厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第三章 健斗と美咲と新たな出会い

それぞれの世界観

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黒いシンリンオオカミはマイケルと言う名前らしい。

 『なぁこの子の名前は変えても良いかな?』

 「えっ?この子を連れて行くって事ですか?」 
 『んっ?うちの眷属になった事やし、連れて行くで?」

 「ちょっとそれは困るぞ」
 「何かあったら責任誰が取るんや」

「まだ今の神戸の世界を理解してないんやなぁ」
 『そうやで、何かってなんやねん? この子が誰か噛んだとかか?』
 『もしまだそんな平和な世の中やと思っとんやったら、おっさん、あんた早死にするで?』

「まぁ今から言う事を理解出来ないのなら仕方ないけど」
「まずはどっかでゴブリンでも捕まえて来て、みんなでダメージ入れて」

健斗は進化への道を切々と説いた。
眷属契約の事も切々と説いた。

反応は、まぁいつもの通りだけど。

「なぁ咲空ちゃん、どうしたらえぇかな?」
 『ほっとけば?』
「イチビリな俺がほっとけないの知っとるやろ?」
 『あははは、自覚あるんやぁ』

 『まぁこの子連れて行くんやから、お礼がてらに何人か進化と眷属スキル教えとく?』

健斗は意を決したように心から叫ぶ。

「んじゃ~俺の話を理解出来たって人、ちょっと進化してさ~、ここの子達を眷属化して守ってあげてくれへんかな?」

  「私、行きます!」
 「私もっ!」
 「俺も行っとくわ」

まぁ3人も居れば十分かな?
そう思い、その人達を抱え込んで王国を出ていく。

 「お、おまえら~その子らに何かしたらただじゃおかんぞ~」

ま~そう言われても、今の健斗の足元にも及ばないであろう戦闘力なんだから・・・


健斗が女性2人を抱え、咲空が男性とブラックウルフを抱えて北に向かって飛んでいく。

王国周辺は人家が無いので、魔物もほぼ見かけない。

少し北に行けばいくつかの大きな病院や医療センター、リハビリ施設や癌センターがある。
そして子供病院もあるので、救援の手を入れる意味合いでも、そこに行く事にした。



子供病院に着くと、流石に厄災2日目なので蹂躙や戦闘は見受けられないが、1階にゴブリンが沢山ウロウロしているのが見える。

自分たちのマンションでもそうだったが、ゴブリンは下に下に行く習性でもあるのだろうか?
まぁ上階に居ないならここの患者さんもまだ生きてる可能性も高いだろう。

「咲空ちゃん、取り敢えず1匹捕まえてきて屋上で進化してもらおうか?」
 『了解~』

自分が行くつもりだったのに、男性を屋上のヘリポートに降ろすと、ブラックウルフを抱えてそのまま飛んで行ってしまった。


ヘリポートに女性を降ろし、3人にこれからの事を話す。

そして、大量に居るゴブリンを一掃していく事を伝える。

 「こんなん見たら、あんたが言ってた事が現実やって信じんと仕方ないなぁ」
  「こんなにモンスターが沢山いるなんて信じらんない」
 「お、俺もバイクで王国まで行ったけど、ここまでの魔物は見なかったよ」 
  「・・・」

  「みんなごめんなさい、どうにもこうにもワクワクしてる私が居るんです」
  「こんな事態になっているのに、頭がおかしくなったんかと自分で思ってしまう」
  「あのがマイケルを眷属にしたんをの当たりに見て・・・」
  「自分もファンタジーの世界に行きたいと強く思ってしまって・・・」

 「謝らんでもえぇよ。俺も実は心の底でワクワクが止まらんねん」
 「やって、人間が空を飛んどんやで?狼のブースに平気で入って平気で出てくんねんで?」
 「異世界物や転移転生もんの話はいくつも読んだからなぁ」
 「自分が今そこにおるんかと思うと身体が震えて来るわ」

 「な~んや、うちだけおかしいんかと思っとったわ」
 「二人共やっぱり若いんやなぁ あはは」
 「うちは年甲斐も無くこんな世界をずっと妄想しとった駄目人間やからさぁ」
 「実際にこんな世界になったらちょっとビビっとったんやけどな」
 「二人の話聞いとって、なんや凄い気持ちが楽になったわ」
 「ありがとな」

 「なんで礼を言われるんかわからんわ(笑)」

「ははは、あんたもまだ若モンの範囲やろうが」
「俺よりも1個下やで」
 「はぁ?あんたどう見てもこの子らと変わらんやろ?20歳そこそこやろ?」
「俺は31だよ。あんたが30歳だから俺よりも年下やで」
 「はぁ?嘘つきなんか?」
「ふふふ、まぁ進化したら俺が言ってる事も理解出来るわ」
「まぁあんたの年齢を知ってる時点でおかしいと思わんとな(笑)」


