厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第三章 健斗と美咲と新たな出会い

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『治癒魔法掛けるでぇ~』
 『みんな~もうちょっと近くに集まってぇ~』
 『リトル~頼むで~』

  「微風そよかぜ~」

熊の子リトルの治癒魔法、微風そよかぜがそこに居る人間を爽やかな風でくすぐる。
微風にくすぐられた人間達に治癒魔法が効果を表す。

  「おっ?おっおっおっ?」
  「ふっか~~~つっ!」
  「い、いける~まだまだいけるでぇ~」

奥にしゃがんでいた戦力外の人達も元気に立ち直り、そして戦闘に参加する。

『ほぉ~凄いスキルやなぁ』
 「広範囲治癒魔法かぁ凄いなリトルちゃん」

熊の子リトルは凄く褒められて、とても嬉しそうな顔をする。
『か、可愛ぃ・・・』

そんな事を考えてる場合じゃないと母は思い直し、大声で叫ぶ。

『ここのリーダーさんは誰ですか~?』
 「私らは生田川のクランですー」

大パーティーに合流するべく、母と剣女が話しかける。

  『俺がこっち方面の統括ですっ』
  『みんな~ちょっと話してる間、頼むでぇ~』

そこのリーダーらしき男と話をする事が出来た。

『ちょっと危ない感じやから、うちらも参戦するけど、いいかな?』
  『いやいや、それは願っても無い事やわ』
  『実は、場外馬券売り場の向こうのタワーマンションの裏で、大鬼オーガが湧いてんねん』
  『うちの先鋭がおるんやけど、手下のオークも多くてかなり押され気味なんよ』

 『オークもおーくてっ て(笑)』
 「ちょい黙っとき」

  『すんません、洒落しゃれを言ったつもりは無かったんやけど・・・』
『いやいや、それより話を続けてくれん?』

その統括だと言う男の話では、オーガが猛威を振るい、ちょっと向こうのパーティー達が危ないらしい。
彼らは遠耳と言うスキルで戦況確認をしていると言う。

[大声]と言うスキルと[遠耳]と言うスキルで少し離れた所でも会話が出来るらしい。


『こっちもあと2人合流するから、サクッと殲滅しましょうか』
  『よろしくお願いします』

『いくよぉ~』
 「ガンバッ」

後方から迫るハチュ系の魔物を片付けようと駆ける。

トカゲの様な奴はレベルも高く全匹レベル14以上だった。

だが、母も剣女も意に介せず倒していく。
姉も小熊達も危なげなくトカゲを倒していく。

だが、さらに後ろから来たワニ人にはかなり手こずった。

ハチュのくせに2足歩行で剣を持ち、またそれがなかなか強い剣技を使う。
レベルこそ12~15くらいとソコソコだが、一般新人類じゃ太刀打ち出来ないかも知れない。

鑑定すると、ガビアルナイトと言う種類だった。
スキルも、剣術や剣撃とかのスキルを持っている。

 『気を付けてなぁ』
 『今までに居なかったタイプやで~』
 『健斗のおっさんより剣技は上やで~』
『「 あははははは 」』

鑑定の結果を大声で皆に使える姉。

皮膚も固く、母や剣女でさえ一刀両断出来なかった。

剣戦の音がキンキンと鳴り響く。


麗里もレベルが16を超えているが、今この場で進化をするのは不可能だった。

 「麗里~一回上に上がって進化するかぁ?」

麗里は首を横に振る。
今、一人でも欠けるとここの戦況が不利になる事を察しているからだ。

姉と小熊のリトルは空中から風刃を飛ばし牽制する。
それを剣女が正面から打ち合い、対敵意識の焦点が合わないように戦う。
麗里はさらに横から、熊の爪を固い表皮に食い込ませダメージを蓄積していく。

母はガビアルナイトのさらに後ろに移動し、長刀を振り回し、一切の攻撃を受けないで殲滅していく。
それでも倒すまでには何太刀も浴びせなければならなかった。

モタモタとオークやトカゲに時間を掛けている三ノ宮クランのメンバーは、その勇姿に見惚れていたい気持ちになるが、目の前の敵を倒す事が先決だと思い直す。


10数匹も居たガビアルナイトを生田川クランの少数メンバーが倒した事に三ノ宮クランのメンバーは少し驚いていた。

『そっちも倒してしまうね~』

3女と2熊がサクサクとオークもトカゲも倒してしまう。

 「なんか、レベル25にもなっとるよ」
 『うちも22になったわ』

  『ありがとうでしたー』
先ほどの統括の人が礼を言ってくる。

  『昨日、フラワーロードにおったんかな?』
『うちらは今日、フラワーロードで知り合った人達でクラン作ったんよ』
 「レベル付けたんも今日やからな~」
  『えぇぇ? 自分らは昨日からやってるのに?』
  『なんかチートなスキルとかあるんかな?』

