62 / 154
第三章 健斗と美咲と新たな出会い
熊狩り
しおりを挟む
母と剣士を神社の中に居る魔物と戦わせるのに、少し下見をしておこうと健斗が動く。
フワフワと湊川神社の中に入ると、あちらこちらにレベル付きの遺体が転がっている。
中には何かが食い散らかしたような、見るも無残な悲惨な遺体もいくつかある。
(これはヤバい奴かも)
オークやボアならこんなに簡単にレベル5や6の奴が倒されないだろうと推測している。
ウロウロと歩いていると、本殿近くの木立の中からそいつは現れた。
(熊?)
鑑定で見るとチーキーベアと出る。
生意気な熊?
テディベアシリーズ?
見た目は2m弱の体躯で熊そのもので、茶毛で頭部に八割れの白毛があり胸の辺りにも白い毛が見受けられる。
和熊とは違い、シャキッとした様子が無い事から、グリズリーに近い種なんだろうと思う。
レベルは10とそう高くは無いけど、戦闘能力が高いのだろうか?
何か特別なスキルを持っているのだろうか?
「水投槍!!!」
頭部に水の槍が突き刺さる。
(あれっ?)
死んだ・・・・
索敵を掛けたままでいると、戦闘が始まった瞬間に四方八方からチーキーベアが走って出てきたのが良くわかる。
1人対1頭じゃそうそう負けないだろうが、不意打ちで多対数戦闘を強いられた結果か。
統率している奴が居るのか知能がかなり高いのか?
目の前の熊が瞬殺されたので、駆け寄ろうとしてた残りも一旦引く形になった。
まぁ倒すだけなら母たちも空中からチマチマやれば怪我も無くいけるだろう。
20頭ほど居る様なので、レベリングには丁度良い。
それよりも統率して指揮しているヤツが居るのなら先に見つけないと。
索敵と鳥瞰図で分かったのは、本殿裏奥の小森の中に少し大きめの反応がある。
それが多分ボスクラスだろう。
「熊って食えるんかなぁ?」
素朴な疑問が口を突いて出てきた。
『熊の手とか高級中華であるよー』
頭の上から声がする。
母と剣女が近くのゴブリンを殲滅してここに来たようだ。
「レベル上がったかぁ~?」
『ほいほい、10超えたよ~ん』
「自分も11になりましたー」
「早いなぁ~ びっくりするわ!」
『がんばったも~ん』
「なんか、2児の母って感じせんな~」
『ん?ハラスメントか~?』
「ちゃうよ、可愛いなぁって意味で言ったんよ」
「こ~のスケコマシのテクニシャンめ~」
『あははははは』
「ちょっ!もうそれやめて」
健斗は責められるのに弱いタイプだった。
「ここに熊が隠れてるんよ。巧みにね」
「索敵で見てるけど、ざっと20匹」
「レベルは10前後やから、平均経験値が1000くらい、掛ける20で2万EXP」
「美味しいと思わん?」
『「思う思う」』
「死角から襲ってくるから、空中で無傷戦闘をやろうと思っとんよ」
「それでもやっぱりレベル10やから、気を抜くと殺られるって事は頭から抜かないようにね」
『うむっ』「わかりました」
亡骸を巻き込まないように広い場所に移動してあげる。
それを見て木陰から熊が飛び出してくる。
空中で待機している母と剣女がサクサクと倒していく。
蝶の様に舞い、蜂の様に刺す!
