏伝授出来るよ」

「成長率上昇は俺の早熟の恩恵だろうね」
「終焉まで消えないだろうから、ずっとレベル上がるのが早いままなんだね」

 「すみません・・・」
「はははは、なんで謝るの」

「あとは眷属契約を覚えるだけか」
「それは今やっとく?」
 「出来ればすぐに覚えたいですね~」
「ちょっと待っといてな」
 「一緒に行きます」

2人は風を纏い、空中に飛び上がり獲物を探す。

「しかし、まだ覚えたばかりなのに風纏の操作が上手やなぁ?」
 「ん~どっちかと言うと、最初から覚えてたって感じかな?」
「そっか~多分やけど、宝珠で伝授したからだろうな」

先ほどの戦闘跡に、まだ息があるオークが転がっていた。
手足はピクピクと動いているが起き上がってはこない。

「あれでスキル覚えようか」

2人はそのオークの元に降り立ち、眷属契約を覚える行動をとる。

 「ほっほ~ 覚えましたよ~」
「これであの子を本当の仲間に出来るよ」
「多分、咲姫のステからの恩恵だと"運"にまつわるもんだろうね」
 「色々とありがとうございました~」
「まぁ咲姫と出会ってこうなったのも、咲姫の幸運のおかげやな」
 「これからは一緒に行動するんですか?」

「いや、しばらくは咲姫のメンバーを強くしてほしいかな?」
「一緒に咲姫も強くなってくれればいいよ」
 「捨てるんですか・・・」
「ちゃうちゃう、まだやらないとあかん事が色々とあるから」
「それをまずは消化しないとだから」

健斗は何となく突き放したが、眷属契約の縛りなのか罪悪感しか残らなかった。


横でオークが息絶えた。



「まぁ一旦戻ろうか~」
 「はいっ」
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