 『おまたせ~』
 『この子、レベル付けたら進化しよって大変やってん あははは』
「大丈夫やったんか?」
 『まぁうちがそばにおったからな』

黒いオオカミはシンリンオオカミから進化して、名実ともにブラックウルフになっていた。
その容姿も大きく変化し、体躯がかなり大きくなっていた。
クーリルウルフより一回り小さいくらいか。
普通のライオンやトラくらいの大きさだ。

「名前は?もう付けたんやろ?」
 『うん、シュヴァルツ』
「聞いたことあるような?なんか意味あんの?」
 『ドイツ語で黒いって意味やで』

 「その子、大事にしたってな」

「んじゃ~始めよっか」

健斗は腰のククリを渡し、3人にゴブリンの背中に傷をつけるようにさせた。

健斗がゴブリンを滅し、そして進化が始まった。

「「「ウガァァァァァ」」」





 「「「ハァハァハァ」」」
「お疲れ様ー」
 『ご苦労さんでした』

「きつかったやろ~」

健斗が半笑いで言う事にちょっとムッとするが、身体中から湧いて来る漲る力に心が躍る。

  「先輩、私らと同じくらいにしか見えませんよ」
 「この人の言ってた事が本当だったんですな」
 「若返ったって事? ふふふ 嬉しい♪」

「んじゃ~空飛ぶスキルから覚えよか」
ドヤ顔の健斗が仕切る。

健斗はまた女性2人を抱きかかえ、咲空さくらは男性とシュヴァルツを抱えてゆっくりと降りて行く。


一度1階まで降りたが風纏を覚えなかったので、また上昇する。


今度はすぐに覚えたので、いよいよレベリングに掛かる。
咲空から伝授された男性の風纏の色は青緑の薄い色だった。


1階にはおよそ400匹ほどのゴブリンが居た。
これはちょっと大変かも・・・

大渋滞している建物の入り口付近から減らしていこうと提案してみた。


3人には刀を貸し出し、まずは建物の中からはじき出されたハグレゴブリンから掃討していく。

咲空の二刀流もスキルのおかげもあり、見惚れるほどの戦技だった。
眷属のシュヴァルツもさすがのオオカミらしい動きでゴブリンを屠っていく。
咲空と交差しながらの戦闘は、長年の相棒同志、と言うように見えるほど息が合っている。

健斗は魔法を使わずに、剣のスキルを発動させるべく奮闘している。

3人は覚束おぼつかない剣技ながら、低レベルのゴブリンを楽に倒していく。


サクサクと3レベルになったので、職業の選択を提案してみた。

駐車場南側の研修センターの屋上に一旦避難してステを触る。

3人共剣で戦っていたので剣のスキルを覚えていた。

健斗も晴れて剣術を取得した、
だがただの剣術を覚えただけだ。

いつもの様に3人に刀で素振りをさせて風刃を覚えさせる。

何度も何度もスキルは発想とイメージが大事だと説く。
2人は風刃を覚えたが、一人は火の刃を覚えた。
基礎属性が火なんだろう。

覚えたての風纏と飛ばす剣圧を駆使して、駐車場まで追いかけてきたゴブリンを倒していく。
サクサクっとレベルも6を超え7になり8へと上がっていく。

 「はぁ~生き物育てる職業やのに生き物殺してる自分がおかしいと思わなくなった」
 「サックサクとレベルが上がって力が漲って、あちこち痛かった身体も絶好調」

先輩が戦闘に酔いしれる。

健斗は全滅させるまでは考えてなかった。
それは母や剣女を待たせているからだ。

時計を見ると時間は11:30。
猶予は10分くらいが限界か。


奥の方からヒャッホウと言う、まるで美咲のような叫び声が聞こえる。
咲空とシュヴァルツが本館の中に入って、大量に屠っているのだろう。

あいつらには治癒魔法を早めに覚えさせないと、結構無茶やるからなぁ。

さて、この3人も、もうまず大怪我する事は無いだろう。

「そうそう撃ち負けたりはしないだろうけど、絶対に油断と慢心はしたら駄目だよ」
「自分も他の人もそれで死にかけたからね」
「この服の赤いのは染めじゃなくて本物の俺の血だからね」

 「「「わかりました」」」

「自分らは人を待たせてるんで、あと10分くらいしか戦えないけど、王国に帰って眷属のスキルを覚えて、肉食はこのゴブリンとかイノシシの魔獣で餌がまかなえるけど、草食の子はちょっと考えないとあかんよね。

まぁ進化したら肉も食べるようになるかも知れんし。
色々と試行錯誤して頑張ってな」

 「はいっ俺はスマトラトラとかの飼育をやっているので、あいつは自分の眷属にしたいです」

「あの子が一番厄介かもね。もうすでにレベル付いてるから、あんな所からは簡単に抜け出れるはずなのに、何故そうしないのか考える必要があるね」
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