風纏の使い方もかなり上手になってきている。
この戦法がなかなか安定していて安心して見ていられる。
空中魔法ならもっと安心できるんだろうが。
健斗も自分に経験値が入るように、風刃で軽くダメージを与えながら二人の戦いを見守る。
少しズルいとは思いながらも、この経験値ウェーブには乗りたい。
何体か倒したくらいで母が叫ぶ。
『は~サクサクとレベルが上がっていくのが気落ち良いね~』
「そうやね~ 三ノ宮の連中を出し抜くのは気が引けるけど、これはしゃぁないね~」
「なんせ、気持ちいい♪」
『7太刀8太刀掛かってたのが、ほぼ2~3太刀で倒せるようになったのも気持ちいいね」
「母は戦闘狂やからなぁ~」
索敵で残り3体になった時、迷い人が西門から2人入ってきてしまった。
幸いな事に、残りのチーキーベア―は東の親能殿の辺りに潜んでいた。
すぐに襲われる様な距離では無いが、危険なのは間違いない。
健斗は素早くそばに近寄りその二人を担ぎ上げ、比較的安全そうな親能殿の2階の回廊に降ろした。
チーキーベアはその二人を見つけて、回廊の下から小さくジャンプして襲おうとしてくる。
初めて見る熊の魔獣、その顔を見ただけで恐怖に襲われる。
健斗は境内に砂利として敷き詰めてる2~3㎝くらいの石を両手で持てるだけ持って来てこう言った。
「色々と話はあとで聞くから、ここでレベルアップを図りましょう」
「この石を確実にあの熊に当てて下さいね」
「1発確実に当たったら次の熊を狙って下さい」
「熊は全部で3匹います」
一気に語り掛け、二人は何が何だかわからないが、言われた通りに目の前に居る恐ろしい熊に石を何個か投げつけた。
母と剣女には、経験値が減る事を告げたが、特に気にもしていないようだ。
自分の娘と同じくらいの姉妹を見て、後で話をちゃんと聞いてあげたいとさえ思っている。
健斗はこの姉妹がすでにレベルが付いている事を最初に見ている。
姉がレベル1、妹がレベル2。
どうやってレベル付きになったのかとかどうして二人で彷徨っているのかとか聞きたい事は沢山ある。
奥に隠れていたチーキーベアも、健斗の陽動で見える所まで出て来たので、姉妹に石を投げるように再度促した。
石がちゃんと当たったのを見てから、3人は熊3匹を反撃も一切させずに上空から屠っていく。
3匹が倒れると、姉妹は急激にレベルが上がった弊害のレベルアップ酔いに陥る。
「あぁぁぁぁ吐き気がするぅ」「うぅぅっ 私あかんかも・・・」
「大丈夫やで、急にレベルが上がったから酔ってるだけやで」
健斗が姉妹の横に降り立ち、そう言って背中をさすってあげる。
「こんな子に欲情せんのよ~」
2人が横に降り立ち、ふざけてそう言った。
剣女の大人のジョークを、目を細めて顔を見て聞き流し、ルームから飲み物を持ってきてあげた。
ゲートの出入りを見て姉妹は驚いていたが、スキルだと女性二人が説明していた。
母と剣女にもスポーツドリンクを渡し、5人で回廊に腰かけて話を始める。
『ビールが良かった・・・』
「みんな結構レベル上がったよなぁ~」
庄内 健斗 (31)
Lv 25
種族 【新人類】選択
職業 【魔剣士】選択
称号 【風切の刃】
基本能力一覧
GMR/PRE
HP 6971/6971
MP 4380/4380
STR 1031
DEF 1016
AGI 877(+126)
DEX 569
INT 837(+206)
SP/1115
OP/16.4
基本技能一覧
眷属契約 異次元空間[ルーム]Lv1
魔風剣 夜目 遠目 鳥観図 超跳躍 索敵
無酸素呼吸 駿動 投擲
風魔法-[風纏]-[風刃]-[風疾駆]
治癒魔法-[キュアレ]
水魔法-[水口]-[水弾]-[水投槍]
耐性一覧
風圧耐性 寒冷耐性 物理耐性
16274/15657
『スルーかよ』
健斗は一気にレベル7つ上がって25になっていた。
母も10上がり20でもうすぐ21、剣女はレベル21を超えてきた。