 『そんなん無いわ~(笑)』

『まぁうちらは優秀な指導者がおったからかな?』
 「イチビリやけどな」
 『ちょっと頭おかしいけどな』
『変態テクニシャンやけどな』
 「デモ トテモ ヨキヒト」

  『おおおおおおおおおおおおおおおっ?』
  「「「「「 熊がしゃべった~? 」」」」」

やはり熊が喋ると皆一様に驚くようだ。

  『その熊と熊みたいな人は?』
 『うちらの眷属やで』
 『んで、この子はうちの眷属のリトル、一回進化して人化しとるんよ』

 「あっ麗里の進化してしまうわ」
『もう16とかとっくに過ぎたんちゃうの?』
 「うん、もう18になっとる」

 「麗里、サーシィベアとフレイムベア、もちろん人化の方やな?」

麗里は属性が火だったようで、リトルとは違う進化の枝になる。
小さく首を縦に振り、フレイムベアを選んだようだ。

剣女がステータスボードを触り進化先を選択する。

 「ウゴォ~~~~」
 「ガァァァァ~」

進化の苦悩が始まる。

全員一度は通ってきた道だから、その苦痛は良く知っている。


進化が終わると少し人化している。
とは言え、リトルで一度見ているのでさほど驚きはなかった。
リトルと違うのは、体毛がかなり赤っぽくなっている事だ。
リトルはチーキーベアの時とあまり変わらない黒っぽい体毛だったのに。

『それは良いけど、応援に行かなくてえぇ~んかな?』
  『おぉ~色々あってすっかり頭から飛んでた~』
 「うちらも行くから、先に連絡入れといてな」

女性3人と熊人2人は空から応援に行く。
  『それじゃ~みんな、あっちの応援に行くでぇ~』

そう言った時には、もう半分くらいの人がすでにかなりの距離を走っていた。

 

上空に上がると、目の前には高いタワーマンションが聳え立つ。

その横を通り過ぎるといきなり喧騒に包まれる。

40~50人くらい居るのだろうか?
それよりもさらに多いオーク種と一際大きなハイオーク。
そしてさらにさらにの大きさの人食い鬼オーガがこん棒を片手に仁王立ちしている。

 『オーガのレベルは20』
 『サーシィベアと変わらんけど、ステはこいつのが高いしスキルも多いな』
 『クランのメンバーはレベル20以上も何人かおるけど、格闘系ばっかりやな』

『あの体格差じゃ格闘系はきついよなぁ』

 「後ろっ」
 『おっ来た来た』
『黒いオオカミ見つかったんやな』
『んじゃ~先にオーガ倒しちゃうか~』

背後の彼方に健斗と咲空と黒っぽいオオカミらしい物を見つけた。

『こっちにも気づいてるやろうから、すぐにこの場所わかるやろな』

 「戦闘は10カ所くらいか」
 「どこをやる?」
『いきなりオーガでもえぇけどな』
 「麗里がまだ戦闘に慣れてないから、近くのハイオークおるとこ行こう」
『どこの戦闘ヶ所も人間の方が少ないよなぁ』
『どっか1つか2つ殲滅したら合流して人間増えていくんちゃう?』

 『おかん、年やのに頭回るよなぁ』
『あんたがアホすぎるんやろ~』
 「お姉ちゃん、サクッと鑑定で一番弱そうなパーティーの所探せるか?」
 『任せときぃ~』

 『おっあそこがダントツ低い』
 『平均14か~ 良く死人出てないよなぁ』
 『あぁ治癒師が二人もおるわ』
『7~8人もおるのに、そんなに早よぉに平均計算できるなぁ』

 『算数、数学は好きやからな』
 『ソロバン1級やし』
 『物造りや図面には数字は結構使うから必然的にな』

『あほやってゆうたけど、ちょっとだけ見直したるわ』
 『あぁ大丈夫やで、おかんの口撃は聞き流しとるから』

 「ほんま、この子は~」

『んじゃ~あっこに突撃や~』
 『あいよぉ~』

5人は全速力で一番弱そうなパーティーの応援に向かった。


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