姉妹も妹が10、姉も、もうすぐ10のレベル9。
あとゴブリン1体か2体倒せばレベルアップするだろう。
「二人共、もう美咲を追い越したかもなぁ」
「ここに着いた時は、俺も美咲もレベル18やったからな」
母と剣女に話しかける。
「あっちでレベリングとかしてなかったらって前提やけどね」
「それで。この子らは知り合いかなんかなん?」
「いや、さっき初めて会ったんやけど?」
「???」
『なんでいきなりレベリングに参加させたん?』
「ん?レベル付いてる子やったから、美味しい思いしたらえぇかなって思ってな」
『「・・・」』
母も剣女も少し物思うところはあるが、些細な事かも知れないと意識を横に流す。
ただ、ほんの僅かな蟠りが芽生えた事はまだ誰の意識下にもなかった。
『そりゃそうと、あんたらはなんでこんな所にフラフラと入ってきたんや?』
母が姉妹に尋ねる。
『両親と祖父母が亡くなって、それで行く当ても無く、ここなら配給とかしてるかもって』
明らかに妹らしい方がハキハキと答えた。
姉っぽい子は何かを言おうとしているが、腹式呼吸が出来ないからか、あまり響いて来ない。
卒業前のブツブツ喋る西野七瀬みたいな感じだ。
それでも何か必死に語り出した。
「うちらだけ生き残ってしもた・・・」
「おばあちゃん、うちの上でうちをかばって殺られた・・・」
「お母さんもお父さんもうちら二人を庇って死んだ・・・」
「うちらが魔物倒さんかったら死ななんだのに・・・」
『お姉ちゃん、それはちゃうわ。うちらが倒さんかったら5人共死んどったわ』
『もう家族はお姉ちゃんだけやけど、生きる気力が無いんやったら、うちは一人ででも生きていく方を選ぶで』
2人のやり取りと説明を3人の大人は黙って聞いていた。
聞けば、妹は13歳、姉は15歳、どちらも中学生らしい。
妹は年齢からは想像出来ないくらい大人びた考えをしているように感じた。
元の世なら警察や児童相談所に持っていく案件だろうが、こんな世界だ。
自分の命は自分で守るしかない。
その覚悟が無い物はドンドン淘汰されていくだろう。
母は自分の娘たちと重ねて見ていたが、所詮は見知らぬ子達である。
『レベルも上がったし、もう大丈夫かな?』
「刀が余ってるならあげたらどないかな?」
姉妹に扱いやすそうな刀を1本づつ手渡した。
同情や哀情は掛けれても、庇護する気持ちは毛頭ない。
自分の事でも精一杯手一杯だし、子供2人を抱えて生きていくのに他人の事まで関われない。
剣女も、生田川の連中には同時に進化した事もあって仲間意識はあるが、それ以外は所詮赤の他人だ。
「この奥に熊の親玉がおるんやけど、倒す?」
「強そうかな?」『倒せる感じ?』
フワフワと湊川神社の中に入ると、あちらこちらにレベル付きの遺体が転がっている。
中には何かが食い散らかしたような、見るも無残な悲惨な遺体もいくつかある。
(これはヤバい奴かも)
オークやボアならこんなに簡単にレベル5や6の奴が倒されないだろうと推測している。
ウロウロと歩いていると、本殿近くの木立の中からそいつは現れた。
(熊?)
鑑定で見るとチーキーベアと出る。
生意気な熊?
テディベアシリーズ?
見た目は2m弱の体躯で熊そのもので、茶毛で頭部に八割れの白毛があり胸の辺りにも白い毛が見受けられる。
和熊とは違い、シャキッとした様子が無い事から、グリズリーに近い種なんだろうと思う。
レベルは10とそう高くは無いけど、戦闘能力が高いのだろうか?
何か特別なスキルを持っているのだろうか?
「水投槍!!!」
頭部に水の槍が突き刺さる。
(あれっ?)
死んだ・・・・
索敵を掛けたままでいると、戦闘が始まった瞬間に四方八方からチーキーベアが走って出てきたのが良くわかる。
1人対1頭じゃそうそう負けないだろうが、不意打ちで多対数戦闘を強いられた結果か。
統率している奴が居るのか知能がかなり高いのか?
目の前の熊が瞬殺されたので、駆け寄ろうとしてた残りも一旦引く形になった。
まぁ倒すだけなら母たちも空中からチマチマやれば怪我も無くいけるだろう。
20頭ほど居る様なので、レベリングには丁度良い。
それよりも統率して指揮しているヤツが居るのなら先に見つけないと。
索敵と鳥瞰図で分かったのは、本殿裏奥の小森の中に少し大きめの反応がある。
それが多分ボスクラスだろう。
「熊って食えるんかなぁ?」
素朴な疑問が口を突いて出てきた。
『熊の手とか高級中華であるよー』
頭の上から声がする。
母と剣女が近くのゴブリンを殲滅してここに来たようだ。
「レベル上がったかぁ~?」
『ほいほい、10超えたよ~ん』
「自分も11になりましたー」
「早いなぁ~ びっくりするわ!」
『がんばったも~ん』
「なんか、2児の母って感じせんな~」
『ん?ハラスメントか~?』
「ちゃうよ、可愛いなぁって意味で言ったんよ」
「こ~のスケコマシのテクニシャンめ~」
『あははははは』
「ちょっ!もうそれやめて」
健斗は責められるのに弱いタイプだった。
「ここに熊が隠れてるんよ。巧みにね」
「索敵で見てるけど、ざっと20匹」
「レベルは10前後やから、平均経験値が1000くらい、掛ける20で2万EXP」
「美味しいと思わん?」
『「思う思う」』
「死角から襲ってくるから、空中で無傷戦闘をやろうと思っとんよ」
「それでもやっぱりレベル10やから、気を抜くと殺られるって事は頭から抜かないようにね」
『うむっ』「わかりました」
亡骸を巻き込まないように広い場所に移動してあげる。
それを見て木陰から熊が飛び出してくる。
空中で待機している母と剣女がサクサクと倒していく。
蝶の様に舞い、蜂の様に刺す!
風纏の使い方もかなり上手になってきている。
この戦法がなかなか安定していて安心して見ていられる。
空中魔法ならもっと安心できるんだろうが。
健斗も自分に経験値が入るように、風刃で軽くダメージを与えながら二人の戦いを見守る。
少しズルいとは思いながらも、この経験値ウェーブには乗りたい。
何体か倒したくらいで母が叫ぶ。
『は~サクサクとレベルが上がっていくのが気落ち良いね~』
「そうやね~ 三ノ宮の連中を出し抜くのは気が引けるけど、これはしゃぁないね~」
「なんせ、気持ちいい♪」
『7太刀8太刀掛かってたのが、ほぼ2~3太刀で倒せるようになったのも気持ちいいね」
「母は戦闘狂やからなぁ~」
索敵で残り3体になった時、迷い人が西門から2人入ってきてしまった。
幸いな事に、残りのチーキーベア―は東の親能殿の辺りに潜んでいた。
すぐに襲われる様な距離では無いが、危険なのは間違いない。
健斗は素早くそばに近寄りその二人を担ぎ上げ、比較的安全そうな親能殿の2階の回廊に降ろした。
チーキーベアはその二人を見つけて、回廊の下から小さくジャンプして襲おうとしてくる。
初めて見る熊の魔獣、その顔を見ただけで恐怖に襲われる。
健斗は境内に砂利として敷き詰めてる2~3㎝くらいの石を両手で持てるだけ持って来てこう言った。
「色々と話はあとで聞くから、ここでレベルアップを図りましょう」
「この石を確実にあの熊に当てて下さいね」
「1発確実に当たったら次の熊を狙って下さい」
「熊は全部で3匹います」
一気に語り掛け、二人は何が何だかわからないが、言われた通りに目の前に居る恐ろしい熊に石を何個か投げつけた。
母と剣女には、経験値が減る事を告げたが、特に気にもしていないようだ。
自分の娘と同じくらいの姉妹を見て、後で話をちゃんと聞いてあげたいとさえ思っている。
健斗はこの姉妹がすでにレベルが付いている事を最初に見ている。
姉がレベル1、妹がレベル2。
どうやってレベル付きになったのかとかどうして二人で彷徨っているのかとか聞きたい事は沢山ある。
奥に隠れていたチーキーベアも、健斗の陽動で見える所まで出て来たので、姉妹に石を投げるように再度促した。
石がちゃんと当たったのを見てから、3人は熊3匹を反撃も一切させずに上空から屠っていく。
3匹が倒れると、姉妹は急激にレベルが上がった弊害のレベルアップ酔いに陥る。
「あぁぁぁぁ吐き気がするぅ」「うぅぅっ 私あかんかも・・・」
「大丈夫やで、急にレベルが上がったから酔ってるだけやで」
健斗が姉妹の横に降り立ち、そう言って背中をさすってあげる。
「こんな子に欲情せんのよ~」
2人が横に降り立ち、ふざけてそう言った。
剣女の大人のジョークを、目を細めて顔を見て聞き流し、ルームから飲み物を持ってきてあげた。
ゲートの出入りを見て姉妹は驚いていたが、スキルだと女性二人が説明していた。
母と剣女にもスポーツドリンクを渡し、5人で回廊に腰かけて話を始める。
『ビールが良かった・・・』
「みんな結構レベル上がったよなぁ~」
庄内 健斗 (31)
Lv 25
種族 【新人類】選択
職業 【魔剣士】選択
称号 【風切の刃】
基本能力一覧
GMR/PRE
HP 6971/6971
MP 4380/4380
STR 1031
DEF 1016
AGI 877(+126)
DEX 569
INT 837(+206)
SP/1115
OP/16.4
基本技能一覧
眷属契約 異次元空間[ルーム]Lv1
魔風剣 夜目 遠目 鳥観図 超跳躍 索敵
無酸素呼吸 駿動 投擲
風魔法-[風纏]-[風刃]-[風疾駆]
治癒魔法-[キュアレ]
水魔法-[水口]-[水弾]-[水投槍]
耐性一覧
風圧耐性 寒冷耐性 物理耐性
16274/15657
『スルーかよ』
健斗は一気にレベル7つ上がって25になっていた。
母も10上がり20でもうすぐ21、剣女はレベル21を超えてきた。
姉妹も妹が10、姉も、もうすぐ10のレベル9。
あとゴブリン1体か2体倒せばレベルアップするだろう。
「二人共、もう美咲を追い越したかもなぁ」
「ここに着いた時は、俺も美咲もレベル18やったからな」
母と剣女に話しかける。
「あっちでレベリングとかしてなかったらって前提やけどね」
「それで。この子らは知り合いかなんかなん?」
「いや、さっき初めて会ったんやけど?」
「???」
『なんでいきなりレベリングに参加させたん?』
「ん?レベル付いてる子やったから、美味しい思いしたらえぇかなって思ってな」
『「・・・」』
母も剣女も少し物思うところはあるが、些細な事かも知れないと意識を横に流す。
ただ、ほんの僅かな蟠りが芽生えた事はまだ誰の意識下にもなかった。
『そりゃそうと、あんたらはなんでこんな所にフラフラと入ってきたんや?』
母が姉妹に尋ねる。
『両親と祖父母が亡くなって、それで行く当ても無く、ここなら配給とかしてるかもって』
明らかに妹らしい方がハキハキと答えた。
姉っぽい子は何かを言おうとしているが、腹式呼吸が出来ないからか、あまり響いて来ない。
卒業前のブツブツ喋る西野七瀬みたいな感じだ。
それでも何か必死に語り出した。
「うちらだけ生き残ってしもた・・・」
「おばあちゃん、うちの上でうちをかばって殺られた・・・」
「お母さんもお父さんもうちら二人を庇って死んだ・・・」
「うちらが魔物倒さんかったら死ななんだのに・・・」
『お姉ちゃん、それはちゃうわ。うちらが倒さんかったら5人共死んどったわ』
『もう家族はお姉ちゃんだけやけど、生きる気力が無いんやったら、うちは一人ででも生きていく方を選ぶで』
2人のやり取りと説明を3人の大人は黙って聞いていた。
聞けば、妹は13歳、姉は15歳、どちらも中学生らしい。
妹は年齢からは想像出来ないくらい大人びた考えをしているように感じた。
元の世なら警察や児童相談所に持っていく案件だろうが、こんな世界だ。
自分の命は自分で守るしかない。
その覚悟が無い物はドンドン淘汰されていくだろう。
母は自分の娘たちと重ねて見ていたが、所詮は見知らぬ子達である。
『レベルも上がったし、もう大丈夫かな?』
「刀が余ってるならあげたらどないかな?」
姉妹に扱いやすそうな刀を1本づつ手渡した。
同情や哀情は掛けれても、庇護する気持ちは毛頭ない。
自分の事でも精一杯手一杯だし、子供2人を抱えて生きていくのに他人の事まで関われない。
剣女も、生田川の連中には同時に進化した事もあって仲間意識はあるが、それ以外は所詮赤の他人だ。
「この奥に熊の親玉がおるんやけど、倒す?」
「強そうかな?」『倒せる感じ?』
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――


結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる